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壺中の天こちゅうのてん
ひとことで言うと
ふつうの世の中からはなれた、別の世界(別天地)。薬売りの老人の小さな壺の中に、御殿とごちそうのある広い世界があったという『後漢書』の話から。
| 読み方 | こちゅうのてん |
|---|---|
| 意味 | 俗世間からはなれた別天地・別世界。自分だけが楽しめる、世の中のわずらわしさを忘れられる場所や時間のたとえ。 |
| 出典 | 『後漢書』方術列伝下・費長房「翁乃与倶入壺中。唯見玉堂厳麗、旨酒甘肴、盈衍其中」 |
| お話 | 後漢の費長房が、市場で薬を売る老人が店先の壺に跳びこむのを見つけ、礼をつくすと、老人は費長房を壺の中に招いた。中には玉の御殿とごちそうが広がっていた |
| 別の言い方 | 壺中の天地・壺中天・壺天(こてん) |
| 似た言葉 | 桃源郷・別天地・仙境・悠々自適(ゆうゆうじてき) |
| 反対の言葉 | 俗世間・浮き世 |
| 漢文の句法 | 返読文字(有り)・否定(莫し)・限定(唯だ〜のみ) |
このページのポイント
- 「壺中の天」は、ふつうの世の中からはなれた別天地。「せまい世界」ではなく「小さな壺の中に広い世界」がある、という意味
- もとは『後漢書』方術列伝の費長房の話。薬売りの老人(『神仙伝』では壺公)に招かれ、壺の中の御殿とごちそうにおどろいた
- 原文の返読文字・否定・限定の句法、費長房のその後、重陽の節句とのつながり、入試の出方まで分かります
「壺中の天」の意味と読み方
「壺中の天」はこちゅうのてんと読みます。意味は「ふつうの世の中(俗世間)からはなれた、別の世界。別天地」です。そこから、自分だけが楽しめる、世の中のわずらわしさを忘れられる場所や時間のたとえとしても使われます。中国の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』に出てくる、壺の中に別の世界があったというふしぎな話から生まれた言葉です。
言葉を分けてみましょう。「壺中」は「壺(つぼ)の中」。「天」は、ここでは「空」だけでなく、「天地・世界」という意味です。合わせて、「壺の中にある、もう一つの天地」。外から見ると小さな入れ物なのに、中に入ると広々とした別の世界が広がっている――そのおどろきが、この言葉の中心です。「壺中の天地」「壺天(こてん)」とも言います。
サクラちゃん
壺の中に世界があるなんて、ふしぎな話ですね。昔話みたいです。
ミスターT先生
そう、仙人(せんにん)の話なんだ。でも、出てくるのは『後漢書』という正式な歴史書なんだよ。「方術列伝(ほうじゅつれつでん)」という、ふしぎな術を使った人たちの伝記を集めた巻にのっている。だから「壺中の天」は、歴史書から生まれた、ファンタジーのような故事成語なんだ。
今の日本語では、世の中のわずらわしさからはなれて、のんびり楽しめる別天地をたとえるときに使います。山の中の静かな宿、趣味の部屋、茶室などを「壺中の天」と言うことがあります。少しかたい、書き言葉の言い方です。
- ○山あいの小さな温泉宿は、まさに壺中の天だった。
- ○祖父にとって、盆栽の並ぶ庭は壺中の天なのだろう。
- ○週末に本を読む時間が、わたしの壺中の天だ。
「中」は「中」の読み方・書き順・部首、「天」は「天」の読み方・書き順・部首で読み方と書き順を確かめられます。「壺」は常用漢字ではなく、「壷」と書くこともあります。
絵で読む「壺中の天」のお話
お話の舞台は、今からおよそ1900年前の後漢(ごかん)の時代の中国、汝南(じょなん)という町の市場です。主人公の費長房(ひちょうぼう)は、市場を取りしまる役人でした。ある日、費長房は、市場で薬を売るふしぎな老人に気づきます。4つの場面で見てみましょう。
絵で読む「壺中の天」(『後漢書』費長房の4こま)
