- 歌
- 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
- 意味
- 大空をはるかに仰ぎ見ると、(いま見ている月は)故郷の春日にある三笠山に昇っていた、あの月と同じ月なのだなあ。
- 作者
- 阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)
- 出典
- 『古今和歌集』羇旅・406番
- 決まり字
- 「あまの」(3字決まり)

天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
読みあまのはら ふりさけみれば かすがなる
みかさのやまに いでしつきかも
歴史的仮名遣いあまのはら ふりさけみれば かすがなる
みかさのやまに いでしつきかも
唐の国で大空を仰ぐと、故郷・奈良の三笠山に出ていたのと同じ月が見える——遣唐留学生だった阿倍仲麻呂が、帰国を前に詠んだと伝えられる望郷の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 天の原 | あまのはら | 広々とした大空。 |
| ふりさけ見れば | ふりさけみれば | 「ふりさけ見る」は、遠くをはるかに仰ぎ見ること。 |
| 春日なる | かすがなる | 「春日にある」。「なる」は存在を表す助動詞「なり」の連体形です。 |
| 三笠の山 | みかさのやま | 奈良市の春日大社の背後にある山(御蓋山)。 |
| 出でし月かも | いでしつきかも | 「(あのとき)出た月なのだなあ」。「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「かも」は詠嘆です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 天の原 | 名詞 | |
| ふりさけ見れ | 動詞・マ行上一段「ふりさけ見る」已然形 | |
| ば | 接続助詞 | 確定条件 |
| 春日 | 名詞 | |
| なる | 助動詞「なり」連体形 | 存在 |
| 三笠 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 山 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 出で | 動詞・ダ行下二段「出づ」連用形 | |
| し | 助動詞「き」連体形 | 過去 |
| 月 | 名詞 | |
| かも | 終助詞 | 詠嘆 |
表現技法・文法のポイント
「春日なる」は「春日にある」。断定ではなく存在の意味です。入試頻出。
「出でし」の「し」で、若いころ故郷で見た月を思い出していることがわかります。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』の羇旅(旅)の部に入っています。仲麻呂が唐から帰国することになり、送別の宴で月を見て詠んだと伝えられます。しかし帰りの船は難破し、仲麻呂は日本に戻れないまま唐で一生を終えました。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
平安時代の終わりごろに作られた絵巻『吉備大臣入唐絵巻(きびだいじんにっとうえまき)』には、唐で亡くなった阿倍仲麻呂が鬼となって現れ、遣唐使の吉備真備を助けたという物語が描かれています。もちろん伝説ですが、日本に帰れなかった仲麻呂を、人々がどれほど気にかけていたかが伝わってきます。
この歌は、唐の海辺で帰国の船を待ちながら月を見て詠んだと伝えられます。故郷を出てから三十年以上。若いころ奈良で見た三笠山の月と、目の前の月が重なった瞬間を想像してみてください。
作者:阿倍仲麻呂
奈良時代の人で、遣唐留学生として若くして唐に渡りました。唐の役人として皇帝に仕え、詩人の李白や王維とも交流がありました。帰国はかなわず、770年に唐で亡くなりました。
決まり字と覚え方
上の句が「あまの」まで読まれたら、取り札が決まります。「あ」で始まる歌は16首あります。
覚え方:「あまの」と聞いたら「みかさ」。天(あま)に三日月(みか)と、月の歌で覚えます。「あまの」は12番「あまつ」と3字目で分かれるので注意します。
入試で問われるポイント
- 「なる」=存在の助動詞「なり」
- 「し」=過去の助動詞「き」連体形
- 作者が遣唐留学生であること(背景知識)
よくある質問
この歌はどこで詠まれたのですか?
唐(今の中国)で、帰国の送別の宴の席で詠まれたと伝えられています。
阿倍仲麻呂は日本に帰れたのですか?
帰りの船が難破したため帰国できず、唐で亡くなりました。
「春日なる」の「なる」は断定ですか?
場所を表す語に付いているので、存在の「なり」で「春日にある」という意味です。
あわせて読みたい
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
