再読文字の一覧と読み方|未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍の覚え方と書き下し、再読しない読み【漢文】

再読文字の一覧と読み方|未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍の覚え方と書き下し、再読しない読み【漢文】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

再読文字は1字を2回読む漢字で、未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍の9字です。一度目は副詞として漢字のまま、二度目は助動詞としてひらがなで書き下します(例:未だ知らず、当に勉励すべし)。

このページのポイント

  • 再読文字は9字:未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍
  • 一度目は副詞(漢字+送り仮名)、二度目は助動詞(ひらがな)
  • 訓読文では右に一度目、左に二度目の送り仮名
  • 「べし」の4字は意味で区別:当=当然、応=推量、宜=適当、須=必要
  • 返る述語がなければ再読しない(将=ひきゐる、且=かつ、猶=なほ、文末の未=いまだし)

はじめて(やさしく)

再読文字(さいどくもじ)とは、漢文の中で1つの字を2回読む字のことです。「再び読む文字」だから再読文字といいます。いちばん有名なのは「未」で、「未だ〜ず(まだ〜しない)」と読みます。

ふつうの漢字は1回読めば終わりです。ところが「未」は、まず上で「いまだ」と読み、下の言葉を読んだあと、もう一度「未」にもどって「ず」と読みます。日本語の「まだ〜ない」は、「まだ」と「ない」の2つの言葉で1つの意味を作りますね。漢文ではその両方を「未」1字が受け持っているので、日本語に直すときに2回読む必要があるのです。

再読文字=1つの字を2回読む未知下へ進むもう一度もどる①いまだ③ず②知ら未だ知らず一度目は漢字のまま、二度目はひらがなで書く
「未知」は「未だ(①)知ら(②)ず(③)」。1つの字を、上でも下でも読む

たとえて言うと、再読文字は「サンドイッチのパン」です。「未」という1枚のパンを2つに切って、上のパン(いまだ)と下のパン(ず)で、まん中の具(知ら)をはさむイメージです。上のパンは副詞(「まだ」「まさに」のように動詞をくわしくする語)、下のパンは助動詞(「ず」「べし」のように意味をそえる語)になります。

うかるくん

うかるくん

1つの字を2回読むなんて、ずるくない? 中国の人も2回読んでいたの?

ミスターT先生

ミスターT先生

いいところに気がついたね。中国語では「未」は1回、1つの音で読むだけだ。2回読むのは、日本人が漢文を日本語の順に読みかえる「訓読(くんどく)」のくふうなんだよ。「未」には「まだ」と「〜ない」の両方の意味があるから、日本語にすると2語になる。

サクラちゃん

サクラちゃん

だから「未だ〜ず」の2回なんだ。日本語に合わせるためのルールなんですね!

訓読文(返り点や送り仮名をつけた漢文)では、再読文字の右側に一度目の送り仮名、左側に二度目の送り仮名をつけます。そして、書き下し文(漢文を日本語の文に直したもの)では、一度目は漢字のまま、二度目はひらがなで書きます。二度目は助動詞にあたるからです。このきまりは書き下し文のきまり(助詞・助動詞はひらがな)と同じ考え方です。

送り仮名は右と左の2か所未知ダズレラ右側一度目の送り仮名左側二度目の送り仮名返り点は左下右=一度目 左=二度目
縦書きでは、再読文字の右に一度目、左に二度目の送り仮名をつける

まずは、論語の有名な一節で確かめてみましょう。丸の数字が読む順番です。「未」には2つの番号がついています。

大学受験

未(いまだ〜ず)

白文未知生、焉知死。

書き下し文未いまだ生を知らず、焉いづくんぞ死を知らん。

(『論語』先進)

現代語訳まだ生きることさえわからないのに、どうして死のことがわかろうか(いや、わからない)。

ここがポイント弟子の季路(子路)が「死とは何か」とたずねたときの孔子の答え。「未」を一度目「未だ」、レ点で「生を」「知ら」と返り、二度目「ず」。後半の「焉くんぞ〜ん」は反語の形です。
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

再読文字は全部で9字(未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍)。数が少ないから、一度目・二度目・意味の3点セットで覚えてしまえば、共通テストでも確実に点になるよ。

