漢文文法・句法辞典 › 句法
大学受験難関大
ひとことで言うと
漢文の句法は、「使AB=AをしてBしむ(AにBさせる)」のような公式で覚えられます。このページの一覧表に、否定・疑問・反語・使役・受身など19の句法と、再読文字・置き字・返読文字の句形・読み・意味をまとめました。目印の字の位置(文頭・述語の前・文末)で表を引くのがコツです。
このページのポイント
- 句法19+再読文字・置き字・返読文字を1つの表に(A4で印刷できる)
- 句法は7つの仲間(打ち消す・問いかける・人を動かす・もしも・くらべる・範囲・できる)で整理
- 表は目印の字の位置(文頭・述語の前・文末)で引く
- 如・若・為・安・無・使・寧・且は複数の句法にまたがる
- 文末の読み(か・んや・かな・をや・のみ)で句法がわかる
漢文 句法 一覧表(句形のまとめ)
| 句法 | 句形 | 読み(書き下し) | 意味(訳し方) |
|---|---|---|---|
| 再読文字 未・将・当・応・宜・須・猶・盍 | 未A | 未だAず | まだAしない |
| 将A・且A | 将に(且に)Aんとす | 今にもAしようとする | |
| 当A | 当にAべし | 当然Aすべきだ | |
| 応A | 応にAべし | きっとAだろう | |
| 宜A | 宜しくAべし | Aするのがよい | |
| 須A | 須らくAべし | ぜひAする必要がある | |
| 猶A | 猶ほAのごとし | ちょうどAのようだ | |
| 盍A | 盍ぞAざる | どうしてAしないのか(Aすればよい) | |
| 否定の句法 不・弗・無・莫・非・未 | 不A・弗A | Aず | Aしない |
| 無A・莫A | A無し・A莫し | Aがない | |
| 非A | Aに非ず | Aではない | |
| 未A | 未だAず | まだAしない | |
| 二重否定 無不・非不・不可不 | 無不A・莫不A | Aざる(は)無し | Aしないものはない(みなAする) |
| 無非A・莫非A | Aに非ざる(は)無し | Aでないものはない(すべてAだ) | |
| 無A不B | AとしてBざる(は)無し | どんなAでもBする | |
| 非不A | Aざるに非ず | Aしないのではない | |
| 非無A | A無きに非ず | Aがないのではない(Aはある) | |
| 不可不A | Aざるべからず | Aしなければならない | |
| 不得不A | Aざるを得ず | Aしないわけにはいかない | |
| 不敢不A | 敢へてAずんばあらず | 決してAしないことはない | |
| 未嘗不A | 未だ嘗てAずんばあらず | Aしなかったことは一度もない | |
| 部分否定と全部否定 不常・常不・不必 | 不常A | 常にはAず | いつもAするとはかぎらない(部分否定) |
| 常不A | 常にAず | いつもAしない(全部否定) | |
| 不倶A | 倶にはAず | 両方ともAするわけではない(部分否定) | |
| 不必A | 必ずしもAず | 必ずAするとはかぎらない(部分否定) | |
| 必不A | 必ずAず | 決してAしない(全部否定) | |
| 不復A | 復たAず | 二度とはAしない(部分否定) | |
| 不甚A | 甚だしくはAず | それほどAではない(部分否定) | |
| 疑問の句法 何・誰・孰・安・乎 | 何A | 何をかAする/何ぞAする | 何をAするのか/どうしてAするのか |
| 誰A | 誰かAする | だれがAするのか | |
| 孰A | 孰れかAなる | どちらがAか | |
| 安A | 安くにかAする/安くんぞAする | どこにAするのか/どうしてAするのか | |
| A乎 | Aか・Aや | Aか | |
| 何以A | 何を以てAする | どうやって(なぜ)Aするのか | |
| 何為A | 何為れぞAする | どうしてAするのか | |
| A何如 | Aは何如 | Aはどうであるか(状態・是非) | |
| 如A何 | Aを如何せん | Aをどうしたらよいか(方法) | |
| 反語の句法 豈・安・何・誰〜乎 | 豈A哉 | 豈にAんや | どうしてAだろうか、いやAない |
