
和歌の修辞法とは?
- 和歌の修辞法とは、和歌を印象深くするための言葉のわざのこと。受験でよく出るのは枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り・体言止め・句切れの7つです
- 見分けのコツは、枕詞=5音で決まった言葉にかかる、序詞=長さ自由で次の言葉を導く、掛詞=1つの音に2つの意味、縁語=関係の深い言葉のグループ
- すべて百人一首の歌で例が見つかります。好きな歌から覚えるのが近道です
📘 くわしい文法は「古文文法辞典」で
中学受験から難関大まで、「はじめて・しっかり・もっと深く」の3段で、図と練習問題つきで解説しています。
古文の授業や入試で「この歌の修辞法を答えよ」「掛詞を2つ指摘せよ」と聞かれて、困ったことはありませんか。和歌は5・7・5・7・7のたった31音。その短さの中にたくさんの意味をこめるため、昔の歌人たちは言葉のわざ(修辞=しゅうじ)をみがきました。この記事では、枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り・体言止め・句切れを、すべて百人一首の歌を例に、定義・見分け方・入試での問われ方の順に解説します。例に出した歌は1首ずつのページにリンクしているので、意味や作者もあわせて確かめてください。
| 修辞法 | ひとことで | 見分けるヒント | 百人一首の例 |
|---|---|---|---|
| 枕詞(まくらことば) | 決まった言葉の前に置く飾りの言葉 | ほぼ5音。かかる言葉が決まっている。訳さない | 3番・17番・33番 |
| 序詞(じょことば) | 次の言葉を導く前置き | 長さ自由(7音以上が多い)。作者の自由な工夫 | 3番・18番・77番 |
| 掛詞(かけことば) | 1つの音に2つの意味を重ねる | ひらがなの所・地名を疑う | 9番・16番・60番 |
| 縁語(えんご) | 関係の深い言葉を散りばめる | 中心の言葉と「なかま」の語を探す | 88番・89番 |
| 本歌取り(ほんかどり) | 有名な古い歌の言葉を借りる | 新古今集のころの歌に多い | 91番・94番 |
| 体言止め(たいげんどめ) | 最後を名詞で終える | 第5句の終わりが名詞 | 10番・60番・70番 |
| 句切れ(くぎれ) | 歌の途中で意味が切れる所 | 終止形・命令形・係り結び・終助詞 | 2番・23番・89番 |
枕詞とは?意味と見分け方
枕詞(まくらことば)は、決まった言葉の前に置いて、その言葉を飾ったり調子を整えたりする言葉です。ふつうは5音で、かかる言葉がほぼ決まっています。もとはそれぞれに意味があったと考えられますが、和歌の中では現代語訳しないのが原則です。「枕」は頭をのせる物。言葉の頭に置くから「枕詞」と呼ぶ、という説明がよくされます。
百人一首の枕詞の例
- 3番「あしびきの山鳥の尾の」──「あしびきの」が山にかかります(「あしひきの」とも書きます)。
- 17番「ちはやぶる神代も聞かず」──「ちはやぶる」が神にかかります。在原業平の竜田川の歌です。
- 33番「久方の光のどけき春の日に」──「ひさかたの」が光にかかります。76番「久方の雲居にまがふ」では雲にかかっています。
- 2番「白妙の衣ほすてふ」──「しろたへの」が衣にかかります。白妙は白い布のこと。
主な枕詞の一覧表(枕詞→かかる言葉)
| 枕詞 | かかる言葉 | メモ・例 |
|---|---|---|
| あしひきの(あしびきの) | 山・峰(を) | 3番「あしびきの山鳥の尾の」 |
| ひさかたの(久方の) | 天・空・光・月・雲 | 33番「久方の光のどけき」、76番「久方の雲居にまがふ」 |
| ちはやぶる | 神・宇治 | 17番「ちはやぶる神代も聞かず」 |
| しろたへの(白妙の) | 衣・袖・雪・雲 | 2番「白妙の衣ほすてふ」 |
| ぬばたまの | 黒・髪・夜・夢 | 万葉集などに多い |
| あらたまの | 年・月・春 | 万葉集などに多い |
| たらちねの | 母・親 | 万葉集などに多い |
| くさまくら(草枕) | 旅・結ぶ | 万葉集などに多い |
| あをによし | 奈良 | 「あをによし奈良の都は」(万葉集) |
| からころも(唐衣) | 着る・裁つ・袖・紐 | 伊勢物語の「かきつばた」の歌にも |
| ももしきの | 大宮 | 宮中を表す「ももしき」も覚える |
| うつせみの | 世・命・人 | 「うつせみ」=この世の人 |
