漱石枕流(そうせきちんりゅう)の意味と由来|晋書・世説新語の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読む孫楚の話【故事成語】

漱石枕流(そうせきちんりゅう)の意味と由来|晋書・世説新語の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読む孫楚の話【故事成語】

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漱石枕流そうせきちんりゅう

ひとことで言うと

負け惜しみが強く、まちがいを認めずにこじつけて言い逃れること。晋の孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ」を言いまちがえ、うまい理屈で言い張った話から。夏目漱石の号の由来。

読み方そうせきちんりゅう
意味負け惜しみが強いこと。自分のまちがいを認めず、むりにこじつけて言い逃れること。
出典『晋書』孫楚伝・『世説新語』排調(『蒙求』に「孫楚漱石」)
お話晋の孫楚が「枕石漱流」と言うつもりで「漱石枕流」と言いまちがえ、王済に指摘されると「流れで耳を洗い、石で歯をみがくのだ」と言い張った
似た言葉負け惜しみ・牽強付会・我田引水
反対の言葉過ちては改むるに憚ること勿れ
漢文の句法再読文字(当)・否定(非可〜)・所以(ゆゑん)・願望(欲)

このページのポイント

  • 「漱石枕流」は負け惜しみが強く、こじつけて言い逃れること。「枕石漱流」と字の順番が逆になった言いまちがいから
  • 晋の孫楚と王済の話を、4こまのイラストと『晋書』『世説新語』の原文で読めます
  • 夏目漱石の号の由来、「流石(さすが)」の説、所以・一レ点など入試の句法まで

「漱石枕流」の意味と読み方

「漱石枕流」はそうせきちんりゅうと読みます。意味は「負け惜しみが強いこと」「自分のまちがいを認めず、むりにこじつけて言い逃れること」です。「石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す」と書き下して使うこともあります。

「漱(そう)」は「口をすすぐ・うがいをする」、「枕(ちん)」は「枕にする」という意味の字です。中国の晋の時代、孫楚(そんそ)という人が、「石に枕し流れに漱ぐ(枕石漱流)」と言うつもりで「石に漱ぎ流れに枕す(漱石枕流)」と言いまちがえ、それを指摘されてもうまい理屈をつけて言い張った話から生まれた四字の故事成語です。作家・夏目漱石(なつめそうせき)の「漱石」という名前も、この言葉から取られたことで知られています。

言うつもりだった形と、言いまちがい○ 言うつもりだった形枕石漱流石に枕し、流れに漱ぐ石を枕にねて、川の水で口をすすぐ「枕」と「漱」が入れかわった× 言いまちがい漱石枕流石に漱ぎ、流れに枕す石で口をすすぎ、川の流れを枕にする?
「枕」と「漱」が入れかわっただけで、「石で口をすすぎ、川の流れを枕にする」という、ありえない意味になってしまいました
うかるくん

うかるくん

え、夏目漱石の「漱石」って、負け惜しみっていう意味なんですか!?

ミスターT先生

ミスターT先生

そうなんだ。夏目漱石の本名は夏目金之助(きんのすけ)。若いころにこの言葉から「漱石」という号(ペンネーム)をつけたと言われている。負けずぎらいで変わり者という意味をこめた、ちょっとユーモアのある名前なんだよ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○計算ミスを指摘された兄は「わざとだよ」と言い張った。まさに漱石枕流だ。
  • ○負けた試合のあと、言い訳ばかり並べるのは漱石枕流というものだ。
  • ○漱石枕流にならないよう、まちがえたら素直に「ごめん」と言おう。

「枕」の字は「枕」の読み方・書き順・部首、「流」は「流」の読み方・書き順・部首、「石」は「石」の読み方・書き順・部首で、読み方と書き順を確かめておきましょう(「漱」は常用漢字ではありません)。

絵で読む「漱石枕流」のお話

登場するのは、晋の時代の若い孫楚(そんそ)と、その友だちの王済(おうさい)の2人です。4つの場面で見てみましょう。

絵で読む「漱石枕流」のお話(4こま)

