「而・則・乃・即」の読み方と違い|而=しかして・置き字、4つの「すなはち」の見分け方【漢文】

「而・則・乃・即」の読み方と違い|而=しかして・置き字、4つの「すなはち」の見分け方【漢文】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

「而」は文の中では順接・逆接をつなぐ読まない置き字ですが、文の頭では「しかして・しかるに」と読み、文末の「而已」は「のみ」と読みます。「則・即・乃・輒」はどれも「すなはち」と読み、則=〜ならば、即=すぐに、乃=そこで・なんと、輒=そのたびにと意味が違います。

このページのポイント

  • 文の中の「而」は置き字。順接(テ・シテ)か逆接(ドモ・ニ)かは前後の意味で決める
  • 文の頭の「而」=しかして・しかるに・しかも・しかれども、「而已」=のみ
  • 則=〜ならば・〜すると・〜は(前に「〜ば」)
  • 即=すぐに・つまり、乃=そこで・なんと・やっと、輒=そのたびに
  • 「而」は位置で、「すなはち」は字で見分ける

はじめて(やさしく)

「而(じ)」と「則・乃・即(すなはち)」は、文と文をつなぐ字です。「而」は多くの場合読まない字(置き字)ですが、文の頭では「しかして」「しかるに」と読みます。「則・乃・即」は、どれも「すなはち」と読むのに、意味がちがうのがやっかいなところです。

このページでは、「而」の読み分けと、4つの「すなはち」(則・乃・即・輒)の見分け方に重点をおきます。まず、読み分けの一覧表を見ましょう。

「而・則・乃・即・輒」の読み分けの一覧表

字読み働き意味(訳)見分け方の目印例
而読まない順接〜て・〜して文の中。前の字の送り仮名テ・シテ故きを温めて新しきを知る
而読まない逆接〜けれども・〜のに文の中。送り仮名ドモ・ニ・モ視れども見えず
而しかして・しかうして順接(文頭)そうして文の頭而して後に
而しかるに・しかれども逆接(文頭)それなのに・しかし文の頭而るに王聴かず
而しかも添加(文頭)そのうえ文の頭而も…
而已のみ限定〜だけだ文末に「而已(矣)」仁義有るのみ
而なんぢ二人称おまえ人をさす位置(まれ)而の父
則すなはち条件→結果/対比〜ならば・〜すると/〜は前に「〜レバ」「〜テハ」思はざれば則ち罔し
即すなはち即時/同一すぐに/つまり時間がすぐ・イコールの関係先んずれば即ち人を制す
乃すなはち転回・意外・限定そこで/なんと/やっと話の流れが変わる・おどろき乃ち漢有るを知らず
輒すなはち反復そのたびに・いつも前に「毎(ごとに)」書を読む毎に輒ち

表を見ると、「而」は位置(文の中か、文の頭か、文末の「而已」か)で読みが決まり、4つの「すなはち」は字そのもので意味が決まることがわかります。まず「而」の4つの顔を図で確かめましょう。

「而」は4つの顔文の中読まない(置き字)テ・シテ/ドモ・ニ文の頭しかして・しかるにしかも・しかれども而已(文末)のみ〜だけだ(限定)人をさすなんぢおまえ(まれ)いちばん多いのは「文の中の置き字」
「而」の4つの顔。文の中=置き字、文の頭=しかして・しかるに、而已=のみ、まれに なんぢ

論語の有名な一節で、「而」と「則」が両方出てくる文を読んでみます。丸の数字が読む順番、うすい字が読まない置き字です。

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例文1 「而」(置き字)と「則」(すなはち)

白文学而不思則罔、思而不学則殆。

書き下し文学びて思はざれば則すなはち罔くらし、思ひて学ばざれば則すなはち殆あやふし。

(『論語』為政)

現代語訳学んでも自分で考えなければ、ものごとははっきりわからない。考えるだけで学ばなければ、ひとりよがりになってあぶない。

ここがポイント「而」は「学びて」「思ひて」の「て」に働きが出ている置き字で、番号がついていません。「則」は前の「〜ざれば」を受けて「すなはち」と読み、「〜すると・〜ならば」という条件→結果を表します。故事成語「学びて思わざれば則ち罔し」として知られます。
まなぶくん

