古文文法辞典 › 入門
中学受験高校受験大学受験
ひとことで言うと
歴史的仮名遣いは昔のかなの書き方。ことばの途中・終わりの「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」、「ゐ・ゑ・を」は「い・え・お」、「ぢ・づ」は「じ・ず」と読み、母音が続く所(けふ→きょう)はのばす音に直します。
このページのポイント
- 語中・語尾のハ行→ワ行(ことばの頭はそのまま)
- ゐ・ゑ・を→い・え・お、ぢ・づ→じ・ず、くわ→か、む→ん
- au→ô・iu→yû・eu→yô(けふ→きょう、てふ→ちょう)
- 直す順番はハ行→ワ行が先、のばす音はあと
- 中学受験・高校受験では「現代仮名遣いに直し、ひらがなで書く」問題が定番
はじめて(やさしく):歴史的仮名遣いとは
古文の教科書を開くと、「けふ」「をとこ」「いづれ」のように、今とはちがう書き方のことばが出てきます。これは、昔のひらがなの書き方で、歴史的仮名遣い(れきしてきかなづかい)といいます。今の私たちの書き方は現代仮名遣い(げんだいかなづかい)です。
書き方はちがっても、ことばは同じです。「けふ」は「今日(きょう)」、「をとこ」は「男(おとこ)」。読むときは、今の読み方で読みます。
まなぶくん
「けふ」が「きょう」? 字と読み方がぜんぜんちがうよ。
合格先生
昔は「け・ふ」と書いて、そのとおりに近い音で話していたんだ。でも長い年月で、話す音のほうが変わっていった。書き方は昔のまま、音だけ変わったんだよ。
ハルちゃん
じゃあ、昔の書き方の決まりを知っていれば、読めるようになるの?
合格先生
そのとおり。決まりは多くないよ。いちばん大事なのが、次の「ハ行はワ行」の決まりだ。
いちばん大事な決まり:途中のハ行はワ行で読む
ことばの途中や終わりにある「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「わ・い・う・え・お」と読みます。「川」は「かわ」、「思ふ」は「おもう」、「顔」は「かお」です。ただし、「はな(花)」「ひかり(光)」のようにことばの頭にあるときは、そのまま読みます。

まなぶくん
わかった!「かは」は川の「かわ」で、「はな」は頭だから「はな」のまま。途中か、頭かを見ればいいんだね。
このほかに、「ゐ・ゑ・を」は「い・え・お」、「ぢ・づ」は「じ・ず」と読みます。古文の「いづれ」は、今の「いずれ」です(くわしくは記事「いずれ」と「いづれ」どっちが正しい?)。

中学受験・高校受験ではどう出る?
古文が出る問題では、「――線部を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい」という問題がとてもよく出ます。答えはひらがなで書き、漢字の部分は問われません。「いふ」「やうやう」「をかし」「あはれ」など、よく出ることばは決まっているので、このページの決まりを1つずつ覚えれば得点できます。
ここだけは覚えよう
- ことばの途中・終わりの「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「わ・い・う・え・お」(頭はそのまま)
- 「ゐ・ゑ・を」→「い・え・お」、「ぢ・づ」→「じ・ず」
- 「けふ→きょう」「てふ→ちょう」のように母音が続く所はのばす音になる
しっかり(大学受験の基礎〜標準):直し方のルール一覧
歴史的仮名遣いのルール一覧
| ルール | 歴史的仮名遣い | 現代仮名遣い |
|---|---|---|
| 語中・語尾のハ行 → ワ行 | かは(川)・いふ(言ふ)・こひ(恋)・まへ(前)・かほ(顔) | かわ・いう・こい・まえ・かお |
| ゐ・ゑ・を → い・え・お | ゐなか(田舎)・こゑ(声)・をかし | いなか・こえ・おかし |
| ぢ・づ → じ・ず | もみぢ・はぢ(恥)・よろづ・みづ(水) | もみじ・はじ・よろず・みず |
| くわ・ぐわ → か・が | くわじ(火事)・ぐわんじつ(元日) | かじ・がんじつ |
| む → ん(助動詞「む」など) | 行かむ・見む・なむ | いかん・みん・なん |
| au → ô(ア段+う) | やうやう・かうべ(首)・まうす(申す) | ようよう・こうべ・もうす |
| iu → yû(イ段+う) | うつくしう・きうり | うつくしゅう・きゅうり |
| eu → yô(エ段+う) | けふ(今日)・てふ(蝶)・せうと(兄人) | きょう・ちょう・しょうと |
ルールは「書き方を見て、今の読み方を決める」ためのものです。「む→ん」は助動詞の「む(ん)」や係助詞の「なむ」などにあてはまり、「むかし」「むすめ」の「む」はそのままです(助動詞「む」は助動詞「む(ん)」のページ)。
見分けの流れ図:直す順番
いちばん多いまちがいは、順番をとばすことです。「けふ」をいきなり見ても「きょう」にはたどり着けません。次の順で、1つずつ直します。

合格先生
「ハ行→ワ行が先、のばす音はあと」。この順番さえ守れば、「さうらふ」のような長いことばも「さうらう→そうろう」と必ず読めるよ。
例文で確かめる
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきのみやつことなむいひける。
(竹取物語・冒頭)
