【百人一首95番】おほけなく憂き世の民におほふかな|意味・現代語訳・品詞分解(前大僧正慈円)

【百人一首95番】おほけなく憂き世の民におほふかな|意味・現代語訳・品詞分解(前大僧正慈円)
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この歌の要点
歌
おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染めの袖
意味
身のほど知らずではありますが、このつらい世に生きる人々の上に、(仏のご加護があるように)おおいかけることだ。比叡山に住み始めた私の、この墨染めの袖を。
作者
前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)
出典
『千載和歌集』雑中・1134番
決まり字
「おほけ」(3字決まり)
百人一首95番 前大僧正慈円の絵札
前大僧正慈円(江戸時代のかるた)

おほけなく 憂き世の民に おほふかな

わが立つ杣に 墨染めの袖

読みおおけなく うきよのたみに おおうかな
わがたつそまに すみぞめのそで

歴史的仮名遣いおほけなく うきよのたみに おほふかな
わがたつそまに すみぞめのそで

身のほど知らずだけれど、つらい世に生きる人々の上に、比叡山に住む私の墨染めの袖をおおいかけて、仏の力で守りたい——『愚管抄』を書いた慈円の、決意の歌です。

現代語訳(意味)

身のほど知らずではありますが、このつらい世に生きる人々の上に、(仏のご加護があるように)おおいかけることだ。比叡山に住み始めた私の、この墨染めの袖を。

語句の意味

語句読み意味・ポイント
おほけなくおおけなく身のほど知らずに、おそれ多くも。
憂き世の民うきよのたみつらい世の中に生きる人々。
おほふかなおおうかな「おおうことだなあ」。仏法の力で人々を守ることを表しています。
わが立つ杣わがたつそま「私が住む山」、つまり比叡山のこと。比叡山を開いた最澄の歌の言葉をふまえています。
墨染めの袖すみぞめのそで僧の着る黒い衣の袖。「住み初め(住みはじめ)」を掛けています。

品詞分解

歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。

単語品詞・活用意味・用法
おほけなく形容詞・ク活用「おほけなし」連用形
憂き形容詞・ク活用「憂し」連体形
世名詞
の格助詞
民名詞
に格助詞
おほふ動詞・ハ行四段「おほふ」終止形
かな終助詞詠嘆(三句切れ)
わ代名詞
が格助詞
立つ動詞・タ行四段「立つ」連体形
杣名詞比叡山
に格助詞
墨染め名詞掛詞(墨染め/住み初め)
の格助詞
袖名詞体言止め

表現技法・文法のポイント

倒置

「墨染めの袖を憂き世の民におほふ」の順を入れかえ、決意を強めています。

掛詞

「墨染め」に「住み初め(住みはじめる)」を掛けています。

本歌(最澄の歌)

比叡山を開いた伝教大師最澄の歌「阿耨多羅三藐三菩提の仏たち我が立つ杣に冥加あらせたまへ」の言葉をふまえています。

歌の背景・鑑賞

『千載和歌集』雑中に入っています。作者が若いころ、比叡山の僧として、乱れた世の中の人々を仏の力で救いたいという決意を詠んだ歌です。源平の争乱で多くの人が苦しんだ時代の、宗教者としての使命感がこもっています。

諸説・伝説――想像をふくらませてみよう

昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。

日本で最初の歴史哲学書

慈円が書いた『愚管抄』は、日本の歴史を「道理」という考え方で説明しようとした書物で、日本で最初の歴史哲学書ともいわれます。武士の時代へと移り変わる激動の世の中を、僧侶の目で見つめたのです。

後鳥羽院をいさめた

慈円は後鳥羽院(99番)と親しく、歌の仲間でもありましたが、鎌倉幕府と争うことには反対し、『愚管抄』でもそれをいさめようとしたといわれます。しかし院は承久の乱を起こしてしまいました。

作者:前大僧正慈円

平安時代末期から鎌倉時代初期の天台宗の僧侶・歌人、慈円(じえん)です。76番の藤原忠通の子で、関白・九条兼実の弟、91番の九条良経の叔父にあたります。天台宗の最高位である天台座主を4度務めました。日本の歴史を独自の考えでまとめた歴史書『愚管抄(ぐかんしょう)』の作者です。

決まり字と覚え方

百人一首95番の取り札(下の句)
取り札
おほけ3字決まり

上の句が「おほけ」まで読まれたら、取り札が決まります。「お」で始まる歌は7首あります。

覚え方:「おほけ」と聞いたら「わがたつそまに」。大きな(おほけ)決意でわが立つ(わがたつ)、と覚えます。60番「おほえ」と3字目で分かれます。

入試で問われるポイント

  • 倒置・掛詞(墨染め/住み初め)
  • 最澄の歌をふまえた表現
  • 作者(『愚管抄』)=文学史・日本史

よくある質問

「わが立つ杣」とはどこですか?

比叡山のことです。比叡山を開いた最澄の歌の言葉をふまえています。

「墨染めの袖」の掛詞は?

「墨染め(僧の黒い衣)」と「住み初め(住みはじめる)」を掛けています。

慈円はどんな人ですか?

76番藤原忠通の子で、天台座主を4度務めた僧侶です。歴史書『愚管抄』を書きました。

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画像:絵札「Hyakuninisshu 095」(パブリックドメイン)、取り札「Torifuda 095」(Cookai1205・CC0)/いずれも Wikimedia Commons。歌の本文・出典は『千載和歌集』ほか複数の資料で確認しています。
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04