1山にこもりたい孫楚王済役人をやめて、山の中でくらしたいなあ
1晋の時代、若い孫楚(そんそ)は、役人の世界からはなれて、山の中で静かにくらしたいと思い、友だちの王済(おうさい)にその気持ちを話そうとしました。
2あっ、言いまちがい孫楚王済石に漱ぎ、流れに枕するのさ!流れを枕にできる?石で口をすすげる?(逆だ!)
2「石に枕し、流れに漱ぐ(石を枕にねて、川の水で口をすすぐ)」と言うつもりが、「石に漱ぎ、流れに枕す」と言いまちがえてしまいます。王済はすかさず「流れを枕にできるか? 石で口をすすげるか?」とつっこみました。
3言い張る孫楚孫楚王済流れに枕するのは、耳を洗うためだ!石に漱ぐのは、歯をみがくためだ!耳を洗う歯をみがく
3すると孫楚は、まちがいを認めずに「流れに枕するのは、耳を洗うためだ。石に漱ぐのは、歯をみがくためだ」と言い張りました。
4負け惜しみへへん孫楚王済ああ言えばこう言う…漱石枕流=負け惜しみが強いこと
4うまく言い返したものの、ただの負け惜しみです。ここから「漱石枕流」は、負け惜しみが強く、こじつけて言い逃れることを言うようになりました。

孫楚が言いたかった「石に枕し流れに漱ぐ」は、石を枕にして眠り、川の水で口をすすぐという、山の中で自然とともにくらす生活のたとえです。役人の世界をはなれて世をのがれることを「隠居(いんきょ)」と言い、昔の中国では、学問のある人があこがれる生き方の一つでした。

孫楚の「言い張り」の理屈王済「流れは枕にできないし、石で口はすすげないぞ」流れに枕する耳を洗うため(許由の伝説にかける)石に漱ぐ歯をみがくため(石で歯をとぐ)まちがいを認めず、うまく言い返した
孫楚は、まちがいを認めずに「耳を洗う」「歯をみがく」という理屈をつけて言い返しました

孫楚の言い返しの「耳を洗う」には、元ネタがあります。大昔の聖人・堯(ぎょう)が許由(きょゆう)という人に天子の位をゆずろうとしたところ、許由は「いやな話を聞いた」と言って、川で耳を洗ったという伝説です(『世説新語』の注にも、この話を書いた本が引かれています)。孫楚は、とっさにこの伝説にかけて言い返したわけで、まちがえたのに、うまく言い返したところが、この話のおもしろさです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

孫楚の言い返しは、負け惜しみではあるけれど、とっさに昔の伝説を持ち出せる知識と頭の回転があったからこそできたことだ。だからこの話は、ただの失敗談ではなく、「機転の利いたこじつけ」の話として伝えられてきたんだね。

「漱石枕流」の原文・書き下し文・現代語訳

この話は、唐の時代にまとめられた歴史書『晋書(しんじょ)』の孫楚伝と、それより前の南朝宋の時代にまとめられた逸話集『世説新語(せせつしんご)』の排調(はいちょう)篇にのっています。ここでは『晋書』の文を中心に、1文ずつ読みましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールにまとめています。書き下し文は、代表的な読み方の一例です。

『晋書』孫楚伝(句読点は維基文庫のとおり・一部)楚少時欲隱居,謂濟曰:「當欲枕石漱流。」誤云「漱石枕流」。濟曰:「流非可枕,石非可漱。」楚曰:「所以枕流,欲洗其耳;所以漱石,欲厲其齒。」

1文目:隠居したいと思った孫楚

書き下し文楚そ少わかき時とき隠居いんきよせんと欲ほつし、済せいに謂いひて曰いはく、

(『晋書』孫楚伝)

現代語訳孫楚は若いころ、世をのがれて静かにくらしたいと思い、王済に言った。

ここがポイント「〜んと欲す」は「〜しようと思う」という願望の句法(欲・願・請)の形です。「隠居」を読んでから、二点で「欲し」に返ります。「謂ひて〜曰はく」は「〜に向かって言うには」。「済」は友人の王済(字は武子)です。

2文目:言うつもりだった形(『世説新語』の形)

書き下し文当まさに石いしに枕まくらし流ながれに漱すすぐべし。

(『世説新語』排調)

