- 歌
- 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
- 意味
- 嵐が桜の花を誘って散らし、庭はまるで雪が降ったようだが、その雪ではなくて、本当に古りゆく(年老いていく)ものは、わが身であったのだなあ。
- 作者
- 入道前太政大臣(西園寺公経)(にゅうどうさきのだいじょうだいじん(さいおんじきんつね))
- 出典
- 『新勅撰和歌集』雑一・1052番
- 決まり字
- 「はなさ」(3字決まり)

花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり
読みはなさそう あらしのにわの ゆきならで
ふりゆくものは わがみなりけり
歴史的仮名遣いはなさそふ あらしのにはの ゆきならで
ふりゆくものは わがみなりけり
嵐が花を誘って散らす庭は雪のようだが、その雪ではなく、本当に古りゆくのは私自身だったのだなあ——栄華をきわめた西園寺公経が、老いを詠んだ歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 花さそふ | はなさそう | 「桜の花を誘って散らす」。嵐を人のように表しています。 |
| 嵐の庭の雪 | あらしのにわのゆき | 嵐に散らされて庭に降りしいた桜の花びらを、雪に見立てています。 |
| ならで | ならで | 「〜ではなくて」。 |
| ふりゆく | ふりゆく | 「(雪が)降りゆく」と「(年老いて)古りゆく」の掛詞です。 |
| わが身なりけり | わがみなりけり | 「わが身であったのだなあ」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 花 | 名詞 | |
| さそふ | 動詞・ハ行四段「さそふ」連体形 | |
| 嵐 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 庭 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 雪 | 名詞 | |
| なら | 助動詞「なり」未然形 | 断定 |
| で | 接続助詞 | 打消接続 |
| ふりゆく | 動詞・カ行四段「ふりゆく」連体形 | 掛詞(降り/古り) |
| もの | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| わ | 代名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 身 | 名詞 | |
| なり | 助動詞「なり」連用形 | 断定 |
| けり | 助動詞「けり」終止形 | 詠嘆(気づき) |
表現技法・文法のポイント
散った桜の花びらを、庭に積もる雪に見立てています。
「ふりゆく」に「降りゆく(雪)」と「古りゆく(老いる)」を掛けています。
嵐が花を「誘う」と、人のように描いています。
歌の背景・鑑賞
『新勅撰和歌集』雑一に入っています。散る桜を見ながら、自分の老いに気づいた歌です。9番の小野小町が「花の色は移りにけりな」と詠んだように、散る花と移ろうわが身を重ねる発想は、和歌の大切なテーマでした。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
公経が京都の北山に建てた豪華な別荘「西園寺」は、のちに室町幕府3代将軍・足利義満の手に渡り、金閣寺(鹿苑寺)になりました。百人一首の歌人の別荘が、今では世界遺産になっているのです。
公経は鎌倉幕府と強く結びついていたため、承久の乱のときには後鳥羽院に捕らえられましたが、幕府の勝利によって一気に権力をにぎりました。栄華をきわめた人が「古りゆくものはわが身なりけり」と老いを嘆く――そこに人生の深い味わいがあります。
作者:入道前太政大臣(西園寺公経)
平安時代末期から鎌倉時代前期の公卿・歌人、西園寺公経(さいおんじきんつね)です。太政大臣まで昇り、鎌倉幕府と強く結びついて大きな権力をにぎりました。京都の北山に建てた別荘「西園寺」は、のちに足利義満の金閣寺のもとになりました。姉が藤原定家(97番)の妻で、定家は義理の兄にあたります。
決まり字と覚え方
上の句が「はなさ」まで読まれたら、取り札が決まります。「は」で始まる歌は4首あります。
覚え方:「はなさ」と聞いたら「ふりゆくものは」。花さそふ(はなさ)嵐で降り(ふり)ゆく、と覚えます。9番「はなの」と3字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- 掛詞(降りゆく/古りゆく)
- 見立て(花→雪)
- 打消接続「で」(ならで)
- 9番小野小町との比較
よくある質問
「ふりゆく」の掛詞とは?
「降りゆく(花が雪のように降る)」と「古りゆく(年老いていく)」を掛けています。
何を雪に見立てていますか?
嵐で散らされて庭に降りしいた桜の花びらを、雪に見立てています。
西園寺公経はどんな人ですか?
太政大臣まで昇った権力者です。彼の別荘が、のちに金閣寺のもとになりました。藤原定家の義理の弟です。
あわせて読みたい
- 97番「来ぬ人を」(権中納言定家・恋)
- 9番「花の色は」(小野小町・春)
- 33番「久方の」(紀友則・春)
- 61番「いにしへの」(伊勢大輔・春)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