| しきしまの | 大和 | 「しきしまの道」=和歌の道 |
| あづさゆみ(梓弓) | 引く・張る・射る・春 | 弓に関係する言葉にかかる |
見分け方は2つです。①5音で、訳すと意味が浮く言葉を探す。②その直後に山・神・光・衣・母・旅など、表の「かかる言葉」が来ているかを見る。入試では「枕詞を抜き出せ」「〇〇はどの語にかかるか」という形でよく出ます。表の上の6つ(あしひきの・ひさかたの・ちはやぶる・しろたへの・ぬばたまの・あらたまの)は必ず覚えましょう。
序詞とは?枕詞との違い
序詞(じょことば)は、ある言葉を導き出すための前置きの言葉です。働きは枕詞に似ていますが、ちがいは次の3つです。
| 枕詞 | 序詞 | |
|---|---|---|
| 長さ | ほぼ5音 | 自由(7音以上、2〜3句分が多い) |
| 組み合わせ | かかる言葉が決まっている | その歌だけの自由な工夫 |
| 訳すか | 訳さない | 訳す(「〜のように」などとつなぐ) |
序詞が次の言葉につながる方法は、大きく3つあります。
- たとえ(比喩)でつなぐ:3番「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」が「ながながし」を導きます。山鳥の長くたれた尾のように長い夜、というイメージです。77番崇徳院「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」は、岩にぶつかって二つに分かれた川がまた一つになるように、「われても末に逢はむ」を導きます。
- 同じ音のくり返しでつなぐ:18番「住の江の岸に寄る波」が、同じ音の「よる(夜)さへや」を導きます。27番「みかの原わきて流るる泉川」は「いつ見きとてか」を、39番「浅茅生の小野の篠原」は「しのぶれど」を導きます。
- 掛詞でつなぐ:16番「立ち別れいなばの山の峰に生ふる」は、峰に生える「松」と「待つ」を掛けて「まつとし聞かば」へつながります。97番藤原定家「まつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の」も、藻塩が焼けるように「身もこがれつつ」を導きます。
序詞の歌は、前半が景色、後半が心という形になることが多いのも特徴です。前半の景色は、後半の気持ちを目に見えるようにするための「絵」だと思うとわかりやすいでしょう。
うかるくん
3番の「あしびきの」は枕詞なのに、序詞の中にも入っているんですか?ややこしい……。
合格先生
いいところに気づいたね。「あしびきの」は「山」にかかる枕詞。そして「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」全体が「ながながし」を導く序詞。枕詞が序詞の中に入っている形なんだ。
サクラちゃん
短い飾りの枕詞と、長い前置きの序詞が重なっているんですね。
合格先生
そう。入試では「序詞はどこまでか」が問われやすい。「どの言葉を導くために置かれたのか」を考えると、終わりの位置が決まるよ。
掛詞とは?見つけ方と百人一首の例
掛詞(かけことば)は、同じ音の言葉に2つの意味を重ねるわざです。いまの「だじゃれ」に近いしくみですが、和歌ではとても上品な技術とされました。よくある形は、自然の言葉(地名・植物など)+人の心の言葉の組み合わせです。
| 歌 | 掛詞 | 2つの意味 |
|---|---|---|
| 9番 小野小町 | ふる/ながめ | 経る(年月がたつ)・降る/眺め(もの思い)・長雨 |
| 16番 在原行平 | いなば/まつ | 因幡(国の名)・往なば(行ってしまったら)/松・待つ |
| 60番 小式部内侍 | いく野/ふみ | 生野(地名)・行く/踏み・文(手紙) |
| 8番 喜撰法師 | うぢ | 宇治(地名)・憂し(つらい) |
| 28番 源宗于 | かれ | 離れ(人が来なくなる)・枯れ(草が枯れる) |
| 88番 皇嘉門院別当 | かりね/ひとよ/みをつくし | 刈り根・仮寝/一節・一夜/澪標・身を尽くし |
| 97番 藤原定家 | まつ/こがれ | 松帆の浦・待つ/(藻塩が)焦がれ・(恋に)焦がれ |
60番は、歌人の母・和泉式部が丹後(いまの京都府北部)にいたとき、「お母さんに代作してもらう手紙はもう届いた?」とからかわれ、その場で詠み返した歌として知られます。「まだ文(手紙)も見ていないし、天の橋立も踏んでいない」と、掛詞でみごとに切り返したわけです。
掛詞の見つけ方のコツ
