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ひとことで言うと
禁止は「〜するな」と止める言い方で、勿・毋・無・莫を「なかれ」(Aすること勿かれ)、不可を「べからず」(Aすべからず)と読みます。無・莫はふだん「なし」なので、相手への命令・いましめの場面かどうかで見分けます。
このページのポイント
- 禁止の字は勿・毋・無・莫=なかれ、不可=べからず
- 読みの型は「Aする(連体形)こと勿かれ」
- 書き下しは「勿かれ」は漢字、「べからず」はひらがな
- 無・莫は命令・いましめなら「なかれ」、事実なら「なし」
- 「べからず」は禁止のほか不可能・当然の否定もある
はじめて(やさしく)
禁止(きんし)とは、「〜するな」「〜してはならない」と、相手の行動を止める言い方です。漢文では「勿・毋・無・莫」の字を「なかれ」と読み、「不可」を「べからず」と読んで表します。たとえば「勿言」は「言ふこと勿かれ(言うな)」です。
禁止の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| 勿A | Aすること勿かれ | Aするな |
| 毋A | Aすること毋かれ | Aするな |
| 無A | Aすること無かれ | Aするな |
| 莫A | Aすること莫かれ | Aするな |
| 不可A | Aすべからず | Aしてはならない |
| 請勿A | 請ふAすること勿かれ | どうかAしないでください |
「なかれ」は、形容詞「なし」の命令の形です。「〜することがないようにせよ」から「〜するな」という意味になります。どの字も、下の動詞を先に読んでから返って「なかれ」と読みます。
ハルちゃん
「無」って「なし」じゃなかったでしたっけ? 禁止のときも使うんですか?
ミスターT先生
その通り、「無」と「莫」はふだんは「なし」だ。でも相手に「〜するな」と言っている場面では「なかれ」と読む。「なかれ」は「なし」の命令形だから、もともと同じ言葉の仲間なんだよ。
まなぶくん
「ない」と「ないようにしろ」か。命令の形にすると禁止になるんだ!
勿(なかれ)
白文勿言。
書き下し文言ふこと勿かれ。
(自作)
現代語訳言うな(口に出してはいけない)。
不可(べからず)
書き下し文此の水は飲むべからず。
(自作)
現代語訳この水は飲んではいけない。

ミスターT先生
禁止は「〜すること勿かれ」と「〜べからず」の2パターンだけ。「なかれ」は漢字、「べからず」はひらがなで書く、という書き下しのちがいもいっしょに覚えよう。
ここまでのまとめ
- 禁止=「〜するな」。勿・毋・無・莫は「なかれ」、不可は「べからず」
- 読み方は「Aすること勿かれ」(動詞は連体形+こと)
- 書き下しは「勿かれ」は漢字、「べからず」はひらがな
しっかり(共通テスト)
禁止の字の一覧と使い分け
| 字 | 読み | ふだんの読み | 書き下しの表記 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 勿 | なかれ | (ほぼ禁止だけ) | 漢字「勿かれ」 | いちばん多い禁止の字 |
| 毋 | なかれ | (ほぼ禁止だけ) | 漢字「毋かれ」 | 「母」と形が似ているので注意 |
| 無 | なかれ | なし | 漢字「無かれ」 | 文脈で「なし」と読み分ける |
