漢文の反語の句法|豈・安・何・誰〜乎・独・敢不〜乎・何為の読み方と疑問との見分け方「〜ん(や)」

漢文の反語の句法|豈・安・何・誰〜乎・独・敢不〜乎・何為の読み方と疑問との見分け方「〜ん(や)」

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大学受験難関大

ひとことで言うと

反語は疑問の形で反対の内容を強く言い切る句法で、豈・安・何・誰などを使い、書き下し文は未然形+「ん(や)」で結びます。訳は「どうして〜だろうか、いや〜ない」(例:燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや)。

このページのポイント

  • 反語=疑問の形で、反対の内容を強く言い切る
  • 書き下しは未然形+ん(や)、疑問は連体形で結ぶ
  • 訳は「どうして〜か、いや〜ない」まで書く
  • 「豈」は反語の目印、「豈不〜哉」は詠嘆
  • 「敢不〜乎」は強い肯定、「不敢〜」は強い否定

はじめて(やさしく)

反語(はんご)とは、疑問の形を使って、反対の内容を強く言い切る言い方です。日本語でも、テストで0点だった友だちに「そんな点数で、ゲームしてる場合だろうか?」と言えば、本当にたずねているのではなく「ゲームしてる場合じゃない!」と強く言っていますね。これが反語です。

漢文の反語は、疑問とほとんど同じ字(何・安・誰・豈 など)を使います。ちがうのは読み方の最後です。疑問は「何ぞ知る」と連体形で結びますが、反語は「何ぞ知らん(や)」と、未然形+ん(や)で結びます。訳は「どうして〜だろうか、いや〜ない」が基本の形です。

疑問は「たずねる」、反語は「言い切る」疑問何ぞ知るどうして知っているのか?答えを求める反語何ぞ知らんどうして知ろうか、いや知らない強く言い切る見分けの目印は文末の「〜ん(や)」疑問は連体形、反語は未然形+ん
疑問は答えを求め、反語は反対の内容を強く言い切る。目印は文末の「〜ん(や)」

反語の句形(公式の一覧)

試験によく出る反語の形をまとめます。A は動詞などの述語です。どれも訳の最後に「いや〜ない」をつけるのがコツです。

句形読み意味(訳し方)
豈A哉あにAンやどうしてAだろうか、いやAない
安A乎いづくんぞAンやどうしてAだろうか、いやAない
何A乎なんぞAンやどうしてAだろうか、いやAない
誰A乎たれかAンやだれがAだろうか、いやだれもAない
独A哉ひとりAンやどうしてAだけだろうか、いやAではない
敢不A乎あへてAざらんやどうしてAしないことがあろうか、いや必ずAする
何為AなんすれぞAンどうしてAだろうか、いやAない
何A之有なんのAかこれあらんどんなAがあろうか、いや何もない
寧A乎いづくんぞAンやどうしてAだろうか、いやAない
うかるくん

うかるくん

疑問と同じ字を使うなら、どうやって区別するんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

書き下し文なら最後の「ん」を見ればいい。「知る」なら疑問、「知らん」なら反語だ。それから「豈(あに)」という字が出てきたら、ほぼ必ず反語。反語の目印になる大事な字だよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

訳すときは「いや〜ない」を足すのを忘れないようにします!

反語の訳は「〜か、いや〜ない」肯定の形の反語否定の形の反語何ぞ知らん何ぞ知らざらんどうして知ろうかどうして知らないことがいや、知らないあろうか、いや知っている→ 強い否定→ 強い肯定形と反対の意味を強く言う
肯定の形の反語は強い否定、否定の形の反語は強い肯定になる

では、いちばん有名な反語の文を読んでみましょう。秦の時代の末、日やといの農民だった陳渉(陳勝)が、仲間に笑われたときに言った言葉です。故事成語「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」として今も使われます。

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安〜哉(いづくんぞ〜んや)

白文燕雀安知鴻鵠之志哉。

書き下し文燕雀安いづくんぞ鴻鵠の志を知らんや。

(『史記』陳渉世家)

