漢文の送り仮名のつけ方と訓読のことば|カタカナ・歴史的仮名遣い・活用語尾・ヲニト・〜んと欲す・〜ことなかれ【漢文】

漢文の送り仮名のつけ方と訓読のことば|カタカナ・歴史的仮名遣い・活用語尾・ヲニト・〜んと欲す・〜ことなかれ【漢文】

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ひとことで言うと

送り仮名は、漢文を日本語で読むために漢字の右下に書き足すカタカナで、歴史的仮名遣いで書きます。活用語尾・助詞・助動詞を補うもので、古文(文語)の文法で読みます。書き下し文ではひらがなに直します。

このページのポイント

  • 送り仮名は漢字の右下にカタカナで書く(返り点は左下)
  • かなづかいは歴史的仮名遣い。訓読では音便を使わない
  • 用言は活用語尾から送る。体言にはハ・ヲ・ニ・ト・ヨリなどの助詞を送る
  • 「ヲ・ニ・トに会ったら返る」。未然形+ば(仮定)と已然形+ば(確定)を区別
  • 〜んと欲す・〜ことなかれ・〜ざるべからず・〜ずんば・〜所と為る・曰はく など訓読特有の言い回し

はじめて(やさしく)

送り仮名(おくりがな)は、漢文の漢字の右下に小さく書くカタカナです。漢文は中国語なので、日本語の「て・に・を・は」や、動詞の終わりの「〜ぶ・〜ふ」が書かれていません。そこで、日本語として読むために足りない部分をカタカナで書き足したものが送り仮名です。

たとえば「学而時習之」は、そのままでは日本語になりません。「学」に「ビテ」、「時」に「ニ」、「習」に「フ」、「之」に「ヲ」を送ると、「学びて時に之を習ふ」と日本語で読めるようになります。漢字の左下には、読む順番を示す返り点(レ点・一二点)を書きます。右下が送り仮名、左下が返り点、と位置で覚えましょう。

漢字のまわりの「書きこみ」の位置習フ送り仮名右下レ返り点左下なら読みがな右側送り仮名=カタカナ・歴史的仮名遣い(縦書きの訓読文の場合)
送り仮名は漢字の右下にカタカナで、返り点は左下に書く

送り仮名には、大きく3つの役目があります。①動詞や形容詞の形(活用語尾)を示す。②「は・を・に・と・より」などの助詞を補う。③「る・ず・べし・ん」などの助動詞を補う。どれも、もとの漢文には書かれていない日本語の部分です。

送り仮名の3つの役目活用語尾動詞・形容詞の形を決める学ブ・学ビ・楽シ助詞「は・を・に・と・より」など朋ハ・之ヲ・人ニ助動詞「る・ず・べし・ん」など知ラン・謗ラル漢文に書かれていない日本語を、送り仮名で足す
送り仮名の3つの役目。活用語尾・助詞・助動詞を書き足して、日本語として読めるようにする
ハルちゃん

ハルちゃん

どうして送り仮名はカタカナなんですか? ひらがなのほうが読みやすいのに。

ミスターT先生

ミスターT先生

いい質問だ。昔の人は、お経や中国の本の行間のせまいすき間に、読み方を書きこんだ。そのとき、漢字の一部を取った画数の少ない字が便利だった。それがカタカナの始まりと言われているんだ。

まなぶくん

まなぶくん

じゃあ、カタカナは漢文を読むために生まれた文字なんですね!

ミスターT先生

ミスターT先生

そう考える説明が一般的だよ。だから今でも、漢文の送り仮名はカタカナで書く。そして書き下し文にするときに、ひらがなに直すんだ。

送り仮名は、歴史的仮名遣い(「言ふ」「思ふ」「をかし」のような昔のかなづかい)で書きます。「習フ」を「習ウ」とは書きません。古文と同じかなづかいなので、古文の勉強がそのまま役に立ちます(歴史的仮名遣いの読み方・書き方)。

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例文1 送り仮名を足して日本語にする

書き下し文学びて時に之を習ふ。

(『論語』学而)

現代語訳学んで、機会があるたびにくり返し習う。

ここがポイント「ビテ」は動詞「学ぶ」の活用語尾「び」+助詞「て」、「ニ」と「ヲ」は助詞、「フ」は動詞「習ふ」の活用語尾。「習ふ」は歴史的仮名遣いです。うすい字の「而」は読まない置き字です。
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例文2 返り点のない文でも送り仮名は要る