| 莫 | なかれ | なし | 漢字「莫かれ」 | 唐詩に多い |
| 不可 | べからず | べからず(不可能) | ひらがな「べからず」 | 禁止と不可能の両方がある |
共通テストでは、「勿・毋」はほぼ必ず禁止ですが、「無・莫」を「なし」と読むか「なかれ」と読むかがよく問われます。さらに「不可」は、禁止(〜してはならない)か不可能(〜できない)かを文脈で決める必要があります(可能・不可能(可・能・得・足))。
読み方の手順
- 勿・毋・無・莫・不可を見つける。下に動詞があるかを確かめる。
- 禁止の場面か確かめる。相手に向かって言っている、教え・いましめの言葉である、などなら禁止。
- 下の動詞を連体形にして「こと」をつける(施す→施すこと、憚る→憚ること)。「不可」なら終止形+「べからず」。
- 「なかれ」で結ぶ。字に合わせて「勿かれ・毋かれ・無かれ・莫かれ」と漢字で書く。
- 「〜するな」「〜してはならない」と訳す。
例文で確かめる
勿(〜すること勿かれ)
書き下し文過ちては則ち改むるに憚ること勿かれ。
(『論語』学而)
現代語訳あやまちをおかしたら、ためらわずにすぐ改めなさい。
勿(四つの禁止)
書き下し文礼に非ざれば視ること勿かれ、礼に非ざれば聴くこと勿かれ、礼に非ざれば言ふこと勿かれ、礼に非ざれば動くこと勿かれ。
(『論語』顔淵)
現代語訳礼にかなわないことは見るな、礼にかなわないことは聞くな、礼にかなわないことは言うな、礼にかなわないことはするな。
無(なかれ)
書き下し文己に如かざる者を友とすること無かれ。
(『論語』学而)
現代語訳自分より劣った者を友としてはならない。
無(なかれ)
書き下し文速やかならんと欲すること無かれ、小利を見ること無かれ。
(『論語』子路)
現代語訳早く成果を上げようとあせってはいけない。目先の小さな利益に目をうばわれてはいけない。
莫(なかれ)
書き下し文酔ひて沙場に臥すとも君笑ふこと莫かれ、古来征戦幾人か回る。
(王翰「涼州詞」)
現代語訳酔って砂漠に倒れ伏しても、君よ、笑わないでくれ。昔から戦いに出て、何人が生きて帰っただろうか。

毋(なかれ)
書き下し文妄言すること毋かれ、族せられん。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳でたらめを言うな。一族皆殺しにされるぞ。
不可(べからず)
書き下し文一寸の光陰軽んずべからず。
(「偶成」(朱熹の作と伝えられる))
現代語訳わずかな時間でも、むだにしてはならない。
禁止の例文として、いちばん有名なのは『論語』衛霊公篇の「己所不欲、勿施於人(己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ)」でしょう。「自分がされていやなことは、人にしてはいけない」という意味で、弟子の子貢が「一生大切にすべき一言は何か」とたずねたときの孔子の答えです。「所」が返読文字であること、「於」が置き字であることもふくめて、返読文字の一覧(有・無・不・非・所)や書き下し文のきまりの例文で、返り点の読み方まで確かめておきましょう。禁止の句法は、このように教え・いましめの言葉に集中して出てくるので、論語・孟子などの思想の文章では特に注意して読みます。
サクラちゃん
「莫」が「なし」なのか「なかれ」なのか、どうやって決めればいいですか?
