- 歌
- 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ
- 意味
- (いつまでも愛すると言ってくださった)あなたの心が、末長く変わらないものかどうかもわからないので、寝乱れた私の黒髪のように、今朝は心が乱れて、あれこれと思い悩んでいることです。
- 作者
- 待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)
- 出典
- 『千載和歌集』恋三・801番
- 決まり字
- 「ながか」(3字決まり)

長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は ものをこそ思へ
読みながからん こころもしらず くろかみの
みだれてけさは ものをこそおもえ
歴史的仮名遣いながからむ こころもしらず くろかみの
みだれてけさは ものをこそおもへ
あなたの心がいつまでも変わらないかどうかもわからず、寝乱れた黒髪のように、今朝は心が乱れて思い悩んでいます——待賢門院堀河の、後朝の女性の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 長からむ心 | ながからんこころ | 「末長く変わらないだろう心」。相手の男性の心です。「長し」は黒髪の縁語でもあります。 |
| 知らず | しらず | わからない。 |
| 黒髪の | くろかみの | 「黒髪のように」。下の「乱れて」を導いています。 |
| 乱れて | みだれて | 「(黒髪が)乱れて」と「(心が)乱れて」の両方を表します。 |
| ものをこそ思へ | ものをこそおもえ | 「思い悩むことだ」。「こそ」を受けて「思へ」が已然形で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 長から | 形容詞・ク活用「長し」未然形 | |
| む | 助動詞「む」連体形 | 推量(婉曲) |
| 心 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| 知ら | 動詞・ラ行四段「知る」未然形 | |
| ず | 助動詞「ず」連用形 | 打消 |
| 黒髪 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 比喩 |
| 乱れ | 動詞・ラ行下二段「乱る」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| 今朝 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| もの | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| こそ | 係助詞 | 強意 |
| 思へ | 動詞・ハ行四段「思ふ」已然形 | 係り結び |
表現技法・文法のポイント
「長から」「黒髪」「乱れ」は、髪に関係する言葉でつながっています。
寝乱れた黒髪の様子で、乱れた心を表しています。
「こそ」を受けて「思へ」が已然形になっています。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』恋三に入っています。崇徳院の『久安百首』の中の一首で、恋人が帰ったあとの朝(後朝)の女性の気持ちを詠んでいます。平安時代、長い黒髪は女性の美しさの象徴でした。その黒髪の乱れに、相手の心変わりを恐れる心の乱れを重ねた、艶やかな歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
堀河は、のちに西行法師(86番)となる佐藤義清と親しく、歌を交わしていました。西行が出家するとき、堀河のいる待賢門院の御所にも思いを残していたのではないか、と想像する人もいます。
堀河が仕えた待賢門院は、崇徳院の母です。息子の崇徳院が父の鳥羽上皇に疎まれ、悲しい運命をたどる中、堀河は女院のそばで何を見ていたのでしょうか。
作者:待賢門院堀河
平安時代後期の女性歌人です。崇徳院(77番)の母・待賢門院(藤原璋子)に仕えたので「待賢門院堀河」と呼ばれます。神祇伯・源顕仲の娘で、西行(86番)とも歌を交わしました。中古六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「ながか」まで読まれたら、取り札が決まります。「な」で始まる歌は8首あります。
覚え方:「ながか」と聞いたら「みだれてけさは」。長か(ながか)らむ髪が乱れて(みだれて)、と覚えます。84番「ながら」と3字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- 縁語(長し・黒髪・乱れ)
- 係り結び(こそ→思へ)
- 後朝の歌(古文常識)
- 婉曲の「む」
よくある質問
「黒髪の乱れて」は何を表していますか?
寝乱れた黒髪の様子と、相手の心変わりを心配して乱れる自分の心の両方を表しています。
待賢門院とは誰ですか?
鳥羽天皇の中宮・藤原璋子のことで、崇徳院の母です。
84番「ながら」との見分け方は?
80番は「長からむ」、84番は「ながらへば」です。3字目の「か」と「ら」で決まります。
あわせて読みたい
- 77番「瀬をはやみ」(崇徳院・恋)
- 86番「嘆けとて」(西行法師・恋)
- 84番「ながらへば」(藤原清輔朝臣・雑)
- 9番「花の色は」(小野小町・春)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
