- 歌
- ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
- 意味
- ほととぎすが鳴いた方角を眺めると、(ほととぎすの姿はもう見えず)ただ夜明けの空に、有明の月が残っているだけだった。
- 作者
- 後徳大寺左大臣(徳大寺実定)(ごとくだいじのさだいじん(とくだいじさねさだ))
- 出典
- 『千載和歌集』夏・161番
- 決まり字
- 「ほ」(1字決まり)

ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる
読みほととぎす なきつるかたを ながむれば
ただありあけの つきぞのこれる
歴史的仮名遣いほととぎす なきつるかたを ながむれば
ただありあけの つきぞのこれる
ほととぎすが鳴いた方角を見やると、鳥の姿はもうなく、ただ夜明けの空に有明の月が残っているばかり——一字決まり「ほ」の、徳大寺実定の夏の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| ほととぎす | ほととぎす | 夏を告げる鳥。その初音(その年初めての鳴き声)を聞くために、夜通し起きて待つこともありました。 |
| 鳴きつる方 | なきつるかた | 「鳴いた方角」。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形です。 |
| 眺むれば | ながむれば | 「眺めると」。已然形+ば です。 |
| ただ | ただ | ただ〜だけ。 |
| 有明の月ぞ残れる | ありあけのつきぞのこれる | 「有明の月が残っている」。「ぞ」を受けて存続「り」の連体形「る」で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| ほととぎす | 名詞 | |
| 鳴き | 動詞・カ行四段「鳴く」連用形 | |
| つる | 助動詞「つ」連体形 | 完了 |
| 方 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| 眺むれ | 動詞・マ行下二段「眺む」已然形 | |
| ば | 接続助詞 | 確定条件 |
| ただ | 副詞 | |
| 有明 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 月 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意 |
| 残れ | 動詞・ラ行四段「残る」已然形 | |
| る | 助動詞「り」連体形 | 存続(係り結び) |
表現技法・文法のポイント
ほととぎすの声(耳)から、有明の月(目)へと感覚が移り変わる構成です。
「ぞ」を受けて存続の助動詞「り」が連体形「る」になっています。
鳥の姿が消え、月だけが残る静けさに、余韻が感じられます。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』夏の部に入っています。詞書には「暁にほととぎすを聞く」という題で詠んだとあります。平安貴族は、ほととぎすの初音を聞くために、夜明けまで起きて待つことを風流としていました。待ちに待った一声を聞いて振り向くと、鳥はもういない――その一瞬の美しさをとらえた歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
実定は『平家物語』にも登場します。平清盛が都を福原(今の神戸)に移したとき、実定は荒れ果てた旧都・京都に戻り、月を眺めて昔をしのんだという「月見」の場面が描かれています。月を愛した歌人だったのでしょう。
実定の母は藤原俊成(83番)の姉で、実定は百人一首を選んだ藤原定家(97番)のいとこにあたります。定家が親戚の歌を選んだと考えると、少し身近に感じられますね。
作者:後徳大寺左大臣(徳大寺実定)
平安時代後期から鎌倉時代初期の公卿・歌人、徳大寺実定(とくだいじさねさだ)です。左大臣まで昇りました。祖父も「徳大寺左大臣」と呼ばれたので、区別して「後徳大寺左大臣」と呼ばれます。母は藤原俊成(83番)の姉で、実定は俊成の甥、定家(97番)のいとこにあたります。
決まり字と覚え方
上の句が「ほ」まで読まれたら、取り札が決まります。「ほ」で始まる歌は1首あります。
覚え方:「ほ」と聞いたら「ただありあけの」。一字決まり「むすめふさほせ」の「ほ」です。ほととぎすはただ(ただ)有明、と覚えます。
入試で問われるポイント
- 一字決まり「ほ」
- 係り結び(ぞ→る)
- 存続の「り」
- ほととぎす(古文常識)
よくある質問
一字決まりはどれですか?
81番は「ほ」の一字決まりです。「むすめふさほせ」の「ほ」にあたります。
なぜほととぎすを待ったのですか?
ほととぎすは夏を告げる鳥で、その年最初の鳴き声(初音)を聞くことが風流とされていたからです。
「残れる」の「る」は何ですか?
存続の助動詞「り」の連体形です。「ぞ」の結びになっています。
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