- 歌
- わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
- 意味
- 私の庵は都の東南にあって、このように(心静かに)住んでいる。それなのに世間の人は、私が世の中をつらいと思って逃れ住んでいる宇治山だと言っているようだ。
- 作者
- 喜撰法師(きせんほうし)
- 出典
- 『古今和歌集』雑下・983番
- 決まり字
- 「わがい」(3字決まり)

わが庵は 都のたつみ しかぞ住む
世をうぢ山と 人はいふなり
読みわがいおは みやこのたつみ しかぞすむ
よをうじやまと ひとはいうなり
歴史的仮名遣いわがいほは みやこのたつみ しかぞすむ
よをうぢやまと ひとはいふなり
私の庵は都の東南にあって心静かに暮らしているのに、世間の人は「世をつらがって宇治山に住んでいる」と言っているらしい——掛詞が見どころの喜撰法師の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 庵 | いお | 僧などが住む、粗末で小さな家。 |
| たつみ | たつみ | 辰巳。方角で東南のこと。 |
| しかぞ住む | しかぞすむ | 「このように住んでいる」。「しか」は「そのように・このように」。「鹿」を掛けているとする説もあります。 |
| 世をうぢ山 | よをうじやま | 「世を憂し(世の中がつらい)」と地名「宇治山」の掛詞です。 |
| いふなり | いうなり | 「言っているようだ」。「なり」は伝聞・推定の助動詞です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| わ | 代名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 庵 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 都 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| たつみ | 名詞 | |
| しか | 副詞 | このように |
| ぞ | 係助詞 | 強意 |
| 住む | 動詞・マ行四段「住む」連体形 | 係り結び |
| 世 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| うぢ山 | 名詞 | 掛詞(憂し/宇治山) |
| と | 格助詞 | |
| 人 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| いふ | 動詞・ハ行四段「いふ」終止形 | |
| なり | 助動詞「なり」終止形 | 伝聞・推定 |
表現技法・文法のポイント
「うぢ山」に「憂し」と「宇治山」を掛けています。
終止形「いふ」に付いているので伝聞・推定。「言っているそうだ」。
「しかぞ住む」でいったん意味が切れます。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』の雑の部に入っています。喜撰法師の確かな作とされる歌はほとんど残っておらず、この歌がその代表です。世を捨てたことを嘆くのではなく、心穏やかに暮らしているというユーモアのある歌として読まれます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
「しかぞ住む」の「しか」は「このように」という意味ですが、宇治の山に「鹿」と一緒に住んでいる、という意味を重ねて読む説もあります。山の庵で鹿とのんびり暮らす僧の姿を思い浮かべると、ユーモラスな歌に見えてきます。
宇治には「喜撰山」と呼ばれる山があり、喜撰法師が住んだ場所だと伝えられています。わずか一首の歌で、山の名前にまでなった歌人だと考えると、ロマンがあります。
作者:喜撰法師
平安時代前期の僧侶で、六歌仙の一人です。生まれた年も亡くなった年もわからず、経歴もほとんど伝わっていません。
決まり字と覚え方
上の句が「わがい」まで読まれたら、取り札が決まります。「わ」で始まる歌は7首あります。
覚え方:「わがい」と聞いたら「よをう」。わが家(わがい)で世を憂(よをう)う、と覚えます。「わが」で始まる歌は他にもあるので、3字目の「い」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 掛詞(憂し/宇治山)
- 「なり」の識別(終止形+なり=伝聞・推定)
- 係り結び(ぞ→住む)
よくある質問
「たつみ」とはどの方角ですか?
東南です。十二支で方角を表すと、辰(たつ)と巳(み)の間が東南になります。
この歌の掛詞はどこですか?
「うぢ山」です。「世を憂し」の「う」と、地名の「宇治山」を掛けています。
「いふなり」の「なり」は断定ですか?
終止形「いふ」に付いているので、断定ではなく伝聞・推定で「言っているそうだ」という意味です。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