- ひらがなで書かれた所を疑う(漢字にすると意味が1つに決まってしまうから、わざとかなで書く)。
- 地名(いなば・いく野・逢坂・宇治・松帆)は、たいてい何かと掛かっている。とくに「逢坂」は「逢ふ」、「まつ」は「待つ」が定番です。
- 「あき(秋・飽き)」「よ(夜・世・節)」「ふみ(文・踏み)」「うき(憂き・浮き)」「おもひ(思ひ・火)」など、よく使われる組み合わせを覚えておく。
掛詞は、ほかの記事でもたびたび出てきます。「片思い」を表すことわざの由来を調べた磯のあわびの片思いの記事も、和歌の「掛け合わせ」の楽しさがわかる話です。
縁語とは?掛詞との組み合わせ
縁語(えんご)は、歌の中心となる言葉と関係の深い言葉(なかまの言葉)を、わざと散りばめるわざです。縁語は1語ではなくグループで考えます。多くの場合、掛詞と組み合わせて使われます。
- 89番 式子内親王「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」──「緒(ひも)」の縁語として「絶え・ながらへ・弱り」が使われています。ひもが切れる・のびる・弱る、という言葉で、命のはかなさを表しています。
- 88番「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」──「難波江(なにわえ)」の縁語として「葦・刈り根・一節・澪標・わたる」が並びます。表の意味は水辺の景色、裏の意味は「一夜の仮寝のために、身を尽くして恋し続けるのか」という恋の気持ちです。
- 60番「踏み」と「橋」も縁語とされます(橋は踏んで渡るもの)。
見分け方は、掛詞を見つけたら、その「自然のほうの意味」となかまの言葉がほかにないか探すことです。入試では「〇〇の縁語を抜き出せ」という形がよく出ます。
本歌取りとは?
本歌取り(ほんかどり)は、よく知られた古い歌(本歌)の言葉を一部借りて、新しい歌を作るわざです。読む人が本歌を思い出すことで、歌の世界が二重に広がります。新古今和歌集のころ(鎌倉時代の初め)にさかんに使われ、百人一首を選んだとされる藤原定家も得意としました。
- 94番 藤原雅経「み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり」──古今和歌集の坂上是則の歌「み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり」をもとにしています。冬の雪の歌を、秋の夜の砧(きぬた)の音の歌に作りかえました。
- 91番 藤原良経「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む」──結びの「ひとりかも寝む」は3番と同じ言葉です。「衣かたしき」には古今和歌集の歌の言葉もふまえられているとされます。
本歌取りかどうかは、本歌を知らないと見抜けません。だからこそ、百人一首を覚えておくと有利です。
体言止めとは?
体言止め(たいげんどめ)は、歌の最後(第5句)を体言=名詞で終えるわざです。言い切らずに名詞で止めることで、余韻(よいん)が残ります。これも新古今集のころに好まれました。
「秋の夕暮れ」で終わる歌は新古今集に多く、和歌の世界で「さびしさ」を表す定番の場面です。古文の時間の言葉については、枕草子「春はあけぼの」の記事で「秋は夕暮れ」とあわせて解説しています。
句切れとは?初句切れ〜四句切れの見分け方
句切れ(くぎれ)は、和歌の途中で意味(文)がいったん終わる所です。5つの句のどこで切れるかで、初句切れ・二句切れ・三句切れ・四句切れ・句切れなしと呼びます。切れる所には、次のどれかがあります。
- 終止形(〜けり・〜けらし・〜なり など)
- 命令形(〜よ・〜ね・〜せよ など)
- 係り結びの結び(ぞ・なむ・や・か→連体形、こそ→已然形)
- 終助詞(〜な・〜かな・〜よ など)や呼びかけ
| 句切れ | 百人一首の例 | 切れる理由 |
|---|---|---|
| 初句切れ | 89番「玉の緒よ/」 | 「よ」は呼びかけ |
| 二句切れ | 2番「春過ぎて夏来にけらし/」、9番「花の色は移りにけりな/」 | 「けらし」は終止形、「な」は終助詞 |
| 三句切れ | 23番「月見れば千々に物こそ悲しけれ/」 | 「こそ」の結びの已然形「けれ」 |
| 四句切れ | (百人一首では少ない) | 第4句の終わりに終止形などがある |
| 句切れなし | 1番「秋の田の…露にぬれつつ」 | 最後まで一続きの文 |