| 安A乎・焉A乎 | 安くんぞAんや | どうしてAだろうか、いやAない | |
| 何A乎 | 何ぞAんや | どうしてAだろうか、いやAない | |
| 誰A乎 | 誰かAんや | だれがAだろうか、いやだれもAない | |
| 独A哉 | 独りAんや | どうしてAだろうか、いやAない | |
| 敢不A乎 | 敢へてAざらんや | どうしてAしないことがあろうか、いや必ずAする | |
| 何A之有 | 何のAか之れ有らん | どんなAがあろうか、いや何もない | |
| 使役の句法 使・令・教・遣 | 使AB・令AB・教AB | AをしてBしむ | AにBさせる |
| 遣AB | Aを遣はしてBしむ | Aを行かせてBさせる | |
| 命AB | Aに命じてBしむ | Aに命令してBさせる | |
| 使AB、C | AをしてBしめば、C | もしAにBさせたら、C(仮定) | |
| 受身の句法 見・被・為〜所〜・於 | 見A・被A | Aる・Aらる | Aされる |
| 為A所B | AのBする所と為る | AにBされる | |
| B於A | AにBる・Bらる | AにBされる(於は置き字) | |
| 見B於A | AにBる・Bらる | AにBされる | |
| 仮定の句法 如・若・苟・縦・雖 | 如A・若A | 如し(若し)Aば | もしAならば |
| 苟A | 苟くもAば | かりにもAならば | |
| 縦A | 縦ひAとも | たとえAでも | |
| 雖A | Aと雖も | たとえAでも/Aだけれども | |
| 微A | A微かりせば | もしAがなかったら | |
| 比較の句法 於・不如・莫若 | A+形容詞+於B | AはBよりも〜 | AはBよりも〜だ |
| A不如B・A不若B | AはBに如かず | AはBに及ばない(Bの方がよい) | |
| 莫如B・莫若B | Bに如くは莫し | Bがいちばんよい | |
| 莫A於B・無A於B | BよりAなるは莫し | Bがいちばん〜だ(最上級) | |
| A孰与B | AはBに孰与ぞ | AはBとくらべてどうか | |
| 選択の句法 寧〜無〜・与其〜寧〜 | 寧A、無B | 寧ろAすとも、Bする無かれ | たとえAしても、Bはするな |
| 寧A、不B | 寧ろAすとも、Bせず | たとえAしても、Bはしない | |
| 与其A、寧B | 其のAせんよりは、寧ろBせよ | AするよりはむしろBせよ | |
| 与其A、不若B | 其のAせんよりは、Bするに若かず | AするよりはBするほうがよい | |
| A与B孰〜 | AとBと孰れか〜なる | AとBとではどちらが〜か | |
| 限定の句法 唯・独・耳・而已 | 唯A・惟A・但A | 唯だA(のみ) | ただAだけ |
| 独A | 独りA(のみ) | ただAだけが | |
| A耳・A已・A爾 | Aのみ | Aだけだ | |
| A而已(矣) | Aのみ | Aだけだ | |
| 不過A | Aに過ぎず | Aにすぎない | |
| 累加の句法 不唯・豈唯 | 不唯A、B | 唯だにAのみならず、B | ただAだけでなく、Bも |
| 非唯A | 唯だにAのみに非ず | ただAだけでなく | |
| 不独A・非独A | 独りAのみならず | ただAだけでなく | |
| 豈唯A哉 | 豈に唯だにAのみならんや | どうしてただAだけであろうか | |
| 何独A乎 | 何ぞ独りAのみならんや | どうしてただAだけであろうか | |
| 抑揚の句法 且〜況〜乎 | A且B、況C乎 | Aすら且つB、況んやCをや | AでさえBだ、ましてCはなおさらだ |
| A猶B、況C乎 | Aすら猶ほB、況んやCをや | AでさえBだ、ましてCはなおさらだ | |
| 況C乎 | 況んやCをや | ましてCはなおさらだ | |
| 況於C乎 | 況んやCに於いてをや | ましてCについてはなおさらだ | |
| A且B、安C哉 | Aすら且つB、安くんぞCせんや | AでさえBだ、どうしてCしようか | |
| 願望の句法 願・請・庶幾・欲 | 願A | 願はくはAせん/Aせよ | どうかAさせてほしい/Aしてください |