現代語訳(これからは)石を枕にしてねて、川の流れで口をすすぐ(ような、山の中のくらしをする)のがよい。

ここがポイント「当(まさ)に〜べし」は、1回目は「まさに」、2回目は「べし」と2回読む再読文字(未・将・当・宜・須・猶・盍)です。「〜するのがよい・当然〜すべきだ」という意味。『晋書』では「当に石に枕し流れに漱がんと欲すべし」のように「欲」が入る形になっています。

3文目:言いまちがい

書き下し文誤あやまりて曰いはく、「石いしに漱すすぎ流ながれに枕まくらす。」

(『世説新語』排調)

現代語訳まちがえて「石で口をすすぎ、川の流れを枕にする」と言ってしまった。

ここがポイント「漱」と「枕」が入れかわっています。どちらもレ点で、下の字(石・流)を読んでから上に返ります。この4字「漱石枕流」が、そのまま故事成語になりました。

4文目:王済のつっこみ

書き下し文済せい曰いはく、「流ながれは枕まくらすべきに非あらず、石いしは漱すすぐべきに非あらず。」

(『晋書』孫楚伝)

現代語訳王済は言った。「川の流れは枕にすることはできないし、石で口をすすぐこともできないよ。」

ここがポイント「〜べきに非(あら)ず」は「〜することはできない」という否定の句法(不・非・無)。「可」に一点とレ点が同時についた「一レ点」で、「枕→可→非」の順に読みます。入試でよくねらわれる返り点です。『世説新語』では「流れは枕すべく、石は漱ぐべけんや(流れを枕にし、石で口をすすげるものか)」と、反語の形で言っています。

5文目:孫楚の言い張り(耳を洗う)

書き下し文流ながれに枕まくらする所以ゆゑんは、其その耳みみを洗あらはんと欲ほつすればなり。

(『晋書』孫楚伝)

現代語訳流れを枕にするわけは、(流れで)その耳を洗おうと思うからだ。

ここがポイント「所以(ゆゑん)」は「〜するわけ・理由」という意味の大事な読み方で、「所以(ゆゑん)」と「以」の読み方でくわしく説明しています。「〜する所以は、…ばなり」は「〜するわけは、…だからだ」という理由の言い方です。

6文目:孫楚の言い張り(歯をみがく)

書き下し文石いしに漱すすぐ所以ゆゑんは、其その歯はを厲みがかんと欲ほつすればなり。

(『晋書』孫楚伝)

現代語訳石で口をすすぐわけは、その歯をみがこうと思うからだ。

ここがポイント「厲(みが)く」は「とぐ・みがく」。『世説新語』では同じ意味の「礪」の字になっています。5文目とまったく同じ形の対句になっているので、どちらか一方が読めれば、もう一方も読めます。
「漱石枕流」で覚える句法4つ当〜当に〜べし〜するのがよい・当然〜だ再読文字非可〜〜べきに非ず〜することはできない否定(一レ点)所以〜〜する所以は〜するわけは理由(ゆゑん)欲〜〜んと欲す〜しようと思う願望
短い話ですが、再読文字・一レ点の否定・所以・願望と、入試でねらわれる句法がそろっています

原典『世説新語』の本文では

『世説新語』排調篇では、次のようになっています(句読点は維基文庫のとおり)。

『世説新語』排調(一部)孫子荊年少時欲隱,語王武子「當枕石漱流」,誤曰「漱石枕流」。王曰:「流可枕,石可漱乎?」孫曰:「所以枕流,欲洗其耳;所以漱石,欲礪其齒。」
  • 人の呼び方:孫楚は字(あざな)で「孫子荊(そんしけい)」、王済は字で「王武子(おうぶし)」と書かれています。
  • 王済のつっこみ:『晋書』の「流非可枕、石非可漱」(否定)が、『世説新語』では「流可枕、石可漱乎」(反語)です。意味はほぼ同じです。
  • 「厲」と「礪」:どちらも「とぐ・みがく」という意味です。
サクラちゃん

サクラちゃん

『晋書』と『世説新語』、どっちが元の話なんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

本ができた順番で言うと、『世説新語』(南朝宋・5世紀)のほうが古く、『晋書』(唐・7世紀)のほうが新しいんだ。『晋書』は、前からあった話を集めて歴史書にまとめた本だからね。ただ、故事成語の出典としては両方があげられることが多い。入試ではどちらの形でも読めるように、「漱石枕流」「所以〜欲〜」の形をおさえておこう。