書き下し文春来たりて花開く。

(自作)

現代語訳春がやって来て、花が咲く。

ここがポイント返り点がないので、上から順に読みます。それでも「来」に「タリテ」、「開」に「ク」を送らないと日本語になりません。送り仮名は、返り点がない文でも必要です。
本を開いて説明するミスターT先生

ミスターT先生

送り仮名は「漢文と日本語のすき間をうめる小さな橋」だ。カタカナで書いて、書き下し文ではひらがなにする。この往復に慣れれば、漢文はぐっと読みやすくなるよ。

ここまでのまとめ

  • 送り仮名=漢字の右下に書くカタカナ(返り点は左下)
  • 役目は活用語尾・助詞・助動詞を補うこと
  • 歴史的仮名遣いで書き、書き下し文ではひらがなに直す

しっかり(共通テスト)

送り仮名のきまり

きまり内容例
文字カタカナで、漢字の右下に書く習フ
かなづかい歴史的仮名遣いで書く言フ・思ヒテ・曰ハク
用言活用語尾から送る(語幹は漢字)学ブ・楽シ・静カナリ
体言下に続く助詞を送る朋ハ・人ニ・遠方ヨリ
助動詞漢字に表れない助動詞も送る知ラン(ん=む)・治メラル
再読文字一度目は右下、二度目は左下に送る未ダ…ズ
返読文字の字「不」「可」などの下にも送る不ル(ざる)・可カラ(べから)

再読文字の送り仮名は、一度目の読みの送り仮名を右下、二度目の読みの送り仮名を左下に書くのが一般的です(再読文字(未・将・当・応・宜・須・猶・盍)の読み方)。この辞典の縦書きの例文でも、二度目の送り仮名は字の左下に小さく出しています。

活用語尾の送り方

動詞・形容詞・形容動詞などの用言は、語幹を漢字、活用語尾をカタカナで送ります。活用は古文(文語)の活用です。下に続く言葉によって、送り仮名が変わります。

活用語尾を送る(四段「学ぶ」)活用形訓読文書き下し文未然形学バ学ばず・学ばば連用形学ビ学びて終止形学ブ学ぶ。連体形学ブ学ぶ者已然形学ベ学べども命令形学ベ学べ語幹は漢字、変わる部分(活用語尾)をカタカナで送る
四段動詞「学ぶ」の送り仮名。語幹「学」は漢字のまま、活用語尾をカタカナで送る
品詞・活用例(訓読文)書き下し文メモ
四段動詞学ブ・聞カバ学ぶ・聞かば古文の四段活用と同じ
上一段動詞見ル見る「見」は1字で「み」
下二段動詞求ム・改ムルニ求む・改むるに連体形は「〜うる」
サ変動詞欲ス・制スル欲す・制する漢語+「す」が多い(変格活用)
形容詞楽シ・楽シカラ楽し・楽しから「から」は補助活用(形容詞)
形容動詞静カナリ・可ナリ静かなり・可なり形容動詞のナリ活用

送り仮名をどこから送るかは、教科書によって少し違います。たとえば「来たる」を「来タル」と送るか「来ル」(きたる)と送るかなどです。入試の問題文では、書いてある送り仮名に従うのが原則です。

助詞の送り仮名:ハ・ヲ・ニ・ト・ヨリ

名詞などの体言の下には、助詞を送ります。とくに多いのが「ハ・ヲ・ニ・ト・ヨリ・ノ・モ」です。中でも「ヲ・ニ・ト」を送った字の次は、上の動詞に返って読むことが多いので、「ヲ・ニ・トに会ったら返る」という覚え方が昔から知られています。漢文では、目的語(〜を)や場所・相手(〜に・〜と)が動詞の下にくるからです(漢文の語順(主語・述語・目的語・補語))。

