このページのポイント
- 「もぞ・もこそ」=危惧・懸念「〜したら困る・〜すると大変だ」
- 結びは「もぞ」→連体形、「もこそ」→已然形
- 「弱りもぞする」「ぬれもこそすれ」の連用形+もぞ+すの形が多い
- 前の命令の理由なら「〜するといけないから」と訳す
- 並べる・比べる「も」で下が悪いことでなければ、ただの強意
はじめて(やさしく)
「もぞ」「もこそ」は、悪いことが起こるのを心配するときに使う言い方です。「雨もぞ降る」は「雨が降ったら困る」、「人もこそ見れ」は「人が見たら大変だ」という意味になります。むずかしい言葉で危惧(きぐ)・懸念(けねん)の表現といいます。
遠足の前の日に「明日、雨が降ったらどうしよう」と心配することがありますね。まだ降っていないけれど、降ったら困る。その気持ちを古文では「雨もぞ降る」という短い一言で表せるのです。
うかるくん
「も」と「ぞ」がくっついただけで、どうして「困る」になるの?
合格先生
「も」は「〜もありうる」、「ぞ」「こそ」は強め。「そんなことも起こりうるぞ」と強く言うと、「起きたら大変だ」という心配の気持ちになる、と説明されることが多いよ。
サクラちゃん
だから訳に「困る」「大変だ」をおぎなうんだね。
合格先生
そう。もう一つ大事なのは、「ぞ」「こそ」は係助詞だから係り結びが起きること。「もぞ」なら連体形、「もこそ」なら已然形で結ぶんだ。
係り結びのきまりそのものは係り結びのページで、助詞全体の中での位置は助詞の種類で確かめられます。

サクラちゃん
「もぞ」「もこそ」を見たら、あせっている顔を思いうかべて! 「〜したらどうしよう、困る!」だよ。
ここまでのまとめ
- 「もぞ・もこそ」=〜したら困る・〜すると大変だ(危惧)
- 結びは「もぞ」→連体形、「もこそ」→已然形
- 心配しているのは、まだ起きていない悪いこと
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
「もぞ・もこそ」の意味・結び・訳し方
| 形 | 成り立ち | 結び | 意味 | 訳し方 |
|---|---|---|---|---|
| もぞ | 係助詞「も」+係助詞「ぞ」 | 連体形 | 危惧・懸念 | 〜したら困る・〜すると大変だ |
| もこそ | 係助詞「も」+係助詞「こそ」 | 已然形 | 危惧・懸念 | 〜したら困る・〜するといけない |
見つけ方と訳し方の手順
- 「も」のすぐ後ろに「ぞ」「こそ」が続いているかを見る(「も」と「ぞ・こそ」の間にほかの語がない)。
- 文末の結びを確かめる。「もぞ」なら連体形、「もこそ」なら已然形になっているはず。
- 下の内容が、話し手にとって困ること・まだ起きていないことなら危惧。「〜したら困る」と訳す。
- 前の文(命令・依頼など)の理由になっていれば、「〜するといけないから」とつなぐ。
例文で確かめる

烏などもこそ見つくれ。
(源氏物語・若紫(雀の子を逃がした場面))
現代語訳烏などが見つけたら大変だ。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
(百人一首89番・式子内親王(玉の緒よ))
現代語訳私の命よ、絶えるのなら絶えてしまえ。生きながらえていると、(恋を)秘めてこらえる心が弱って(人に知られて)しまったら困るから。
とく帰りね。道に迷ひもぞする。
(自作)
現代語訳早く帰りなさい。道に迷ったら困るから。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「連用形+もぞ+す」「連用形+もこそ+すれ」の形
89番の「弱りもぞする」、72番の「ぬれもこそすれ」のように、「もぞ・もこそ」は動詞の連用形のあとに入り、結びをサ変「す」が受け持つ形がよく出ます。動詞の連用形(弱り・ぬれ)を名詞のようにあつかい、「弱ることもあるぞ」と言ってから「す」で結ぶ形です。結びの「する」「すれ」はサ変の連体形・已然形(変格活用)。「すれ」を見て命令形とまちがえないようにしましょう。
音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ
(百人一首72番・祐子内親王家紀伊(音に聞く))
現代語訳うわさに高い高師の浜のむやみに立つ波は、かけないでおきましょう。袖がぬれたら困りますから。(浮気だと評判のあなたのことばは、心にかけますまい。あとで涙で袖をぬらすことになっては困りますから。)

2. 心配の意味にならない「もぞ・もこそ」
「もぞ・もこそ」がいつも危惧になるわけではありません。「も」が「AもBも」と並べるはたらきをしていたり、「〜もまた」とほかと比べていたりして、下の内容が悪いことでなければ、ただの「も」+強意の「ぞ・こそ」です。たとえば「秋の夕暮れもこそあはれなれ」(自作)は、「秋の夕暮れもまた、しみじみとしているものだ」で、心配の気持ちはありません。結びは、この場合も已然形「あはれなれ」です。ただし、このような例は多くありません。入試で問われるのは、ほとんどが危惧(〜したら困る)の用法です。
3. 成り立ちと品詞の扱い(説の違い)
「もぞ・もこそ」は、係助詞「も」に係助詞「ぞ」「こそ」が重なった形と説明するのがふつうです。文法書によっては、二つを合わせて一語の連語(危惧を表す係助詞の連語)としてあつかうこともあります。どうして心配の意味が生まれたのかは、「も」が「〜ということもありうる」と好ましくない可能性を示し、それを「ぞ・こそ」で強めるから、という説明が多いですが、確定した説はありません。いずれにしても、入試では「〜したら困る」と訳せること、結びの活用形を答えられることが大切です。
終助詞の「な(禁止)」「なむ(他への願望)」のように、話し手の気持ちを表す助詞の仲間は終助詞「ばや・なむ・もがな・な・そ」でまとめています。「〜するな」(禁止)と「〜したら困る」(危惧)は、どちらも悪いことを避けたい気持ちですが、禁止は相手に命じる、危惧は自分が心配するという点がちがいます。
うかるくん
「もぞ」は連体形、「もこそ」は已然形。係り結びとセットで覚えればいいんだ!
合格先生
そのとおり。和歌では、心配の理由が上の句の決心(絶えなば絶えね・かけじ)とつながっていることが多い。なぜ心配なのかまで読みとれれば満点だよ。

