蓋棺事定まる(がいかんじさだまる)の意味と由来|杜甫の詩の原文・書き下し文・現代語訳、「棺を蓋いて事定まる」の使い方をイラストで【故事成語】

蓋棺事定まる(がいかんじさだまる)の意味と由来|杜甫の詩の原文・書き下し文・現代語訳、「棺を蓋いて事定まる」の使い方をイラストで【故事成語】

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蓋棺事定まるがいかんじさだまる

ひとことで言うと

人の値うちや評価は、死んで棺のふたをしたあとで、はじめて定まる。だから生きているうちは、人を(自分を)決めつけてはいけない。

読み方がいかんじさだまる(がいかんことさだまる とも)。訓読は「棺(かん)を蓋(おお)いて事(こと)定(さだ)まる」
意味人の評価は、その人が死んで棺のふたをしたあとで、はじめて定まるということ。
出典杜甫の詩「君不見簡蘇徯」の「丈夫蓋棺事始定」。晋の劉毅の言葉(「丈夫蓋棺事方定」)とする説もある
お話唐の杜甫が、山の中でしおれている若い蘇徯に詩を送り、「人の値うちは棺のふたをして決まる。君はまだ年寄りではない」とはげました
別の形棺を蓋いて事定まる・蓋棺論定(中国語)
似た言葉虎は死して皮を留め人は死して名を残す・大器晩成(たいきばんせい)
反対の考え方一喜一憂(いっきいちゆう)・決めつけ
漢文の句法再読文字(未だ〜ず)・反語(何ぞ〜ん)・不可能(べからず)

このページのポイント

  • 「蓋棺事定まる」は、人の評価は死んで棺のふたをしてはじめて定まること。「棺を蓋いて事定まる」とも言う
  • よく知られるもとは、杜甫が若い蘇徯をはげました詩「君不見簡蘇徯」。晋の劉毅の言葉とする説もある(諸説あり)
  • 「死んだら終わり」ではなく「まだ決まっていない」というはげましの言葉。原文の再読文字・反語・入試の出方まで分かります

「蓋棺事定まる」の意味と読み方

「蓋棺事定まる」はがいかんじさだまると読みます。「がいかんことさだまる」と読む本もあり、訓読して「棺(かん)を蓋(おお)いて事(こと)定(さだ)まる」の形でも使われます。意味は「人の値うちや評価は、その人が死んで棺のふたをしたあとで、はじめて定まる」です。

言葉を分けてみましょう。「蓋棺(がいかん)」は「棺(ひつぎ)にふたをする」こと、つまり人が一生を終えることです。「事定まる」は「物事(その人の評価)が決まる」こと。合わせて、「一生を終えてはじめて、その人の評価が決まる」という意味になります。生きているうちは、よいことも悪いこともまだ起こりうるので、人の評価を途中で決めつけてはいけない、という教えがこめられています。

評価は「棺のふた」を閉じて定まる生きている間評価は上がったり下がったり棺を蓋う(人生が終わる)評価が定まるだから…生きているうちは、評価はまだ決まらない今うまくいかなくても、これから変えられる(杜甫が若い蘇徯をはげました気持ち)
生きている間の評価はゆれ動く。棺のふたを閉じてはじめて、その人の評価が定まる
うかるくん

うかるくん

「棺」って、亡くなった人を入れる「ひつぎ」のことですよね。ちょっとこわい言葉に聞こえます…。

ミスターT先生

ミスターT先生

たしかに死にかかわる言葉だね。でも、もとの詩ではまったく逆の使われ方をしているんだ。唐の杜甫が、山の中でしょんぼりしている若者に「人の値うちは最後まで決まらない。君はまだ若いんだから、今くじけることはない」とはげますために使った。はげましの言葉なんだよ。

今の日本語では、人の功績や生き方について、「本当の評価は、その人の一生が終わってから決まる」と言うときに使います。また、「今の失敗や成功だけで、人を決めつけてはいけない」という戒めとしても使われます。

  • ○蓋棺事定まるというように、あの政治家の功績の本当の評価はこれからだ。
  • ○「棺を蓋いて事定まる。一度の失敗で、自分の人生をあきらめるな」と先生は言った。
  • ○生前はほとんど知られなかった画家が、今は世界中で愛されている。まさに蓋棺事定まるだ。