まなぶくん

「則」も「乃」も「即」も、ぜんぶ「すなはち」って読むんですか? 覚えられないよ……

ミスターT先生

ミスターT先生

読みは同じ「すなはち」でいい。大事なのは意味だ。則は「〜ならば」、即は「すぐに」、乃は「そこで・なんと」、輒は「そのたびに」。いちばん多いのは則で、前に「〜ば」が来るのが目印だよ。

ハルちゃん

ハルちゃん

「〜ば、則ち」なら「則」。字を見てから意味を決めるんですね。

「すなはち」と読む字は4つ則すなはち〜ならば・〜すると条件 → 結果即すなはちすぐに・つまりすぐさま・イコール乃すなはちそこで・なんと・やっと話の流れの転回輒すなはちそのたびに・いつもくり返し読みは同じでも、意味は字で決まる
「すなはち」と読む4つの字。読みは同じでも、意味は字で決まる
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

「而」は位置で読み、「すなはち」は字で意味を決める。この2つを分けて考えれば、つなぎの字はこわくないよ。

ここまでのまとめ

  • 文の中の「而」は置き字。順接(テ・シテ)か逆接(ドモ・ニ)かは前後の意味で決める
  • 文の頭の「而」は「しかして・しかるに・しかも・しかれども」、文末の「而已」は「のみ」
  • 「すなはち」は4つ:則=〜ならば、即=すぐに、乃=そこで・なんと、輒=そのたびに

しっかり(共通テスト)

「而」の見分け方の手順

  1. 下に「已」があるか:「而已(矣)」は2字で「のみ」と読む限定。
  2. 文の頭にあるか:句点のすぐあとの「而」は、前の文を受けて「しかして(順接)」「しかるに・しかれども(逆接)」「しかも(添加)」と読む。
  3. 文の中なら置き字:前後の内容がそのまま続くなら順接(前の字にテ・シテ)、反対の内容なら逆接(ドモ・ニ・モ)。
  4. 人をさす位置か:「而の父」のように名詞の前で人をさすときだけ「なんぢ」。めったに出ない。
  5. 訳を確かめる:順接は「〜て・そして」、逆接は「〜けれども・〜のに」。訳で前後の関係がはっきりするようにする。
「而」の読み分け(流れ図)「而」を見つけた① 下に「已」がある(而已)?↓いいえ(はい→「のみ」)② 文の頭にある?↓いいえ(はい→しかして・しかるに)③ 文の中=置き字。前後の意味は?そのまま続く(順接)送り仮名 テ・シテ反対の内容(逆接)送り仮名 ドモ・ニ・モ「なんぢ」は人をさす位置(主語・の)だけ
「而」の読み分けの流れ図:①而已か→②文の頭か→③文の中なら順接か逆接か
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例文2 順接の「而」(〜て)

書き下し文故ふるきを温あたためて新あたらしきを知れば、以て師と為るべし。

(『論語』為政)

現代語訳昔のことをよく学び直して、そこから新しい知識や考えを見いだせるなら、人の師となることができる。

ここがポイント「温故」と「知新」を、順接の「而」が「温めて」とつないでいます。故事成語「温故知新」のもとです。「可以〜」は「以て〜べし」で、「可」は「べし」とひらがなで書きます。文末の「矣」は置き字です。
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例文3 逆接の「而」(〜ても)

書き下し文人知らずして慍うらみず、亦また君子ならずや。

(『論語』学而)

現代語訳世の人が自分を認めてくれなくても、不満に思わない。なんと君子(りっぱな人)ではないか。

ここがポイント「人に知られない」のに「うらまない」という、予想と反対のつながりなので逆接です。ここでは送り仮名が「ずして」となっていますが、意味は「〜ても・〜のに」。送り仮名の形だけでなく、前後の意味で順接・逆接を決めるのが大切です。論語の最初の章の結びです。
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例文4 逆接の「而」(〜なのに)

書き下し文信にして疑はれ、忠にして謗そしらる。

(『史記』屈原賈生列伝)