| 請A | 請ふAせん/Aせよ | どうかAさせてください/Aしてください | |
| 庶幾A・冀A・幸A | 庶幾はくはAせん/Aせよ | どうかAしたい/Aしてほしい | |
| 欲A | Aせんと欲す | Aしたい/今にもAしそうだ | |
| 詠嘆の句法 嗚呼・哉・不亦〜乎 | 嗚呼・噫・嗟乎 | ああ | ああ |
| A哉・A夫・A矣乎 | Aかな | Aだなあ | |
| 不亦A乎 | 亦たAずや | なんとAではないか | |
| 豈不A哉 | 豈にAずや | なんとAではないか | |
| 何A也 | 何ぞAや | なんとAなことか | |
| 禁止の句法 勿・毋・無・莫 | 勿A・毋A・無A・莫A | Aすること勿かれ | Aするな |
| 不可A | Aすべからず | Aしてはならない | |
| 請勿A | 請ふAすること勿かれ | どうかAしないでください | |
| 比況の句法 如・若・猶 | A如B・A若B | AはBのごとし | AはBのようだ |
| 猶B・由B | 猶ほBのごとし | ちょうどBのようだ | |
| 如此・若是 | 此くのごとし | このようだ | |
| 譬如B | 譬へばBのごとし | たとえばBのようなものだ | |
| A似B | AはBに似たり | AはBに似ている | |
| 可能・不可能 可・能・得・足 | 可A | Aすべし | Aできる・Aしてよい |
| 能A | 能くAす | Aできる | |
| 得A | Aするを得 | Aできる | |
| 足A | Aするに足る | Aできる・Aする値打ちがある | |
| 不能A | Aする(こと)能はず | Aできない | |
| 不得A | Aするを得ず | Aできない | |
| 不足A | Aするに足らず | Aする値打ちがない | |
| 不可勝A | 勝げてAすべからず | Aしきれない | |
| 逆接・条件 雖・而・則 | 雖A、B | Aと雖も、B | Aだけれども、B |
| A而B | AどもB/AてB | AだけれどもB(逆接)/AしてB(順接) | |
| 然B | 然れども(然るに)B | しかし(それなのに)B | |
| A則B | Aば則ちB | AならばB・AするとB | |
| A即B | A即ちB | AはつまりB/すぐにB | |
| A乃B | A乃ちB | そこでB・なんとB | |
| 置き字 而・於・于・乎・矣・焉 | 而 | 読まない(前の字にテ・ドモ) | 順接(そして)・逆接(けれども) |
| 於・于・乎(文中) | 読まない(下の語にニ・ヲ・ヨリ・ヨリモ) | 場所・対象・起点・比較・受身 | |
| 矣・焉(文末) | 読まない | 断定・強調 | |
| 返読文字 有・無・不・非・多・少・難・易 | 有・無・莫・非 | あり・なし・あらず | 下の語から返って読む |
| 不・弗 | ず(ひらがなで書く) | 否定 | |
| 多・少・難・易 | おほし・すくなし・かたし・やすし | 下の語から返って読む形容詞 | |
| 可・足・能・得 | べし・たる・あたふ・う | 可能(〜できる) | |
| 所・与・自・使・見 | ところ・と・より・しむ・る | 返読する助字(〜する所・Aと・Aより) |
合格大作戦 漢文文法・句法辞典「漢文 句法 一覧表(句形のまとめ)」 5ka9.com/kanbun/kuhouichiran (読みは高校の教科書で一般的な読み方による)
はじめて(やさしく)
句法(くほう)とは、漢文の中で決まった字の組み合わせが、決まった読み方と意味になる形のことです。「句形(くけい)」「句法形」とも呼びます。たとえば「使AB」と出てきたら「AをしてBしむ(AにBさせる)」と読む、というように、公式として覚えられます。上の一覧表は、その公式を全部並べたものです。
句法は数が多く見えますが、ばらばらに覚える必要はありません。働きの似たものを7つの仲間にまとめると、頭の中で整理しやすくなります。「打ち消す仲間」「問いかける仲間」「人を動かす仲間」……という具合です。そして、すべての句法の土台になるのが、再読文字・置き字・返読文字です。
サクラちゃん