壺の中から出てきたあと、老人は費長房に「このことは、人に話してはいけない」と約束させました。そして後日、「わたしは仙人だ。あやまちをとがめられて人間の世界に来ていたが、もう帰らなければならない。いっしょに来るか」と打ち明けます。
別れのとき、老人は「建物の下に少し酒がある」と言いました。費長房が人に取りに行かせると、重くて持ち上がりません。10人がかりでもだめでした。老人が下りていって指一本で持ってくると、器は一升ほどの小ささなのに、2人で一日じゅう飲んでも酒はなくなりませんでした。見かけは小さいのに、中は大きい――壺の話と同じふしぎさです。

ミスターT先生
この話のポイントは、だれも気づかなかったことに、費長房だけが気づいたことだ。そして、ただ見ていただけでなく、礼をつくして老人に近づいた。だから壺の中の別天地に招かれたんだね。ふしぎな世界は、気づいて、ていねいに向き合った人にだけ開かれるんだ。

「壺中の天」の原文・書き下し文・現代語訳
もとになった文章は、『後漢書』の方術列伝下にある、費長房の伝記のはじめです。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。
1文目:市場の薬売りの老人
書き下し文市中に老翁の薬を売る有り。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳市場の中に、薬を売る老人がいた。
2文目:市場が終わると壺の中へ
書き下し文一壺を肆頭に懸け、市の罷むに及びて、輒ち跳びて壺中に入る。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳(老人は)一つの壺を店先にかけておき、市場が終わると、いつもそのたびに跳びあがって壺の中に入った。
3文目:費長房だけが見ていた
書き下し文市人之を見る莫し。唯だ長房のみ楼上より之を睹て、異とす。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳市場の人は、だれもそれを見なかった。ただ費長房だけが、建物の上からそれを見て、ふしぎに思った。
4文目:二人で壺の中へ
書き下し文翁乃ち与に倶に壺中に入る。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳老人はそこで、(費長房と)いっしょに壺の中に入った。
5文目:壺の中は別天地
書き下し文唯だ玉堂の厳麗、旨酒甘肴の、其の中に盈衍するを見る。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳見えるのはただ、玉でかざった御殿のおごそかな美しさと、おいしい酒とごちそうが、その中にあふれるほどいっぱいに並んでいるようすばかりだった。
6文目:飲み終えて出てくる
書き下し文共に飲み畢りて出づ。
(『後漢書』方術列伝下・費長房)
現代語訳二人はいっしょに酒を飲み終えて、(壺から)出てきた。
原典(『後漢書』方術列伝)の本文では
維基文庫(中国語のウィキソース)の『後漢書』方術列伝下の本文では、この部分は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。
- 「爲」「賣」「藥」「樓」「與」「嚴」:昔の字体(旧字体)です。今の字では「為」「売」「薬」「楼」「与」「厳」です。
- 「市掾(しえん)」:市場を取りしまる役人。費長房の仕事です。
- 「因往再拜奉酒脯」:「因りて往きて再拝し、酒脯を奉ず」。そこで出かけていって二度おじぎをし、酒と干し肉をささげた、という意味です。
- 「翁約不聽與人言之」:老人は、このことを人に話してはいけないと約束させた、という意味です。
うかるくん
原文には「壺中の天」っていう言葉そのものは出てこないんですね!