現代語訳ツバメやスズメのような小さな鳥に、どうしてオオトリやクグイのような大きな鳥の志がわかろうか、いやわからない。

ここがポイント「燕雀」は小人物、「鴻鵠」は大人物のたとえ。「安くんぞ」で始まり、文末を「知らんや」と未然形+んやで結ぶので反語です。「哉」は書き下し文ではひらがなの「や」。「之」は「の」と読み、ひらがなで書きます。
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

反語の基本の訳は「どうして〜だろうか、いや〜ない」。答案で「いや〜ない」まで書かないと、疑問の訳とまちがえられて減点されることがある。最後まで書くクセをつけよう。

ここまでのまとめ

  • 反語=疑問の形で、反対の内容を強く言い切る言い方
  • 書き下しは未然形+ん(や)で結ぶ(疑問は連体形)
  • 訳は「どうして〜だろうか、いや〜ない」
  • 「豈」はほぼ必ず反語の目印

しっかり(共通テスト)

反語をつくる字の一覧

反語に使う字は、疑問詞とほとんど同じです。ただし「豈」と「敢不」は、反語専用といってよい字です。

反語をつくる字豈あに〜んやいつも反語詠嘆の形もある安・焉いづくんぞ〜んや悪・寧も同じ何・胡なんぞ〜んや奚・曷も同じ誰たれか〜んやだれも〜ない独ひとり〜んやどうして〜だけ敢不あへて〜ざらんや必ず〜する何為なんすれぞ〜んどうして〜か何〜之有なんの〜かこれあらん何も〜ない何以なにをもつて〜んどうして〜か
反語をつくる字。「豈」はいつも反語、「敢不〜乎」は強い肯定になる
字反語の読み意味こんなときに注意
豈あに〜んやどうして〜か、いや〜ない「豈不〜哉」は詠嘆(なんと〜ではないか)
安・焉・悪・寧いづくんぞ〜んやどうして〜か、いや〜ない「いづくにか」(どこに)は疑問
何・胡・奚・曷なんぞ〜んやどうして〜か、いや〜ない連体形で結べば疑問
誰・孰たれか〜んやだれが〜か、いやだれも〜ない答えは「だれも〜ない」
独ひとり〜んやどうして〜だけ〜か限定の「独り〜のみ」と区別
敢不あへて〜ざらんやどうして〜しないことがあろうか強い肯定になる
何為なんすれぞ〜んどうして〜か、いや〜ない「何為る者ぞ」(何者か)は疑問
何〜之有なんの〜かこれあらん何の〜があろうか「之」は目的語を指し直す字
何以なにをもつて〜んどうして〜できようか手段の疑問とまぎらわしい

疑問と反語の見分け方:「〜ン(ヤ)」

共通テストでは、書き下し文の選択肢と現代語訳の選択肢の両方で、疑問か反語かがねらわれます。いちばん確実な目印は、結びの形です。

疑問反語
結びの形連体形(+や)未然形+ん(や)
例何ぞ知る(や)何ぞ知らん(や)
訳どうして知っているのかどうして知っていようか、いや知らない
答えわからないので相手にたずねるわかりきっていて強く言い切る
  1. 「豈」があるか見る。あれば反語(「豈不〜哉」なら詠嘆)。
  2. 結び(送り仮名)を見る。「〜ん」「〜んや」なら反語、連体形なら疑問。
  3. 訳に「いや〜ない」をつけて読んでみる。前後の内容とつながれば反語。
  4. 話し手の気持ちを考える。答えがわかりきっている、強く主張している場面なら反語。
疑問か反語か:見分けの手順1「豈」があるかあれば反語(豈不〜哉なら詠嘆)2送り仮名・結びを見る「〜ん(や)」なら反語、連体形なら疑問3訳を「いや〜ない」でつなぐ前後と意味が通れば反語4話し手の気持ちを考える答えがわかりきっていれば反語
疑問か反語かは「豈→結び→訳→気持ち」の順に確かめる