表が長くて、どこから覚えればいいのかわかりません……。
ミスターT先生
最初から全部は覚えなくていい。まずは否定・疑問・反語・使役・受身の5つ。共通テストでいちばんよく出る仲間だ。表の「句法」の名前を押せば、くわしいページで例文といっしょに練習できるよ。
うかるくん
AとかBって、数学の公式みたいだね。
ミスターT先生
そのとおり。目印の字を見つけて、AとBに当てはまる語を決めれば、読みと訳が決まる。句法は漢文の「公式」なんだ。
公式の読み方を、使役の「使AB」で確かめましょう。「使」が目印の字、Aがさせる相手、Bがさせる動作です。書き下すと「AをしてBしむ」。Aには送り仮名「ヲシテ」、Bは未然形にし、「使」は助動詞なのでひらがなの「しむ」で書きます。
次の論語の一節は、禁止の句法「勿A(Aすること勿かれ)」の代表例です。丸の数字が読む順番です。
禁止(勿A=Aすること勿かれ)
白文己所不欲、勿施於人。
書き下し文己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。
(『論語』衛霊公)
現代語訳自分がしてほしくないことは、人にしてはならない。
使役(使AB=AをしてBしむ)
書き下し文天帝我をして百獣に長たらしむ。
(『戦国策』楚策)
現代語訳天の神は、わたしを百獣の王にさせた。

ここまでのまとめ
- 句法=決まった字の組み合わせ→決まった読みと意味になる公式
- 7つの仲間(打ち消す・問いかける・人を動かす・もしも・くらべる・範囲・できる)で整理
- まず否定・疑問・反語・使役・受身から。表の句法名からくわしいページへ
しっかり(共通テスト)
一覧表の使い方:目印の字から引く
共通テストでは、傍線部の書き下し文や解釈を選ぶ問題で、句法の知識が直接問われます。問題文の中で句法を見つけるには、目印の字が文のどこにあるかを見るのが早道です。文頭にあるのか、述語(動詞・形容詞)の前にあるのか、文末にあるのかで、候補の句法がしぼれます。
- 目印の字をさがす:不・無・非・豈・安・何・使・令・見・被・為・所・如・若・雖・唯・耳・況 など。
- 位置を確かめる:文頭・述語の前・文末のどこにあるかで、一覧表の行をしぼる。
- A・Bに当たる語を決める:返り点がどこまでかかるかを見て、句形の公式に当てはめる。
- 読みと訳を公式どおりに作る:反語なら「いや〜ない」まで、二重否定なら肯定に言いかえて訳す。
反語(安A哉=安くんぞAんや)
書き下し文燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。
(『史記』陳渉世家)
現代語訳ツバメやスズメのような小さな鳥に、どうして大きな鳥の志がわかろうか(いや、わからない)。
受身(為A所B)・条件(A則B)
書き下し文先んずれば即ち人を制し、後るれば則ち人の制する所と為る。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳先手をとれば人をおさえつけられるが、おくれをとれば人におさえつけられる。
比較(A不如B=AはBに如かず)
書き下し文百聞は一見に如かず。
(『漢書』趙充国伝)
現代語訳百回話を聞くことは、一回自分の目で見ることに及ばない。
1字でいくつもの句法にまたがる字
一覧表を見ると、同じ字が別の句法の行にも出てくることに気づきます。「如」は仮定(もし)・比較(しく)・比況(ごとし)の3か所、「無・莫」は否定と禁止と比較、「安」は疑問と反語です。共通テストでは、こうした字をどの句法で読むかが選択肢の分かれ目になります。
仮定(未然形+ば)
書き下し文虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳虎の穴に入らなければ、虎の子は手に入らない。
うかるくん
「如」って、表の3か所に出てくる! どうやって見分けるの?
ミスターT先生
前後の字を見るんだ。上に「不・莫」があれば比較の「しく」、文の頭で下に「〜ば」が続けば仮定の「もし」、「〜の如し」と文末で受ければ比況の「ごとし」。一覧表の句形の欄に、その前後の字が書いてあるよ。
サクラちゃん
句形の欄は、見分けるためのヒントでもあるんですね!

