古文文法辞典 › 和歌・古文常識
大学受験難関大
ひとことで言うと
縁語は、歌の中心の語と関係の深いことば(なかま)をいくつも使い、連想のつながりを持たせる修辞法。多くは掛詞と組み、掛詞の「物」の側に縁語が集まって、心の流れとは別の物の流れを作ります。
このページのポイント
- 縁語=中心の語となかまのことばのグループ
- 多くは掛詞と組む。掛詞の「物・自然」の意味の側に集まる
- 見つけ方:掛詞→物の意味→なかまを拾う→心の意味でも読めるか
- 縁語はふつう訳に出さない。説明問題では「〜のイメージが重なる」
はじめて(やさしく)
和歌の縁語(縁語)は、歌の中の中心のことばと関係の深いことば(なかまのことば)を、わざといくつも入れる工夫です。「縁」は「つながり・ゆかり」の意味。1語ではなく、ことばのグループで考えます。
たとえば作文で「野球」の話をしていないのに、「ここが勝負の九回裏」「直球で気持ちを伝えた」と野球のことばを散りばめると、文章全体に野球のイメージが重なりますね。縁語は、これを和歌の31音の中でやる技です。
サクラちゃん
なかまのことばって、たとえばどんなものですか?
合格先生
百人一首89番「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」を見てみよう。「玉の緒」は命のこと。でも「緒」は本来、ひものことなんだ。
うかるくん
あっ、「絶え(切れる)」「ながらへ(長くのびる)」「弱り(弱くなる)」……全部ひもに使えることばだ!
合格先生
そのとおり。命の歌なのに、ひものことばが並んでいる。これが縁語だよ。

89番の歌の意味は「私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。生きながらえていたら、恋を秘める心が弱ってしまうといけないから」。表の意味は命と恋の心の話ですが、その下にひもが切れる・のびる・弱るというもう一つの流れが重なっています。
ここだけは覚えよう
- 縁語は、中心の語となかまのことばを歌の中に散りばめる工夫
- 1語ではなくグループで答える(89番なら「玉の緒・絶え・ながらへ・弱り」)
- 縁語は掛詞と組むことが多い。掛詞の「物・自然」の意味の側に、なかまが集まる

サクラちゃん
縁語は「なかま集め」! 歌の表の意味とは別に、もう一つの物の流れがかくれているんですね。
縁語は、和歌の修辞をまとめた記事「和歌の修辞」でも紹介しています。このページでは、見つけ方の手順・百人一首の縁語の一覧・掛詞との違いまでくわしく見ていきます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
縁語とは(定義)
縁語は、一首の中で、ある語と意味の上で関係の深い語を意識して使い、表現に連想のふくらみを持たせる技法です。中心となる語(「玉の緒」「難波江」「滝」など)と、それに縁のある語(「絶え」「葦」「流れ」など)のまとまりを指します。古今和歌集のころから盛んに使われるようになった技法と説明されることが多いです。
縁語と掛詞の関係
縁語の多くは、掛詞と組み合わさっています。掛詞は1つの語に「物・自然」と「人の心」の2つの意味を持たせるわざでした。縁語は、その「物・自然」の意味の側に、なかまのことばを集めます。こうして、一首の中に心の流れと物の流れの二つの文脈ができあがります。
| くらべる点 | 掛詞 | 縁語 |
|---|---|---|
| しくみ | 1つの語に2つの意味 | 関係の深い語のまとまり |
| 単位 | 1語 | 2語以上のグループ |
| 訳し方 | 両方の意味を訳に出す | ふつうは訳に出さない(物の流れ) |
| 入試の問われ方 | 「掛詞を指摘し、2つの意味を答えよ」 | 「〜の縁語をすべて抜き出せ」 |
| 例 | まつ=松・待つ(16番) | 緒・絶え・ながらへ・弱り(89番) |
縁語の見つけ方の手順
- 掛詞を探す:地名、ひらがなで書かれた所、「よ・ふみ・まつ・あき・おもひ」など定番の音。
- 掛詞の物・自然の側の意味を取り出す(例:88番「みをつくし」→ 澪標=水路の目じるしの杭)。
- その物となかまの語を歌の中から拾う(難波江・葦・刈り根・一節)。
