古文の助動詞「つ・ぬ」の意味と活用表|完了と強意(確述)・てむ/なむ/ぬべし・「ぬ」の識別・つとぬの違い・練習問題【大学受験】

古文の助動詞「つ・ぬ」の意味と活用表|完了と強意(確述)・てむ/なむ/ぬべし・「ぬ」の識別・つとぬの違い・練習問題【大学受験】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

「つ・ぬ」は連用形につく完了の助動詞で、「〜た・〜てしまった」と訳します。下に推量の助動詞がつく「てむ・なむ・つべし・ぬべし」では強意(きっと〜)。未然形の下の「ぬ」は打消「ず」の連体形なので区別します。

このページのポイント

  • 接続は連用形。「つ」は下二段型(て・て・つ・つる・つれ・てよ)、「ぬ」はナ変型(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)
  • 意味は完了・強意(確述)・並列の3つ
  • 下に推量の助動詞(む・べし・まし・らむ)があれば強意:てむ・なむ・つべし・ぬべし
  • 「つ」は意志的な動作、「ぬ」は自然な変化に多い(例外あり)
  • 「ぬ」の識別:連用形+ぬ=完了、未然形+ぬ=打消「ず」。体言の前の「ぬ」は打消

はじめて(やさしく)

「つ」と「ぬ」は、ある動作やできごとが終わった・起きてしまったことを表す助動詞です。どちらも、現代語の「〜た」「〜てしまった」にあたります。このような助動詞を完了の助動詞と呼びます。

たとえば「手紙を書きつ」は「手紙を書いた(書いてしまった)」、「花散りぬ」は「花が散った(散ってしまった)」です。上の動詞は「書き」「散り」と、どちらも連用形になっています。

「つ」も「ぬ」も「〜た・〜てしまった」つ手紙を書きつ書いた・書いてしまった人がわざとする動作に多いぬ花散りぬ散った・散ってしまった自然に起こる変化に多いどちらも連用形につく(書き+つ・散り+ぬ)
「つ」も「ぬ」も完了の助動詞。「つ」は人がする動作に、「ぬ」は自然な変化に多い
うかるくん

うかるくん

「〜た」なら、過去の「き」や「けり」と同じじゃないの?

合格先生

合格先生

いい質問だね。「き・けり」は昔のことを言う過去の助動詞。「つ・ぬ」は終わったかどうかを言う完了の助動詞なんだ。だから「散りにけり(散ってしまった)」のように、いっしょに使うこともできるよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

「〜てしまった」と、「しまう」を入れて訳すとわかりやすいね!

もう1つ大事なのが、形の変わり方(活用)です。「つ」は「て・て・つ・つる・つれ・てよ」、「ぬ」は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」と変わります。「ぬ」が「な」や「に」や「ね」に姿を変えるので、文章の中で見落としやすいのです。

「つ」と「ぬ」の活用(どちらも連用形につく)未然連用終止連体已然命令つ下二段型ててつつるつれてよぬナ変型なにぬぬるぬれね「ぬ」はナ変(死ぬ・往ぬ)と同じ変わり方
「つ」は下二段型、「ぬ」はナ変型に活用する。どちらも連用形につく
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「に・けり」の「に」も、「なむ」の「な」も、じつは「ぬ」の仲間なんだね。連用形の下の「な・に・ぬ・ね」に注意!

ここまでのまとめ

  • 「つ・ぬ」=完了の助動詞。「〜た・〜てしまった」と訳す
  • どちらも連用形につく
  • 「つ」は下二段型(て・て・つ・つる・つれ・てよ)、「ぬ」はナ変型(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)
  • 過去の「き・けり」とはちがう。「にけり」「てき」のように重ねて使える

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

助動詞「つ・ぬ」の意味・接続・活用表

語未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の型
つててつつるつれてよ下二段型
ぬなにぬぬるぬれねナ変型