ミスターT先生
一覧表は目印の字の位置で引き、前後の字で行を決める。印刷して机の前にはっておくと、問題を解きながらすぐに確かめられるよ。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 文末の読みで句法を見分ける
難関大の白文の訓読では、文末の読み方がそのまま句法の答えになります。同じ「乎」「哉」でも、疑問なら「〜か・〜や」、反語なら「〜んや」、詠嘆なら「〜かな」「〜ずや」、抑揚なら「〜をや」と読み分けます。記述では、反語は「未然形+んや」、詠嘆の「不亦〜乎」は「〜ずや」と、活用まで正確に書けるかが問われます。
抑揚(A且B、況C乎)
書き下し文死馬すら且つ之を買ふ、況んや生ける者をや。
(『十八史略』春秋戦国)
現代語訳死んだ馬でさえ買うのだ。まして生きている(名馬)ならなおさらだ。
詠嘆(不亦A乎=亦たAずや)
書き下し文学びて時に之を習ふ、亦た説ばしからずや。
(『論語』学而)
現代語訳学んで、機会があるたびにくり返し習って身につける。なんとうれしいことではないか。
2. 否定の字の位置:部分否定と全部否定
否定の句法で難関大がもっとも好むのが、部分否定と全部否定の区別です。「不常A(常にはAず)」と「常不A(常にAず)」は、字の順番が入れかわっただけで意味が大きく変わります。「不」が上なら部分否定(「は」を入れて読む)、副詞が上なら全部否定です。
部分否定(不常A=常にはAず)
書き下し文千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。
(韓愈「雑説」)
現代語訳一日に千里を走る名馬はいつの世にもいるが、それを見ぬく伯楽はいつもいるとはかぎらない。
3. 句法が重なる文と、読みの流派
実際の文章では、句法は1つずつではなく重なって出てきます。「豈不〜哉(豈に〜ずや)」は反語の字「豈」と否定「不」が重なって詠嘆に、「不唯〜(唯だに〜のみならず)」は否定と限定が重なって累加に、「況〜乎」は反語の気持ちをふくむ抑揚になります。一覧表でどの句法とどの句法の組み合わせかを考えると、長い文でも読みの順番が見えてきます。
なお、句法の読み方には、教科書や参考書によって少しずつ違いがあります。たとえば「何為」は「なんすれぞ(どうして)」と2字まとめて読むのがふつうですが、「為」が動詞のときは「何をか為さん(何をしようか)」と読みます。「孰与」は「いづれぞ」と2字まとめて読むほか「〜と孰れぞ」と読む本もあります。「不能A」は「Aする能はず」「Aすること能はず」の両方があります。この一覧表は高校の教科書で一般的な読みを採り、くわしいページで別の読みも紹介しています。入試では、意味が正しく伝わる読みであれば、どちらの流派の読みでも正解とされるのがふつうです。
再読文字+比況(猶ほ〜のごとし)
書き下し文過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし。
(『論語』先進)
現代語訳やりすぎは、足りないのと同じようなものだ。

うかるくん
文末の読み(か・んや・かな・をや・のみ)と、否定の字の位置(不常・常不)。この2つを一覧表で確かめれば、白文の訓読もこわくない!
よくあるまちがい
まちがい1:反語を疑問のまま訳す
「豈に〜んや」を「どうして〜か」で終わらせると減点。反語は「いや、〜ない」まで書きます。
まちがい2:「不亦〜乎」を反語と取る
「亦た説ばしからずや」は詠嘆(なんと〜ではないか)。「うれしくないことがあろうか」は不自然な訳です。
まちがい3:部分否定と全部否定を取りちがえる
「不常A(常にはAず)」は「いつも〜とはかぎらない」。「常不A(常にAず)=いつも〜しない」と区別します。
まちがい4:「A不如B」でAの方を上にする
「百聞は一見に如かず」は一見(B)の方が上。不如の下の語が勝ちです。
まちがい5:句形の表だけを丸暗記する
公式だけでは、白文で目印の字を見つけられません。くわしいページの例文を声に出して読み、形を体で覚えましょう。
練習問題
やさしい
- 次の句形の読みと意味を答えなさい。
①不可不A ②為A所B ③使AB答えと解説を見る
①Aざるべからず:Aしなければならない(二重否定) ②AのBする所と為る:AにBされる(受身) ③AをしてBしむ:AにBさせる(使役)
- 次の訓読文を書き下し文にし、句法の名前を答えなさい。(自作)勿カレレ言フコト二於人ニ一。
答えと解説を見る
人に言ふこと勿かれ。(人に言ふこと勿かれ。)禁止の句法。訳は「人に言ってはならない」。「於」は読まない置き字です。
ふつう
- 「如」を、①仮定 ②比較 ③比況 の句法で読むときの読み方を、それぞれ答えなさい。
答えと解説を見る
