古文「ぬ」の識別|完了「ぬ」と打消「ず」の見分け方・ナ変動詞・何種類か・練習問題【大学受験】

古文「ぬ」の識別|完了「ぬ」と打消「ず」の見分け方・ナ変動詞・何種類か・練習問題【大学受験】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

古文の「ぬ」は、完了「ぬ」の終止形(〜た)、打消「ず」の連体形(〜ない)、ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」の語尾が中心です。すぐ上が連用形なら完了、未然形なら打消。上が同じ形なら下を見て、体言や結びが続けば打消、文末・「と」・「べし」なら完了と見分けます。

このページのポイント

  • 「ぬ」は主に3種類:完了「ぬ」の終止形/打消「ず」の連体形/ナ変動詞の語尾
  • 上が未然形→打消(咲かぬ)、上が連用形→完了(咲きぬ)
  • 未然形=連用形の語(見え・明け など)は下を見る:体言・結び→打消、文末・と・べし→完了
  • 完了の連体形は「ぬる」。体言の前の「ぬ」は打消(句切れ・倒置の和歌は例外に注意)
  • 「ぬべし・ぬらむ」は完了(強意)、「いぬめり」はナ変、「寝る(ぬる)」は動詞

はじめて(やさしく)

現代語でも「知らぬが仏」「見知らぬ人」と言いますね。この「ぬ」は「〜ない」という意味です。ところが古文では、「花散りぬ」のように「〜た・〜てしまった」という意味の「ぬ」もよく出てきます。同じ「ぬ」なのに、意味が正反対になることがあるのです。

この2つを見分ける問題を「「ぬ」の識別」(ぬの見分け方・判別)といいます。大学入試の古文で、毎年のようにねらわれるテーマです。

古文の「ぬ」の正体は4つ咲き・散り+ぬ連用形+ぬ完了「ぬ」の終止形〜た・〜てしまった咲か・散ら+ぬ未然形+ぬ打消「ず」の連体形〜ない死・往(い)+ぬ1語の動詞ナ変動詞の語尾死ぬ・往ぬ(去ぬ)寝・衣・犬1字の動詞・名詞動詞「寝」・語の一部ぬ(寝る)・きぬ・いぬ入試の中心は、上の2つ(完了と打消)決め手は「ぬ」のすぐ上の活用形
古文の「ぬ」は4種類。中心は「完了の終止形」と「打消の連体形」の2つ
うかるくん

うかるくん

「〜ない」と「〜た」が同じ「ぬ」なんて、ずるいよ! どうやって区別するの?

合格先生

合格先生

答えは「ぬ」のすぐ上にある。完了の「ぬ」は連用形、打消の「ず」は未然形につくと決まっているんだ。だから上の語の形を見れば、ほとんど決まるよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

「咲か」なら未然形、「咲き」なら連用形……。あ、「か」と「き」で決まるんだ!

合格先生

合格先生

そのとおり。四段活用の動詞なら、上がア段なら打消、イ段なら完了。これだけで多くの問題が解けるよ。

「ぬ」のすぐ上の音を見る(四段動詞)咲か+ぬア段=未然形打消「ず」花が咲かない咲き+ぬイ段=連用形完了「ぬ」花が咲いた四段なら、ア段かイ段かで一発で決まる
「咲かぬ」は打消(咲かない)、「咲きぬ」は完了(咲いた)

まとめると、次のようになります。

  • 「花咲かぬ」(自作)→ 上の「咲か」は未然形 → 打消「ず」の連体形 →「花が咲かない」
  • 「花咲きぬ」(自作)→ 上の「咲き」は連用形 → 完了「ぬ」の終止形 →「花が咲いた」

なぜ打消は「ず」なのに「ぬ」になるのでしょう。打消の助動詞「ず」は「ず・ず・ず・ぬ・ね・○」と活用し、連体形が「ぬ」だからです。一方、完了の助動詞「ぬ」は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」と活用し、終止形が「ぬ」です。つまり「ぬ」の識別は、打消の連体形か、完了の終止形かを決める問題なのです。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「ぬ」を見たら、まずすぐ上! 未然形なら打消(〜ない)、連用形なら完了(〜た)。これが「ぬ」の識別のすべての出発点だよ。