出典『晋書』『世説新語』と話の背景

孫楚(そんそ、?〜293年)は、三国時代の終わりから西晋にかけての人で、字(あざな)は子荊(しけい)。才能はあったものの、自分の才を鼻にかけるところがあり、人と衝突することも多かったと伝えられています。『晋書』には、あまり人をほめない孫楚が、王済だけはとても敬っていたと書かれています。王済は、孫楚の人物を「天才英博(才能がゆたかで、知識が広い)」と評した人でもあります。

『世説新語』は、南朝宋の劉義慶(りゅうぎけい)がまとめた本で、後漢から東晋までの人びとの気のきいた言葉や、おもしろい逸話を集めたものです。「排調(はいちょう)」は「からかい・冗談」という意味の篇で、孫楚の話は、うまく言い返した名言として選ばれています。同じ『世説新語』からは、母猿の悲しみの話「断腸(だんちょう)の意味と由来」も生まれました。

「漱石枕流」の伝わり方『世説新語』排調篇南朝宋(5世紀)・孫楚と王済の話『晋書』孫楚伝唐の時代にまとめた晋の歴史書『蒙求』「孫楚漱石」人物の話を4字の句で覚える本夏目漱石の号明治時代・本名は夏目金之助※『晋書』は、『世説新語』よりあとにまとめられた本
『世説新語』から『晋書』『蒙求』へ、そして明治の夏目漱石へと伝わりました

夏目漱石の「漱石」

この話は、唐の時代にできた子ども向けの学習書『蒙求(もうぎゅう)』に「孫楚漱石」という句で入りました。『蒙求』は日本でも平安時代から広く読まれた本で、漢文を学ぶ人にとって「漱石」は、よく知られた言葉でした。

口ひげのある男性が、ほおづえをついて座っている白黒の肖像写真
夏目漱石(1867〜1916年)。1912年9月、小川一真(おがわかずまさ)が撮影した写真です。画像:「Natsume Soseki photo」(小川一真 撮影、1912年、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

明治の作家・夏目漱石(本名は夏目金之助)は、若いころ、親友の正岡子規(まさおかしき)の文集に批評を書いたとき、はじめて「漱石」という号を使ったと言われています。「漱石」は子規がかつて使っていた号の一つで、それをゆずり受けたという話も伝わっています(いきさつには諸説あります)。負けずぎらいで、ひとすじなわではいかない自分の性格に合う号として選んだ、と説明されることが多い名前です。漱石は、のちに『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』などの小説を書き、日本を代表する作家になりました。

また、「さすが」を「流石」と書くのは、この話から来ているという説もあります。「孫楚の言い返しは、さすがにうまい」ということからだと言われますが、はっきりした資料は見つからず、諸説ありとされています。

「漱石枕流」の使い方と例文・似た言葉

「漱石枕流」は、まちがいや負けを認めず、へりくつを並べて言い逃れる人について使います。ほめ言葉ではなく、あきれたり、からかったりするときの言葉です。人に向かって使うと失礼になることがあるので、自分のことを笑って言うときや、文章の中で使うのが無難です。

  • ○道をまちがえたのに「近道を探していたんだ」と言う父は、漱石枕流の名人だ。
  • ○「今のは練習のつもりだった」なんて、漱石枕流もいいところだ。
  • ○つい漱石枕流になってしまう性格を直したい。
  • ○彼の弁明は石に漱ぎ流れに枕すのたぐいで、だれも納得しなかった。
  • ×夏休みは漱石枕流で、川べりの石の上で昼寝をした。(自然の中でのんびりくらす意味ではない。それは「枕石漱流」)
  • ×夏目漱石の小説が大好きで、まさに漱石枕流だ。(漱石のファンという意味ではない)
漱石枕流似た言葉(言い逃れ・こじつけ)負け惜しみこじつけ牽強付会我田引水ああ言えばこう言う反対の言葉(すなおに改める)過ちては改むるに憚ること勿れすなおに認める君子は豹変す
似た言葉は「言い逃れ・こじつけ」、反対の言葉は「すなおにまちがいを改める」グループです