接続:連用形(「書きつ」「見つ」「散りぬ」「なりぬ」)。助動詞全体の接続は助動詞の接続、ほかの助動詞との比べは助動詞一覧で見られます。

意味訳し方見分ける手がかり
完了〜た・〜てしまった・〜てしまう基本の意味。文末、下に「き・けり・けむ」など
強意(確述)きっと〜・たしかに〜・〜てしまう下に推量の助動詞(む・べし・まし・らむ・めり など)。「てむ・なむ・つべし・ぬべし」
並列〜たり〜たり「〜つ〜つ」「〜ぬ〜ぬ」と2つ並べる。「浮きぬ沈みぬ」

強意は「確述(かくじゅつ)」とも呼ばれます。「つ・ぬ」が、これから起きることを「たしかに起きる」と強めて言う使い方です。

完了の例文

年ごろよくくらべつる人々なむ、別れがたく思ひて、日しきりにとかくしつつ、ののしるうちに、夜更けぬ。

(土佐日記・門出)

現代語訳長年親しくつきあってきた人々は、別れがたく思って、一日中あれこれ世話をしながら、大さわぎしているうちに、夜が更けてしまった。

ここがポイント「くらべ」(下二段の連用形)+「つる」は「つ」の連体形(下の体言「人々」にかかる)。「更け」+「ぬ」は「ぬ」の終止形。人のつきあいには「つ」、夜が更ける自然の変化には「ぬ」。「しつつ」の「つつ」は接続助詞です。

年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。

(徒然草・第五十二段(仁和寺にある法師))

現代語訳長年思っていたこと(石清水八幡宮へのお参り)を、果たしました。

ここがポイント「思ひ」も「侍り」も連用形。その下の「つる」「ぬ」はどちらも完了です。
年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ思ひ連用形+つる完了「つ」連体形+こと体言果たし連用形+侍り丁寧・連用形+ぬ完了「ぬ」終止形長年思っていたことを、果たしました(徒然草)
連用形+「つる」(つの連体形)、連用形+「ぬ」(ぬの終止形)。どちらも完了

今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな

(百人一首21番・素性法師(今来むと))

現代語訳「すぐに行こう」とあなたが言ったばかりに、九月の長い夜を待ちつづけて、明け方の有明の月が出るのを待ち明かしてしまったことだ。

ここがポイント「待ち出で」は下二段「待ち出づ」の連用形。「つる」は「つ」の連体形で、詠嘆の終助詞「かな」につづきます。待つという自分の意志の動作に「つ」が使われています。

花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

(百人一首9番・小野小町(花の色は))

現代語訳桜の花の色は、すっかりあせてしまったなあ。むなしく、わが身がこの世で過ごす間にもの思いをしていた、長雨が降っていた間に。

ここがポイント「移り」は四段「移る」の連用形。「に」は「ぬ」の連用形で、下の過去「けり」につづいています。「にけり」=「〜てしまったなあ」は、百人一首にとても多い形です(40番「色に出でにけり」、41番「立ちにけり」、73番「咲きにけり」も同じ)。

係り結びの結びでは連体形「ぬる」が出ます。百人一首13番「恋ぞつもりて淵となりぬる」(筑波嶺の)は「ぞ」の結び(係り結び)。36番「明けぬるを」、61番「にほひぬるかな」も連体形です。

強意(確述):てむ・なむ・つべし・ぬべし

「つ・ぬ」の下に推量の助動詞がつくと、「つ・ぬ」は「完了した」ではなく、「きっと・たしかに」と、下の推量を強める働きになります。まだ起きていないことに「完了」は使えないからです。

形でき方訳し方
てむ・なむ「つ・ぬ」の未然形+むきっと〜だろう・きっと〜しよう・〜してしまおう
つべし・ぬべし「つ・ぬ」の終止形+べしきっと〜にちがいない・〜てしまいそうだ・〜できるはずだ
てまし・なまし「つ・ぬ」の未然形+ましきっと〜ただろうに
つらむ・ぬらむ「つ・ぬ」の終止形+らむ〜てしまっているだろう
てけむ・にけむ「つ・ぬ」の連用形+けむ〜てしまっただろう
「つ・ぬ」の下を見て、意味を決める「つ・ぬ」を見つけた下に推量の助動詞む・べし・まし・らむ などそれ以外文末・下に き・けり など強意(確述)きっと〜・たしかに〜完了〜た・〜てしまったてむ・なむ・つべし・ぬべし は強意が基本
下に推量の助動詞があれば強意(確述)、なければ完了