①もし(如し〜ば) ②しく(〜に如かず・〜に如くは莫し) ③ごとし(〜の如し)。上に「不・莫」があれば比較、文頭で下に「〜ば」が続けば仮定、文末で受ければ比況です。
- 次の文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)人莫シレ不ルハレ喜バ。
答えと解説を見る
書き下し文:人喜ばざるは莫し。 訳:喜ばない人はいない(だれもが喜ぶ)。「莫不A(Aざるは莫し)」の二重否定で、肯定に言いかえて訳します。
むずかしい
- 文末の「乎」は、句法によって読み方が変わる。①疑問 ②反語 ③詠嘆(不亦〜乎) ④抑揚(況〜乎) のときの文末の読みを答えなさい。
答えと解説を見る
①か・や ②(未然形+)んや ③ずや(亦た〜ずや) ④をや(況んや〜をや)。文末の読みがそのまま句法の答えになります。
- 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
「智者不必賢」答えと解説を見る
書き下し文:智者は必ずしも賢ならず。 訳:知恵のある人が必ずしもすぐれた人格の持ち主だとはかぎらない。「不必A(必ずしもAず)」は部分否定。「必ず賢ならず(決してすぐれていない)」と全部否定に訳すのは誤りです。
関連ページ
- 漢文の勉強法(句法は何から・どの順で覚えるか)
- 再読文字(未・将・当・応・宜・須・猶・盍)・置き字(而・於・于・乎・矣・焉)・返読文字の一覧(有・無・不・非):句法の土台
- 否定の句法(不・無・非・未)・二重否定(無不・非不・不可不)・部分否定と全部否定(不常・常不)
- 疑問の句法(何・誰・安・孰)・反語の句法(豈・安・何・誰〜乎)・詠嘆の句法(嗚呼・哉・不亦〜乎)
- 使役の句法(使・令・教・遣)・受身の句法(見・被・為〜所〜)・願望の句法(願・請・庶幾)
- 仮定の句法(如・若・苟・縦・雖)・逆接・条件(雖・則・而)
- 比較の句法(於・不如・莫若)・選択の句法(寧〜無〜・与其〜寧〜)・比況の句法(如・若・猶)
- 限定の句法(唯・独・耳・而已)・累加の句法(不唯・豈唯)・抑揚の句法(且〜況〜乎)
- 禁止の句法(勿・毋・無・莫)・可能・不可能(可・能・得・足)
- 重要漢字の読み一覧(蓋・嘗・遂・頗・具)・漢文の重要単語(人間・故人・百姓)
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句法の例文に出てくる「虎の威を借る狐」「先んずれば人を制す」「隗より始めよ」などの話は、故事成語の一覧(意味・由来・出典)で読めます。
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国語をふくむ教科のバランス - 「好きこそものの上手なれ」と論語「楽しむ者に如かず」
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よくある質問
漢文の句法にはどんなものがありますか?
否定・二重否定・部分否定・疑問・反語・使役・受身・仮定・比較・選択・限定・累加・抑揚・願望・詠嘆・禁止・比況・可能・逆接と条件などがあります。土台として再読文字・置き字・返読文字も覚えます。
句法の一覧は印刷できますか?
できます。表の上のボタンかブラウザの印刷を使うと、サイトのメニューや図・練習問題を除いて、一覧表だけがA4で印刷されます。
句法はどの順番で覚えればいいですか?
再読文字・置き字・返読文字を先に押さえ、否定・疑問・反語・使役・受身の5つ、次に仮定・比較・限定・抑揚、最後に累加・選択・願望・詠嘆などの順がおすすめです。
句形の「A」「B」とは何ですか?
公式の中で語句が入る場所です。たとえば「使AB」のAはさせる相手、Bはさせる動作で、「AをしてBしむ(AにBさせる)」と読みます。
同じ字が別の句法に出てくるときはどう見分けますか?
前後の字と位置で見分けます。たとえば「如」は、上に不・莫があれば比較(しく)、文頭で下に「〜ば」が続けば仮定(もし)、文末で受ければ比況(ごとし)です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 一覧表は、この辞典の句法19ページ・再読文字・置き字・返読文字のページの「句形の公式の表」をまとめたもの。読みは高校の教科書で一般的な読み方による
- 例文の本文:『論語』(衛霊公・学而・先進)、『戦国策』楚策、『史記』(陳渉世家・項羽本紀)、『漢書』趙充国伝、『後漢書』班超伝、『十八史略』春秋戦国、韓愈「雑説」
- 画像:仇英の作と伝える「観榜図」部分(明代・16世紀、台北・国立故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