現代語訳誠実であるのに疑われ、忠義をつくしているのに悪口を言われる。

ここがポイント楚の屈原の不運を述べたことばです。「信(誠実)」と「疑はる」は反対の内容なので、「而」は逆接(〜なのに)。送り仮名は「ニシテ」ですが、訳は「〜なのに」とします。「見・被」は受身の字で、「る(れ)」とひらがなで書きます(受身の句法(見・被・為〜所〜・於))。
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例文5 文の頭の「而」(しかれども)

書き下し文人皆去る。而しかれども吾独ひとり留まる。

(自作)

現代語訳人々はみな去っていった。しかし、わたしひとりは残った。

ここがポイント句点のあと、文の頭にある「而」は読みます。前の文と反対の内容なので「而れども(しかし)」。順接なら「而して(しかして・しかうして)」、そのうえ、なら「而も(しかも)」と読みます。
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例文6 「而已」(のみ)

書き下し文亦また仁義有るのみ。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳(王が大切にすべきものは)ただ仁と義があるだけだ。

ここがポイント「なぜ利益のことばかり言うのか」と梁の恵王をいさめた孟子のことばの結びです。「而已」は2字まとめて「のみ」と読み、ひらがなで書きます。続く「矣」は置き字。限定の句法(唯・惟・独・但・耳・而已)もあわせて読んでください。

4つの「すなはち」の見分け方

「すなはち」と読む字は、どれも前の内容を受けて、後ろへつなぐ副詞(接続のことば)です。違いは「どんなつながり方か」です。

字意味つながり方前の目印例(書き下し)
則〜ならば・〜すると・〜は条件→結果、対比〜(レ)バ・〜テハ学びて思はざれば則ち罔し
即すぐに・つまり(とりもなおさず)時間をおかない、イコールとくになし先んずれば即ち人を制す
乃そこで・なんと・やっと・〜こそ話の転回、意外、ようやく前の出来事乃ち漢有るを知らず
輒そのたびに・いつもくり返し毎(〜ごとに)書を読む毎に輒ち食を忘る
  1. 字を確かめる:「すなはち」とひらがなで出ても、もとの字が何かを白文で確かめる。
  2. 則なら前の「〜ば」を探す:前の語に「〜レバ・〜ラバ」があれば条件→結果。「〜テハ」なら対比(〜は)。
  3. 即なら「すぐ」か「イコール」か:動作の前なら「すぐに」、名詞と名詞の間なら「つまり〜だ」。
  4. 乃なら話の流れを見る:前の出来事を受けて「そこで」、予想外なら「なんと」、時間がかかったなら「やっと」。
  5. 輒なら「毎」をセットで:「毎A輒B」=Aするたびにいつも B する。
「〜レバ則チ…」=条件 → 結果学びて思はざれば(条件)則罔し(結果)前の送り仮名「〜バ」が則の目印已然形+ば → 則ち(〜すると・〜すれば)未然形+ば → 則ち(〜ならば)〜ては → 則ち(〜は:対比)
「〜レバ則チ」は条件→結果。前の送り仮名「ば」が則の目印
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例文7 「即」と「則」が並ぶ文

書き下し文先さきんずれば即すなはち人を制し、後おくるれば則すなはち人の制する所ところと為なる。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳人より先に行動すれば、すぐに相手をおさえられる。おくれをとれば、相手におさえられる。

ここがポイント会稽の長官の殷通が、項梁(項羽のおじ)に兵をあげようとさそったときのことばで、故事成語「先んずれば人を制す」のもとです。ここの「即」は「則」とほぼ同じく、条件→結果の「すなはち」として使われています(「即」には「すぐに」の意味がこめられます)。後半の「為人所制」は受身の「為A所B(AのBする所と為る)」で、「者・所・所以」の読みと用法の「所」です。
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例文8 対比の「則」(〜は)

書き下し文弟子入りては則すなはち孝、出でては則すなはち弟。

(『論語』学而)

現代語訳若者は、家の中では親に孝行し、外では目上の人にすなおに従う。

ここがポイント「入りては」「出でては」と、2つの場面をくらべて並べる「則」です。この「則」は条件というより「〜の場合は」という対比で、訳では「〜では」「〜は」とするのが自然です。「弟」は「悌」と同じで、兄や目上によく仕えることです。
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例文9 意外の「乃」(なんと)

書き下し文乃すなはち漢有るを知らず、魏晋に論無し。

(陶淵明「桃花源記」)