23番の大江千里(おおえのちさと)の歌は、三句切れと倒置(言葉の順番の入れかえ)がいっしょに出てくる、入試の定番です。「月を見るといろいろと悲しい。/私ひとりの秋ではないけれど」と、後半が前半の理由を補う形になっています。くわしくは中秋の名月と百人一首23番「月見れば」で解説しています。

合格先生
句切れの問題は「そこに「。」を打てるか」で考えよう。連体形や連用形で次につながるなら、切れていないよ。
入試での問われ方と練習問題
共通テストでは、和歌の修辞法そのものを答えさせるよりも、修辞がわかったうえで歌の気持ちを読み取る問題が多い傾向です。国公立の二次試験では、掛詞を生かした現代語訳や、序詞・縁語の説明問題がよく出ます。私大では「掛詞を含む語を選べ」「枕詞を抜き出せ」などの知識問題も多く見られます。
練習問題(自作)
- 16番「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」の掛詞を2つ答えなさい。
→答え:「いなば」(因幡・往なば)、「まつ」(松・待つ) - 33番「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」の枕詞と、かかる言葉を答えなさい。
→答え:「久方の」が「光」にかかる - 2番「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」は何句切れか。また体言止めになっているか。
→答え:二句切れ。「天の香具山」で終わる体言止め
覚えたら、百人一首クイズで上の句と下の句をつなげる練習をすると、修辞の入った言葉が自然に頭に入ります。
サクラちゃん
修辞法、7つもあると覚えきれません……。
合格先生
大丈夫。まずは「9番・16番・60番」の掛詞と、「3番」の枕詞と序詞の4首だけでいい。この4首で、修辞法の半分以上が説明できるよ。
うかるくん
好きな歌から覚えればいいんですね!
まとめ:修辞法は百人一首で覚える
和歌の修辞法は、言葉の意味を二重・三重にして、31音の中に大きな世界をこめるための工夫です。暗記するだけでなく、「なぜこの言葉を使ったのか」を考えると、歌がぐっとおもしろくなります。古文全体の勉強は、古文単語・古文の助動詞・古文の敬語の記事もあわせてどうぞ。「古典」と「古文」のちがいは古典と古文の違い、月の呼び名は旧暦の月の名前にまとめています。国語の勉強法は国語のまとめから。勉強の悩みは、受験掲示板「100点BBS」でほかの受験生と話してみるのもいいでしょう。
よくある質問
枕詞と序詞の違いは何ですか?
枕詞はほぼ5音でかかる言葉が決まっており、訳しません。序詞は長さが自由で、その歌だけの工夫として次の言葉を導き、訳します。
掛詞はどうやって見つけますか?
ひらがなで書かれた所や地名を疑います。「まつ(松・待つ)」「ながめ(長雨・眺め)」「ふる(降る・経る)」などが定番です。
縁語とは何ですか?
歌の中心となる言葉と関係の深い言葉を散りばめるわざです。百人一首89番では「緒」の縁語として「絶え・ながらへ・弱り」が使われています。
本歌取りの例を教えてください。
百人一首94番「み吉野の山の秋風」は、古今和歌集の坂上是則の歌「み吉野の山の白雪つもるらし」をもとにした本歌取りです。
句切れはどう判断しますか?
終止形・命令形・係り結びの結び・終助詞があり、そこで「。」が打てる所が句切れです。百人一首23番は「悲しけれ」で切れる三句切れです。
「あしひきの」と「あしびきの」はどちらが正しいですか?
どちらの読み・表記も使われます。いずれも「山」にかかる枕詞です。
あわせて読みたい
- 古文文法辞典:係り結び(句切れの見分けに)
- 古文文法辞典:古文の品詞(歌の品詞分解)
- 古文文法辞典:歌の中の古語
- 古文文法辞典:古文文法辞典(表紙)
- 百人一首 全百首の一覧(意味・作者・決まり字)
- 百人一首クイズ
- 中秋の名月と百人一首23番「月見れば」
- 枕草子「春はあけぼの」原文・現代語訳と意味
- 古文単語の覚え方
- 磯のあわびの片思いの意味と由来
出典・参考
- 百人一首の本文・番号は当サイト「百人一首 全百首」による(表記は校注本により異なることがあります)
- 古今和歌集 坂上是則「み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり」
- 修辞法の分類・名称は高校の古典の教科書・古語辞典で一般的なものによる
- 練習問題はこの記事のための自作です
最終更新:2026年10月14日/作成:大学受験合格大作戦