「蓋」は「蓋」の読み方・書き順・部首、「棺」は「棺」の読み方・書き順・部首、「定」は「定」の読み方・書き順・部首で読み方と書き順を確かめられます。「蓋」は、ふたの意味の「蓋(ふた)」、「おおう」の意味の「蓋(おお)う」、そして漢文では文のはじめに置いて「蓋(けだ)し(思うに)」と読む、読み方の多い字です。

絵で読む「蓋棺事定まる」のお話

この言葉がよく知られるもとになったのは、唐の時代の詩人・杜甫(とほ)の詩です。杜甫は年をとってから、長江の上流の夔州(きしゅう)(今の中国・重慶市のあたり)で暮らし、たくさんの詩を作りました。そのころ、山の中でしおれていた若い蘇徯(そけい)に、はげましの詩を書き送ったのです。4つの場面で見てみましょう。

絵で読む「蓋棺事定まる」(杜甫の詩「君不見簡蘇徯」の4こま)

1山の中でしおれる若者どうせ自分なんかもうだめだ…蘇徯(そけい)
1唐の時代、蘇徯(そけい)という若い人が、山の中で暮らしていました。才能がありながら世に出られず、しょんぼりとしていたようです。
2杜甫が詩を書き送る君見ずや…杜甫蘇徯へ
2それを知った詩人の杜甫(とほ)は、蘇徯に詩を書き送りました。題は「君不見簡蘇徯(君見ずや、蘇徯に簡す)」。「簡す」は手紙で書き送ることです。
3詩の中のたとえ捨てられた池にも竜がひそむ枯れた木からりっぱな琴ができる
3詩の中で杜甫は、捨てられた池にも竜がひそみ、百年の枯れ木もりっぱな琴になるとたとえました。見かけがさえなくても、値うちがかくれていることがある、というのです。
4人の値うちは最後に決まる丈夫は棺を蓋ひて事始めて定まる君は今まだ老人ではない棺を蓋いて事定まる
4そして「丈夫は棺を蓋ひて事始めて定まる(人の値うちは、死んで棺のふたをしてはじめて決まる)。君はまだ年寄りではない。山の中でしおれていることはない」とはげましました。

杜甫は、詩の最後に「深山窮谷は処るべからず、霹靂魍魎狂風を兼ぬ」(深い山や谷の奥にいてはいけない。雷や山の化け物、はげしい風がやって来る)と書いています。つまり、山を出て、もう一度世の中で力をためしなさいとすすめているのです。蘇徯がそのあとどうしたかは、はっきりした記録が見つかりません。

杜甫は、同じ人に「贈蘇四徯(蘇四徯に贈る)」という詩も送っています(『全唐詩』で同じ巻に並んでいます)。「蘇四」は、蘇家の兄弟の4番目という呼び方です。杜甫は、この若者のことをずっと気にかけていたのでしょう。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

杜甫の詩のポイントは「まだ決まっていない」ということだ。捨てられた池にも竜がいるかもしれない。枯れ木も琴になるかもしれない。人の値うちは、棺のふたを閉じるまで決まらない。だから、今つまずいている若い人ほど、この言葉にはげまされるんだ。

杜甫の詩の2つのたとえ一斛の旧水も蛟竜を蔵すわずかな古い水にも竜がひそんでいる百年の死樹も琴瑟に中る百年たった枯れ木も琴の材料になる見かけで値うちを決めてはいけない
捨てられた池にも竜、枯れた木も琴に。見かけで値うちを決めてはいけない

「蓋棺事定まる」の原文・書き下し文・現代語訳

ここでは、杜甫の詩「君不見簡蘇徯」の全文を、1句ずつ見ていきます(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。7字の句が9つ並ぶ、自由な形の詩です。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、漢詩のきまりは漢詩のきまり(絶句・律詩・押韻・対句)でくわしく説明しています。