現代語訳(桃源の村の人々は)なんと漢という王朝があったことさえ知らず、魏や晋は言うまでもない。

ここがポイント道に迷った漁師が、外の世界から切りはなされた村(桃源郷)に入りこむ話です。村人が数百年前から外と行き来していないとわかり、「なんと漢の時代も知らない」とおどろく場面なので、「乃」は意外の「なんと」と訳します。
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例文10 「そこで」の「乃」

書き下し文項王乃すなはち大おほいに驚きて曰いはく、

(『史記』項羽本紀)

現代語訳項王はそこで(夜、漢軍の四方から楚の歌が聞こえてくるのを聞いて)たいへんおどろいて言った。

ここがポイント四面楚歌の場面です。前の「夜、漢軍の四面皆楚歌するを聞き」という出来事を受けて、「そこで」と話を進める「乃」です。このあと「漢皆已に楚を得たるか」と続きます(「於・于・乎」の読みと用法の文末の「乎」)。
サクラちゃん

サクラちゃん

「乃」の「そこで」と「なんと」は、どう見分けるんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

前の出来事が原因やきっかけになって次の行動へ進むなら「そこで」。前から考えると思いがけない内容が来るなら「なんと」。どちらも「話の流れが変わる」字だと覚えておくといい。

うかるくん

うかるくん

「則」はルール、「乃」はドラマって感じだね!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「則」の3つの使い方:条件・継起・対比

「則」は、もともと「決まり・法則」という意味の字で、「〜ならば必ず…となる」という筋道のあるつながりを表します。次の3つを区別すると、記述問題で正確に訳せます。

使い方前の形訳例
条件(仮定)未然形+ば〜ならば学ばざれば則ち殆し(学ばなければ)
条件(確定・継起)已然形+ば〜すると・〜したところ至れば則ち…(着いてみると)
対比〜ては・〜は〜は(〜の場合は)入りては則ち孝、出でては則ち弟
対比の「則」:Aは〜、Bは〜家に入りては則ち孝(親に)外に出でては則ち弟(目上に)2つの場面をくらべて「〜の場合は」則は「は」と訳すとよい
対比の「則」は「〜は」と訳す。入りては則ち孝、出でては則ち弟

なお、『論語』の「過ちては則ち改むるに憚ること勿かれ」のように、「則」が禁止の句法(勿・毋・無・莫)と組むこともあります。どの場合も「則」の前で意味が一度区切れることを意識しましょう。

2. 「即」の「つまり」:「色即是空」

「即」は、時間の「すぐに」のほかに、「AはつまりBだ(AとBは同じ)」という同一の意味をもちます。仏教のことば「色即是空(形あるものは、そのまま空である)」の「即」がこれです。また「即日(その日のうちに)」「即位」のように、熟語でも「すぐ・その場で」の意味が生きています。漢文では「即」が「則」と同じく条件の結果を示すこともあり(例文7)、本によって両方の字が使われる場合もあります。

3. 「乃」の4つの意味と「迺」

「乃」には、①そこで(前を受けて次へ)、②なんと・意外にも、③やっと・ようやく(時間がかかって)、④〜こそ・まさしく(強調)の意味があります。③は「十年にして乃ち成る」のように、前に時間を表す語があるのが目印です。また「乃」は「なんぢ(おまえ)」とも読み、「乃の父」は「おまえの父」の意味になります。「迺」は「乃」と同じ字として使われます。

難関大

例文11 「やっと」の「乃」

書き下し文十年にして乃すなはち成る。

(自作)

現代語訳十年たって、やっと完成した。

ここがポイント前に「十年にして」と時間の長さがあるので、「乃」は「やっと・ようやく」。すぐに起こる「即」とは反対です。
時間で見る「即・乃・輒」きっかけ即=すぐに乃=やっと(時間がかかる)毎(〜するごとに) → 輒(そのたびに)黒=きっかけ 紫=そのたびに起こること則=条件の結果 即=すぐ 乃=そこで・やっと
時間で見ると、即=すぐに、乃=やっと、輒=そのたびに