「ヲ・ニ・ト」に会ったら返る読書ヲレ書を読む登山ニレ山に登る与友トレ友と(する)目的語・場所・相手は、動詞の下にくる(目安。最後は返り点で確かめる)
「ヲ・ニ・トに会ったら返る」。目的語・場所・相手は動詞の下にくるので、返って読む
送り仮名働き例
ハ主語・話題(〜は)朋ハ・天時ハ
ヲ目的語(〜を)之ヲ・道ヲ
ニ場所・時・相手(〜に)人ニ・時ニ
ト並べる・引用(〜と)友ト・霜カト
ヨリ起点・比較(〜から・〜より)藍ヨリ・虎ヨリモ
ノ連体修飾(〜の)己ノ・天ノ

置き字の「於・于・乎」がある文では、その働き(場所・対象・比較など)を送り仮名の「ニ・ヲ・ヨリ」で表します。置き字そのものは読まないので、送り仮名が意味の手がかりになります(置き字(而・於・于・乎・矣・焉)の働き)。

例文で確かめる

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例文3 「ニシテ」と助詞「ニ」

書き下し文吾われ十有五じふいうごにして学に志す。

(『論語』為政)

現代語訳わたしは十五歳で学問に志を立てた。

ここがポイント「十有五」の送り仮名「ニシテ」は、断定の助動詞「なり」の連用形「に」+接続助詞「して」で、「〜で・〜にして」。置き字「而」の働きをここで表しています。「学」に送った「ニ」は、置き字「于」の「〜に(対象)」の働き。「十有五」の「有」は「又(さらに)」の意味で「いう」と読みます。
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例文4 已然形+「バ」(確定条件)

書き下し文学びて思はざれば則すなはち罔くらし、思ひて学ばざれば則すなはち殆あやふし。

(『論語』為政)

現代語訳学んでも自分で考えなければ、(知識が)はっきりしない。考えても学ばなければ、(独りよがりで)あぶない。

ここがポイント「不」の送り仮名「レバ」で「ざれば」(打消「ず」の已然形+ば)。古文では已然形+ば=確定条件(〜ので・〜と)です。「則ち」は「〜と、そのときは」と前後をつなぐ字。「殆」は「殆フシ」と送る教科書もあります(接続助詞「ば」の未然形・已然形)。
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例文5 未然形+「バ」(仮定条件)

書き下し文五十歩を以て百歩を笑はば、則すなはち何如いかん。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳(戦場で)五十歩逃げた者が、百歩逃げた者を笑ったとしたら、どうでしょうか。

ここがポイント「笑」の送り仮名「ハバ」は、四段「笑ふ」の未然形「笑は」+ばで、「もし笑ったなら」という仮定。例文4の已然形+ばとの違いが入試でねらわれます。故事成語「五十歩百歩」の出典で、記事五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)でも読めます。

訓読特有の言い回し(予告)

漢文を訓読すると、ふだんの古文にはあまり出てこない、訓読ならではの言い回しがたくさん出てきます。送り仮名がつくる言い回しなので、ここでまとめて予告しておきます。くわしくは、それぞれの句法のページで学びます。

訓読でよく出る言い回し〜んと欲す〜しようとする・〜したい欲〜ことなかれ〜してはいけない勿・無・毋・莫〜ざるべからず〜しなければならない不可不〜ずんばもし〜しないなら不〜〜所と為る〜される(受身)為〜所〜〜をして〜しむ〜に〜させる(使役)使・令くわしくは句法のページで1つずつ
訓読でよく出る言い回し。送り仮名と返り点がつくる決まった形
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例文6 「〜んと欲す」(〜したい・〜しようとする)

書き下し文己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す。

(『論語』雍也)

現代語訳自分が立ちたいと思えば人を立たせ、自分が目的を達したいと思えば人に達成させる。

ここがポイント「立タント」は「立た+ん(助動詞「む」)+と」。「〜んと欲す」は「〜したいと思う・〜しようとする」という訓読の決まった形です。「ん」は古文の助動詞「む」が「ん」と書かれたもの。
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例文7 「〜ことなかれ」(禁止)

書き下し文過ちては則すなはち改むるに憚ること勿かれ。

(『論語』学而)

現代語訳あやまちをおかしたら、ためらわずにすぐ改めなさい。

ここがポイント「憚ルコト」の「ルコト」+「勿カレ」で「憚ること勿かれ」。連体形+「こと」+「なかれ」が禁止の形です。「改ムルニ」は下二段「改む」の連体形「改むる」+「に」。
難関大

例文8 「〜ざるべからず」(二重否定)

書き下し文父母の年は、知らざるべからざるなり。

(『論語』里仁)