似た言葉

  • 負け惜しみ:負けやまちがいを素直に認めず、強がって言うこと。漱石枕流のいちばん近い言いかえです。
  • 牽強付会(けんきょうふかい):自分につごうのよいように、むりに理屈をこじつけること。
  • 我田引水(がでんいんすい):自分につごうのよいように、ものごとを言ったりしたりすること。
  • ああ言えばこう言う:何を言っても、へりくつで言い返してくること。

反対の言葉

英語では、負け惜しみを言う人を "a sore loser"(負けをいさぎよく認めない人)と言います。言い逃れをすることは "make excuses"、こじつけは "a far-fetched argument" と言います。

受験勉強への生かし方

受験勉強で「漱石枕流」になりやすいのは、まちがえた問題の見直しのときです。「これはケアレスミスだから」「本番ならできた」と言い訳をして、まちがいをきちんと認めないと、同じミスを何度もくり返してしまいます。まちがいは、のびしろが見つかったしるしです。孫楚のように理屈で言い返すのではなく、「なぜまちがえたか」をノートに書いて改めましょう。

問題集は「終わらせること」より「何を学んだか」が大事だという話は「問題集を終わらせることを目標にするな」の意味で、自分の弱さと向き合う大切さは受験の格言「最大の敵は自分自身だ」の意味で紹介しています。ほかにも、受験生の心に効く言葉を受験の格言・名言100選(意味・出典つき)に集めました。

うかるくん

うかるくん

模試で×がつくと、つい「問題が悪い」って思っちゃうんです…。

ミスターT先生

ミスターT先生

その気持ちは分かるよ。でも、孫楚くらいの知恵があるなら、その知恵は言い訳ではなく見直しに使おう。「漱石」を名前にした夏目漱石だって、負けずぎらいを、作品を書き続ける力に変えたんだからね。

「漱石枕流」のよくあるまちがい

  • 「そうせきまくらながれ」「そうせきちんる」と読む:正しくはそうせきちんりゅうです。「枕」は音読みで「ちん」、「流」は「りゅう」と読みます。
  • 「枕石漱流」と同じ意味だと思う:「枕石漱流(ちんせきそうりゅう)」は、自然の中で静かにくらすこと(孫楚が言うつもりだった形)。「漱石枕流」は、言いまちがえたのに言い張ること=負け惜しみです。字の順番で意味がまったく変わります。
  • 「漱」を「嗽」「潄」と書く:「漱」はさんずい(氵)に「欶」の形の字です。「嗽(くちへん)」も「うがい」の意味で使われることがありますが、故事成語は「漱」と書きます。
  • 夏目漱石が作った言葉だと思う:もとは中国の晋の時代の話で、夏目漱石は、この言葉から自分の号をつけた人です。
  • 言いまちがえたのを王済だと思う:言いまちがえて言い張ったのは孫楚、つっこんだのが王済です。
  • よい意味の言葉だと思う:うまい言い返しの話ですが、意味は「負け惜しみが強い」「こじつけて言い逃れる」で、ほめ言葉ではありません。

入試ではこう出る

「漱石枕流」は、大学受験を中心に出てくる言葉です。

  • 大学受験:『世説新語』や『晋書』の文で、「当(まさに〜べし)」の再読文字、「非可枕」の一レ点、「所以(ゆゑん)」の読み、孫楚の言い返しがなぜ「うまい」のかを説明する問題が問われます。四字熟語・故事成語の知識問題で、意味や「夏目漱石の号の由来」を問うこともあります。共通テストの漢文は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
  • 高校受験:国語の文学史で夏目漱石を学ぶときに、号の由来としてふれられることがあります。漢文の入門としては、レ点・一二点の練習にちょうどよい長さの文です(高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策))。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「所以」は「ゆゑん」!「〜する所以は〜ばなり」で「〜するわけは〜だからだ」。理由を言う形とセットで覚えると、記述問題にも強くなりますね!