現代語訳今では昔のことだが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入って竹を取っては、いろいろなことに使っていた。名前を、さぬきのみやつこといった。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
(枕草子・第一段)
現代語訳春は明け方(がよい)。だんだん白くなっていく山ぎわの空が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているの(がよい)。
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
(百人一首61番・伊勢大輔(いにしへの))
現代語訳昔の奈良の都の八重桜が、今日はこの九重(宮中)で美しく咲きにおっていることだ。
恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
(百人一首41番・壬生忠見(恋すてふ))
現代語訳恋をしているという私のうわさは、早くも立ってしまったことだ。人に知られないように、ひそかに思いはじめたのに。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
(土佐日記・冒頭)
現代語訳男も書くという日記というものを、女(の私)も書いてみようと思って書くのである。
もっと深く(難関大・上級者)
1. なぜ書き方と読み方がずれたのか
平安時代の中ごろまでは、ほぼ書いたとおりに発音していたと考えられています。その後、ことばの途中のハ行の音がワ行の音に変わり(ハ行転呼)、「ゐ・ゑ・を」と「い・え・お」の区別も、発音の上では失われました。音が変わったのに書き方が残ったため、「書き方」と「読み方」がずれたのです。
鎌倉時代には藤原定家が書き分けの決まりを示し(定家仮名遣い)、後に広く使われました。江戸時代の1695年、契沖(けいちゅう)が『和字正濫鈔』で、平安時代中ごろより前の古い本の書き方にもどるべきだと示しました。これがもとになって整えられたのが、いわゆる歴史的仮名遣いで、明治以降は学校や新聞などでも使われました。戦後、1946年に「現代かなづかい」、1986年に「現代仮名遣い」が内閣告示として示され、今の書き方になっています。
2. 「ぢ・づ」が今も残る場合
現代仮名遣いでも、「ぢ・づ」を使うことがあります。同じ音が続いて濁るとき(ちぢむ・つづく)と、2つの語がつながって濁るとき(はなぢ・みかづき)です。徒然草の「つれづれなるままに」の「つれづれ」は、今もそのまま「つれづれ」と書きます。逆に、そのどちらでもない「いづれ」「よろづ」は「いずれ」「よろず」に直します。
つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
(徒然草・序段)
現代語訳することもなく退屈なのにまかせて、一日中、硯に向かって、心に浮かんでは消えていくとりとめもないことを、なんとなく書きつけていると、妙にばかばかしい気持ちになることだ。
3. 「おお」と「おう」の書き分けは歴史的仮名遣いのなごり
今の「おおきい」「とおい」「こおり」は「おお」、「おうぎ」「こうべ」は「おう」と書きます。どちらものばすオ段の音なのに書き方がちがうのは、歴史的仮名遣いで「ほ」「を」だった語は「おお」、「あう」「あふ」などだった語は「おう」と書く、という決まりがあるからです。現代仮名遣いを正しく書くためにも、歴史的仮名遣いの知識が役に立ちます。
4. 例外と、まぎらわしい所
- 2つの語がつながったことば:後ろの語の頭のハ行はそのまま。「あさひ(朝+日)」はそのまま、「ゆふひ(夕日)」は「ゆうひ」(「ゆふ」の「ふ」だけ直す)。
- 例外として今もハ行で読むことばもあります(「はは(母)」など)。
- 助詞の「は」「へ」「を」は、現代仮名遣いでも「は・へ・を」と書きます。直す問題では、そのままにしておきます。
- 「いふ」は「いう」:イ段+う(iu→yû)の決まりで「ゆう」としたくなりますが、現代仮名遣いでは「言う」は「いう」と書く決まりです。
- 小さい字がない:古文の本文では「きやう(京)」「あつて」のように、拗音・促音を大きく書くことがあります。読みは「きょう」「あって」。
- 漢字の音読みの書き方(字音仮名遣い):「蝶」は「てふ」、「京」は「きやう」、「校」は「かう」のように、漢語にも昔の書き方があります。江戸時代の本居宣長『字音仮字用格』などで整理されました。入試で書かせることは少ないですが、和歌の「てふ」が「蝶」か「といふ」かの判断で必要になることがあります。
5. 百人一首で読みの練習
百人一首はかるたの読み札が歴史的仮名遣いで書かれていることが多く、読みの練習にぴったりです。17番「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」は、竜田川(たつたがは)→「たつたがわ」、くれなゐ→「くれない」、水(みづ)→「みず」。3番「あしびきの……ながながし夜をひとりかも寝む」の「寝む」は「ねん」、21番「今来むといひしばかりに」は「いまこんと いいしばかりに」と読みます。2番「春過ぎて……衣ほすてふ天の香具山」の「てふ」も「ちょう」です。
うかるくん
「てふ」って、ちょうちょの「蝶」と、「という」の2つがあるんですか?