- 拾った語が、心の意味でも読めるか確かめる(刈り根=仮寝、一節=一夜)。
例文で確かめる
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
(百人一首89番・式子内親王(玉の緒よ))
現代語訳私の命よ、絶えてしまうのなら、いっそ絶えてしまえ。このまま生きながらえていたら、胸に秘めた恋心をこらえる力が弱って、(人に知られて)しまうといけないから。
難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき
(百人一首88番・皇嘉門院別当(難波江の))
現代語訳難波の入り江に生える葦の、刈り根の一節のように短い、旅先でのたった一夜の仮寝のために、私はこれから、澪標のように身を尽くして、あの人を恋し続けなければならないのでしょうか。
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
(百人一首55番・大納言公任(滝の音は))
現代語訳滝の流れ落ちる音は、絶えてから長い年月がたってしまったけれど、その(すばらしい滝だったという)評判だけは世に流れ伝わって、今もなお聞こえていることだ。
大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立
(百人一首60番・小式部内侍(大江山))
現代語訳(母のいる丹後へは)大江山を越え、生野を通って行く道のりが遠いので、まだ天の橋立の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙も見ていません。
百人一首の縁語の一覧
百人一首の解説(百人一首 全百首)で縁語とされている歌を一覧にしました。なかまのテーマ(水・火・糸・布・海など)に注目すると、縁語のグループが見つけやすくなります。
| 歌 | なかまのテーマ | 縁語 | 組んでいる掛詞 |
|---|---|---|---|
| 13番 陽成院(陽成天皇) | 川・水 | 落つる・川・淵 | — |
| 14番 河原左大臣(源融) | 布・染め物 | もぢずり・乱れ・そめ | そめ(初め・染め) |
| 19番 伊勢 | 葦 | 葦・ふし・よ | よ(節・世) |
| 25番 三条右大臣(藤原定方) | つる草 | さねかづら・くる | くる(繰る・来る) |
| 46番 曽禰好忠 | 舟・旅 | 渡る・舟人・かぢ・行方・道 | — |
| 51番 藤原実方朝臣 | お灸の火 | さしも草・燃ゆる・火 | 思ひ(思ひ・火) |
| 55番 大納言公任(藤原公任) | 滝 | 滝・音・絶え・流れ・聞こえ | — |
| 57番 紫式部 | 月 | めぐり・雲隠れ・月 | — |
| 60番 小式部内侍 | 道 | ふみ(踏み)・道・橋 | ふみ(踏み・文) |
| 65番 相模 | 袖 | 袖・朽ち | — |
| 72番 祐子内親王家紀伊 | 海 | 浜・波・かけ・ぬれ | かけ(波をかける・心をかける) |
| 80番 待賢門院堀河 | 髪 | 長から・黒髪・乱れ | — |
| 88番 皇嘉門院別当 | 難波江 | 難波江・葦・刈り根・一節・澪標 | かりね・ひとよ・みをつくし |
| 89番 式子内親王 | 糸(緒) | 玉の緒・絶え・ながらへ・弱り | — |
| 97番 権中納言定家(藤原定家) | 火 | 焼く・藻塩・こがれ | こがれ(焦げる・恋に焦がれる) |
テーマで見ると、水(13・55番、46番の舟、72番の海、88番の難波江)、火(51・97番)、糸・布(89・14番)、植物(19・25番)、体・衣(65番の袖、80番の黒髪)、月(57番)に分かれます。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 縁語の範囲は、説によって少しちがう
縁語は「どこまでをなかまとみるか」に、ある程度の幅があります。88番の「わたる」を難波江の縁語に入れるかどうか、55番の「音」を滝の縁語に数えるかどうかなどは、本によってちがうことがあります。入試の記述では、中心の語(何の縁語か)を明示し、「〜に関係する語として、〜・〜が使われている」と書けば、範囲の差で失点しにくくなります。
2. 縁語は訳に出さない。では何のため?