ミスターT先生
だれに向かって言っているかを見るんだ。「君笑ふこと莫かれ」は「君」への呼びかけだから禁止。「善焉より大なるは莫し」は「これ以上の善はない」と事実を述べているから「なし」だよ。
うかるくん
相手への命令なら「なかれ」、事実なら「なし」!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「べからず」の3つの意味
「不可」の「べからず」は、助動詞「べし」の打ち消しです。「べし」に当然・可能・命令など多くの意味があるため、「べからず」も禁止・不可能・当然の否定などに分かれます。訳は文脈で決めます。
| 意味 | 訳し方 | 見分けのヒント |
|---|---|---|
| 禁止 | 〜してはならない | 教え・いましめ・規則の文 |
| 不可能 | 〜できない | 「勝げて〜べからず」など、事実として無理なこと |
| 当然の否定 | 〜はずがない | 判断・推量の文 |
たとえば守株の話の「兎復た得べからず」は、禁止ではなく「二度と手に入らなかった」という不可能です(部分否定と全部否定(不常・常不・不復))。「べからず」を見たら、すぐに「〜してはならない」と決めつけないことが大切です。
2. 「勿」「毋」は禁止、「無」「莫」は二通り
「勿」と「毋」は、漢文ではほぼ禁止専用の字で、「〜なかれ」と読みます。一方、「無」と「莫」は、ふつうは「なし」と読む否定の字で、禁止の文脈でだけ「なかれ」と読みます。ただし「毋」にも例外があり、『論語』子罕篇の「毋意、毋必、毋固、毋我」は、孔子にはない4つの欠点を述べたもので、「意毋く、必毋く、固毋く、我毋し」と「なし」で読むのが一般的です。字だけで決めず、禁止の場面かどうかを最後に確かめましょう。なお、「勿」は「毋+之」にあたるという説もあります(諸説あり)。
3. 「〜すること勿かれ」と「〜する勿かれ」
「なかれ」の上は、「連体形+こと」とするのが今の教科書でいちばん一般的です(施すこと勿かれ)。ただし本によっては「施す勿かれ」と「こと」を入れずに連体形から直接続けるものもあり、どちらも誤りではありません。試験では、問題文の訓読文の送り仮名(「スコト」か「ス」か)にしたがって書き下します。
請勿(請ふ〜すること勿かれ)
書き下し文請ふ此の言を忘るること勿かれ。
(自作)
現代語訳どうかこの言葉を忘れないでください。
4. 禁止の強さを変える字
禁止の字の前に「請(こふ)」「願(ねがはくは)」をそえるとお願いの調子に、「慎(つつしみて)」「切(せつに)」をそえると「決して〜するな」という強い調子になります。記述問題では、この調子のちがいも訳に出すと得点につながります。
慎勿(慎みて〜すること勿かれ)
書き下し文慎みて人に言ふこと勿かれ。
(自作)
現代語訳決して人に言ってはならない。
5. 否定・禁止・反語の書き分け
同じ「無」でも、「無し」(否定)、「無かれ」(禁止)、「〜無からんや」(反語)で意味が大きく変わります。白文の書き下し問題では、文の終わりの形(言い切りか、命令か、疑問か)を手がかりに、どの読みにするかを決めます。とくに「莫」は唐詩で禁止、散文で否定(なし)になることが多い、という傾向も覚えておくと便利です。

サクラちゃん
禁止は「だれに向かって言っているか」がカギ。「べからず」は禁止とはかぎらないし、「毋」も「なし」と読むことがある。最後は文脈で決めるんですね!
よくあるまちがい
まちがい1:「勿かれ」をひらがなで書く
「言ふことなかれ」とひらがなにするのは、書き下し文としては誤り(読みとしてはよい)。「勿・毋・無・莫」は形容詞「なし」にあたるので、漢字のまま「勿かれ」と書きます。
まちがい2:「なかれ」の上を終止形にする
「施す勿かれ」の読みもありますが、「こと」を入れるなら「施すこと勿かれ」と連体形+こと。「施せこと」「施さこと」などは誤りです。
まちがい3:「無」「莫」をいつも「なし」と読む
「君笑ふこと莫かれ」のように、相手への呼びかけ・いましめの場面では「なかれ」。「君笑ふ莫し」と読むと「君は笑わない」という事実の文になってしまいます。
まちがい4:「べからず」をいつも禁止と訳す
「兎復た得べからず」は「手に入れてはならない」ではなく「手に入れることができない」(不可能)。文脈で決めます。
練習問題
やさしい
- 禁止を表す字を、次の中から2つ選びなさい。
ア 勿 イ 未 ウ 毋 エ 非答えと解説を見る
アとウ(勿・毋=なかれ)。イの未は「いまだ〜ず」、エの非は「あらず」で、どちらも否定。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)勿カレレ忘ルルコト。
答えと解説を見る
忘るること勿かれ。(忘るること勿かれ。)意味は「忘れるな」。「忘る」は下二段動詞で、連体形は「忘るる」。