例文で確かめる

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豈〜乎(あに〜んや)

書き下し文沛公先まづ関中を破らずんば、公豈あに敢あへて入らんや。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳沛公が先に関中を打ち破っていなかったら、あなたはどうしておしきって(関中に)入ることができたでしょうか、いやできなかったでしょう。

ここがポイント鴻門之会の前夜、項伯(こうはく)が項王(項羽)を説得した言葉。「豈に〜んや」で反語です。「豈」は反語の目印なので、これを見たらすぐ「いや〜ない」を用意しましょう。「不〜ンバ」は「もし〜しなかったら」という仮定の形です。
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何〜(なんぞ〜ん)

書き下し文王何なんぞ必かならずしも利を曰はん。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳王はどうして利益のことばかり言う必要がありましょうか(言う必要はありません)。

ここがポイント「わが国に利益をもたらすものがあるか」とたずねた梁の恵王に、孟子が答えた言葉。このあと「亦た仁義有るのみ(ただ仁義があればよいのです)」と続きます。文末に「乎」がなくても、「曰はん」と未然形+んで結んでいるので反語です。「必ずしも」は部分否定でも出てくる語です。
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焉(いづくんぞ〜ん)

書き下し文鶏を割くに焉いづくんぞ牛刀を用ゐん。

(『論語』陽貨)

現代語訳ニワトリをさばくのに、どうして牛を切る大きな刀を使う必要があろうか(いや、その必要はない)。

ここがポイント弟子の子游が治める小さな町で、礼楽を教える琴の音を聞いた孔子が笑って言った言葉。「小さなことに大げさな手段はいらない」というたとえとして、今も使われます。「焉」は「安」と同じく「いづくんぞ」。文中や文末で読まない置き字の「焉」と区別しましょう。
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誰(たれをか〜ん)

書き下し文吾誰をか欺かん、天を欺かんか。

(『論語』子罕)

現代語訳私はいったいだれをだまそうか(だれもだませはしない)。天をだまそうというのか(だませるはずがない)。

ここがポイント病気の孔子のために、弟子の子路がいつわりの家臣を立てたことをいましめた言葉。「誰」が目的語なので動詞「欺」の前に出て「誰をか欺かん」と読みます(漢文の語順の例外)。後半は「〜んか」と、文末の「乎」を「か」と読む反語です。
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寧〜乎(いづくんぞ〜んや)

書き下し文王侯将相寧いづくんぞ種有らんや。

(『史記』陳渉世家)

現代語訳王や諸侯や将軍や大臣に、どうして(生まれつきの)血筋などがあろうか、いやない(だれでもなれるのだ)。

ここがポイント陳渉が、反乱を起こすときに仲間をはげました言葉。「寧」はふつう「むしろ」と読み選択の句法に使いますが、ここでは「いづくんぞ」と読む反語です。「寧」の読み分けは白文でよく問われます。
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何〜之有(なんの〜かこれあらん)

書き下し文君子之に居らば、何の陋いやしきことか之れ有らん。

(『論語』子罕)

現代語訳君子がそこに住めば、どうしてむさくるしいことなどあろうか(いや、ない)。

ここがポイント孔子が東方の未開の地に住みたいと言ったとき、「むさくるしい所なのにどうするのですか」と言われて答えた言葉。「何の〜か之れ有らん」は、目的語「陋」を前に出して「之」で指し直した形の反語です。
「敢不〜乎」は二重否定で強い肯定敢へておしきって従はざら否定(ず)んや反語どうして従わないことがあろうか→ いや、必ず従う(強い肯定)「否定」×「反語」= 強い肯定
「敢不〜乎」は、否定と反語をかけあわせた強い肯定
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敢不〜乎(あへて〜ざらんや)

書き下し文敢あへて従はざらんや。

(自作)