ここまでのまとめ

  • 古文の「ぬ」には「〜ない」(打消)と「〜た」(完了)の2つがある
  • 打消は「ず」の連体形、完了は「ぬ」の終止形
  • 上が未然形→打消、上が連用形→完了
  • ほかに「死ぬ」「往ぬ」の一部や、動詞「寝(ぬ)」もある

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

「ぬ」の識別の一覧表(正体・品詞・すぐ上の形・訳)

正体品詞すぐ上の形下の目じるし訳例
完了「ぬ」の終止形助動詞連用形文末・「と」・終止形につく語(べし・らむ・めり など)〜た・〜てしまった夜更けぬ。(土佐日記)
打消「ず」の連体形助動詞未然形体言・「が・を・に・は」・係り結びの結び(ぞ・なむ・や・か)〜ないあらぬが(源氏物語)
ナ変動詞の終止形語尾動詞の一部「死」「往(去)」「死ぬ」「往ぬ」で1語死ぬ・去る秋もいぬめり(75番)
下二段「寝(ぬ)」の終止形動詞(1字で動詞)「寝」は ね・ね・ぬ・ぬる・ぬれ・ねよ寝る人みな寝ぬ。(自作)
名詞・動詞の一部——衣(きぬ)・犬(いぬ)・貫く(つらぬく)など—つらぬきとめぬ(37番)

表の上の2行が識別の中心です。完了の「ぬ」は連用形接続、打消の「ず」は未然形接続。接続のきまりがそのまま見分け方になっています。活用形の考え方は活用形のページで確かめられます。

「ぬ」の識別の手順(流れ図)

  1. 1語の一部かを見る:「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」の「ぬ」はナ変動詞の語尾。「寝(ぬ)」は1字で動詞。
  2. 上を見る:未然形なら打消、連用形なら完了。四段・ラ変・ナ変・サ変は形がちがうのですぐ決まる(書か/書き、あら/あり、死な/死に、せ/し)。
  3. 上が未然形と連用形で同じ形の語(上一段・上二段・下一段・下二段)や、漢字表記のカ変「来」なら、下を見る:体言・助詞「が・を・に・は」・係り結びの結びなら打消(連体形)、文末・「と」・終止形につく助動詞(べし・らむ・めり・なり)なら完了(終止形)。
  4. 意味で確かめる:「〜ない」と「〜た」のどちらで文脈が通るか。
上を見る→下を見る→意味で確かめる①死ぬ・往ぬ・寝 などの1語ナ変・寝②上が未然形(ア段など)打消「ず」③上が連用形(イ段など)完了「ぬ」④同じ形→下が体言・結び打消「ず」⑤同じ形→下が文末・と・べし完了「ぬ」迷ったら、訳を入れて確かめる「〜ない」で通れば打消、「〜た」で通れば完了
「ぬ」の識別は、上を見る→下を見る→意味で確かめる

上の形で決まる例

いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。

(源氏物語・桐壺)

現代語訳それほど高い身分ではない方で、とりわけ(帝の)ご寵愛を受けていらっしゃる方があった。

ここがポイント「あら」はラ変「あり」の未然形(連用形なら「あり」)。だから「ぬ」は打消「ず」の連体形。下の「が」も連体形につく助詞で、形が合っています。

ののしるうちに、夜更けぬ。

(土佐日記・門出)

現代語訳大さわぎしているうちに、夜が更けてしまった。

ここがポイント「更け」は下二段「更く」で、未然形も連用形も「更け」。そこで下を見ると、文末で言い切っています。打消なら「更けず」となるはずなので、「ぬ」は完了の終止形「更けた」です。

未然形と連用形が同じ形のとき:下を見る

入試でいちばんねらわれるのが、上の形だけでは決まらない場合です。上一段(見る・着る・似る など)、上二段(過ぐ・起く など)、下二段(見ゆ・絶ゆ・明く など)は、未然形と連用形が同じ形です。このときは下を見ます。

未然形=連用形の語は、下を見る見え+ぬ下二段「見ゆ」は未然も連用も「見え」見えぬ+鳥下が体言・結び・が・を打消「見えない」見えぬ。下が文末・と・べし完了「見えた」完了の連体形は「ぬる」→体言の前の「ぬ」は打消
同じ「見えぬ」でも、下が体言なら打消、文末なら完了

京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。

(伊勢物語・第九段(東下り))