ふつう
- 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)汝莫カレレ泣クコト。
答えと解説を見る
書き下し文:汝泣くこと莫かれ。(汝泣くこと莫かれ。) 訳:おまえは泣くな。「汝(おまえ)」への呼びかけなので、「莫」は禁止の「なかれ」。
- 「不可」が禁止ではなく不可能の意味になる例を、このページの例文から1つあげなさい。
答えと解説を見る
守株の「兎復た得べからず」(うさぎは二度と手に入らなかった)。教え・規則ではなく、事実として「できない」ことを述べているので不可能。
むずかしい
- 次の白文を、禁止の文として書き下し文にしなさい。(自作)
「無以小利害大事」答えと解説を見る
書き下し文:小利を以て大事を害すること無かれ。 訳:小さな利益のために大きなことをだめにしてはならない。いましめの文なので「無」は「なかれ」。「以」は「もつて(〜によって)」。
- 『論語』の「毋意、毋必、毋固、毋我」の「毋」は、ふつう禁止の「なかれ」ではなく「なし」と読まれる。その理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
この文は、孔子がもっていなかった4つの欠点(自分勝手な考え・無理おし・かたくな・我を張ること)を事実として述べたもので、相手に「〜するな」と命じる場面ではないから。そのため「意毋く、必毋く、固毋く、我毋し」と読む。
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- 願望(願・請・庶幾):「請ふ〜すること勿かれ」
- 反語(豈・安・何〜乎)
- 返読文字の一覧(有・無・不・非・可):禁止の字も下から返る
- 書き下し文のきまり(助詞・助動詞はひらがな)
- 句法の一覧(句形のまとめ・印刷用)
- 漢文文法・句法辞典の目次
「なかれ」「べからず」は古文でも使います。古文の助動詞「べし」(べからず)の意味と活用もあわせて確かめましょう。論語の言葉は「好きこそものの上手なれ」と論語「楽しむ者に如かず」でも読めます。故事成語は故事成語の一覧(意味・由来・出典)へ。
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- 「好きこそものの上手なれ」と論語「楽しむ者に如かず」
論語の言葉と勉強を好きになるコツ - 故事成語の一覧(意味・由来・出典)
矛盾・蛇足・漁夫の利など150語 - 古文文法辞典(動詞・助動詞・係り結び・敬語)
古文の文法を1項目1ページで - 古典と古文と漢文の違い
作品年表と共通テストの配点 - 共通テストの勉強法(高1・高2・高3の計画)
国語をふくむ教科のバランス
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よくある質問
漢文の禁止の句法にはどんな字がありますか?
勿・毋・無・莫を「なかれ」と読む形と、不可を「べからず」と読む形があります。どちらも「〜するな」「〜してはならない」という意味です。
「勿かれ」は書き下し文でひらがなにしますか?
しません。勿・毋・無・莫は形容詞「なし」にあたるので漢字のまま「勿かれ」と書きます。一方「不可」は助動詞なので「べからず」とひらがなで書きます。
「無」を「なし」と読むか「なかれ」と読むかはどう決めますか?
相手への命令やいましめの場面なら禁止の「なかれ」、ものがないと事実を述べる場面なら「なし」と読みます。
「己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ」はどういう意味ですか?
『論語』衛霊公篇の言葉で、自分がされていやなことは、人にしてはいけないという意味です。「勿かれ」が禁止の句法です。
「べからず」はいつも禁止ですか?
いいえ。禁止(〜してはならない)のほか、不可能(〜できない)や当然の否定(〜はずがない)の意味もあり、文脈で決めます。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(学而・顔淵・子路・子罕)、王翰「涼州詞」、『史記』項羽本紀、「偶成」(朱熹の作と伝えられる)。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による。「自作」とした例文は合格大作戦の作例
- 高校の漢文句法の標準的な説明(禁止の字の読み・意味・書き下し)にもとづいて作成。勿=毋+之の説は諸説の一つ
- 画像:「三彩駱駝俑」(唐・8世紀、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・CC0)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