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

(百人一首45番・謙徳公(藤原伊尹)「あはれとも」)

現代語訳(私のことを)かわいそうだと言ってくれそうな人は思い浮かばないまま、私はきっとむなしく死んでしまうにちがいないなあ。

ここがポイント「なり」(四段「なる」の連用形)+「ぬ」(終止形)+「べき」(べしの連体形)。「ぬべし」なので「ぬ」は強意で、「きっと〜にちがいない」。

百人一首63番「今はただ思ひ絶えなむ」(今はただ)は、思い切るのが作者自身なので「む」は意志、「な」は強意で「きっぱりあきらめてしまおう」です。

恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ

(百人一首65番・相模(恨みわび))

現代語訳恨み悲しんで涙を乾かすひまもない袖さえ(朽ちそうで)惜しいのに、この恋のためにきっと朽ちてしまうであろう私の評判が惜しいことだ。

ここがポイント「朽ち」は上二段の連用形なので、「なむ」は「な(ぬの未然形・強意)+む」。同じ歌の「ほさぬ」は、未然形「ほさ」+「ぬ」なので打消「ず」の連体形。1首の中に2種類の「ぬ」がある、よい練習材料です。

「つ・ぬ」の意味の見分け方(手順)

  1. 上の語が連用形かを確かめる(未然形の下の「ぬ」は打消の「ず」。下の「もっと深く」参照)。
  2. 下に推量の助動詞(む・むず・べし・まし・らむ・めり など)があれば強意(確述)。
  3. 「〜つ〜つ」「〜ぬ〜ぬ」と2つ並んでいれば並列(〜たり〜たり)。
  4. それ以外は完了。「〜た・〜てしまった」と訳して、文脈に合うか確かめる。

白波の上に漂ひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ

(平家物語・巻十一「那須与一」)

現代語訳(扇は)白波の上にただよい、浮いたり沈んだりして揺られていたので

ここがポイント「浮き」「沈み」はどちらも四段の連用形。「〜ぬ〜ぬ」と2つ並べた並列の用法で、「〜たり〜たり」と訳します。「行きつ戻りつ」(自作)のように「つ」でも作れます。
指し棒で説明する合格先生

合格先生

「てむ・なむ・つべし・ぬべし」を見たら、まず「きっと」を入れて訳してみよう。共通テストの訳の選択肢でも、「きっと」「〜てしまうにちがいない」が決め手になることが多いよ。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「つ」と「ぬ」の違い(2つの説明)

同じ完了なのに、なぜ2つあるのか。これには、よく知られた説明が2つあり、どちらも目安です。

  • 説明A(動作の性質):「つ」は人が意志的に行う動作(他動詞に多い)、「ぬ」は自然に起こる変化(自動詞に多い)につく。土佐日記の「くらべつる」と「夜更けぬ」はこの典型です。受身・自発の「る・らる」の下では「れぬ・られぬ」の形が多いのも、自然に起こることとして表すからだ、と説明されます(助動詞「る・らる」)。
  • 説明B(とらえ方):「つ」は動作が終わったことをきっぱり確かめる言い方、「ぬ」は新しい事態が起こった・状態が変わったことに重点がある言い方。「夜が明けぬ」は「夜が明けた(明るくなった)」という状態の変化です。
「つ」と「ぬ」の違い(よく言われる説明)つ人が意志でする動作他動詞に多い動作をやり終えた感じ例:書きつ・見つぬ自然に起こる変化自動詞に多い状態が変わった感じ例:散りぬ・なりぬ例外も多いので、あくまで目安として使う
「つ」は意志的な動作、「ぬ」は自然な変化に多い。ただし例外も多い