合格先生
そう。読みはどちらも「ちょう」だけど、和歌の「恋すてふ」「衣ほすてふ」は「〜という」の意味だ。
サクラちゃん
読み方を覚えたら、次は意味。かるたの歌が一気にわかってきそう!
合格先生
いいね。読みの次は、現代語と意味がちがう古語や品詞へ進もう。
よくあるまちがい
まちがい1:ことばの頭のハ行まで直す
「はな」を「わな」、「ひと」を「いと」にするのはまちがい。直すのは途中と終わりのハ行だけです。
まちがい2:「けふ」を「けう」で止める
「けふ→けう」で終わりではありません。母音が続く所(eu)をのばす音にして「きょう」まで直します。
まちがい3:「いふ」を「ゆう」と書く
現代仮名遣いでは「いう」です。「言う」は発音が「ゆー」に近くても「いう」と書く決まりです。
まちがい4:助詞の「を」「は」まで直す
「竹を取りつつ」の「を」は助詞なので、現代仮名遣いでも「を」。「春は」の「は」もそのままです。わからなければ受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
練習問題
やさしい
- 次のことばを現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。(自作)
① かは(川) ② こゑ(声) ③ をとこ(男)答えと解説を見る
① かわ(語尾のハ行→ワ行) ② こえ(ゑ→え) ③ おとこ(を→お)
- 次のことばを現代仮名遣いに直し、ひらがなで書きなさい。(自作)
① いづれ ② もみぢ ③ はな(花)答えと解説を見る
① いずれ ② もみじ(ぢ・づ→じ・ず) ③ はな(ことばの頭のハ行はそのまま)
ふつう
- 「やうやう」「けふ」「うつくしう」を現代仮名遣いに直しなさい。
答えと解説を見る
ようよう(au→ô)、きょう(ふ→う、eu→yô)、うつくしゅう(iu→yû)。
- 百人一首61番「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」を、すべてひらがなの現代仮名遣いで書きなさい。
答えと解説を見る
いにしえのならのみやこのやえざくらきょうここのえににおいぬるかな。いにしへ→いにしえ、やへ→やえ、けふ→きょう、ここのへ→ここのえ、にほひ→におい。
むずかしい
- 「さうらふ」「あふぎ」を現代仮名遣いに直し、直す順番を説明しなさい。
答えと解説を見る
そうろう・おうぎ。まず語中・語尾のハ行をワ行にして「さうらう」「あうぎ」、次に母音が続く所(au)をのばす音(ô)にして「そうろう」「おうぎ」。順番を逆にすると正しく直せません。
- 「つれづれなるままに」の「つれづれ」は、現代仮名遣いで「つれずれ」と書かないのはなぜですか。
答えと解説を見る
「つれ」と「つれ」がつながって後ろが濁った語(連濁)だからです。現代仮名遣いでは、同音の連呼や2語の連合で濁る場合は「ぢ・づ」を使います。
関連ページ
- 古文の品詞(10品詞の見分け方):読めたら、次はことばの種類
- 活用形:未然形・連用形……6つの形
- 現代語と意味がちがう古語:「をかし」「あはれ」の意味
- 主語の補い方:古文の主語を見つける
- 係り結び:「こそ〜けれ」など文末の変化
- 助動詞「む(ん)」:「む」を「ん」と読む助動詞
- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 「いずれ」と「いづれ」
歴史的仮名遣いのきまり - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 徒然草 第百八十八段
兼好法師の文章を読む - 古典と古文のちがい
ことばの意味の整理 - 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 中学受験掲示板(中学受験の国語・古文の相談)
- 高校受験掲示板(高校受験の国語・古文の相談)
- 【国語】百人一首のことなら何でもOKな掲示板(覚え方・好きな歌・かるたの話)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
歴史的仮名遣いとは何ですか?
古文や、明治から戦後まで使われた昔のかなの書き方です。今の書き方は1986年の内閣告示「現代仮名遣い」にもとづいています。
歴史的仮名遣いの読み方のいちばん大事なルールは?
ことばの途中や終わりにある「は・ひ・ふ・へ・ほ」を「わ・い・う・え・お」と読むことです。ことばの頭にあるときはそのまま読みます。
「けふ」「てふ」はなぜ「きょう」「ちょう」と読むのですか?
まず「ふ」を「う」に直して「けう」「てう」とし、次にエ段+う(eu)をのばす音(yô)にするので「きょう」「ちょう」になります。
「いづれ」と「いずれ」はどちらが正しいですか?
今の文章では「いずれ」が正しい書き方です。「いづれ」は歴史的仮名遣いで、古文では「いづれ」と書き「いずれ」と読みます。
中学受験や高校受験にも歴史的仮名遣いは出ますか?
出ます。「現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい」という形の問題が定番です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 内閣告示「現代仮名遣い」(昭和61年)、内閣告示「現代かなづかい」(昭和21年)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」国語、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:竹取物語(冒頭)、枕草子(第一段)、土佐日記(冒頭)、徒然草(序段)、百人一首(2・3・17・21・41・61番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法・国語便覧の標準的な説明(歴史的仮名遣いの読み方)にもとづいて作成
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 061」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月15日/作成:大学受験合格大作戦