現代語訳どうして従わないことがあろうか、いや必ず従う。

ここがポイント「敢へて〜ざらんや」は強い肯定。「敢」は「進んで・おしきって」の意味で、「不敢〜(敢へて〜ず)」なら「決して〜しない」という強い否定になります。語順で意味が大きく変わるので注意しましょう。
サクラちゃん

サクラちゃん

「敢不〜乎」が「必ず〜する」になるのが、どうもピンときません……。

ミスターT先生

ミスターT先生

「従わないなんてことがあるだろうか?」と自分に問いかけて、「いや、ない」と答える。「従わない」がないんだから、従うしかないよね。否定(ず)×反語=強い肯定。数学のマイナス×マイナスと同じだ。

うかるくん

うかるくん

マイナスかけるマイナスでプラス! それなら覚えられる!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「独」の反語と、限定の「独」

「独」は、限定の「独り〜のみ(ただ〜だけ)」としても、反語の「独り〜んや(どうして〜だけ〜だろうか)」としても使われます。文末が「ん(や)」なら反語です。次は、垓下の戦いに敗れた項羽が、烏江(うこう)で渡し舟をすすめられたときの言葉です。

難関大

何〜(なんの〜ありてか〜ん)

書き下し文我何の面目ありてか之に見まみえん。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳私はどんな顔をして江東の人々に会えようか(いや、会わせる顔がない)。

ここがポイント江東の若者八千人を連れて出たのに、一人も帰らせられなかったことを悔いる言葉。「何の面目ありてか〜ん」は反語。「見ゆ」は「お目にかかる」という謙譲の動詞で、「之」は江東の父兄(人々)を指します。
難関大

独〜乎(ひとり〜んや)

書き下し文籍独ひとり心に愧はぢざらんや。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳(たとえ彼らが何も言わなくても)この私(項籍)が、どうして心にはじないでいられようか(いや、はじずにはいられない)。

ここがポイント「籍」は項羽の名。「独り〜ざらんや」は否定の形の反語なので強い肯定(はじずにはいられない)。「於」は読まない置き字で、「心に」の「に」が送り仮名になっています。
冠をかぶり、ひげをたくわえた武将の上半身を描いた肖像画
項王(項羽、前232〜前202)の肖像。「籍独り心に愧ぢざらんや」「我何の面目ありてか之に見えん」など、『史記』項羽本紀には反語の名文が多くあります。画像:作者不明「名人像(項王)」(19〜20世紀初め、フィラデルフィア美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

2. 「何〜為」:文末の「為」も反語

「何」で始まり、文末に「為」が来る形は、「何ぞ〜(ことを)為さん」「何ぞ〜を以て為さん」と読む反語です。この「為」は、疑問・反語の気持ちをそえる文末の字と考えられ、「〜するのか(何のために)」という意味あいが加わります。烏江で項羽が渡し舟をことわった言葉が有名です。

難関大

何〜為(なんぞ〜ことをなさん)

書き下し文天の我を亡ほろぼすに、我何なんぞ渡ることを為さん。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳天が私をほろぼそうとしているのに、私がどうして(川を)渡ったりしようか(いや、渡りはしない)。

ここがポイント「之」は主語を示す「の」(天の我を亡ぼす)。「何ぞ〜為さん」は反語です。文末の「為」を「ため」と読んで「何のために渡るのか」と訳す説明もありますが、教科書では「渡ることを為さん」と読むのが一般的です。

3. 抑揚と組み合わさった反語

反語は、抑揚(よくよう)の後半によく使われます。「AすらB、安くんぞCせんや(AでさえBなのに、どうしてCしようか)」の形です。鴻門之会で、樊噲(はんかい)が大杯の酒を飲みほして言った言葉が代表例です。

難関大

抑揚+反語

書き下し文臣死すら且かつ避けず、卮酒安いづくんぞ辞するに足らん。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳私は死でさえ避けはしない。大杯の酒くらい、どうしてことわる必要がありましょうか(いや、ことわりません)。