ここまでのまとめ

  • 再読文字=1字を2回読む字。一度目は副詞、二度目は助動詞
  • 訓読文では右に一度目、左に二度目の送り仮名
  • 書き下し文では一度目は漢字、二度目はひらがな(例:未だ知らず)

しっかり(共通テスト)

再読文字の一覧表(読み・意味・書き下し)

再読文字は次の9字です(「且」を「将」と同じ字としてまとめ、8字と数える本もあります)。「一度目」は右の送り仮名、「二度目」は左の送り仮名です。二度目の読みの上に来る語の形(接続)もいっしょに覚えると、書き下しで迷いません。

字一度目二度目意味(訳し方)二度目の上の形書き下しの例
未いまダずまだ〜しない未然形未だ知らず
将まさニ(ん)とす今にも〜しそうだ・〜しようとする未然形+ん(む)と将に死せんとす
且まさニ(ん)とす今にも〜しそうだ・〜しようとする未然形+ん(む)と且に至らんとす
当まさニべし当然〜すべきだ・〜しなければならない終止形(ラ変は連体形)当に勉励すべし
応まさニべしきっと〜だろう・おそらく〜だろう終止形(ラ変は連体形)応に知るべし
宜よろシクべし〜するのがよい・〜するべきだ終止形(ラ変は連体形)宜しく学ぶべし
須すべかラクべしぜひ〜する必要がある・〜しなければならない終止形(ラ変は連体形)須らく書を読むべし
猶なホごとシちょうど〜のようだ・〜と同じだ体言+の/連体形+が猶ほ水のごとし
盍なんゾざルどうして〜しないのか・〜すればよいのに未然形盍ぞ言はざる

表の見方のコツは、二度目の読みで4つのグループに分けることです。「ず」(未)、「んとす」(将・且)、「べし」(当・応・宜・須)、そして「ごとし」(猶)と「ざる」(盍)。いちばん数が多い「べし」の4字は、読みが似ているので意味で区別します。

再読文字9字(一度目・二度目・意味)未いまダ〜ずまだ〜しない将まさニ〜ントす今にも〜しそう且まさニ〜ントす(将と同じ)当まさニ〜ベシ当然〜すべきだ応まさニ〜ベシきっと〜だろう宜よろシク〜ベシ〜するのがよい須すべかラク〜ベシ〜する必要がある猶なホ〜ノごとシ〜のようだ盍なんゾ〜ざルなぜ〜しないのか
再読文字9字。色は二度目の読みのグループ(ず・んとす・べし・ごとし・ざる)

覚え方の一例として、字を順に唱える「未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍(み・しょう・しょ・とう・おう・ぎ・しゅ・ゆう・こう)」があります。リズムで字を覚えたら、「いまだ〜ず、まさに〜んとす、まさに〜べし……」と一度目・二度目を声に出してつなげます。声に出すと、送り仮名の「ダ・ニ・シク・ラク・ホ・ゾ」も自然に身につきます。

書き下し文の作り方(3ステップ)

  1. 再読文字を見つけたら、まず一度目を読む。副詞として「未だ」「将に」「当に」のように漢字+送り仮名で書く。
  2. 返り点にしたがって下の語を読む。再読文字には必ずレ点か一二点などの返り点がついている(返り点のきまり)。
  3. 返ってきて二度目を読む。助動詞として「ず」「んとす」「べし」「ごとし」「ざる」をひらがなで書く。上の語の形(未然形・終止形など)を二度目に合わせて整える。
書き下しの3ステップ1一度目を読む副詞として。漢字+送り仮名で書く2返り点にしたがって下を読むレ点・一二点で下の語へ進む3返ってきて二度目を読む助動詞として。ひらがなで書く当勉励 → 当に勉励すべし(「べし」の上は終止形。ラ変型は連体形)
再読文字の書き下しは「一度目→下の語→二度目」の3ステップ

例文で確かめる

大学受験

将(まさに〜んとす)

書き下し文孔子周に適ゆき、将まさに礼を老子に問はんとす。

(『史記』老子韓非列伝)

現代語訳孔子は周の都に行き、老子に礼について質問しようとした。

ここがポイント「将」は一度目「将に」、礼を・老子に・問は(未然形)と読んで、二度目「んとす」。送り仮名の「ント」は動詞の側(問ハント)につけ、二度目の左の送り仮名は「ス」だけにするのが一般的です。「於」は読まない置き字です。
大学受験

且(まさに〜んとす)