白文(杜甫「君不見簡蘇徯」全文。句読点を補ったもの)君不見道辺廃棄池、君不見前者摧折桐。百年死樹中琴瑟、一斛旧水蔵蛟竜。丈夫蓋棺事始定、君今幸未成老翁、何恨憔悴在山中。深山窮谷不可処、霹靂魍魎兼狂風。

1・2句目:「君見ずや」の呼びかけ

書き下し文君きみ見みずや、道だう辺へんの廃はい棄きの池いけを。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳あなたは見たことがないか、道ばたの捨てられた池を。

ここがポイント「君見ずや」は「あなたは見ないのか(見てごらん)」という、唐の詩でよく使われる呼びかけの決まり文句です。2句目も「君見ずや、前者(さき)に摧折(さいせつ)せし桐を(以前に折れてしまった桐の木を)」と同じ形で続きます。「不(ず)」はひらがなで書く字で、否定の句法(不・弗・非・無・莫)の基本です。

3・4句目:枯れ木も琴に、古い水にも竜

書き下し文百ひやく年ねんの死し樹じゆも琴きん瑟しつに中あたり、一いつ斛こくの旧きう水すいも蛟かう竜りゆうを蔵ざうす。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳百年たって枯れた木も、琴や大琴の材料にちょうどよく、ほんのわずかな古い水にも、竜がひそんでいる。

ここがポイント「中(あた)る」は「ぴったり合う・役に立つ」。「琴瑟(きんしつ)」は琴と大きな琴(瑟)です。「斛(こく)」は量の単位で、「一斛」はわずかな量のたとえ。「蛟竜(こうりゅう)」は、水にひそむ竜です。この2句は形がそろった対句になっています。

5句目:この言葉のもと

書き下し文丈ぢやう夫ふは棺くわんを蓋おほひて事こと始はじめて定さだまる。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳一人前の男子というものは、死んで棺にふたをしてはじめて、その人の評価が決まるのだ。

ここがポイント「蓋棺事定」の4字は、この句からとられています。「丈夫(じょうふ)」は「一人前の男子・りっぱな人」のことで、今の「大丈夫」とは意味がちがいます(漢文の重要単語一覧(丈夫・人間・故人など))。「蓋(おほ)ふ」は「ふたをする」。レ点で「棺を」から「蓋ひて」に返ります。

6句目:君はまだ年寄りではない

書き下し文君きみ今いま幸さいはひに未いまだ老らう翁をうと成ならず。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳あなたは今、幸いにも、まだ年寄りになってはいない。

ここがポイント「未(いま)だ〜ず」は、1つの字を2回読む再読文字(未・将・当・宜・須・猶)です。一度目は「未だ」と読み、一二三点で「老翁と→成ら」と進んでから、もう一度「ず」と読みます。「まだ時間がある」という、はげましの中心の句です。

7句目:どうしてうらむのか

書き下し文何なんぞ憔せう悴すいして山さん中ちゆうに在あるを恨うらみん。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳どうして、やつれて山の中にいることをうらみなげく必要があろうか(いや、ない)。

ここがポイント「何(なん)ぞ〜ん」は「どうして〜か、いや〜ない」という反語の句法(豈・安・何・誰)です。「憔悴(しょうすい)」はやつれて元気がないようす。原典の字は「顦顇」で、意味は同じです。「何ぞ恨みん、憔悴して山中に在るを」と、順番を入れかえて読むこともあります。

8句目:山の奥にいてはいけない

書き下し文深しん山ざん窮きゆう谷こくは処をるべからず。

(杜甫「君不見簡蘇徯」)

現代語訳深い山や行きどまりの谷の奥は、住むべき所ではない。

ここがポイント「〜べからず」は「〜できない・〜してはいけない」。可能・不可能の句法(可・能・得・足)で、「不可」の読み方をくわしく説明しています。最後の句「霹靂魍魎狂風を兼ぬ」は、雷・山の化け物・はげしい風がいっしょにやって来る、という意味です。
原文で覚える句法5つ君不見君見ずやあなたは見ないのか詩の決まり文句未〜未だ〜ずまだ〜ない再読文字何〜何ぞ〜んどうして〜か(いや〜ない)反語不可〜〜べからず〜できない・〜してはいけない不可能蓋おほふ/けだしふたをする/思うに読みに注意
「蓋棺事定まる」の詩には、再読文字・反語・不可能など、入試によく出る句法が入っています