現代語訳は、ふつう心の流れ(歌の表の意味)で作ります。縁語の「物の流れ」は、訳には直接あらわれません。では何のためにあるのかというと、心の情景に、物のイメージを重ねるためです。89番なら、命を「細く、切れやすいひも」として感じさせ、命のはかなさと、秘めた恋の苦しさを強めています。説明問題では「縁語によって、〜のイメージが重なり、〜が強調される」とまとめるのが定番です。
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
(百人一首97番・権中納言定家(来ぬ人を))
現代語訳いくら待っても来ない人を待ち続けて、松帆の浦の風がやんだ夕なぎのころに焼く藻塩のように、私の身も、恋しさに焦がれ続けていることです。
3. 物語の中の和歌:伊勢物語「唐衣」
縁語は百人一首だけでなく、物語の中の和歌にもよく出ます。定番は伊勢物語・第九段(東下り)の、三河の国の八橋で、かきつばたの花を見て詠んだ歌です。
唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
(伊勢物語・第九段(古今和歌集にも))
現代語訳(唐衣を着なれるように)慣れ親しんだ妻が(都に)いるので、はるばるやって来た旅をしみじみと思うことだ。
4. 序詞と縁語が組む歌
46番「由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな」では、序詞「由良の門を渡る舟人かぢを絶え」の中の「渡る・舟人・かぢ」と、下の句の「行方・道」が、舟と旅の縁語になっています。かじをなくした舟のように行方のわからない恋、という比喩が、縁語で一首の端から端までつながっています。このように、序詞の景色と下の句の心を、縁語が糸のように結ぶ形は、入試の説明問題でよくねらわれます。
うかるくん
縁語って、どこまでなかまに入れていいか迷います……。
合格先生
まず「何の縁語か」、中心の語を決めること。中心が決まれば、その物に使えることばかどうかで判断できる。89番なら「ひもに使えるか?」と聞いてみるんだ。
サクラちゃん
「絶え」はひもが切れる、「ながらへ」はひもがのびる……ひもに聞けばいいんですね!

合格先生
縁語は「何の」縁語かをはっきりさせてから拾う。そして、掛詞の「物」の側を探すのが近道だよ。
よくあるまちがい
まちがい1:縁語を1語だけ答える
縁語はグループです。「玉の緒の縁語を抜き出せ」なら「絶え・ながらへ・弱り」と、なかまを全部答えます。
まちがい2:縁語の意味を現代語訳に入れてしまう
訳は心の流れで作ります。89番を「ひもが切れるなら切れてしまえ」と訳すのはまちがい。「命が絶えるなら絶えてしまえ」です。
まちがい3:掛詞と縁語を混同する
掛詞は1語に2つの意味、縁語は関係の深い語のまとまり。60番の「ふみ」は掛詞(踏み・文)で、その「踏み」と「道・橋」が縁語です。1つの語が両方の役をすることはあります。
まちがい4:歌の主題と関係ある語を全部縁語にする
89番の「忍ぶる」は恋の心のことばで、ひもの縁語ではありません。縁語は中心の物(緒)とのつながりで選びます。
縁語の範囲で迷ったら、受験掲示板「100点BBS」の百人一首の掲示板で、ほかの受験生や百人一首好きの人に聞いてみるのもおすすめです。
練習問題
やさしい
- 縁語の説明として正しいものを選びなさい。
ア 1つの語に2つの意味を持たせる。
イ ある語と関係の深い語をいくつも使い、連想のつながりを持たせる。
ウ 5音で決まった語にかかる。答えと解説を見る
イ。アは掛詞、ウは枕詞の説明です。
- 百人一首89番「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」から、「玉の緒(緒=ひも)」の縁語を3つ抜き出しなさい。
答えと解説を見る
「絶え」「ながらへ」「弱り」。どれもひもが切れる・のびる・弱るという、ひもに関係することばです。
ふつう
- 百人一首55番「滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ」から、「滝」の縁語をすべて抜き出しなさい。
答えと解説を見る
「音」「絶え」「流れ」「聞こえ」。「流れ」「聞こえ」は、評判が世に伝わるという心の意味にもなっています。