現代語訳父母の年齢は、知っておかなければならない。

ここがポイントレ点が三つ続き「知→不→可→不」と返ります。「知らざるべからず」は「知らないということがあってはならない」=「必ず知っておけ」。ここでは下に「也(なり)」が続くので連体形「ざる」になっています。「ず」「べし」は古文の助動詞「ず」・助動詞「べし」と同じ活用です。
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例文9 「〜ずんば」(もし〜しないなら)

書き下し文虎穴に入らずんば、虎子を得ず。

(『後漢書』班超伝)

現代語訳虎の住む穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない(危険をおかさなければ大きな成果は得られない)。

ここがポイント「不ンバ」で「ずんば」。打消「ず」+「は」がなまった形と説明され、「もし〜しないなら」という仮定を表します。故事成語「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の出典です。
難関大

例文10 「〜所と為る」(受身)

書き下し文先さきんずれば即すなはち人を制し、後おくるれば則すなはち人の制する所と為る。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳先手を取れば人をおさえることができ、おくれをとれば人におさえられる。

ここがポイント「為ル」と「所ト」の送り仮名で「人の制する所と為る」(人に制される)という受身の形ができます。「所」には一レ点がついていて、「制」を読んでから「所」、そして「為」に返ります。
うかるくん

うかるくん

送り仮名が一つ違うだけで意味が変わるなんて、こわいなあ。

ミスターT先生

ミスターT先生

だからこそ得点源なんだ。「聞かば」と「聞けば」、「知らず」と「知らざる」――違いを生むのは、全部古文の文法。古文の助動詞と接続助詞をしっかり覚えておけば、漢文の送り仮名はこわくないよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

古文と漢文は、送り仮名でつながっているんだね。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 送り仮名は「古文の文法」そのもの

漢文の送り仮名は、平安時代以来の文語(古文)の文法で書かれています。だから、送り仮名の意味を正確に読むには、古文文法の知識が欠かせません。とくに入試でよくねらわれるのは、次の対応です。

送り仮名は「古文の文法」で読む聞カバ未然形+ばもし〜なら(仮定)思ハザレバ已然形+ば〜ので・〜と(確定)知ラン助動詞「む」〜だろう・〜しよう曰ハクク語法〜することには畏ルベシ助動詞「べし」〜すべきだ古文の文法がわかると、送り仮名の意味がわかる
送り仮名と古文文法の対応。未然形+ば・已然形+ば・む(ん)・ク語法・べし
送り仮名古文文法意味古文文法辞典
聞カバ・笑ハバ未然形+ばもし〜なら(仮定)接続助詞「ば」
思ハザレバ已然形+ば〜ので・〜と(確定)接続助詞の一覧
知ラン助動詞「む(ん)」推量・意志助動詞「む」
不ル・不レバ助動詞「ず」打消(ざる・ざれ)助動詞「ず」
可シ・可カラ助動詞「べし」可能・当然など助動詞「べし」
使ム(しむ)助動詞「しむ」使役助動詞「す・さす・しむ」
見ル・被ル(る・らる)助動詞「る・らる」受身助動詞「る・らる」
為リ(たり)助動詞「たり」断定断定の「なり・たり」

このように、漢文の句法の多くは、古文の助動詞を漢字一字に当てはめたものです。逆に言えば、古文の助動詞の意味・活用・接続を覚えていれば、漢文の句法は「どの字をどの助動詞で読むか」を覚えるだけで済みます。比況の「如・若」と古文の「ごとし」の関係は、古文の助動詞「ごとし」と漢文の「如し」でくわしく比べています。

2. ク語法:「曰はく」「疑ふらくは」「願はくは」

漢文訓読には、ク語法とよばれる古い言い方がよく出てきます。活用語に「く」「らく」をつけて「〜すること」と名詞のようにする言い方で、奈良時代の日本語にあったものが、訓読の中で生き残ったと説明されます。

  • 曰ハク(いはく):言うことには。「子曰はく」は「先生がおっしゃることには」。
  • 疑フラクハ(うたがふらくは):疑うことには・もしかすると。
  • 願ハクハ(ねがはくは):願うことには・どうか。
  • 恐ラクハ(おそらくは):恐れることには・たぶん。今の「おそらく」のもと。
難関大