ここがポイント前半で「死でさえ避けない」とおさえ(抑)、後半で「酒などなおさらことわらない」と強める(揚)。後半の「安くんぞ〜ん」が反語です。共通テストでは、この抑揚の後半の反語の訳がよく問われます。
「何〜之有」=何の〜か之れ有らん何なんの陋いやしき之これ有あらん「之」は前に出た目的語を指す何の陋しきことか之れ有らん何のむさくるしいことがあろうか、いやない
「何〜之有」は目的語を前に出して「之」で指し直す反語

4. 白文での判断と「誰か知らん」

白文(送り仮名なし)では、「ん」の目印が見えません。そこで、文脈・対句・常識から判断します。「燕雀安知鴻鵠之志哉」も、「小さな鳥に大きな鳥の志がわかるはずがない」という常識から反語と決まります。

白文で反語と判断する手がかり豈必ず豈があれば反語「豈不〜哉」は詠嘆文脈常識答えがわかりきっている「燕雀は知らない」対句並び前後が強い主張〜ず、安くんぞ〜ん設問訳「いや〜ない」がある選択肢の訳を確かめる
白文では「豈」・文脈・対句・設問の訳から反語を判断する

唐の詩でも反語はよく使われます。たとえば李紳の「憫農(のうをあはれむ)」は、農民の苦労をうたった詩として中国では子どもでも知る作品で、最後の2句は「誰か知らん盤中の飧、粒粒皆辛苦なるを(皿の上のご飯の一粒一粒が、みな農民の苦労の結晶だと、だれが知っているだろうか)」と結びます。「誰か知らん」は「だれも知らない」という反語で、「たれか〜ん」の答えは「だれも〜ない」になります。

難関大

誰か知らん(反語+倒置)

書き下し文誰か知らん盤中の飧、粒粒皆辛苦なるを。

(李紳「憫農」)

現代語訳だれが知っているだろうか(だれも知らない)、皿の上のご飯の一粒一粒が、みな農民の苦労によるものだということを。

ここがポイント「知らん」の目的語(盤中の飧〜辛苦なる)が後ろに来ていますが、詩では返り点で返らず、「誰か知らん」を先に読むのが習わしです。強調のための読み方で、意味は「〜を誰か知らん」と同じです。

5. 反語の歴史:「ん」は推量の助動詞

反語の結びの「ん(む)」は、古文の推量・意志の助動詞「む」です。「何ぞ知らん」は、もとは「どうして知っているだろう(か)」という推量の疑問で、答えがわかりきっているため「いや知らない」という反語の意味が生まれた、と説明されます。ですから、送り仮名に「ん」があっても、文脈によっては推量の疑問(〜だろうか)と訳すことがあります(「何れの日か是れ帰年ならん」など)。古文の助動詞「む(ん)」の意味(推量・意志)と結びつけて覚えると、反語の訳の幅がわかります。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「豈」を見たら反語、「〜ん(や)」で結べば反語、「敢不〜乎」は強い肯定。そして訳には必ず「いや〜ない」! これで反語はばっちりです。

よくあるまちがい

まちがい1:訳に「いや〜ない」を書かない

「どうして知ろうか」だけでは、疑問の訳と区別がつきません。記述問題では「どうして知ろうか、いや知らない」と最後まで書くか、「知るはずがない」と言い切る形に直しましょう。

まちがい2:「豈不〜哉」を反語として訳す

「豈に〜ずや」は「なんと〜ではないか」という詠嘆です。「どうして〜しないだろうか、いや〜する」と訳しても意味は近いですが、選択肢では詠嘆の訳が正解になることが多いです。