現代語訳都では見かけない鳥なので、だれも見て知っている人はいない。

ここがポイント「見え」は下二段「見ゆ」で、未然形も連用形も「見え」。下は体言「鳥」です。完了の「ぬ」の連体形は「ぬる」なので、体言の前の「ぬ」は打消と決まります。

はや舟に乗れ。日も暮れぬ。

(伊勢物語・第九段(東下り))

現代語訳早く舟に乗れ。日も暮れてしまう。

ここがポイント「暮れ」も下二段で未然=連用。文末で言い切っているので完了「ぬ」の終止形。まだ暮れきっていない日について「きっと暮れてしまう」と言う確述(強意)の働きとみる説明もあります(助動詞「つ・ぬ」)。
百人一首37番 文屋朝康の絵札(ぬの識別 つらぬきとめぬ玉 打消)
百人一首37番・文屋朝康の絵札。「白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける」。「つらぬき」の「ぬ」は動詞の一部、「とめぬ玉」の「ぬ」は打消です。画像:絵札「Hyakuninisshu 037」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける

(百人一首37番・文屋朝康(白露に))

現代語訳白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、糸を通してとめていない玉が散っているのだなあ。

ここがポイント「とめ」は下二段「とむ」で未然=連用。下に体言「玉」が続くので、「ぬ」は打消「ず」の連体形(とめていない)。「つらぬき」の「ぬ」は動詞「貫く」の一部です。「玉ぞ散りける」は係り結び。

山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり

(百人一首32番・春道列樹(山川に))

現代語訳山の中の川に風がかけたしがらみは、流れきれずにたまっている紅葉なのだったなあ。

ここがポイント「あへ」は下二段「敢ふ」(〜しきる)で未然=連用。下に体言「紅葉」があるので打消。「流れもあへぬ」で「流れきれない」。「紅葉なりけり」の「なり」は断定です。

カ変「来」とサ変「す」:読みがなで決まる

カ変「来」は未然形「こ」、連用形「き」。漢字で書くと同じ「来ぬ」になりますが、「こぬ」なら打消(来ない)、「きぬ」なら完了(来た)です。百人一首97番「来ぬ人をまつほの浦の」は「こぬひと」で「来ない人を(待つ)」、下に体言「人」があることからも打消とわかります。サ変「す」も、未然形「せ」+ぬ=「せぬ」(しない)、連用形「し」+ぬ=「しぬ」(した)と形がちがいます。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 1首の中に「ぬ」「ね」「ぬる」:秋来ぬと

同じ文に同じ形がいくつも出てくるのは、識別問題の定番です。次の歌は、完了「ぬ」の終止形・打消「ず」の已然形・完了「ぬ」の連体形が1首にそろっています。

1首に「ぬ」「ね」「ぬる」(古今和歌集)秋来ぬとカ変の連用形「き」+「と」完了「ぬ」の終止形見えねども下に逆接の「ども」打消「ず」の已然形おどろかれぬる係助詞「ぞ」の結び完了「ぬ」の連体形「秋来ぬ」は「あききぬ」。「こぬ」なら打消
「秋来ぬと」は完了、「見えねども」は打消、「おどろかれぬる」は完了

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

(古今和歌集・秋上・藤原敏行)

現代語訳秋が来たと目にははっきりと見えないけれども、風の音で(秋が来たのだと)はっと気づかされたことだ。

ここがポイント「来ぬ」はカ変の連用形「き」+完了「ぬ」の終止形(下に引用の「と」)。「見えね」は下二段で未然=連用だが、下に逆接の「ども」があるので打消「ず」の已然形(完了なら「ぬれども」)。「ぬる」は「ぞ」の結びの完了「ぬ」の連体形。「ね」の見分け方は「ね」の識別でくわしく扱います。

2. 体言の前の「ぬ」なのに完了:句切れと倒置

「体言の前の『ぬ』は打消」は強い目じるしですが、和歌の句切れには注意が必要です。「ぬ」でいったん文が終わり、そのあとに呼びかけや倒置の体言が来ることがあります。

体言の前でも、句切れなら完了幾夜寝覚めぬ須磨の関守ここで切れる(四句切れ)呼びかけ・倒置ぬ=完了「ぬ」の終止形幾夜目を覚ましたことかくらべる:87番「露もまだ干ぬ槇の葉に」「干(ひ)」は上一段で、未然形=連用形下の体言「槇」にかかる → 打消
78番「幾夜寝覚めぬ」は四句切れの完了。87番「まだ干ぬ」は体言にかかる打消

淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守

(百人一首78番・源兼昌(淡路島))

現代語訳淡路島に通う千鳥の鳴く声に、幾晩目を覚ましたことか、須磨の関所の番人は。

ここがポイント「寝覚め」は下二段で未然=連用。下に体言「須磨の関守」が続きますが、「須磨の関守の幾夜……」と主語を後ろに回した倒置で、「ぬ」で四句切れ。「幾夜目を覚ましたことか」と訳すのが一般的で、「ぬ」は完了の終止形と説明されます。「目を覚まさない関守」では歌の意味が通りません。最後は意味で確かめる、という手順の大切さがわかる歌です。

村雨の露もまだ干ぬ槇の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ

(百人一首87番・寂蓮法師(藤原定長)「村雨の」)

現代語訳にわか雨のしずくもまだ乾かない槇の葉に、霧が立ちのぼっていく秋の夕暮れよ。

ここがポイント「干(ひ)」は上一段「干る」で、未然形も連用形も「ひ」。下の体言「槇」にかかっているので打消「乾かない」。副詞「まだ」も、打消と結びつきやすい目じるしです。

3. 下に「は・も」が来る「ぬ」と、係り結びの「ぬ」

連体形には、下に体言を補って「〜のは・〜こと」と読む準体法があります。「〜ぬは」「〜ぬも」の「ぬ」は連体形なので、打消です(完了なら「ぬるは」「ぬるも」)。

思ひわびさても命はあるものを憂きに堪へぬは涙なりけり

(百人一首82番・道因法師(思ひわび))

現代語訳(つれない人を)思い悩んで、それでも命はあるのに、つらさに堪えきれないのは涙なのだったなあ。

ここがポイント「堪へ」は下二段で未然=連用。下に係助詞「は」が来て「堪えないのは」と読むので、「ぬ」は打消の連体形(準体法)。

係助詞「ぞ・なむ・や・か」の結びの「ぬ」も連体形なので打消です。「月ぞ見えぬ。」(自作)は「月が見えない」。完了で結ぶなら「月ぞ見えぬる」(月が見えた)となります(係り結び)。逆に、文末に「ぬ」があっても、文中に「ぞ・なむ・や・か」があれば連体形の結び=打消を疑いましょう。

4. 下に終止形接続の語:「ぬべし」「ぬらむ」「ぬめり」

べし・らむ・めり・伝聞推定の「なり」・まじは終止形につきます。打消「ず」の終止形は「ず」なので、これらの上の「ぬ」は完了の終止形です(打消なら「ざるべし」「ざるらむ」と補助活用を使います)。とくに「ぬべし」は「きっと〜にちがいない」と訳す強意(確述)の代表です。

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

(百人一首45番・謙徳公(藤原伊尹)「あはれとも」)

現代語訳かわいそうだと言ってくれるはずの人は思い浮かばないで、わが身はきっとむなしく死んでしまうにちがいないことだなあ。

ここがポイント「なり」は四段「なる」の連用形。下に「べき」(べしの連体形)があるので、「ぬ」は完了(強意)の終止形。「思ほえで」の「で」は打消の接続助詞です。

ただし「ぬめり」には落とし穴があります。百人一首75番「あはれ今年の秋もいぬめり」の「いぬ」は、ナ変動詞「往ぬ(去ぬ)」の終止形で、「ぬ」は動詞の語尾です。「秋も過ぎ去ってしまうようだ」と訳します。「い+ぬ(完了)」と切らないようにしましょう。

百人一首75番 藤原基俊の絵札(いぬめり ナ変動詞 往ぬ ぬの識別)
百人一首75番・藤原基俊の絵札。「契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり」。「いぬ」はナ変動詞「往ぬ」で1語です。画像:絵札「Hyakuninisshu 075」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

5. 「ぬなり」は2通り

「ぬなり」は2通りありえます。完了「ぬ」の終止形+伝聞・推定の「なり」なら「〜てしまったようだ」、打消「ず」の連体形+断定の「なり」なら「〜ないのである」。決め手はやはり上の形で、「鳥鳴きぬなり」(自作)は完了、「人も来(こ)ぬなり」(自作)は打消です(「なり」の識別)。