例文11 ク語法「疑ふらくは」

書き下し文疑ふらくは是これ地上の霜かと。

(李白「静夜思」)

現代語訳地面におりた霜ではないかと思った。

ここがポイント寝台の前にさしこむ月の光を見て、霜かと思った、という第2句。「疑フラクハ」は四段「疑ふ」のク語法で「疑うことには」。「霜カト」は「霜であろうかと」と、疑問の「か」+引用の「と」を送っています。

3. 訓読の言い回しは、今の日本語に生きている

訓読の言い回しは、明治時代の漢文訓読調の文章を通して、今の日本語にもたくさん残っています。「〜せざるべからず」「〜んとす」「いわゆる(所謂)」「ゆえん(所以)」「すべからく(須)」「おそらく」「ねがわくは」などは、どれも訓読から広まった言い方です。京大の国語の文語文(明治の文章)の問題も、この訓読調で書かれています(記事京大国語 文語文(明治擬古文)の勉強法)。

江戸時代の版本の一部。大きな漢字の右下に小さなカタカナの送り仮名、左下に返り点が刷られている。「饅頭」という見出しがある
江戸時代に出た漢文の笑い話の本『刪笑府(さんしょうふ)』(1776年)の「饅頭」の話。漢字の右下にカタカナの送り仮名、左下に返り点が刷られています。この話は、落語「まんじゅうこわい」のもとになった話の一つとされます。画像:風来山人訳『刪笑府』(安永5年=1776年、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

4. 送り仮名の量と、入試での「送り仮名の省略」

江戸時代の版本や明治の教科書では、送り仮名をたっぷりつけるものも、最小限にしかつけないものもありました。今の教科書でも、送り仮名の量は少しずつ違います。また、入試の問題文では、問いに関係する部分の送り仮名や返り点を省くことがよくあります。「傍線部を書き下し文に改めよ」「返り点と送り仮名をつけよ」という問題では、自分で送り仮名を補う力が問われているのです。

  1. まず品詞を決める(名詞か、動詞か、助動詞にあたる字か)。
  2. 動詞なら何活用かを考える(学ぶ=四段、求む=下二段、欲す=サ変)。
  3. 下に続く語から活用形を決める(「て」が続けば連用形、「ば」なら未然形か已然形)。
  4. 「ヲ・ニ・ト・ヨリ」など助詞を補う。置き字の働き(於=ニ・ヨリなど)も送り仮名で表す。
  5. 最後に歴史的仮名遣いと、音便にしていないかを確かめる。

訓読では「学んで」「思うて」のような音便を使わず、「学びて」「思ひて」と読むのが伝統です(古文の音便とくらべてみましょう)。送り仮名を補う問題で音便を書くと、減点されることがあります。

サクラちゃん

サクラちゃん

「来タル」と「来ル」、どっちが正しいんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

どちらも見かける。教科書や本によって送り方が違うところなんだ。入試では、問題文に書いてある送り仮名に従えばいい。自分で補うときは、文法的に正しい形なら、ふつうは認められるよ。

よくあるまちがい

まちがい1:送り仮名を現代仮名遣いで書く

「曰ワク」「習ウ」「思イテ」は誤り。送り仮名は歴史的仮名遣いで「曰ハク」「習フ」「思ヒテ」と書きます(歴史的仮名遣い)。

まちがい2:送り仮名をひらがなで書く

訓読文の送り仮名はカタカナです。「返り点と送り仮名をつけよ」という問題で、ひらがなで送ると減点されることがあります。ひらがなにするのは書き下し文のときだけです。

まちがい3:未然形+ばと已然形+ばを同じに訳す

「聞カバ」(もし聞いたなら:仮定)と「聞ケバ」(聞いたところ・聞くと:確定)は意味が違います。送り仮名の一字の違いが訳の違いになります。

まちがい4:音便で送る

「学ンデ」「思ウテ」は誤り。訓読では音便を使わず、「学ビテ」「思ヒテ」と送ります。

練習問題

練習問題はすべて合格大作戦の自作です。答えと解説は押すと開きます。

やさしい

  1. 漢文の送り仮名は、漢字のどの位置に、どの文字で書きますか。
    答えと解説を見る

    漢字の右下に、カタカナで書く。かなづかいは歴史的仮名遣い。返り点は左下に書く。

  2. 次の訓読文の送り仮名を確かめて、書き下し文にしなさい。
    答えと解説を見る

    山高く水清し。(自作)

