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大学受験
ひとことで言うと
詠嘆は心が強く動いたことを表す句法で、文頭の嗚呼・噫・嗟(ああ)、文末の哉・夫・矣乎(かな)、否定+疑問の不亦〜乎・豈不〜哉(なんと〜ではないか)の3つの形があります(例:賢なるかな回や、亦た説ばしからずや)。
このページのポイント
- 詠嘆の形は文頭の「ああ」・文末の「かな」・否定+疑問の3つ
- 嗚呼・噫・嗟乎は漢字のまま、哉・矣乎はひらがなの「かな」
- 不亦〜乎・豈不〜哉=なんと〜ではないか
- 「豈に〜ずや」は詠嘆、「豈に〜んや」は反語
- 感動を先に言う倒置(賢なるかな回や)に注意
はじめて(やさしく)
詠嘆(えいたん)とは、心が強く動いたことを表す言い方です。日本語の「ああ、つかれた」「きれいだなあ」「なんて美しいんだろう!」にあたります。漢文では、うれしい・悲しい・おどろいた・感心した、という気持ちを、決まった字を使って表します。
詠嘆の形は、大きく3つに分けられます。
- 文の頭に感動詞を置く形:嗚呼・噫・嗟 などを「ああ」と読む。
- 文の終わりに助字を置く形:哉・夫・矣乎 などを「かな」と読む(〜だなあ)。
- 疑問・反語の形を借りる形:不亦〜乎(亦た〜ずや)・豈不〜哉(豈に〜ずや)などで「なんと〜ではないか」。
詠嘆の句形(公式の一覧)
| 句形 | 読み | 意味(訳し方) |
|---|---|---|
| 嗚呼A | ああA | ああ、A |
| 噫・嗟・嗟乎・於乎 | ああ | ああ |
| A哉 | Aかな | Aだなあ |
| A矣乎・A矣哉・A夫 | Aかな | Aだなあ |
| 不亦A乎 | またAずや | なんとAではないか |
| 豈不A哉 | あにAずや | なんとAではないか |
| 何A也 | なんぞAや | なんとAなことか |
| 一何A | いつになんぞA | なんとまあAなことか |
| A哉B也 | Aなるかな Bや | Bはなんと Aなことか(倒置) |
うかるくん
「哉」って、反語の「や」でも出てきましたよね。詠嘆だと「かな」なんですか?
ミスターT先生
そう。「哉」は疑問・反語なら「か・や」、詠嘆なら「かな」。同じ字でも、文の中身で読みが変わるんだ。「賢なるかな」のように、ほめたり嘆いたりしている文なら「かな」を考えよう。
サクラちゃん
古文の「〜かな」(名もなき花かな)と同じなんですね!
では、論語の有名な一節を読んでみましょう。孔子が、いちばん愛した弟子・顔回(がんかい)をほめた言葉です。
A哉(Aかな)
白文賢哉回也。
書き下し文賢なるかな回や。
(『論語』雍也)
現代語訳なんとすぐれた人物だろう、顔回は。
次は、論語の最初の章(学而篇)の最後の一文です。「亦た〜ずや」で「なんと〜ではないか」という詠嘆になります。
不亦〜乎(また〜ずや)
書き下し文人知らずして慍みず、亦た君子ならずや。
(『論語』学而)
現代語訳人が(自分の値打ちを)わかってくれなくても不満に思わない。なんと君子(りっぱな人)ではないか。

ミスターT先生
詠嘆の訳のコツは、「だなあ」「なんと〜ではないか」と感動をこめること。疑問のように「〜か?」とたずねる訳にすると、選択肢で引っかかるよ。
ここまでのまとめ
- 詠嘆=心が強く動いたことを表す言い方
- 文頭の嗚呼・噫・嗟は「ああ」(漢字のまま書く)