ただし「見つ」「見ぬ」、「泣きつ」「泣きぬ」のように同じ動詞に両方つくこともあり、どちらの説明にも合わない例があります。入試では「つ・ぬ」の使い分けそのものより、完了か強意か、そして「ぬ」の識別がねらわれます。

2. 「ぬ」の識別(完了「ぬ」と打消「ず」の連体形)

入試でもっともねらわれるのがここです。打消の助動詞「ず」の連体形も「ぬ」なので、形だけでは区別できません。決め手は上の語の活用形と下の語です。

「ぬ」の正体上の語下の語・目じるし例
完了「ぬ」の終止形連用形文末・「と」・終止形につく語(べし・らむ・めり など)「夜更けぬ」(土佐日記)
打消「ず」の連体形未然形体言・「が・を・に」・係り結びの結び(ぞ・なむ・や・か)「あらぬが」(源氏物語)、「流れもあへぬ紅葉」(百人一首32番)
ナ変動詞の語尾「死・往(去)」の一部「死ぬ」「往ぬ」で1語「秋もいぬめり」(百人一首75番)
下二段「寝(ぬ)」の終止形(1字で動詞)「寝」は「ね・ね・ぬ・ぬる・ぬれ・ねよ」「人々みな寝ぬ。」(自作)=寝た? 寝る? 文脈で
「ぬ」は、すぐ上の語の形で見分ける上の語は何形?連用形散り+ぬ未然形あら+ぬ未然=連用見え+ぬ完了「ぬ」終止形打消「ず」連体形下を見る体言・係り結びの結び→ 打消「ず」の連体形文末・「と」の前など→ 完了「ぬ」の終止形完了「ぬ」の連体形は「ぬる」。体言の前の「ぬ」は打消
上の語が連用形なら完了、未然形なら打消。同じ形なら下の語で決める

いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。

(源氏物語・桐壺)

現代語訳それほど高い身分ではない方で、とりわけ(帝の)ご寵愛を受けていらっしゃる方があった。

ここがポイント「あら」はラ変「あり」の未然形(連用形なら「あり」)。だから「ぬ」は打消「ず」の連体形で、下の「が」は「〜な人で」と人を表す格助詞です。

京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。

(伊勢物語・第九段(東下り))

現代語訳都では見かけない鳥なので、だれも見て知っている人はいない。

ここがポイント「見え」は下二段「見ゆ」で、未然形も連用形も「見え」。そこで下を見ると体言「鳥」。完了「ぬ」の連体形は「ぬる」なので、体言の前の「ぬ」は打消と決まります。

はや舟に乗れ。日も暮れぬ。

(伊勢物語・第九段(東下り))

現代語訳早く舟に乗れ。日も暮れてしまう。

ここがポイント「暮れ」も下二段で未然=連用。文末で言い切っているので完了「ぬ」の終止形(打消なら「暮れず」)。渡し守がまだ暮れきっていない日について言っているので、「きっと暮れてしまう」とこれから起きることを確かに言う、確述の働きとみる説明もあります。
百人一首89番 式子内親王の絵札
百人一首89番・式子内親王(しょくしないしんのう)の絵札。「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」。「絶えなば」の「な」と「絶えね」の「ね」は、どちらも完了「ぬ」です。画像:絵札「Hyakuninisshu 089」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

3. 「ね」「に」「な」も「ぬ」かもしれない

「ぬ」はナ変型なので、「な・に・ね」に姿を変えます。どれも連用形の下にあることが、完了「ぬ」の目じるしです。

形完了「ぬ」のときまぎらわしいもの例
ね連用形+ね(命令形)。文末で「〜てしまえ」未然形+ね=打消「ず」の已然形(「こそ〜ね」「ねば」「ねど」)「絶えね」(89番)/「人こそ見えね」(47番)
に連用形+に+き・けり・けむ・たり格助詞「に」、断定「なり」の連用形、形容動詞の語尾、ナ変の連用形「死に・往に」など「雲隠れにし」(57番)
な連用形+な+む・ば・まし・まほし禁止の「な」(終助詞)、「な〜そ」の副詞「な」、願望「なむ」の一部「絶えなば」(89番)