原典(『全唐詩』)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)の『全唐詩』巻222の本文では、この詩は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

杜甫「君不見簡蘇徯」(『全唐詩』巻222)君不見道邊廢棄池,君不見前者摧折桐。百年死樹中琴瑟,一斛舊水藏蛟龍。丈夫蓋棺事始定,君今幸未成老翁,何恨顦顇在山中。深山窮谷不可處,霹靂魍魎兼狂風。
  • 「邊」「廢」「舊」「藏」「龍」「處」:昔の字体(旧字体)です。今の字では「辺」「廃」「旧」「蔵」「竜」「処」です。
  • 「顦顇」:「憔悴(しょうすい)」と同じ言葉の、別の書き方です。
  • 「事始定」:杜甫の詩では「始めて定まる」。後で説明する劉毅の言葉では「方(まさ)に定まる」の形で伝わっています。

参考:劉毅の言葉として伝わる形

書き下し文丈ぢやう夫ふは棺くわんを蓋おほひて事こと方まさに定さだまる。

(晋の劉毅の言葉として、韓愈の詩の注などに引かれる形)

現代語訳一人前の男子は、棺にふたをして、そこでやっと評価が定まる。

ここがポイント「方(まさ)に」は「ちょうどそのときに・やっと」。杜甫の「始めて」とほとんど同じ意味です。

出典と話の背景(杜甫と、劉毅・韓愈)

杜甫(712〜770年)は、唐の時代の詩人で、のちに「詩聖(詩の聖人)」と呼ばれました。同じ時代の李白(「詩仙」)と並ぶ、中国でもっとも有名な詩人の一人です。役人として出世することを願いましたが、なかなか思うような地位につけず、安史の乱で国が乱れると、家族を連れて各地を転々としました。夔州で暮らしたのは晩年のことで、この詩は766年(大暦元年)ごろの作とされます。唐詩の流れは漢文の文学史(史記・論語・唐詩・李白と杜甫)にまとめています。

大きな笠をかぶり、白い着物を着て、両手を袖の中で組んで立つ、ひげのある男性の絵。全体に茶色がかった古い絹の画面で、まわりに赤い印がいくつも押されている
杜甫の肖像。杜甫自身も、生きている間は不遇で、亡くなったあとに「詩聖」と仰がれるようになりました。まさに「蓋棺事定まる」の人です。画像:趙孟頫の筆と伝わる「杜甫像」(元時代、北京・故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)の人物の部分

杜甫自身が「蓋棺事定まる」の人だった

おもしろいことに、杜甫自身が、この言葉どおりの人でした。生きている間、杜甫の詩は今ほど高く評価されていたわけではなく、杜甫は貧しい暮らしの中で、旅の途中に亡くなりました。ところが、のちの時代になると、その詩は人々の苦しみや国の乱れを深く見つめたものとして高く評価され、「詩聖」と仰がれるようになったのです。日本でも、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅で杜甫の詩「春望」をふまえた文を書いたことはよく知られています。

評価が「あとから」変わった例杜甫生きている間は役人として不遇のちに「詩聖」と高く評価された宮沢賢治生前はあまり知られなかった亡くなったあと、作品が広く読まれた反対に…生きている間はほめられた人があとで評価が下がることもあるどちらの向きにも変わるので「棺を蓋いて」定まる
評価はあとから上がることも、下がることもある。だから「棺を蓋いて」定まる

晋の劉毅の言葉とする説

故事成語の辞典などでは、この言葉の出典を「『晋書』劉毅伝」とし、晋の時代の劉毅(りゅうき)が「丈夫は棺を蓋ひて事方に定まる」と言った、と説明するものがあります。たしかに、唐の韓愈の詩につけられた注や、清の時代の類書(ことがらを分類して集めた本)『淵鑑類函』には、劉毅の言葉としてこの句が引かれています(維基文庫の本文で確認)。