4. 「輒」と「便」:くり返しと、すぐに

「輒」は「そのたびに・いつも」で、「毎(〜ごとに)」と組んで「毎A輒B(Aする毎に輒ちB)」の形でよく出ます。陶淵明の「五柳先生伝」には、酒を飲むと決まって飲みつくす、という意味の「造飲輒尽」の一節があります。「便」も「すなはち」と読み、「すぐに・たやすく」の意味です。

難関大

例文12 「輒」(そのたびに)

書き下し文書を読む毎ごとに、輒すなはち食を忘る。

(自作)

現代語訳本を読むたびに、いつも食事を忘れてしまう。

ここがポイント「毎」は「〜ごとに」と読む返読の字で、「書を読む」を受けてから最後に読みます(一二点とレ点の組み合わせ「一レ」)。「輒」はくり返し起こることを表し、「そのたびに・いつも」と訳します。

5. 「而」の「なんぢ」と、「而」の正体

「而」が「なんぢ」と読まれる例として有名なのが、『十八史略』の臥薪嘗胆の話です。呉王の夫差が、父のかたきの越をわすれないよう、人に「夫差、而忘越人之殺而父邪(夫差、而越人の而の父を殺ししを忘れたるか)」と言わせた、と伝えられます。ここの2つの「而」はどちらも「おまえ」です(故事成語「臥薪嘗胆」)。

「而」はもともと「あごひげ」の形からできた字とされ、のちに「つなぐ」働きの字として使われるようになったと説明されます。訓読では、江戸時代には文中の「而」も「しかうして」「しかも」と読む読み方があったとされますが、今の教科書では、文中の「而」は置き字として読まないのがふつうです。文の頭の「而」を読むのは、前の文全体を受けて、日本語の接続詞に置きかえやすいからです。「然而(しかれども・しかるに)」「而後(しかるのち)」「既而(すでにして)」のような2字の形も、まとめて読みます。

赤みがかった山々のあいだを、旗を立てた軍勢が進んでいく中国の山水画
趙伯駒「漢高祖入関図」。劉邦(のちの漢の高祖)の軍が関中に入っていくようすを描いたとされる絵です。「先んずれば即ち人を制す」「項王乃ち大いに驚く」など、「即・乃・則」の名場面は『史記』項羽本紀に多く出てきます。画像:趙伯駒「漢高祖入関図」(宋代・12世紀、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

6. 「而」と「則」の使い分け

「而」も「則」も前後をつなぎますが、「而」はゆるやかなつなぎ(そして・けれども)、「則」は筋道のはっきりしたつなぎ(〜ならば必ず)です。「学而時習之」を「学ぶならば習う」と訳さないように、「而」には条件の意味を読みこみすぎないことが大切です。反対に、「則」の文を「そして」で流すと、論理の関係が答案から消えてしまいます。記述では、「而」は順接・逆接、「則」は条件・対比がはっきり伝わる訳を書きましょう。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「而」は位置で読み分け、「すなはち」は字で意味を決める。則はルール、即はすぐ、乃はそこで・なんと・やっと、輒はそのたびに。これで「すなはち」問題はばっちりです!