合格先生
和歌の読み方は記事「和歌の修辞」も参考に。72番の「高師(高し)」のような掛詞も、心配の気持ちを生き生きさせているよ。
よくあるまちがい
まちがい1:「もぞ・もこそ」を訳さずに読みとばす
「ぞ・こそ」だけなら強意で訳さなくてよいのですが、「もぞ・もこそ」は「〜したら困る」と必ず訳に出します。ここを落とすと内容がまるで変わります。
まちがい2:「ぬれもこそすれ」の「すれ」を命令形にする
「もこそ」の結びなので、サ変「す」の已然形です。サ変の命令形は「せよ」です。
まちがい3:もう起きたことへの心配と考える
心配しているのはこれから起こるかもしれないこと。「降ったら」「見つけたら」と仮定の形で訳します。
練習問題
やさしい
- 「もぞ」「もこそ」の結びは、それぞれ何形になりますか。
答えと解説を見る
「もぞ」→連体形、「もこそ」→已然形。どちらも係助詞の「ぞ」「こそ」をふくむので係り結びが起きます。
- 「人もぞ見る。」(自作)を訳しなさい。
答えと解説を見る
「人が見たら困る」(人が見るといけない)。「もぞ」は危惧を表します。
ふつう
- ( )に動詞「降る」を正しい形にして入れなさい(自作)。
① 雨もぞ( )。 ② 雨もこそ( )。答えと解説を見る
① 「もぞ」の結びなので連体形「降る」。② 「もこそ」の結びなので已然形「降れ」。どちらも「雨が降ったら困る」。
- 百人一首89番「忍ぶることの弱りもぞする」の「する」の品詞と活用形、その活用形になる理由を答えなさい。
答えと解説を見る
サ変動詞「す」の連体形。係助詞「ぞ」をふくむ「もぞ」の結びだからです。訳は「(秘めた恋を)こらえる心が弱ったら困る」。
むずかしい
- 「門よく鎖してよ。盗人もこそ入れ。」(自作)を訳し、後ろの文が前の文に対してどんな役割をしているかを説明しなさい。
答えと解説を見る
「門をしっかり閉めておけ。盗人が入ったら大変だから」。後ろの文は、前の命令(門を閉めよ)の理由を表しています。「入れ」は四段「入る」の已然形で、「もこそ」の結び。
- 「秋の夕暮れもこそあはれなれ。」(自作)の「もこそ」が危惧でない理由を説明し、訳しなさい。
答えと解説を見る
下の内容「あはれなり(しみじみと趣がある)」は困ること・悪いことではないので、危惧ではなく、「も(〜もまた)」+強意の「こそ」。訳は「秋の夕暮れもまた、しみじみとしているものだ」。結びは形容動詞「あはれなり」の已然形「あはれなれ」。
関連ページ
- 係り結び:「ぞ」「こそ」の結びのきまり
- 助詞の種類:係助詞・終助詞などの地図
- 終助詞「ばや・なむ・もがな・な・そ」:願望・禁止の気持ちを表す助詞
- 変格活用:結びの「する・すれ」(サ変)
- 助動詞「じ」:72番「かけじ」の打消意志
- 国公立二次・難関私大の古文文法:記述の訳に文法を出す手順
- 古文文法辞典の目次
百人一首の歌は「百人一首 全百首」で、助動詞の全体は記事「古文の助動詞一覧」でまとめて読めます。
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よくある質問
「もぞ」「もこそ」の意味は?
「〜したら困る・〜すると大変だ」という危惧(懸念)の意味です。まだ起きていない悪いことを心配する言い方です。
「もぞ」「もこそ」の結びは何形ですか?
係り結びにより、「もぞ」は連体形、「もこそ」は已然形で結びます。「弱りもぞする」の「する」は連体形、「ぬれもこそすれ」の「すれ」は已然形です。
「もぞ」「もこそ」はいつも危惧の意味ですか?
多くは危惧ですが、「も」が並べたり比べたりしていて、下の内容が悪いことでなければ、ただの「も」+強意の「ぞ・こそ」と考えます(入試で出るのは、ほとんどが危惧の用法です)。
百人一首で「もぞ・もこそ」が使われている歌は?
89番「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」と、72番「音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ」です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:源氏物語(若紫)、百人一首(72・89番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(係助詞「も」「ぞ」「こそ」、係り結び、危惧の表現)にもとづいて作成。「もぞ・もこそ」の品詞の扱いと、危惧の意味が生まれた理由には説が分かれるため、本文中に「〜と説明される」と記した
- 画像:「Wakamurasaki by Unknown Japanese artist.jpg」(源氏物語 若紫、1620年ごろ、作者不明、Birmingham Museum of Art 蔵、パブリックドメイン〈PD-US〉、Wikimedia Commons)
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 072」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦


