- 歌
- 花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
- 意味
- 桜の花の色は、むなしく色あせてしまったなあ。長雨が降り続いていた間に。——そして私の容姿も、すっかり衰えてしまった。この世を過ごしながら、ぼんやりと物思いにふけっていた間に。
- 作者
- 小野小町(おののこまち)
- 出典
- 『古今和歌集』春下・113番
- 決まり字
- 「はなの」(3字決まり)

花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
読みはなのいろは うつりにけりな いたずらに
わがみよにふる ながめせしまに
歴史的仮名遣いはなのいろは うつりにけりな いたづらに
わがみよにふる ながめせしまに
桜の色が長雨の間にあせてしまったように、私の美しさも物思いをしているうちに衰えてしまった——二つの掛詞で花と自分を重ねた、小野小町の代表歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 花の色 | はなのいろ | 桜の花の色。作者自身の美しい容姿のたとえでもあります。 |
| 移りにけりな | うつりにけりな | 「色あせてしまったなあ」。「に」は完了、「けり」は詠嘆、「な」は詠嘆の終助詞。 |
| いたづらに | いたずらに | むなしく。何のかいもなく。 |
| 世にふる | よにふる | 「ふる」は「経る(年月を過ごす)」と「降る(雨が降る)」の掛詞です。 |
| ながめ | ながめ | 「長雨」と「眺め(物思いにふけること)」の掛詞です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 花 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 色 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 移り | 動詞・ラ行四段「移る」連用形 | |
| に | 助動詞「ぬ」連用形 | 完了 |
| けり | 助動詞「けり」終止形 | 詠嘆 |
| な | 終助詞 | 詠嘆 |
| いたづらに | 形容動詞・ナリ活用「いたづらなり」連用形 | |
| わ | 代名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 身 | 名詞 | |
| 世 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| ふる | 動詞「経(ふ)」連体形/「降る」連体形 | 掛詞 |
| ながめ | 名詞 | 掛詞(長雨/眺め) |
| せ | 動詞・サ変「す」未然形 | |
| し | 助動詞「き」連体形 | 過去 |
| 間 | 名詞 | |
| に | 格助詞 |
表現技法・文法のポイント
「ふる(降る/経る)」と「ながめ(長雨/眺め)」。自然の景色と自分の心を一度に表しています。
「いたづらに」以下が、上の「移りにけりな」を修飾しています。
「移りにけりな」で切れます。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』春下の歌です。散りゆく桜と、移ろう自分の姿を重ねた歌として、古くから名歌とされてきました。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
小野小町には、深草少将(ふかくさのしょうしょう)という男性に「百夜(ももよ)通ってくれたら思いを受け入れる」と告げ、少将が九十九夜目に倒れてしまったという有名な伝説があります。美しさと、その後の孤独を描くこうした物語は、能や歌舞伎の題材にもなりました。
この歌は、自分の美しさの衰えを嘆いた歌として読むのが一般的です。一方で、恋や人生のままならなさ全体を、散る花に重ねたという読み方もあります。若い今だからこそ、「時間は戻らない」という歌の重みを感じてみてください。
作者:小野小町
平安時代前期(9世紀ごろ)の女性歌人です。六歌仙、三十六歌仙の一人で、六歌仙ではただ一人の女性です。絶世の美女として多くの伝説が生まれましたが、確かな経歴はほとんどわかっていません。
決まり字と覚え方
上の句が「はなの」まで読まれたら、取り札が決まります。「は」で始まる歌は4首あります。
覚え方:「はなの」と聞いたら「わがみよ」。花(はな)のような我が身(わがみ)、と覚えます。「はな」で始まる96番「はなさ」と区別するため、3字目の「の」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 掛詞2つ(ふる・ながめ)
- 「にけりな」の分解(完了+詠嘆+詠嘆)
- 倒置法
よくある質問
この歌の掛詞はいくつありますか?
二つです。「ふる(降る/経る)」と「ながめ(長雨/眺め)」です。
「花の色」は何を表していますか?
表向きは桜の花の色ですが、作者自身の若さや美しさのたとえでもあります。
小野小町はどんな人ですか?
平安時代前期の女性歌人で、六歌仙ただ一人の女性です。美女として多くの伝説がありますが、経歴はよくわかっていません。
あわせて読みたい
- 8番「わが庵は」(喜撰法師・雑)
- 96番「花さそふ」(入道前太政大臣・雑)
- 17番「ちはやぶる」(在原業平朝臣・秋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