書き下し文兵且まさに至らんとす。

(自作)

現代語訳(敵の)兵が今にも到着しそうだ。

ここがポイント「且」は「将」と同じく「まさに〜んとす」。今にも何かが起こりそうな近い未来を表します。人が主語のときは「〜しようとする」という意志の訳も使います。
大学受験

当(まさに〜べし)

書き下し文時に及んで当まさに勉励すべし、歳月は人を待たず。

(陶淵明(陶潜)「雑詩」其の一)

現代語訳その時をのがさずに、当然努めはげむべきだ。年月は人を待ってはくれない。

ここがポイント「当」は「当に〜べし」で当然・義務(当然〜すべきだ)。「勉励す」はサ変動詞なので「べし」の上は終止形「す」。この詩の前の句では、楽しい時には酒をくみかわして楽しめと歌っており、「勉励」は「勉強にはげめ」ではなく「(今を)大いに楽しむことに努めよ」の意味だと読むのが一般的です。
大学受験

応(まさに〜べし)

書き下し文君故郷より来たる、応まさに故郷の事を知るべし。

(王維「雑詩」)

現代語訳あなたは故郷からやって来た。きっと故郷のことを知っているだろう。

ここがポイント「応」も「まさに〜べし」と読みますが、意味は推量(きっと〜だろう)。「当」と読みが同じなので、訳では区別がはっきりわかるようにします。「自」は「より」と読む返読文字です(返読文字の一覧)。
大学受験

宜(よろしく〜べし)

書き下し文学ぶ者は宜よろしく言を慎むべし。

(自作)

現代語訳学ぶ者は、言葉をつつしむのがよい。

ここがポイント「宜」は「宜しく〜べし」で適当(〜するのがよい)。命令ほど強くない、すすめる言い方です。
大学受験

須(すべからく〜べし)

書き下し文少年は須すべからく書を読むべし。

(自作)

現代語訳若者は、ぜひとも書物を読む必要がある。

ここがポイント「須」は「須らく〜べし」で必要(ぜひ〜する必要がある)。「須」と「書を読む」の間に2つのレ点が続くので、「書を→読む→べし」と下から順に上へ返ります。
大学受験

猶(なほ〜のごとし)

書き下し文過ぎたるは猶なほ及ばざるがごとし。

(『論語』先進)

現代語訳やりすぎは、ちょうど足りないのと同じようなものだ(どちらもよくない)。

ここがポイント「猶」は「猶ほ〜のごとし」で比況(ちょうど〜のようだ)。体言には「の」、活用語には連体形+「が」をつけて「ごとし」に続けます(ここでは「及ばざるがごとし」)。故事成語「過ぎたるは猶及ばざるが如し」のもとになった言葉です。「不」の「一レ」は、レ点で「不」へ返ったあと、一二点で「猶」へ返るしるしです。
大学受験

盍(なんぞ〜ざる)

書き下し文盍なんぞ各おのおの爾なんぢの志を言はざる。

(『論語』公冶長)

現代語訳どうしてめいめい自分の志を言わないのか(言ってみてはどうか)。

ここがポイント弟子の顔淵と子路がそばにいたとき、孔子がうながした言葉。「盍」は「盍ぞ〜ざる」で、「なぜ〜しないのか」から「〜すればよいのに」という勧誘(すすめ)の気持ちを表します。「なんぞ」を受けて文末は連体形「ざる」で結びます。
「〜べし」の4字は意味で見分ける当まさニ〜ベシ当然・義務当然〜すべきだ応まさニ〜ベシ推量きっと〜だろう宜よろシク〜ベシ適当〜するのがよい須すべかラク〜ベシ必要〜する必要がある当と応は読みが同じ! 意味で区別する
二度目が「べし」になる当・応・宜・須は、意味(当然・推量・適当・必要)で見分ける

「未嘗」「未必」など、セットで出る形

「未」は、ほかの字と組み合わせて決まった言い方を作ります。共通テストでは、訳の選択肢でこの違いがよくねらわれます。

形書き下し意味
未嘗〜未だ嘗て〜ず今まで一度も〜したことがない(経験の否定)
未必〜未だ必ずしも〜ず必ずしも〜とはかぎらない(部分否定)
未嘗不〜未だ嘗て〜ずんばあらず〜しなかったことは一度もない(いつも〜した)
未曾有未だ曾て有らず今まで一度もなかった(「みぞう」の語源)
大学受験