6. 動詞の中の「ぬ」・まぎらわしい「ぬる」

  • 百人一首53番「嘆きつつひとり寝る夜の」の「寝る」は「ぬる」と読み、下二段「寝(ぬ)」の連体形です。完了「ぬ」の連体形「ぬる」とはちがい、これで1語の動詞です。
  • 百人一首1番「露にぬれつつ」の「ぬれ」は下二段「濡る」の連用形、72番「袖のぬれもこそすれ」の「ぬれ」は名詞です。完了「ぬ」の已然形「ぬれ」ではありません。
  • 完了「ぬ」の已然形「ぬれ」は、上が連用形で下に「ば・ど」が来る形です(「わびぬれば」20番、「明けぬれば」52番)。

7. 文末の「ぬ」がいつも完了とは限らない

平安時代の文章では、文末の「ぬ」はほとんどが完了の終止形です。ただし和歌の連体止めや、中世以後に広がった連体形で文を終える言い方では、文末の「ぬ」が打消のこともあると説明されます。「文末なら完了」は上が同じ形のときの目安で、上が未然形とはっきりわかれば打消が優先です。上一段でも同じで、『徒然草』第十三段「見ぬ世の人を友とする」は、下に体言「世」があるので打消(見たことのない昔の世の人)と読みます。

サクラちゃん

サクラちゃん

「幾夜寝覚めぬ須磨の関守」は、体言の前なのに完了なんだ! ルールだけ覚えていたら引っかかってた……。

合格先生

合格先生

だから手順の最後に「意味で確かめる」があるんだ。和歌は句切れや倒置で、ことばの並びがふつうの文とちがうことがある。上→下→意味の順を守れば大丈夫。完了の助動詞のほうは「つ・ぬ」、打消は「ず」のページで活用ごと確かめよう。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

わかった! 体言の前の「ぬ」はふつう打消。でも「ぬべし」「ぬらむ」は完了、「いぬめり」はナ変、句切れの「ぬ」は完了。上と下と意味、3回チェックだね!

助動詞全体の中での「ぬ」の位置は、記事「古文の助動詞一覧(識別の節)」や助動詞一覧でも確かめられます。同じナ変型の形が変わった「に」「な」の識別は、「に」の識別・「なむ」の識別へ。

よくあるまちがい

まちがい1:古文の「ぬ」を全部「〜ない」と訳す

現代語の「知らぬ」につられがちですが、古文では完了の「ぬ」(〜た・〜てしまった)のほうがよく出ます。上が連用形なら完了です。

まちがい2:体言の前の「ぬ」を完了と答える

完了「ぬ」の連体形は「ぬる」です。「見えぬ鳥」「あへぬ紅葉」のように体言にかかる「ぬ」は、打消「ず」の連体形です(句切れの場合を除く)。

まちがい3:「いぬめり」「死ぬべし」の「ぬ」を助動詞と切る

「往ぬ(去ぬ)」「死ぬ」はナ変動詞で、「ぬ」は語尾です。上の「い」「死」だけでは意味のある語になりません。

手順どおりに解いても迷う「ぬ」があれば、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。

練習問題

やさしい

  1. 次の2つの「ぬ」の意味のちがいを説明し、訳しなさい(自作)。
    ① 花咲かぬ。 ② 花咲きぬ。
    答えと解説を見る

    ① 「咲か」は四段の未然形なので、「ぬ」は打消「ず」の連体形(連体止めの形)。「花が咲かない」。② 「咲き」は連用形なので、「ぬ」は完了「ぬ」の終止形。「花が咲いた」。

  2. 「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに」(百人一首97番)の「ぬ」を文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「来」はカ変の未然形「こ」(こぬひと)。下に体言「人」が続くことからも、「ぬ」は打消「ず」の連体形。「来ない人を」。

ふつう

  1. 次の「ぬ」を、A 完了「ぬ」の終止形/B 打消「ず」の連体形/C ナ変動詞の語尾 に分けなさい(自作)。
    ① 月も見えぬ夜 ② 夜も明けぬ。 ③ 人々みな往ぬ。 ④ 雨降らぬ日 ⑤ 散りぬべし
    答えと解説を見る