ミスターT先生
よく気がついたね。原文にあるのは「壺中に入る」と「玉堂厳麗、旨酒甘肴」という壺の中のようすだけだ。それを、のちの人たちが「壺中の天」「壺中の天地」「壺天」という短い言葉にまとめて、詩や文章で使うようになった。いつ、だれから始まった言い方かは、はっきりした資料が見つからないんだ。
出典『後漢書』と話の背景
『後漢書』は、後漢(25〜220年)の時代の歴史をまとめた本で、南朝の宋の范曄(はんよう)が5世紀に書きました。『史記』『漢書』『三国志』とならぶ、中国の大切な歴史書の一つです。その中の「方術列伝」は、占い・医術・ふしぎな術を使った人々の伝記を集めた巻で、費長房もその一人として書かれています。
同じ『後漢書』からは、「登竜門の意味と由来(後漢書)」「虎穴に入らずんば虎子を得ずの意味」「老いてますます盛んの意味と由来」「五里霧中の意味と由来(後漢書)」など、たくさんの故事成語が生まれています。中でも「五里霧中」は、同じふしぎな術(五里にわたる霧を起こす術)の話から生まれた言葉です。
『神仙伝』の「壺公」
同じ話は、晋の葛洪(かっこう)がまとめたとされる仙人の伝記集『神仙伝』にも、「壺公(ここう)」という仙人の話として出てきます。そこでは、老人は薬を売ってかせいだお金を、貧しい人や飢えた人に分け与えていたと書かれています。費長房が毎日老人の座る所をそうじし、食べ物をささげても、老人はお礼も言いませんでしたが、費長房は長いあいだ続けました。それを見て、老人は費長房を壺の中に招いたのです(維基文庫の本文で確認)。
『神仙伝』では、壺の中のようすは「楼観五色,重門閣道」(五色の高い建物、いくつも重なる門、空中の渡りろうか)と書かれています。どちらの本が先にこの話を書いたのか、2つの本の関係については諸説ありです。今の『神仙伝』の本文は、のちの時代にまとめ直されたものとも言われています。
費長房のその後
『後漢書』では、このあと費長房が老人について仙人の修行をする話が続きます。家族を心配させないように、老人がくれた青竹を自分の身代わりにして家を出ると、家族は竹を費長房だと思って、お葬式まで出してしまいました。山の中では、虎の群れの中に置かれても、今にも落ちそうな大石の下に寝かされても、費長房はこわがりませんでした。けれども最後の試験だけは乗りこえられず、仙人にはなれませんでした。
家に帰るとき、老人は竹の杖をくれました。それに乗ると、あっというまに家に着きます。杖を池に投げると、竜になって去っていきました。費長房は家を出て十日ほどだと思っていましたが、実は十年あまりもたっていたのです。日本の「浦島太郎」の話にも似ていますね。その後、費長房は病気を治す人として、多くの人を助けたといいます。
9月9日「重陽の節句」とのつながり
費長房は、9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」(菊の節句)の言い伝えにも登場します。梁の時代の『続斉諧記(ぞくせいかいき)』という本によると、費長房は弟子の桓景(かんけい)に「9月9日、あなたの家に災いが起こる。家族に赤い袋に茱萸(しゅゆ)という実を入れて腕に結ばせ、高い所に登って菊の花の酒を飲ませなさい」と教えました。そのとおりにした桓景の家族は無事だったといいます(維基文庫の本文で確認)。
9月9日に高い所に登り、菊の酒を飲む習わしは、この話がもとの一つだと伝えられます(重陽の節句の起こりには、ほかにも諸説あります)。季節の行事と暦は二十四節気とは?一覧と読み方・意味でもくわしく読めます。
「壺中の天」の使い方と例文・似た言葉
「壺中の天」は、ふつうの世の中からはなれた別天地や、自分だけの楽しい世界をたとえるときに使います。場所(宿・庭・部屋)にも、時間(趣味・読書のひととき)にも使えます。
- ○都会のまん中にあるのに、この庭園は壺中の天のように静かだ。
- ○画家にとって、アトリエは壺中の天だった。
- ○仕事を終えて茶室にこもると、壺中の天に遊ぶ心地がする。
- ×彼は壺中の天にいて、世間のことを何も知らない。(「せまい世界・世間知らず」の意味ではない)