未嘗(いまだかつて〜ず)

書き下し文吾未いまだ嘗かつて虎を見ず。

(自作)

現代語訳私は今まで一度も虎を見たことがない。

ここがポイント「嘗」は「かつて」と読み、そのまま上から順に読みます。「未」は「虎を見」のあとまで返るので三の点がつきます。一二点の上にさらに返るときは「三」を使います。
難関大

未必(いまだかならずしも〜ず)

書き下し文富める者は未いまだ必かならずしも賢ならず。

(自作)

現代語訳金持ちが必ずしもかしこいとはかぎらない。

ここがポイント「未必」は部分否定。「必ずしも〜ない(そうでない場合もある)」と訳し、「必ず〜ない(全部〜ない)」とは訳しません。部分否定と全部否定の違いは、句法のページ「部分否定と全部否定(不常・常不、不必・必不)」でくわしく扱います。
サクラちゃん

サクラちゃん

「当」と「応」がどっちも「まさに〜べし」なのがややこしいです……。

ミスターT先生

ミスターT先生

「当」は当たり前の「当」、つまり当然・義務。「応」は「応援」ではなく推量と覚えよう。唐詩では「応」が「きっと〜だろう」と遠くの人や故郷を思いやる場面によく出てくるよ。

うかるくん

うかるくん

「須」は「すべからく」だから「すべて」かと思ってた! 「必要」なんだね。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 再読しない読み方:白文でいちばん問われるところ

難関大の白文(返り点も送り仮名もない漢文)では、再読文字と同じ字が、再読文字としては使われていない場面がよく出ます。見分けのポイントは、その字の下に、返って読むべき述語(動詞など)があるかです。下に動詞が続き、その動作が「これから起こる」「まだ起こっていない」なら再読、そうでなければ別の読みを考えます。

再読しない読み(白文で注意)将ひきゐる(率いる)・はた(それとも)且かつ(そのうえ)・しばらく猶なほ(やはり・まだ)当あたる・〜にあたりて(〜のとき)応こたふ(答える・応じる)未文末で「いまだし」(まだだ)下から返る述語があるか?で決める
再読文字と同じ字でも、再読しない読み方がある。下に返る述語があるかで決める
字再読しない読み例(書き下し)意味
将ひきゐる兵を将ゐて出づ(兵を)率いる
将はた〜か、将た〜かそれとも(選択の疑問)
将しやう(名詞)将軍・大将軍を率いる人
且かつ貧しく且つ賤しそのうえ・〜しながら
且しばらく且く待てひとまず・少しの間
猶なほ其の志猶ほ在りやはり・まだ・それでも
当あたる・〜にあたりて是の時に当たりて〜に相当する・〜のときに
応こたふ問ひに応ふ答える・応じる
宜むべなり・よろし宜なるかなもっともだ・ちょうどよい
未いまだし(文末)〜や未だしやまだだ

たとえば「且」は、抑揚(よくよう)の句法「且つ〜、況んや〜をや(〜でさえ…だ、まして〜はなおさらだ)」で「かつ」と読みます。これは句法のページ「抑揚の句法(且・猶・尚・況)」で扱います。「将」は、軍を指揮するという意味の動詞「将ゐる」として史記などの歴史の文章に多く出てきます。

難関大

将(ひきゐる)=再読しない

書き下し文王兵を将ひきゐて出づ。

(自作)

現代語訳王は兵を率いて出発した。

ここがポイント「将」の下の「兵」は名詞(目的語)で、「兵を〜しようとする」と読むと意味が通りません。動詞「将ゐる」と読み、一度だけ読みます。

2. 文末の「未」:「いまだし」と1回だけ読む

「未」が文の終わりにあり、下に返る述語がないときは、再読せずに「未だし(まだだ)」と1回だけ読みます。疑問の「や」をそえて「〜しや未だしや(〜したかどうか)」と読む例が有名です。

難関大

文末の未=再読しない

書き下し文来日綺窓の前、寒梅花を著けしや未いまだしや。

(王維「雑詩」)