    ① 下二段「見ゆ」は未然=連用。下に体言「夜」→B。② 下二段「明く」は未然=連用。文末で言い切り→A(夜も明けた)。③ 「往ぬ」で1語→C。④ 「降ら」は四段の未然形→B。⑤ 「散り」は連用形、下に終止形接続の「べし」→A(強意:きっと散ってしまうだろう)。

  2. 「流れもあへぬ紅葉なりけり」(百人一首32番)の「ぬ」を、どこを見て決めたかがわかるように説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「あへ」は下二段「敢ふ」で、未然形・連用形が同じ形なので、上だけでは決まらない。そこで下を見ると体言「紅葉」が続く。完了「ぬ」の連体形は「ぬる」なので、体言の前の「ぬ」は打消「ず」の連体形。訳「流れきれない紅葉」。

むずかしい

  1. 「幾夜寝覚めぬ須磨の関守」(百人一首78番)の「ぬ」は、下に体言があるのに完了と説明される。その理由を述べなさい。
    答えと解説を見る

    「寝覚め」は下二段で未然=連用なので上では決まらない。下に体言「須磨の関守」があるが、これは「須磨の関守は」と主語を後ろに置いた倒置で、歌は「ぬ」で切れる(四句切れ)。「幾夜目を覚まさない」では意味が通らず、「幾夜目を覚ましたことか」と訳せるので、「ぬ」は完了「ぬ」の終止形。

  2. 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今和歌集・藤原敏行)の「ぬ」「ね」「ぬる」をそれぞれ文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「ぬ」:カ変「来」の連用形「き」につく完了「ぬ」の終止形(下に引用の「と」。「あききぬと」と読む)。「ね」:下二段「見ゆ」の未然形につき、下に逆接の「ども」が続く打消「ず」の已然形(完了なら「ぬれども」)。「ぬる」:四段「おどろく」の未然形+自発の「る」の連用形「れ」の下につき、係助詞「ぞ」の結びとなる完了「ぬ」の連体形。

関連ページ

助動詞の識別をまとめて見たいときは、記事「古文の助動詞一覧」も役に立ちます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

古文の「ぬ」は何種類ありますか?

主に3種類です。完了の助動詞「ぬ」の終止形、打消の助動詞「ず」の連体形、ナ変動詞「死ぬ・往ぬ(去ぬ)」の語尾です。ほかに下二段動詞「寝(ぬ)」や、「衣(きぬ)」など語の一部の「ぬ」もあります。

完了の「ぬ」と打消の「ず」の連体形「ぬ」の見分け方は?

すぐ上の語の活用形を見ます。連用形なら完了、未然形なら打消です。四段動詞なら上がイ段なら完了、ア段なら打消とすぐわかります。

上の語が未然形と連用形で同じ形のときは?

下を見ます。体言、「が・を・に・は」、係助詞ぞ・なむ・や・かの結びなら打消の連体形です。文末、引用の「と」、べし・らむ・めりなど終止形につく語の前なら完了の終止形です。完了の連体形は「ぬる」なので、体言の前の「ぬ」はふつう打消です。

「ぬべし」の「ぬ」は何ですか?

完了(強意)の助動詞「ぬ」の終止形です。べしは終止形につき、打消なら「ざるべし」となるため、「ぬべし」の「ぬ」は完了と決まります。「きっと〜にちがいない」と訳します。

体言の前なのに完了になる「ぬ」はありますか?

あります。和歌で「ぬ」のところで句が切れ、後ろに呼びかけや倒置の体言が来る場合です。百人一首78番「幾夜寝覚めぬ須磨の関守」の「ぬ」は完了の終止形と説明されます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:源氏物語(桐壺)、土佐日記(門出)、伊勢物語(第九段)、古今和歌集(秋上・藤原敏行)、徒然草(第十三段)、百人一首(1・20・32・37・45・52・53・72・75・78・82・87・97番)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 高校の古典文法の標準的な説明(完了「ぬ」と打消「ず」の接続・活用、「ぬ」の識別、ナ変動詞)にもとづいて作成。78番の「ぬ」の句切れの扱い、文末の連体形の扱いなど説明が分かれうる所は、本文に「〜と説明される」と記しました
  • 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 037」「Hyakuninisshu 075」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