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする

(百人一首89番・式子内親王(玉の緒よ))

現代語訳私の命よ、絶えてしまうのなら絶えてしまえ。このまま生きながらえていると、恋を秘めて耐える心が弱ってしまうといけないから。

ここがポイント「絶え」は下二段の連用形(未然形と同じ形)。「な+ば」は「ぬ」の未然形+ばで仮定「絶えてしまうなら」。「絶えね」は文末の言い切りで命令の意味なので「ぬ」の命令形「絶えてしまえ」。

八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり

(百人一首47番・恵慶法師(八重むぐら))

現代語訳つる草が幾重にも茂っている荒れた宿のさびしいところに、人は訪ねて来ないけれど、秋だけはやって来たのだなあ。

ここがポイント「見えね」は「こそ」の結びの已然形なので、打消「ず」の已然形「ね」。「来にけり」の「来(き)」はカ変の連用形、「に」は完了「ぬ」の連用形。「ず」と「ぬ」が並ぶ識別の名歌です。「しげれる」の「る」は完了「り」の連体形です。

4. 「つ」の識別:「つつ」「つる」に注意

  • 「露にぬれつつ」(1番)、「雪は降りつつ」(4番・15番)の「つつ」は接続助詞(〜しながら・〜しては)で、「つ」ではありません。ちなみに1番の「ぬれ」も下二段「濡る」の連用形で、「ぬ」の已然形ではありません。
  • 「ほととぎす鳴きつる方を」(81番)の「つる」は「つ」の連体形(鳴いた方を)。
  • 「誓ひてし」(38番)の「て」は、接続助詞「て」ではなく「つ」の連用形。下の「し」が過去「き」の連体形なので、「つ」の連用形+き=「てし」(〜てしまった)とわかります。接続助詞の「て」の下に「き」は来ません。

5. 並ぶ順番:完了は過去より先

助動詞が重なるとき、「つ・ぬ」は過去の「き・けり」より前に来ます(てき・にき・てけり・にけり)。また推量の「む・べし」の前にも来ます(てむ・ぬべし)。「けりぬ」「きつ」のような逆の順番はありません。この順番を知っていると、「に」「て」「な」を完了と見ぬく助けになります。

サクラちゃん

サクラちゃん

「に」「な」「ね」まで「ぬ」の可能性があるなんて、見落としそう……。

合格先生

合格先生

だからこそ、まず上の語が連用形かを見るくせをつけよう。連用形の下の「な・に・ぬ・ね」は、完了「ぬ」の可能性が高い。未然形の下なら打消「ず」だよ。

うかるくん

うかるくん

上を見て、下を見る。これで「ぬ」の識別はこわくない!

よくあるまちがい

まちがい1:「ぬ」を見たら全部「打消」と思う

現代語の「知らぬ」につられて、「ぬ」をすべて打消と訳してしまう人が多いです。連用形+ぬは完了(〜てしまった)。「散りぬ」は「散らない」ではなく「散ってしまった」です。

まちがい2:「なむ」「ぬべし」の「な」「ぬ」を完了と訳す

下に推量の助動詞があるときは強意(確述)。「雨降りなむ」(自作)は「雨が降ってしまっただろう」ではなく、「きっと雨が降るだろう」です。

まちがい3:「つつ」「て」を「つ」と取りちがえる

「つつ」は接続助詞。「て」は下に「き・けり・む」などの助動詞があれば「つ」、用言につづけば接続助詞「て」です。

わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強のスレで質問できます。助動詞全体の覚え方は、記事「古文の助動詞一覧」も役に立ちます。

練習問題

やさしい

  1. 助動詞「ぬ」の活用(未然形から命令形まで)を答えなさい。また、活用の型と接続も答えなさい。
    答えと解説を見る

    な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね。ナ変型で、連用形に接続します(「つ」は て・て・つ・つる・つれ・てよ の下二段型)。