- ×この壺は壺中の天で、とても高価だ。(入れ物そのもののねだんをほめる言葉ではない)
似た言葉
- 桃源郷(とうげんきょう):争いのない、平和で美しい理想の世界。陶淵明の「桃花源記」から。
- 別天地(べってんち)・別世界:ふつうの世の中とはちがう、すばらしい場所。
- 仙境(せんきょう):仙人が住むような、世の中をはなれた清らかな場所。
- 悠々自適(ゆうゆうじてき)の意味:世の中のわずらわしさからはなれて、のんびりと思いのままに暮らすこと。
反対の言葉
- 俗世間(ぞくせけん)・浮き世:わずらわしいことの多い、ふつうの世の中。
- 井の中の蛙(井の中の蛙大海を知らず)の意味:せまい世界にいて、広い世界を知らないこと。同じ「中」でも、壺中の天は中が広い、井の中の蛙は中がせまいと、正反対です。
英語では決まった訳はありませんが、"a world within a pot"(壺の中の世界)、"a hidden paradise"(かくれた楽園)、"a world of one's own"(自分だけの世界)などと説明できます。
ふしぎな世界の話として、「胡蝶の夢の意味と由来(荘子)」もあわせて読むと楽しいでしょう。夢と現実の区別がつかなくなる荘子の話で、もう一つの世界を考える点が似ています。
受験勉強への生かし方
受験勉強が続くと、気持ちが休まる時間が少なくなります。そんなとき、短い時間でも自分だけの「壺中の天」を持つことは、気持ちを立て直す助けになります。好きな音楽を1曲聞く、散歩をする、ぐっすり眠る――大事なのは、それを勉強計画の中にきちんと入れておくことです。計画の立て方は勉強計画の立て方(年→月→週→日)を、休み方や睡眠のコツは受験生の体調管理方法まとめ(睡眠・食事・手洗い)を読んでみてください。
また、勉強する部屋そのものを、集中できる「壺中の天」にするのもよい方法です。部屋の温度や足元の温め方は頭寒足熱の意味と冬の受験勉強でくわしく説明しています。ただし、費長房は壺の中で楽しんだあと、ちゃんと壺から出てきました。息ぬきは、もどってくるまでがセットです。
「壺中の天」のよくあるまちがい
- 「つぼなかのてん」「こちゅうのあま」と読む:正しくは「こちゅうのてん」です。
- 「せまい世界」「世間知らず」の意味で使う:壺の中はせまいと思いがちですが、この言葉は中に広い別天地があるという意味です。せまい世界のたとえは「井の中の蛙」です。
- 「天」を「空」の意味だけで考える:ここでの「天」は「天地・世界」のことです。
- 「壺」を「壷」と書くのはまちがい?:「壷」は「壺」を略した形で、どちらも使われます。
- 老人の名前を「費長房」だと思う:費長房は、壺の中に招かれた市場の役人のほうです。壺に入っていた老人は、『後漢書』では名前が書かれず、『神仙伝』では「壺公」と呼ばれています。
サクラちゃん
「壺中の天」と「桃源郷」は、どうちがうんですか?
ミスターT先生
どちらも「世の中をはなれた別世界」だけど、桃源郷は、陶淵明の「桃花源記」に出てくる山奥の平和な村で、「理想の社会」の意味が強い。壺中の天は、小さな入れ物の中に広い世界があるというおどろきが中心で、「自分だけの楽しい別天地」に使うことが多いんだ。
入試ではこう出る
「壺中の天」は、おもに大学受験で出会う故事成語です。
- 大学受験:評論文や随筆の中で「壺中の天」「壺中の天地」の意味を問う語句の問題として出ることがあります。漢文では、仙人の話(志怪・伝奇)の文章で、「莫〜」の否定、「唯〜のみ」の限定、「輒ち」の読みなどがよく問われるポイントです。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
- 高校受験:出ることは多くありませんが、「別天地」「桃源郷」など似た言葉の意味は、国語の語句問題で問われることがあります。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。

うかるくん
「壺中の天」は「こちゅうのてん」。小さな壺の中に広い別天地があった『後漢書』費長房の話から。「せまい世界」じゃなくて「中が広い」が正解ですね!