- 文末の哉・夫・矣乎は「かな」(ひらがなで書く)
- 不亦〜乎・豈不〜哉は「なんと〜ではないか」
しっかり(共通テスト)
文頭の感動詞「ああ」
文の頭に置いて「ああ」と読む字は、いくつもあります。書き下し文では漢字のまま(嗚呼・噫・嗟乎)書くのがふつうです。感動詞の下に来る文には、嘆きや悲しみが多く、そのあとの文が疑問・反語の形になることもよくあります。
噫(ああ)
書き下し文噫、天予を喪ぼせり。
(『論語』先進)
現代語訳ああ、天はわたしをほろぼした。
嗟乎(ああ)+反語
書き下し文嗟乎、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。
(『史記』陳渉世家)
現代語訳ああ、ツバメやスズメのような小さな鳥に、どうしてオオトリやクグイのような大きな鳥の志がわかろうか(いや、わからない)。
嗚呼(ああ)+疑問
書き下し文嗚呼、其れ真に馬無きか。
(韓愈「雑説」)
現代語訳ああ、本当に(世の中に)名馬がいないのだろうか。
文末の「かな」:哉・夫・矣乎・矣哉
文末で「かな」と読む字は、「哉」がいちばん多く、ほかに「夫」「矣乎」「矣哉」などがあります。「矣」1字は読まない置き字ですが、「矣乎」「矣哉」と2字そろうと「かな」と読みます。書き下し文ではどれもひらがなの「かな」です。
矣乎(かな)
書き下し文中庸の徳たるや、其れ至れるかな。
(『論語』雍也)
現代語訳中庸(かたよらず、ちょうどよいこと)という徳は、なんとこの上ないものだなあ。
夫(か・かな)
書き下し文逝く者は斯くのごときか、昼夜を舎かず。
(『論語』子罕)
現代語訳過ぎ去っていくものは、みなこの川の流れのようなものだなあ。昼も夜も休むことがない。
疑問・反語の形を借りる詠嘆
「なんと〜ではないか」という強い感動は、否定+疑問の形で表すことがよくあります。「〜ではないか?」と問いかけて、相手に「そうだ」と同意させる言い方です。
| 句形 | 読み | 意味 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 不亦A乎 | またAずや | なんとAではないか | 論語の冒頭で有名 |
| 豈不A哉 | あにAずや | なんとAではないか | 「豈に〜んや」なら反語 |
| 何A也 | なんぞAや | なんとAなことか | 疑問と同じ形。文脈で区別 |
| 一何A | いつになんぞA | なんとまあAなことか | 「一」は強めの語 |
| 不亦A哉 | またAずや | なんとAではないか | 「乎」の代わりに「哉」 |
豈不〜哉(あに〜ずや)
書き下し文豈に悲しからずや。
(自作)
現代語訳なんと悲しいことではないか。
何〜也(なんぞ〜や)
書き下し文是れ何ぞ楚人の多きや。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳なんと楚の人間の多いことか。
詠嘆を読む手順
- 文頭の感動詞をさがす。嗚呼・噫・嗟・嗟乎・於乎は「ああ」。
- 文末の字を確かめる。哉・夫・矣乎・矣哉で、ほめる・嘆く内容なら「かな」。
- 否定+疑問の形を見る。不亦〜乎・豈不〜哉は「〜ずや(なんと〜ではないか)」。
- 訳に感動をこめる。「〜だなあ」「なんと〜ではないか」「なんと〜なことか」。
サクラちゃん
「何ぞ楚人の多きや」は、疑問の形と同じなのに、どうして詠嘆なんですか?