練習問題

やさしい

  1. 「漱石枕流」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 自然の中でのんびりくらすこと イ 負け惜しみが強く、こじつけて言い逃れること ウ 夏目漱石の小説を読むこと エ 川で石をみがくこと
    答えと解説を見るイ。アは、孫楚が言うつもりだった「枕石漱流」の意味です。
  2. 夏目漱石の「漱石」という号は、何から取られたと言われていますか。
    答えと解説を見る故事成語の「漱石枕流」(中国・晋の孫楚の話)から取られたと言われています。

ふつう

  1. 「漱石枕流」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る石に漱ぎ流れに枕す。「漱」「枕」はどちらもレ点で、下の字を読んでから返ります。
  2. 「流非可枕」を書き下し文に直し、意味を答えましょう。
    答えと解説を見る流れは枕すべきに非ず。意味は「川の流れは枕にすることはできない」。「可」に一レ点がつき、「枕→可→非」の順に読みます。

むずかしい

  1. 「所以枕流、欲洗其耳」を現代語訳し、「所以」の読みを答えましょう。
    答えと解説を見る読みはゆゑん。訳は「流れを枕にするわけは、その耳を洗おうと思うからだ」。「〜する所以は、…ばなり」で理由を表します。
  2. 孫楚の言い返しは、なぜ「うまい」と言えるのですか。説明しましょう。
    答えと解説を見る言いまちがえた「漱石枕流」を認めずに、「流れで耳を洗う」(許由が耳を洗った伝説にかける)、「石で歯をみがく」という、いちおう筋の通った理屈をとっさにつけて、つっこみを言い返したからです。ただし、まちがいを認めない負け惜しみでもあります。

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よくある質問

漱石枕流とはどういう意味ですか?

漱石枕流とは、負け惜しみが強く、自分のまちがいを認めずにむりにこじつけて言い逃れることという意味です。晋の孫楚が言いまちがいを認めず、うまい理屈で言い張った話から生まれました。

漱石枕流の読み方は?

「そうせきちんりゅう」と読みます。書き下すと「石に漱ぎ流れに枕す」です。

漱石枕流の由来・出典は何ですか?

出典は『晋書』孫楚伝と『世説新語』排調篇です。孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ(枕石漱流)」と言うつもりで「石に漱ぎ流れに枕す(漱石枕流)」と言いまちがえ、王済に指摘されると「流れで耳を洗い、石で歯をみがくためだ」と言い張りました。

夏目漱石の名前は漱石枕流から来ているのですか?

はい、夏目漱石(本名・夏目金之助)の「漱石」という号は、この故事成語から取られたと言われています。負けずぎらいな自分の性格に合う号として選んだと説明されることが多いですが、いきさつには諸説あります。

枕石漱流と漱石枕流のちがいは何ですか?

「枕石漱流」は石を枕にねて川の水で口をすすぐ、自然の中で静かにくらすという意味です。「漱石枕流」はそれを言いまちがえた形で、負け惜しみが強いという意味になります。

漱石枕流の例文を教えてください。

「計算ミスを指摘された兄は『わざとだよ』と言い張った。まさに漱石枕流だ」のように使います。ほめ言葉ではないので、人に向かって使うときは注意しましょう。

漱石枕流に似た言葉・反対の言葉は何ですか?

似た言葉は「負け惜しみ」「牽強付会」「我田引水」などです。反対の言葉には、まちがえたらすぐに改めよという「過ちては改むるに憚ること勿れ」があります。

漱石枕流は英語で何と言いますか?

ぴったりの英語の成句はありませんが、負け惜しみを言う人は「a sore loser」、言い逃れをすることは「make excuses」と言います。

「流石(さすが)」は漱石枕流から来ているのですか?

「流石」と書いて「さすが」と読むのはこの話から来ているという説がありますが、はっきりした資料は見つからず、諸説ありとされています。

漱石枕流は入試でどう出ますか?

大学受験の漢文では、『世説新語』や『晋書』の文で「当に〜べし」の再読文字、「非可枕」の一レ点、「所以(ゆゑん)」の読みがよく問われます。国語の知識問題では、意味や夏目漱石の号の由来が問われることがあります。

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出典・参考

  • 原文:『晋書』巻56 孫楚伝、『世説新語』排調、『蒙求』(いずれも維基文庫の本文で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(代表的な読み方をもとにした一例)
  • 写真:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