- 歌
- 思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
- 意味
- つれない人のことを思い悩み、それでも命はこうして持ちこたえているのに、つらさに耐えきれずに、こぼれ落ちてしまうのは涙だったのだなあ。
- 作者
- 道因法師(どういんほうし)
- 出典
- 『千載和歌集』恋三・817番
- 決まり字
- 「おも」(2字決まり)

思ひわび さても命は あるものを
憂きに堪へぬは 涙なりけり
読みおもいわび さてもいのちは あるものを
うきにたえぬは なみだなりけり
歴史的仮名遣いおもひわび さてもいのちは あるものを
うきにたへぬは なみだなりけり
つれない人を思い悩んでも、それでも命はこうして続いているのに、つらさに耐えきれずにこぼれるのは涙だったのだなあ——歌にすべてを捧げた道因法師の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 思ひわび | おもいわび | 思い悩んで、思い嘆いて。 |
| さても | さても | それでも。そうであっても。 |
| あるものを | あるものを | 「(命は)あるのに」。「ものを」は逆接です。 |
| 憂き | うき | つらいこと。 |
| 堪へぬは | たえぬは | 「耐えられないのは」。「ぬ」は打消「ず」の連体形です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 思ひわび | 動詞・バ行上二段「思ひわぶ」連用形 | |
| さても | 副詞 | それでも |
| 命 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| ある | 動詞・ラ変「あり」連体形 | |
| ものを | 接続助詞 | 逆接 |
| 憂き | 形容詞・ク活用「憂し」連体形 | 準体法(つらいこと) |
| に | 格助詞 | |
| 堪へ | 動詞・ハ行下二段「堪ふ」未然形 | |
| ぬ | 助動詞「ず」連体形 | 打消 |
| は | 係助詞 | |
| 涙 | 名詞 | |
| なり | 助動詞「なり」連用形 | 断定 |
| けり | 助動詞「けり」終止形 | 詠嘆(気づき) |
表現技法・文法のポイント
持ちこたえている「命」と、耐えきれずにこぼれる「涙」を対比しています。
「〜だったのだなあ」と、改めて気づいた思いを表します。
「憂き」は連体形で「つらいこと」という名詞の働きをしています。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』恋三に入っています。恋の苦しさに死ぬかと思ったが、命はなんとか続いている。それなのに涙だけは、こらえきれずにあふれてしまう――命と涙を対比して、恋のつらさを表した歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
道因は、歌が上手になりたい一心で、70〜80歳を過ぎても、歌の神様として信じられていた住吉大社(大阪)まで、毎月歩いてお参りしたと伝えられます。歌会では講師のすぐそばに座り、ひと言も聞きもらすまいと耳を傾けていたそうです。
道因の死後、藤原俊成(83番)が『千載和歌集』に道因の歌を18首選んだところ、道因が夢に現れて涙を流して喜んだので、俊成はさらに2首加えて20首にした、という話が残っています。歌への情熱は、死んでも消えなかったのです。
作者:道因法師
平安時代後期の貴族・歌人・僧、道因法師(どういんほうし)です。俗名は藤原敦頼。80歳を過ぎて出家しました。歌への情熱が非常に強く、多くの歌合を主催・参加しました。
決まり字と覚え方
上の句が「おも」まで読まれたら、取り札が決まります。「お」で始まる歌は7首あります。
覚え方:「おも」と聞いたら「うきにたへぬは」。思ひ(おも)わびて憂き(うき)、と覚えます。「お」で始まる歌は7首あるので、2字目の「も」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 逆接の「ものを」
- 打消「ず」の連体形「ぬ」
- 準体法
- 気づきの「けり」
よくある質問
「さても命はあるものを」とはどういう意味ですか?
「それでも命はこうして続いているのに」という意味です。
何と何を対比していますか?
持ちこたえている「命」と、耐えきれずにこぼれる「涙」です。
道因法師はどんな人ですか?
歌への情熱で知られた歌人です。高齢になっても、歌の上達を願って住吉大社にお参りし続けたと伝えられます。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
