- 歌
- かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
- 意味
- かささぎが翼を連ねて(天の川に)渡したという橋——(その橋に見立てた宮中の階段)——に降りた霜が真っ白なのを見ると、夜もすっかり更けたのだなあ。
- 作者
- 中納言家持(大伴家持)(ちゅうなごんやかもち(おおとものやかもち))
- 出典
- 『新古今和歌集』冬・620番
- 決まり字
- 「かさ」(2字決まり)

かささぎの 渡せる橋に 置く霜の
白きを見れば 夜ぞ更けにける
読みかささぎの わたせるはしに おくしもの
しろきをみれば よぞふけにける
歴史的仮名遣いかさゝぎの わたせるはしに おくしもの
しろきをみれば よぞふけにける
かささぎが渡したという橋に降りた霜の白さを見ると、夜がすっかり更けたと感じる——七夕伝説を踏まえた、冬の夜の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| かささぎ | かささぎ | カラスの仲間の鳥。七夕の夜、翼を連ねて天の川に橋をかけ、織姫を彦星のもとへ渡すという中国の伝説があります。 |
| 渡せる橋 | わたせるはし | 「渡した橋」。「る」は存続の助動詞「り」の連体形です。 |
| 置く霜 | おくしも | 降りた霜。霜は「置く」と言います。 |
| 夜ぞ更けにける | よぞふけにける | 「ぞ」を受けて「ける」が連体形で結ぶ係り結び。「夜がすっかり更けたことだ」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| かささぎ | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| 渡せ | 動詞・サ行四段「渡す」已然形(命令形とする説も) | |
| る | 助動詞「り」連体形 | 存続・完了 |
| 橋 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 置く | 動詞・カ行四段「置く」連体形 | |
| 霜 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| 白き | 形容詞・ク活用「白し」連体形 | 準体法「白いの」 |
| を | 格助詞 | |
| 見れ | 動詞・マ行上一段「見る」已然形 | |
| ば | 接続助詞 | 確定条件 |
| 夜 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意 |
| 更け | 動詞・カ行下二段「更く」連用形 | |
| に | 助動詞「ぬ」連用形 | 完了 |
| ける | 助動詞「けり」連体形 | 詠嘆(係り結び) |
表現技法・文法のポイント
宮中の階段を「かささぎの橋」に見立てたとする説と、冬の夜空にさえる星を霜に見立てたとする説があります。
「ぞ」を受けて「ける」が連体形になっています。
歌の背景・鑑賞
『新古今和歌集』の冬の部に、中納言家持の歌として載っています。ただし『万葉集』には見えない歌で、家持が本当に作ったかどうかは疑問とする説もあります。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
「かささぎの橋」を、七夕の天の川にかかる橋そのものと見る説と、宮中の階段をその橋に見立てたとする説があります。夜空いっぱいに霜のように星がまたたく冬の夜――そう読むと、地上の霜と天の星が重なる、スケールの大きな歌になります。
この歌は『万葉集』には見えず、家持の作とする確かな証拠はないとも言われます。それでも、『万葉集』をまとめた大歌人・家持の名で伝えられたことで、多くの人に親しまれてきました。
作者:中納言家持(大伴家持)
奈良時代の貴族・歌人、大伴家持(おおとものやかもち)です。大伴旅人の子で、中納言まで昇りました。『万葉集』に最も多くの歌を残し、その編集に深く関わったと考えられています。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「かさ」まで読まれたら、取り札が決まります。「か」で始まる歌は4首あります。
覚え方:「かさ」と聞いたら「しろき」。笠(かさ)が霜で白(しろ)い、と覚えます。
入試で問われるポイント
- 存続の助動詞「り」(渡せる)
- 係り結び(ぞ→ける)
- 見立ての二説
よくある質問
「かささぎの橋」とは何ですか?
七夕の夜、かささぎが翼を連ねて天の川にかけるという伝説の橋です。この歌では、宮中の階段をその橋に見立てたとする説がよく知られています。
「渡せる」の「る」は何ですか?
存続の助動詞「り」の連体形です。「渡してある(渡した)」という意味になります。
この歌は七夕の歌ですか?
七夕伝説を踏まえていますが、霜を詠んでいるので冬の歌として『新古今和歌集』の冬の部に入っています。
あわせて読みたい
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