現代語訳(あなたが故郷を)出発してきた日、美しい窓の前の寒梅は、もう花をつけていたか、それともまだだったか。

ここがポイント前の例文「応に故郷の事を知るべし」と同じ詩の後半です。最後の「未」は下に何もないので、「未だしや」と1回だけ読み、「〜したか、まだか」という疑問になります。
杖を手に立つ陶淵明を描いた掛け軸。上半分に長い文章が書きこまれている
陶淵明(陶潜、365ごろ〜427)の肖像。「時に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず」は陶淵明の「雑詩」の一節です。画像:禹之鼎の作と伝える「陶淵明像」(17〜18世紀、シカゴ美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

3. 「未嘗不」と二重否定

「未」は否定の字なので、もう1つの否定「不」と組むと二重否定になります。「未だ嘗て〜ずんばあらず」は「〜しなかったことは一度もない」、つまり「いつも〜した」という強い肯定です。このとき「未」の二度目は「ず」ではなく「あらず」と読み、上の「不」が「ずんば」となります。

難関大

未嘗不(二重否定)

書き下し文吾之を読みて、未いまだ嘗かつて泣かずんばあらず。

(自作)

現代語訳私はこれを読んで、泣かなかったことは一度もない(読むたびにいつも泣いた)。

ここがポイント「不」にはレ点と一点が同時につく「一レ」。「泣か」→レ点で「不(ずんば)」→一二点で「未」の二度目「あらず」と返ります。二重否定の形は句法のページ「二重否定の句法(無不・非不・不可不)」でまとめます。

4. 再読の読み方は「訓読のくふう」:流派と教科書の違い

中国語では「未」も「将」も1字1音で、2回読むことはありません。再読は、日本で漢文を日本語の語順に読みかえる訓読の中で生まれた方法です。「未」は「まだ」という時間の意味と「〜ない」という否定の意味をあわせ持つので、日本語にするには副詞と助動詞の2語が必要になります。それを1字を2回読むことで表したのが再読文字です。

訓読の読み方には、時代や学派によって違いがありました。江戸時代には、林羅山の「道春点」、後藤芝山の「後藤点」、佐藤一斎の「一斎点」などの訓点が広く使われ、送り仮名の付け方や、どの字を読むかに少しずつ違いがあったと説明されます。今の高校の教科書の読み方は、明治以降にこうした読み方を整理したものが土台になっています。そのため、次のようなゆれが今も残っています。

  • 「将」の二度目を「す」とし、動詞の側に「ント」をつける(将に問はんとす)のが一般的ですが、「将」の左に「ントス」とまとめて書く本もあります。
  • 「宜」を再読せず、「宜し」(よい)と1回だけ読む例もあります。文脈で、述語に返る形かどうかを確かめます。
  • 「且」を再読文字に入れずに8字とする本、「将」とまとめて数える本があります。
  • 「当」を「当に〜べし」の意味のうち「〜にちがいない(推量)」と訳す例もあり、「応」との区別は最後は文脈で決めます。

5. 「盍」と「蓋」、そして「須」の誤用

「盍」は「何不」の2字を1字にしたもの(合音)と説明されます。ですから訳は「どうして〜しないのか」、気持ちとしては「〜すればよいのに」です。形がよく似た「蓋」は「けだし(思うに・たぶん)」と読む別の字なので、白文で取りちがえないようにしましょう。

盍=「何」+「不」何なんぞ+不ず(ざる)盍1字にまとめた盍ぞ〜ざるなぜ〜しないのか(〜すればよいのに)「蓋(けだし)」とは別の字。形に注意
盍は「何」+「不」。なんぞ〜ざる=どうして〜しないのか

また、現代の日本語では「すべからく」を「すべて・みな」の意味で使う人がいますが、これは本来の意味ではありません。漢文の「須らく〜べし」は「ぜひ〜する必要がある」です。記述問題で「すべて」と訳すと誤りになります。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