ただし、維基文庫の『晋書』の劉毅の伝記(晋には劉毅という人物が2人いて、伝記も2つあります)の本文を調べたところ、この句は見つかりませんでした。今の『晋書』の本文には残っていない言葉なのか、別の本にあった言葉なのかは、はっきりした資料が見つかりません。そのため、このページでは本文で確かめられる杜甫の詩を中心に説明し、劉毅の言葉とする説は諸説の一つとして紹介しています。

韓愈の詩「同冠峡」にも

杜甫より少しあとの唐の文人・韓愈(かんゆ)も、「同冠峡」という詩の中で「行矣且無然,蓋棺事乃了」(さあ行こう、しばらくはなげくまい。棺にふたをして、はじめて物事は終わるのだ)と書いています。韓愈が803年に陽山(今の広東省)へ左遷されたあとの詩とされます。韓愈は「千里の馬も伯楽に会わざれば(韓愈「雑説」)」の作者でもあります。

「蓋棺事定」はどこから?(諸説あり)晋劉毅の言葉として伝わる「丈夫蓋棺事方定」後の本(注・類書)が引く/今の『晋書』の本文では見つからない唐杜甫「君不見簡蘇徯」「丈夫蓋棺事始定」詩の本文で確かめられる(766年ごろの作とされる)唐韓愈「同冠峡」「蓋棺事乃了」803年、陽山に左遷されたあとの詩とされる
劉毅の言葉とする説、杜甫の詩、韓愈の詩。本文で確かめられるのは杜甫と韓愈の詩

中国語の「蓋棺論定」

中国語では、「蓋棺論定(棺を蓋いて論定まる)」という四字の形がよく使われます。「論」は評価・議論のことで、意味は日本語の「蓋棺事定まる」と同じです。

「蓋棺事定まる」の使い方と例文・似た言葉

「蓋棺事定まる」は、人の評価や値うちは、その人が一生を終えるまで決まらないというときに使います。2つの使い方があります。

  1. 評価をあとにゆだねる:「あの人の本当の評価は、亡くなったあとで決まる」
  2. 決めつけをいましめる・はげます:「今の成功や失敗だけで、人の値うちを決めるな」
  • ○首相の在任中の政策について、蓋棺事定まるで、歴史がいずれ評価を下すだろう。
  • ○若いうちの失敗で落ちこむな。棺を蓋いて事定まるというじゃないか。
  • ○生前は売れなかった作家が、没後に名作家とされた。蓋棺事定まるとはこのことだ。
  • ×この試合の勝敗は蓋棺事定まるだ。(試合の結果ではなく、人の一生の評価に使う)
  • ×いやな話は蓋棺事定まるで、もう終わりにしよう。(「くさいものにふた」の意味ではない)
「蓋棺事定まる」の使い方○ 人の評価は一生を終えて決まる・あの作家の本当の評価はこれからだ。・今の失敗で人を決めつけるな。・政治家の功績は蓋棺事定まるで…「棺を蓋いて事定まる」とも言う× こんな使い方はしない・試合の結果や品物の値うちに使う・「ふたをして片づける」の意味で使う→ 人の一生と、その評価について使う言葉
人の一生と、その評価について使う言葉。試合の結果や「ふたをして片づける」意味では使わない

似た言葉

  • 棺を蓋いて事定まる(かんをおおいてことさだまる):この言葉を訓読した形。意味は同じです。
  • 蓋棺論定(がいかんろんてい):中国語でよく使われる四字の形。
  • 虎は死して皮を留め、人は死して名を残す:人は死んだあとに名を残すような生き方をすべきだ、ということ。死んだあとの評価を考える点が似ています。
  • 大器晩成(たいきばんせい)の意味:大きな才能は、ゆっくり時間をかけて完成する。評価を急がない点が似ています。くわしくは大器晩成の意味と由来(老子)へ。

反対の考え方

  • 一喜一憂(いっきいちゆう)の意味:ようすが変わるたびに、喜んだり心配したりすること。途中の評価にふり回される態度です。
  • レッテルをはる・決めつける:一部分を見ただけで、人をこうだと決めてしまうこと。

英語では決まった訳はありませんが、"Call no man happy until he is dead."(死ぬまではだれも幸福とは言えない。古代ギリシアのソロンの言葉として伝わる)が、よく似た考えの言葉として知られています。