練習問題
やさしい
- 「壺中の天」の読み方を、ひらがなで答えましょう。
答えと解説を見る
こちゅうのてん。 - 「壺中の天」の意味として正しいものを選びましょう。
ア せまい世界にいて、世間を知らないこと イ ふつうの世の中からはなれた別天地 ウ 大切な物を壺にしまっておくこと エ 空が高く晴れわたっていること答えと解説を見る
イ。アは「井の中の蛙」の意味です。
ふつう
- 「市人莫之見」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
市人之を見る莫し。「莫」は一二点で最後に読みます。 - 壺の中に入っていた老人に気づき、壺の中に招かれた市場の役人の名前を答えましょう。
答えと解説を見る
費長房(ひちょうぼう)。
むずかしい
- 「唯見玉堂厳麗、旨酒甘肴、盈衍其中」を書き下し文に直し、壺の中がどんなようすだったか説明しましょう。
答えと解説を見る
唯だ玉堂の厳麗、旨酒甘肴の、其の中に盈衍するを見る。玉でかざったおごそかで美しい御殿があり、おいしい酒とごちそうがあふれるほどいっぱいに並んでいる、すばらしい別天地のようすでした。 - 「壺中の天」と「井の中の蛙」は、どちらも「中」にいる話ですが、意味はどうちがいますか。
答えと解説を見る
壺中の天は、小さな壺の中に広い別天地があることから、世の中をはなれたすばらしい世界のたとえ。井の中の蛙は、せまい世界にいて広い世界を知らないことのたとえで、意味は正反対です。
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出世や成功のための難しい関門。そこを通れば立身できる入り口。 - 烏合の衆の意味と由来
規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの集団のこと。 - 虎穴に入らずんば虎子を得ずの意味と由来
危険を冒さなければ、大きな成功は得られないということ。 - 五里霧中の意味と由来
見通しがつかず、どうしてよいかわからない状態のこと。 - 老いてますます盛んの意味と由来
年をとっても、意気込みが衰えず元気なこと。
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よくある質問
壺中の天とはどういう意味ですか?
壺中の天とは、ふつうの世の中(俗世間)からはなれた別天地・別世界という意味です。自分だけが楽しめる、世の中のわずらわしさを忘れられる場所や時間のたとえとしても使われます。
壺中の天の読み方は何ですか?
「こちゅうのてん」と読みます。「壺中の天地(こちゅうのてんち)」「壺天(こてん)」とも言います。
壺中の天の由来・出典は何ですか?
中国の『後漢書』方術列伝の費長房の話が由来です。市場の役人の費長房が、薬売りの老人が店先の壺に跳びこむのを見つけ、礼をつくすと、老人は費長房を壺の中に招きました。中には玉の御殿とおいしい酒やごちそうが広がっていました。
壺中の天の原文と書き下し文は?
壺の中の場面の原文は「翁乃与倶入壺中。唯見玉堂厳麗、旨酒甘肴、盈衍其中」です。書き下し文は「翁乃ち与に倶に壺中に入る。唯だ玉堂の厳麗、旨酒甘肴の、其の中に盈衍するを見る」です。
壺中の天はどんな場面で使いますか?
世の中のわずらわしさからはなれて、のんびり楽しめる場所や時間をたとえるときに使います。「山あいの温泉宿は、まさに壺中の天だ」「父にとって書斎は壺中の天だ」のように使います。
壺中の天は「せまい世界」という意味ですか?
いいえ、ちがいます。壺中の天は、小さな壺の中に広い別天地があるという意味です。せまい世界にいて広い世界を知らないことのたとえは「井の中の蛙」で、意味は正反対です。
壺中の天と桃源郷のちがいは何ですか?
どちらも世の中をはなれた別世界ですが、桃源郷は陶淵明の「桃花源記」に出てくる山奥の平和な村で、理想の社会の意味が強い言葉です。壺中の天は、小さな入れ物の中に広い世界があるという話から、自分だけの楽しい別天地に使うことが多い言葉です。
壺中の天の似た言葉・反対の言葉は?
似た言葉には「桃源郷」「別天地」「仙境」「悠々自適」があります。反対の言葉には「俗世間」「浮き世」があります。
壺中の天は英語で何と言いますか?
決まった訳はありませんが、"a world within a pot"(壺の中の世界)や "a hidden paradise"(かくれた楽園)、"a world of one's own"(自分だけの世界)などと説明できます。
壺中の天は入試でどう出ますか?
おもに大学受験で、評論文や随筆の中の語句の意味を問う問題として出ることがあります。漢文で仙人の話が出たときは、「莫〜」の否定、「唯〜のみ」の限定、「輒ち」の読みなどがよく問われるポイントです。
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出典・参考
- 原文:『後漢書』方術列伝下・費長房(維基文庫の本文で確認)
- 壺公の話:『神仙伝』巻九・壺公(維基文庫の本文で確認)。『後漢書』との前後関係は諸説あり
- 重陽の節句の言い伝え:『続斉諧記』(維基文庫の本文で確認)。重陽の節句の起こりには諸説あり
- 「壺中の天」「壺天」という言い方が始まった時代:はっきりした資料が見つからない
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(一般的な読み方をもとにした一例)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