よくあるまちがい

まちがい1:文の中の「而」を「しかして」と読む

「学而時習之」を「学びしかして時に之を習ふ」とするのは誤り。文の中の「而」は置き字で、「学びて」の送り仮名で表します。読むのは文の頭の「而」です。

まちがい2:送り仮名「シテ」なら必ず順接だと思う

「人知らずして慍みず」の「ずして」は、意味は「知られなくても」で逆接です。送り仮名だけでなく、前後の内容が反対かどうかで判断します。

まちがい3:4つの「すなはち」を全部「つまり」と訳す

「則」は「〜ならば・〜すると」、「即」は「すぐに」、「乃」は「そこで・なんと・やっと」、「輒」は「そのたびに」。「つまり」と訳せるのは即の一部だけです。

まちがい4:「而已」を「しかもすでに」と読む

文末の「而已(矣)」は2字で「のみ」。「〜だけだ」という限定です。「而」と「已」を別々に読まないようにしましょう。

まちがい5:「則」の前の「〜ば」を落として書き下す

「不思則罔」は「思はざれば則ち罔し」。「則」の前には条件の「ば」を送るのが基本です。「思はず則ち罔し」では条件の関係が消えてしまいます。

練習問題

練習問題はすべて合格大作戦の自作です。答えと解説は押すと開きます。

やさしい

  1. 次の訓読文を書き下し文にし、「而」の働き(順接・逆接)を答えなさい。
    答えと解説を見る

    書き下し文:「書を読みて之を思ふ。」(自作)。「本を読んで、それについて考える」とそのまま続くので順接。「而」は置き字で読まない。

  2. 次の字のうち、「すなはち」と読み、「そのたびに」の意味になるものを選びなさい。 ア 則 イ 即 ウ 乃 エ 輒
    答えと解説を見る

    エ(輒)。「毎(〜ごとに)」と組んで「〜するたびにいつも」の意味になる。則は「〜ならば」、即は「すぐに」、乃は「そこで・なんと・やっと」。

ふつう

  1. 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。
    答えと解説を見る

    書き下し文:「雨降れば則すなはち川溢あふる。」(自作)。訳:雨が降ると、川があふれる。前の「降れば」を受けた条件→結果の「則」。

  2. 「師至。而弟子皆去。」(自作)の「而」の読みを答え、そう読む理由を説明しなさい。
    答えと解説を見る

    読み:「しかるに」(または「しかれども」)。句点のあとの文の頭にあるので置き字ではなく読む。「先生が来た」のに「弟子はみな去った」と反対の内容なので逆接。書き下し文は「師至る。而るに弟子皆去る。」

むずかしい

  1. 次の①②の「乃」の意味の違いを説明しなさい。(自作)
    ①「王聞之、乃召臣。」 ②「三年乃成。」
    答えと解説を見る

    ①は王がそれを聞いたことをきっかけに次の行動へ進むので「そこで」(王之を聞き、乃ち臣を召す)。②は前に「三年」という時間の長さがあるので「やっと・ようやく」(三年にして乃ち成る)。

  2. 「入則孝、出則弟」(論語)の「則」は、「〜ならば」と訳すより「〜は」と訳すほうが自然である。その理由を説明しなさい。
    答えと解説を見る

    この「則」は、「家に入る場合」と「外に出る場合」の2つの場面をくらべて並べる対比の用法で、条件から結果を導く関係ではないから。訳は「家では親に孝行し、外では目上の人に従う」のように「〜では・〜は」とすると、対比の関係がはっきりする。

関連ページ

「温故知新」「先んずれば人を制す」「四面楚歌」「臥薪嘗胆」の話は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で読めます。「臥薪嘗胆」は四字熟語の一覧(読み・意味・受験別)にもあります。

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よくある質問

「而」はいつ読み、いつ読まないのですか?

文の中の「而」は置き字で読みません。文の頭にあるときは「しかして・しかるに・しかも・しかれども」と読み、文末の「而已」は「のみ」と読みます。まれに「なんぢ(おまえ)」と読むこともあります。

「而」の順接と逆接はどう見分けますか?

前後の意味で決めます。そのまま続くなら順接(〜て・〜して)、反対の内容なら逆接(〜けれども・〜のに)です。送り仮名が「シテ」でも、意味が逆接のことがあります。

「則」「即」「乃」の違いは?

どれも「すなはち」と読みますが、則は「〜ならば・〜すると」(条件→結果)、即は「すぐに・つまり」、乃は「そこで・なんと・やっと」です。則は前に「〜ば」が来るのが目印です。

「輒」はどう読み、どういう意味ですか?

「すなはち」と読み、「そのたびに・いつも」という意味です。「毎(〜ごとに)」と組んで「Aする毎に輒ちB(Aするたびにいつも B する)」の形でよく使われます。

「而已」の読み方と意味は?

2字まとめて「のみ」と読み、「〜だけだ」という限定を表します。「而已矣」も「のみ」と読み、「矣」は置き字です。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『論語』(為政・学而)、『孟子』梁恵王上、『史記』(項羽本紀・屈原賈生列伝)、陶淵明「桃花源記」。『十八史略』の臥薪嘗胆の一節は本文中に引用。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文句法の標準的な説明(置き字「而」・接続の「則・即・乃・輒」)にもとづいて作成。読みが分かれる所は本文中に記した
  • 画像:趙伯駒「漢高祖入関図」(宋代・12世紀、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