受験勉強への生かし方

杜甫が若い蘇徯に伝えたのは、「まだ決まっていない。君はまだ若い」ということでした。受験でも、模試の判定は途中の評価にすぎません。秋にE判定でも、春に合格する人はいます。最後まであきらめないための言葉は、「絶対にあきらめるな」共通テストで失敗した受験生へや、孫悟空の名言「落ちこぼれだって必死に努力すりゃエリートを超える」で読めます。

そして、合格・不合格も、人生の中では途中の一場面です。「やらなかった」という後悔だけは残さないように――「やれるかどうかは関係ない、やるか、やらないかだ」の意味も、今の自分を決めつけずに前へ進むための言葉です。

受験に当てはめると模試E判定…夏C判定秋B判定本番合格!途中の判定は「生きている間の評価」と同じでゆれる本当の結果は、最後までわからないE判定でも、まだ「棺のふた」は閉じていないそして合格のあとも、人生は長く続く※判定は例です
模試の判定は「生きている間の評価」と同じ。最後まで、評価は決まらない

「蓋棺事定まる」のよくあるまちがい

  • 「蓋」を「けだし」と読む:ここでは「おおう(ふたをする)」の意味で、「蓋棺(がいかん)」は「棺にふたをする」ことです。漢文で文のはじめに来る「蓋し(けだし=思うに)」とは別の使い方です(漢文の重要漢字の読み一覧(蓋・嘗・遂など))。
  • 「丈夫」を「大丈夫(だいじょうぶ)」の意味だと思う:漢文の「丈夫(じょうふ)」は「一人前の男子・りっぱな人」です。
  • 「死んだら終わり」という意味だと思う:反対です。「死ぬまでは評価が決まらない」、だから途中で決めつけたり、あきらめたりしてはいけない、という意味です。
  • 人以外のことに使う:試合の結果や商品の値うちなどには使いません。
  • 「棺」を「管」「館」と書く:「棺」は木へんの字で、ひつぎのことです。
サクラちゃん

サクラちゃん

「死んでから評価が決まる」なら、生きている間にがんばっても意味がないってことですか…?

ミスターT先生

ミスターT先生

そう考えるのは、もったいない読み方だね。杜甫の詩をもう一度読もう。「君は今、幸いにまだ年寄りではない」と続く。つまり、評価が決まっていないからこそ、これからいくらでも変えられる、という意味なんだ。最後のふたが閉じるまで、自分の評価を作るのは自分自身だよ。

入試ではこう出る

「蓋棺事定まる」は、おもに大学受験で出会う、少しむずかしい故事成語です。

  • 大学受験:評論文や小説の中で、「蓋棺事定まる」「棺を蓋いて事定まる」の意味を問う語句の問題として出ることがあります。漢文で唐詩が出たときは、「未だ〜ず」の再読文字、「何ぞ〜ん」の反語、「丈夫」のような意味のちがう語がよく問われるポイントです。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
  • 小論文・面接:「人の評価はいつ決まるか」「歴史上の人物をどう評価するか」といったテーマで、例として使える言葉です。
  • 高校受験:出ることは多くありませんが、「蓋」「棺」の漢字の読み書きの問題には注意しましょう。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「蓋棺事定まる」は、人の評価は棺のふたをしてはじめて決まる。杜甫が若い蘇徯を「君はまだ若い」とはげました詩から。「蓋」は「おおう」、「丈夫」は「一人前の男子」ですね!

練習問題

やさしい

  1. 「蓋棺」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 箱をきれいにかざること イ 棺にふたをすること(人が一生を終えること) ウ 大事な物をかくすこと エ 家の屋根をふきかえること
    答えと解説を見るイ。「蓋」は「ふたをする・おおう」、「棺」は「ひつぎ」です。
  2. 「蓋棺事定まる」の意味を、短く説明しましょう。
    答えと解説を見る人の評価は、その人が死んで棺のふたをしたあとで、はじめて定まるということ。