白文では、まず「下に返る述語があるか」をチェック! あれば再読文字、なければ「ひきゐる」「かつ」「なほ」「いまだし」などの1回読みを考えるんですね。

よくあるまちがい

まちがい1:二度目を漢字で書いてしまう

「未だ知ら未」「当に勉励す当し」は誤り。二度目は助動詞にあたるのでひらがなで「ず」「べし」と書きます。一度目の「未だ」「当に」は漢字のままです。

まちがい2:「当」と「応」を同じ意味で訳す

どちらも「まさに〜べし」ですが、当=当然(〜すべきだ)、応=推量(きっと〜だろう)。選択肢の訳で必ず区別されます。

まちがい3:「将」「且」の「ん」を忘れる

「将に死すとす」は誤り。二度目「とす」の上は未然形+んなので、「将に死せんとす」「且に至らんとす」と書きます。

まちがい4:「須らく」を「すべて」と訳す

「須らく〜べし」は必要「ぜひ〜する必要がある」。「すべからく」の音から「すべて」と訳すのは誤りです。

まちがい5:返り点のない「未」「将」も再読してしまう

文末の「未(いまだし)」や、名詞を目的語にとる「将(ひきゐる)」は1回だけ読みます。再読文字には必ず返り点がつく、と覚えておきましょう。

練習問題

やさしい

  1. 再読文字の「未」の、一度目と二度目の読みを答えなさい。
    答えと解説を見る

    一度目「いまだ」、二度目「ず」。書き下し文では「未だ〜ず」と、一度目は漢字、二度目はひらがなで書く。

  2. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    未いまだ之を見ず。(未だ之を見ず。)意味は「まだこれを見ていない」。「之」は「これ」と読む代名詞。

ふつう

  1. 「当」「応」「宜」「須」は、どれも二度目に「べし」と読む。それぞれの意味(訳し方)を答えなさい。
    答えと解説を見る

    当=当然〜すべきだ(当然・義務)、応=きっと〜だろう(推量)、宜=〜するのがよい(適当)、須=ぜひ〜する必要がある(必要)。

  2. 次の白文を、返り点にしたがって書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    書き下し文:人将に去らんとす。 訳:人が今にも立ち去ろうとしている。「将」の二度目「とす」の上は、未然形+ん(去ら+ん+と)。

むずかしい

  1. 次の白文の「将」は再読文字か。読み方と理由を答えなさい。(自作)
    「韓信将兵撃趙」
    答えと解説を見る

    再読文字ではない。「将」の下の「兵」は名詞(目的語)で、「将」自身が「ひきゐる(率いる)」という動詞。書き下しは「韓信兵を将ゐて趙を撃つ」(韓信は兵を率いて趙を攻撃した)。「〜しようとする」と再読すると「兵を〜」の意味が通らない。

  2. 「盍」の読み方と意味を答え、なぜそう読むのかを説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「盍ぞ〜ざる」と読み、「どうして〜しないのか(〜すればよいのに)」という意味。「盍」は「何不」(なんぞ〜ざる)の2字を1字にしたものと説明されるので、「何」の読み「なんぞ」と「不」の読み「ざる」を一度目・二度目に読む。文末が連体形「ざる」になるのは、疑問の副詞「なんぞ」を受けるため。

関連ページ

「猶ほ〜のごとし」の「ごとし」は、古文の助動詞と同じ語です。古文の助動詞「ごとし」と漢文の「如し」もあわせて読むと、比況の表現がまとめて身につきます。故事成語は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で、論語や史記の言葉をたくさん読めます。

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よくある質問

再読文字とは何ですか?

漢文訓読で1つの字を2回読む字のことです。一度目は副詞として、返り点にしたがって下の語を読んだあと、二度目は助動詞として読みます。

再読文字は全部でいくつありますか?

一般に未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍の9字です。且を将とまとめて8字とする本もあります。

再読文字の書き下し文はどう書きますか?

一度目は漢字のまま送り仮名をつけ(未だ・当に)、二度目は助動詞にあたるのでひらがなで書きます(ず・べし)。例:未だ知らず、当に勉励すべし。

「当」と「応」はどう区別しますか?

どちらも「まさに〜べし」と読みますが、当は当然・義務(当然〜すべきだ)、応は推量(きっと〜だろう)です。訳で区別します。

再読文字の覚え方は?

「未・将・且・当・応・宜・須・猶・盍」と字を唱えて覚え、二度目の読みで「ず」「んとす」「べし」「ごとし」「ざる」のグループに分けると覚えやすくなります。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『論語』(先進・公冶長)、『史記』(老子韓非列伝)、陶淵明「雑詩」其の一、王維「雑詩」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文句法の標準的な説明(再読文字の読み・意味・書き下し)にもとづいて作成。字数の数え方や一部の読みは本によって違いがあり、本文中に記した
  • 画像:禹之鼎の作と伝える「陶淵明像」(17〜18世紀、シカゴ美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