ミスターT先生
項羽は答えを知りたいわけじゃない。囲まれて、もうだめだと気づいた驚きと嘆きなんだ。形が同じときは、話し手が答えを求めているか、心が動いているかを考える。疑問・反語・詠嘆の3つは、最後は文脈で決まるよ。
うかるくん
場面を思いうかべるのが大事なんですね!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 詠嘆の倒置:感動を先に言う
詠嘆の文では、感動の中心(述語)を主語より前に出す倒置がよく起こります。「賢なるかな回や」は、ふつうの順なら「回や賢なるかな」です。主語の下に「也(や)」が来て、主語を示すのが目印です。

2. 「一何」:なんとまあ
「一何〜」は「いつに(ひとへに)何ぞ〜」と読み、「なんとまあ〜なことか」という強い詠嘆です。「一」は「まったく」という強めの語です。唐の杜甫の「石壕吏(せきごうり)」で、夜中に兵士を集めに来た役人と、それに泣いて訴える老婆を描いた句が有名です。
一何(いつになんぞ)
書き下し文吏の呼ぶこと一に何ぞ怒れる、婦の啼くこと一に何ぞ苦しき。
(杜甫「石壕吏」)
現代語訳役人のどなる声のなんと荒々しいことか。老婆の泣く声のなんと痛ましいことか。
3. 文末の「哉」の3つの読み
文末の「哉」は、疑問「か」・反語「や」・詠嘆「かな」の3通りに読みます。見分けの手がかりは次のとおりです。
| 働き | 読み | 手がかり | 例 |
|---|---|---|---|
| 疑問 | か・や | 答えを求めている | 何ぞ〜や |
| 反語 | や(んや) | 未然形+ん、「いや〜ない」が通る | 安くんぞ知らんや |
| 詠嘆 | かな | ほめる・嘆く内容、倒置 | 賢なるかな |
| 詠嘆(否定+疑問) | や(ずや) | 「不亦」「豈不」がある | 豈に悲しからずや |
4. 「惜しいかな」「悲しいかな」の音便
形容詞に「かな」がつくとき、書き下し文では「惜しきかな」ではなく「惜しいかな」とイ音便で読むのが慣用です(「悲しいかな」「甚だしいかな」など)。教科書でも「惜しいかな」と書くのが一般的で、記述でもこの形で書けば問題ありません。
惜乎(惜しいかな)+倒置
書き下し文惜しいかな、子の時に遇はざるや。
(自作)
現代語訳残念なことだなあ、あなたがよい時世にめぐりあえなかったことは。
5. 詠嘆と古文の「かな」「や」
書き下し文の「かな」「や」は、古文の終助詞・間投助詞の「かな」「や」と同じ語です。漢文の詠嘆を読むときは、和歌の「〜かな」の感動を思いうかべるとわかりやすくなります。古文の終助詞(かな・ばや・なむ)や間投助詞(や・よ・を)とあわせて学ぶと、書き下し文の語感がつかめます。

サクラちゃん
文頭は「ああ」、文末は「かな」、否定+疑問は「なんと〜ではないか」。そして同じ「哉」でも、疑問・反語・詠嘆の3つがあるから、場面で判断するんですね!