ふつう

  1. 「丈夫蓋棺事始定」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る丈夫は棺を蓋ひて事始めて定まる。「蓋」はレ点で「棺」から返って読みます。
  2. 「君今幸未成老翁」の「未」は何という種類の字ですか。また、書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る再読文字。書き下し文は君今幸ひに未だ老翁と成らず。「未だ〜ず」と2回読みます。

むずかしい

  1. 杜甫が「丈夫は棺を蓋ひて事始めて定まる」と言ったのは、蘇徯に何を伝えるためですか。詩の前後の句をふまえて説明しましょう。
    答えと解説を見る人の値うちは一生を終えるまで決まらないのだから、まだ若い蘇徯は、今の不遇をなげいて山の中でしおれている必要はなく、これから世に出て力をためせばよい、とはげますためです。
  2. 「何恨憔悴在山中」の句法を答え、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る反語(何ぞ〜ん)。どうして、やつれて山の中にいることをうらみなげく必要があろうか、いや、ない。

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よくある質問

蓋棺事定まるとはどういう意味ですか?

蓋棺事定まるとは、人の評価は、その人が死んで棺のふたをしたあとで、はじめて定まるという意味です。生きているうちは評価が変わりうるので、途中で人を決めつけてはいけない、という教えがこめられています。

蓋棺事定まるの読み方は何ですか?

「がいかんじさだまる」と読みます。「がいかんことさだまる」と読む本もあり、訓読した「棺を蓋いて事定まる(かんをおおいてことさだまる)」の形でも使われます。

蓋棺事定まるの由来・出典は何ですか?

よく知られるもとは、唐の杜甫の詩「君不見簡蘇徯」の「丈夫蓋棺事始定」です。杜甫が山の中でしおれている若い蘇徯をはげました詩です。晋の劉毅の言葉とする説もありますが、今の『晋書』の本文では確かめられず、諸説あります。

蓋棺事定まるの原文と書き下し文は?

杜甫の詩の原文は「丈夫蓋棺事始定」で、書き下し文は「丈夫は棺を蓋ひて事始めて定まる」です。すぐあとに「君今幸未成老翁(君今幸ひに未だ老翁と成らず)」と続きます。

蓋棺事定まるはどんな場面で使いますか?

人の功績や生き方の本当の評価は、一生を終えてから決まると言うときに使います。また「今の失敗で自分の人生をあきらめるな」のように、はげましの言葉としても使えます。

蓋棺事定まるは「死んだら終わり」という意味ですか?

いいえ、ちがいます。「死ぬまでは評価が決まらない」という意味で、だからこそ生きているうちは、これからいくらでも変えられる、というはげましの言葉です。

蓋棺事定まるの似た言葉・反対の言葉は?

似た言葉には「棺を蓋いて事定まる」「蓋棺論定」「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」「大器晩成」があります。反対の考え方には「一喜一憂」や、人を決めつけることがあります。

蓋棺事定まるは英語で何と言いますか?

決まった訳はありませんが、古代ギリシアのソロンの言葉として伝わる "Call no man happy until he is dead."(死ぬまではだれも幸福とは言えない)が、よく似た考えの言葉です。

「蓋棺」の「蓋」はなんと読みますか?

ここでは「おおう(ふたをする)」の意味で、「蓋棺」は「がいかん」と読みます。漢文で文のはじめに来る「蓋し(けだし)」とは別の使い方です。

蓋棺事定まるは入試でどう出ますか?

大学受験の評論文や小説で、語句の意味を問う問題として出ることがあります。漢文では、杜甫の詩の再読文字「未だ〜ず」や反語「何ぞ〜ん」、「丈夫」の意味などが問われるポイントです。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 原文:杜甫「君不見簡蘇徯」(『全唐詩』巻222、維基文庫の本文で確認。作られた年は『補註杜詩』の「大厯元年作」による)
  • 韓愈「同冠峡」の「蓋棺事乃了」とその注の劉毅の言葉、『淵鑑類函』の「晉劉毅云丈夫闔棺事方定」:維基文庫の本文で確認
  • 『晋書』劉毅伝(巻45・巻85):維基文庫の本文では「蓋棺」の句が見つからなかった(劉毅の言葉とする説は諸説として紹介)
  • 蘇徯がそのあとどうしたか:はっきりした資料が見つからない
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(一般的な読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