まちがい3:「敢不〜」と「不敢〜」を同じに読む

敢不〜乎=あへて〜ざらんや(必ず〜する、強い肯定)。不敢〜=あへて〜ず(決して〜しない、強い否定)。字の順番で意味が反対になります。

まちがい4:「寧」をいつも「むしろ」と読む

「王侯将相寧くんぞ種有らんや」のように、反語の「いづくんぞ」と読む「寧」もあります。下に「〜ん(や)」で結ぶ述語があれば反語を疑いましょう。

まちがい5:反語の結びを連体形にする

「安くんぞ知るや」は疑問の形です。反語なら「安くんぞ知らんや」と未然形+ん。書き下し文の選択肢では、この1字のちがいで正解が決まります。

練習問題

やさしい

  1. 次の書き下し文は疑問か反語か。理由もつけて答えなさい。
    (1)何ぞ去らざる。 (2)何ぞ去らんや。
    答えと解説を見る

    (1)疑問(どうして立ち去らないのか)。連体形「ざる」で結んでいる。 (2)反語(どうして立ち去ろうか、いや立ち去らない)。未然形+「んや」で結んでいる。

  2. 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    豈あに之を忘れんや。(豈に之を忘れんや。)訳:どうしてこれを忘れようか、いや忘れはしない。「豈に〜んや」は反語。

ふつう

  1. 「敢不従乎」を書き下し文にし、意味を答えなさい。また「不敢従」との意味のちがいを説明しなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    書き下し文:敢へて従はざらんや。意味:どうして従わないことがあろうか、いや必ず従う(強い肯定)。「不敢従」は「敢へて従はず」と読み、「決して従わない」(強い否定)。「不」が「敢」の上か下かで意味が反対になる。

  2. 次の文の「誰」の反語の答えにあたる内容を、現代語で答えなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    書き下し文は「誰か能く之を知らん」。反語なので、答えは「だれもこれを知ることはできない」。「たれか〜ん」の反語は「だれも〜ない」になる。

むずかしい

  1. 次の白文を、反語として書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    「人皆有之、我独無之乎」(之=それ。後半を反語として)
    答えと解説を見る

    書き下し文:人皆之有り、我独り之無からんや。訳:人はみなそれを持っている。どうして私だけが持っていないことがあろうか(いや、私も持っている)。「独り〜んや」は反語。「無」の未然形「無から」+「ん」で結ぶ。

  2. 「何〜之有」の形は、なぜ「之」があるのか。「何陋之有」を例に、語順の面から説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「何陋之有」は、ふつうの語順なら「有何陋(何の陋しきことか有らん)」となる。目的語「何陋」を強調のために動詞「有」の前に出し、そのあとに「之」を置いて前に出した目的語を指し直している。だから「何の陋しきことか之れ有らん」と、「之」を「これ」と読んで目的語として扱う。

関連ページ

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」「鴻門の会」など、反語が出てくる故事成語は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で読めます。孟子の「王何ぞ必ずしも利を曰はん」の続きは「王道」と「覇道」の意味と違い(孟子)もあわせてどうぞ。

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よくある質問

反語とは何ですか?

疑問の形を使って、反対の内容を強く言い切る言い方です。「どうして〜だろうか、いや〜ない」と訳します。

疑問と反語はどう見分けますか?

書き下し文の結びで見分けます。疑問は連体形、反語は未然形+「ん(や)」で結びます。白文では文脈や「豈」の有無、答えがわかりきっているかで判断します。

「豈」はいつも反語ですか?

「豈に〜んや」はほぼ必ず反語です。ただし「豈に〜ずや(豈不〜哉)」は「なんと〜ではないか」という詠嘆になります。

「敢不〜乎」はどう訳しますか?

「敢へて〜ざらんや」と読み、「どうして〜しないことがあろうか、いや必ず〜する」と強い肯定で訳します。「不敢〜(敢へて〜ず)」は「決して〜しない」で意味が反対です。

反語の訳で減点されないコツは?

「どうして〜だろうか」で止めず、「いや〜ない」まで書くことです。「〜するはずがない」と言い切る形でもかまいません。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『史記』(陳渉世家・項羽本紀)、『論語』(陽貨・子罕)、『孟子』梁恵王上、李紳「憫農」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文句法の標準的な説明(反語の読み・訳・疑問との区別)にもとづいて作成。「何〜為」の「為」の解釈など、説明が分かれる所は本文中に記した
  • 画像:作者不明「名人像(項王)」(19〜20世紀初め、フィラデルフィア美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