  2. 「文を書きつ。」(自作)を現代語に訳しなさい。
    答えと解説を見る

    「手紙を書いた(書いてしまった)」。「書き」は四段の連用形、「つ」は完了の終止形です。

ふつう

  1. 次の「ぬ」は、完了「ぬ」と打消「ず」のどちらか答えなさい(自作)。
    ① 花咲かぬ里 ② 花咲きぬ。 ③ 月見えぬ夜
    答えと解説を見る

    ① 未然形「咲か」の下なので打消「ず」の連体形(花の咲かない里)。② 連用形「咲き」の下で文末なので完了「ぬ」の終止形(花が咲いた)。③ 「見え」は未然形と連用形が同じ形。下が体言「夜」なので打消「ず」の連体形(完了なら「見えぬる夜」)。

  2. 「この事、人に語りつべし。」(自作)の「つべし」を説明し、訳しなさい。
    答えと解説を見る

    「つ」は下に推量の助動詞「べし」があるので強意(確述)。「この事は、きっと人に話してしまうにちがいない」(文脈によっては「きっと人に話すのがよい」)。

むずかしい

  1. 百人一首89番「玉の緒よ絶えなば絶えね」の「な」「ね」を文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「絶え」は下二段「絶ゆ」の連用形。「な」は完了「ぬ」の未然形で、「ば」がついて仮定(絶えてしまうなら)。「ね」は文末で命令の意味をもつので完了「ぬ」の命令形(絶えてしまえ)。打消「ず」の已然形「ね」なら、上に「こそ」があるか、下に「ば・ど」がつくはずです。

  2. 「人こそ見えね秋は来にけり」(百人一首47番)の「ね」と「に」を、それぞれ文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「ね」は、係助詞「こそ」の結びとなる打消「ず」の已然形(「見え」は下二段の未然形)。「こそ〜ね」のあとに文が続くので「人は来ないけれど」と逆接で訳します。「に」は、カ変「来」の連用形「き」の下で、過去「けり」に続くので完了「ぬ」の連用形(秋は来てしまったのだなあ)。

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よくある質問

助動詞「つ・ぬ」の意味は何ですか?

完了(〜た・〜てしまった)・強意(確述:きっと〜)・並列(〜たり〜たり)の3つです。基本は完了で、下に推量の助動詞がつくと強意になります。

「つ」と「ぬ」の違いは?

「つ」は人が意志的に行う動作(他動詞に多い)、「ぬ」は自然に起こる変化(自動詞に多い)につくとよく説明されます。ほかに、「つ」は動作の終わりを確かめ、「ぬ」は事態の発生・変化に重点があるという説明もあります。どちらも目安で、例外があります。

完了の「ぬ」と打消の「ず」の連体形「ぬ」はどう見分けますか?

上の語が連用形なら完了「ぬ」、未然形なら打消「ず」の連体形です。同じ形のときは下を見て、体言や係り結びの結びなら打消、文末や「と」の前なら完了です。完了「ぬ」の連体形は「ぬる」です。

「てむ」「なむ」「ぬべし」の訳し方は?

「つ・ぬ」は強意(確述)になり、「てむ・なむ」は「きっと〜だろう・きっと〜しよう」、「つべし・ぬべし」は「きっと〜にちがいない・〜てしまいそうだ」と訳します。

「つ・ぬ」の接続と活用は?

どちらも連用形に接続します。「つ」は下二段型(て・て・つ・つる・つれ・てよ)、「ぬ」はナ変型(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)です。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:土佐日記(門出)、徒然草(第五十二段)、源氏物語(桐壺)、伊勢物語(第九段)、平家物語(巻十一「那須与一」)、竹取物語、百人一首(1・4・9・13・15・21・32・36・38・40・41・45・47・57・61・63・65・73・75・81・89番)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 高校の古典文法の標準的な説明(「つ・ぬ」の意味・接続・活用、強意〈確述〉、「ぬ」の識別)にもとづいて作成。「つ」と「ぬ」の使い分けは説明が分かれるため、2つの説明を併記しました
  • 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 089」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