    返り点がないので上から読み、送り仮名「ク」「シ」をひらがなにする。「高く」「清し」は形容詞(ク活用)の連用形・終止形。

ふつう

  1. 次の①②を訳し分けなさい。①雨降らば、行かず。②雨降れば、行かず。(どちらも自作の書き下し文)
    答えと解説を見る

    ①「もし雨が降ったら、行かない」(未然形「降ら」+ば=仮定)。②「雨が降るので(降ると)、行かない」(已然形「降れ」+ば=確定)。

  2. 「勿施於人」に「人に施すこと勿かれ」と読むように送り仮名をつけるとき、「施」と「勿」の送り仮名をそれぞれ答えなさい。
    答えと解説を見る

    施=スコト、勿=カレ。連体形「施す」+「こと」+「なかれ」で禁止。「人」には「ニ」を送り、「於」は置き字なので送り仮名をつけない。

むずかしい

  1. 「子曰」を「子曰はく」と読むとき、「曰はく」の文法的な説明をしなさい。
    答えと解説を見る

    四段動詞「曰ふ(いふ)」の未然形「曰は」に接尾語「く」がついたク語法で、「言うことには」と名詞のように働く。奈良時代の言い方が漢文訓読の中に残ったもの。「願はくは」「恐らくは」「疑ふらくは」も同じ。

  2. 送り仮名が省かれた次の文を、「(わたしは)書を読まんと欲す」と読むとき、必要な返り点と送り仮名を説明しなさい。「欲読書」(自作)
    答えと解説を見る

    読む順は「書→読→欲」。1字ずつ上に返るので、「欲」と「読」にレ点をつける(レ点が二つ続く形)。送り仮名は、書にヲ、読にマント、欲にス。「読まん」は四段「読む」の未然形+助動詞「む(ん)」、「欲す」はサ変動詞。書き下し文は「書を読まんと欲す。」。

関連ページ

送り仮名を正しく読むための古文文法は、古文文法辞典(動詞・助動詞・係り結び・敬語)で1項目ずつ確かめられます。とくに活用形(未然形・連用形・已然形)、格助詞(の・が・を・に・と・より)、接続助詞「ば」は、漢文の送り仮名と直結しています。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

漢文の送り仮名はなぜカタカナですか?

平安時代ごろ、漢文の行間のせまいすき間に読み方を書きこむとき、漢字の一部を取った画数の少ないカタカナが使われたためと説明されます。その伝統で、今も訓読文の送り仮名はカタカナで書き、書き下し文にするときにひらがなに直します。

送り仮名は現代仮名遣いで書いてもいいですか?

いいえ。送り仮名は歴史的仮名遣いで書きます。「曰はく」「習ふ」「思ひて」のように書き、「曰わく」「習う」とは書きません。また、「学んで」のような音便も使いません。

「ヲ・ニ・トに会ったら返る」とは何ですか?

送り仮名にヲ・ニ・トがついた字の次は、上の字(動詞など)に返って読むことが多い、という覚え方です。漢文では目的語や場所・相手が動詞の下にくるからです。目安なので、最後は返り点で確かめます。

送り仮名の「ば」の意味はどう見分けますか?

古文と同じで、未然形+ば(聞かば・笑はば)は「もし〜なら」の仮定、已然形+ば(聞けば・思はざれば)は「〜ので・〜と」の確定です。

訓読特有の言い回しにはどんなものがありますか?

「〜んと欲す(〜したい)」「〜ことなかれ(〜するな)」「〜ざるべからず(〜しなければならない)」「〜ずんば(もし〜しないなら)」「〜所と為る(〜される)」「〜をして〜しむ(〜に〜させる)」「曰はく(言うことには)」などがあります。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『論語』(学而・為政・雍也・里仁)、『孟子』梁恵王上、『後漢書』班超伝、『史記』項羽本紀、李白「静夜思」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 送り仮名のきまり・ク語法・訓読の言い回しは、高校の教科書・漢文句法の参考書で一般的な説明にもとづく。送り仮名の量や送り方は本によって違いがあり、本文中に記した
  • 画像:風来山人訳『刪笑府』(安永5年=1776年、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