よくあるまちがい
まちがい1:「不亦〜乎」を「また〜ない」と訳す
「亦た説ばしからずや」を「また、うれしくないのか」と訳すのは誤り。「なんとうれしいことではないか」と、否定+疑問で強い感動を表します。「亦」は「また(も)」の意味が弱く、強めの語として訳さないことも多いです。
まちがい2:「豈不〜哉」を反語で訳す
「豈に〜ずや」は詠嘆(なんと〜ではないか)。「豈に〜んや」が反語です。結びの「ずや」「んや」を必ず確かめましょう。
まちがい3:「嗚呼」をひらがなにする
感動詞の「嗚呼・噫・嗟乎」は、書き下し文では漢字のまま書くのが一般的です(ルビで「ああ」)。一方、文末の「哉(かな)」は助詞にあたるのでひらがなで書きます。
まちがい4:「矣」をいつも「かな」と読む
「矣」1字は読まない置き字(断定・完了の気持ち)です。「かな」と読むのは「矣乎」「矣哉」の2字のときです。
まちがい5:文頭の「夫」を「かな」と読む
「夫」は文頭なら「それ」(さて・そもそも)、文末なら「かな」です。「夫れ」は話を始める発語の言葉で、詠嘆ではありません。
練習問題
やさしい
- 次の字の、詠嘆での読み方を答えなさい。
(1)嗚呼(文頭) (2)哉(文末) (3)矣乎(文末)答えと解説を見る
(1)ああ (2)かな (3)かな(2字で1語)。(1)は漢字のまま、(2)(3)はひらがなで書き下す。
- 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)美ナル哉山也。
答えと解説を見る
美なるかな山や。(美なるかな山や。)訳:なんと美しいことだろう、この山は。「哉」は詠嘆の「かな」。述語「美なるかな」を先に言う倒置の形。
ふつう
- 「不亦楽乎」を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。
答えと解説を見る
書き下し文:亦た楽しからずや。訳:なんと楽しいことではないか。「不亦〜乎」は否定+疑問の形で強い感動を表す詠嘆。『論語』学而の「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」が有名。
- 次の2文の意味のちがいを説明しなさい。
(1)豈に悲しまんや。 (2)豈に悲しからずや。答えと解説を見る
(1)は反語で「どうして悲しもうか、いや悲しまない」。(2)は詠嘆(否定+疑問)で「なんと悲しいことではないか」。結びが「〜んや」なら反語、「〜ずや」なら詠嘆と覚える。
むずかしい
- 次の白文を、詠嘆の倒置に注意して書き下し文にし、訳しなさい。(自作)
「大哉、孔子之学也」答えと解説を見る
書き下し文:大なるかな、孔子の学や。訳:なんと偉大なことだろう、孔子の学問は。「哉」は詠嘆の「かな」、「也」は主語を示す「や」。ふつうの順なら「孔子の学や大なるかな」で、感動の中心「大なるかな」を前に出している。
- 文末の「哉」を、疑問・反語・詠嘆の3つの場合に分けて、それぞれの読み方と見分け方を説明しなさい。
答えと解説を見る
疑問は「か」「や」と読み、答えを求めている文(連体形で結ぶ)。反語は「や」と読み、未然形+「ん」で結び、「いや〜ない」と続けて意味が通る文。詠嘆は「かな」と読み、ほめる・嘆く内容で、述語を先に言う倒置になっていることが多い。ほかに「豈不〜哉」の「哉」は「ずや」と読む詠嘆。
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よくある質問
漢文の詠嘆とは何ですか?
心が強く動いたこと(感動・嘆き・驚き)を表す言い方です。文頭の嗚呼(ああ)、文末の哉(かな)、不亦〜乎(なんと〜ではないか)などの形があります。
「不亦〜乎」はどう読み、どう訳しますか?
「亦た〜ずや」と読み、「なんと〜ではないか」と訳します。論語の「亦た説ばしからずや」が有名です。
「豈不〜哉」は反語ですか?
「豈に〜ずや」は詠嘆で、「なんと〜ではないか」と訳します。「豈に〜んや」と未然形+んで結ぶ形が反語です。
文末の「哉」はいつ「かな」と読みますか?
ほめたり嘆いたりしている詠嘆の文で「かな」と読みます。疑問なら「か・や」、反語なら「や(んや)」と読みます。
「嗚呼」は書き下し文でひらがなにしますか?
一般には漢字のまま「嗚呼」と書き、「ああ」とルビをつけます。文末の「哉(かな)」は助詞にあたるのでひらがなで書きます。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(雍也・学而・先進・子罕)、『史記』(陳渉世家・項羽本紀)、韓愈「雑説」、杜甫「石壕吏」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
- 高校の漢文句法の標準的な説明(詠嘆の字の読み・訳・疑問反語との区別)にもとづいて作成。「夫」を「か」「かな」と読むなど、本によって読みが分かれる所は本文中に記した
- 画像:「至聖先賢半身像」より顔回(元代、国立故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