- 百人一首60番「大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立」で、「ふみ」の2つの意味を答え、どちらの意味が何と縁語になっているかを説明しなさい。
答えと解説を見る
「ふみ」は「踏み」と「文(手紙)」の掛詞。「踏み」の意味が、「道」「橋(天の橋立)」と縁語になっています(道も橋も踏んで渡るもの)。
むずかしい
- 百人一首88番「難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき」について、「難波江」の縁語を挙げ、それらが掛詞とどう組み合わさって二つの文脈を作っているかを説明しなさい。
答えと解説を見る
縁語は「葦・刈り根・一節・澪標」(「わたる」を加える説明もある)。「かりね(刈り根・仮寝)」「ひとよ(一節・一夜)」「みをつくし(澪標・身を尽くし)」が掛詞で、物の側では難波江の水辺の景色、心の側では旅先の一夜の恋のために、身を尽くして恋し続けるのかという嘆きになり、二つの文脈が重なっています。
- 伊勢物語・第九段の歌「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」から、「唐衣」の縁語を4つ挙げ、それぞれの掛詞のもう一つの意味を答えなさい。
答えと解説を見る
「萎れ(なれ)」=慣れ、「褄(つま)」=妻、「張る(はる)」=はるばる(遥々)、「着ぬる(きぬる)」=来ぬる(やって来た)。「きつつ」の「着」も縁語ですが、掛詞ではありません。衣の流れと、都に残した妻を思う旅の心の流れが重なっています。
関連ページ
- 掛詞:縁語と組む「1語に2つの意味」
- 序詞:序詞の景色と下の句を縁語が結ぶ
- 枕詞:決まった5音のかざり
- 本歌取り:97番の定家の技巧
- 「もぞ・もこそ」:89番「弱りもぞする」、72番「ぬれもこそすれ」
- 係り結び:55番「名こそ流れてなほ聞こえけれ」
- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 磯のあわびの片思い
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現代文・古文・漢文の入口
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- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
縁語とは何ですか?
一首の中で、ある中心の語と関係の深い語をいくつも使い、連想のつながりを持たせる和歌の修辞法です。百人一首89番では「玉の緒(緒=ひも)」の縁語として「絶え・ながらへ・弱り」が使われています。
縁語と掛詞の違いは何ですか?
掛詞は1つの語に2つの意味を持たせる技法、縁語は関係の深い語のまとまりです。縁語は掛詞と組むことが多く、掛詞の物・自然の側の意味に縁語が集まります。
縁語はどうやって見つけますか?
まず掛詞を探し、その物・自然の側の意味を取り出します。次に、その物と関係のある語を歌の中から拾い、心の意味でも読めるかを確かめます。
縁語は現代語訳に入れますか?
ふつうは入れません。訳は歌の表の意味(心の流れ)で作り、縁語は物のイメージを重ねる働きとして、説明問題で答えます。
百人一首で縁語の有名な歌はどれですか?
89番「玉の緒よ」、88番「難波江の」、55番「滝の音は」、60番「大江山」などが代表的です。このページでは解説で縁語とされる15首を一覧にしています。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:百人一首(13・14・19・25・46・51・55・57・60・65・72・80・88・89・97番。本文は合格大作戦「百人一首」のデータ)、伊勢物語(第九段)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典の標準的な説明(和歌の修辞・縁語)にもとづいて作成。縁語の範囲は本によって少しちがいます
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 089」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



