漢文文法・句法辞典 › 句法
大学受験難関大
ひとことで言うと
漢文の受身は「見・被・為」を「る・らる」と読む形と、「為A所B(AのBする所と為る=AにBされる)」の形が基本です。ほかに「動詞+於+人」や文脈だけで受身になることもあり、書き下し文では「見・被」をひらがなで書きます。
このページのポイント
- 受身の字は見・被・為、読みはる・らる(ひらがなで書く)
- 為A所B=AのBする所と為る=AにBされる
- 動詞+於+人も受身(人に治めらる)
- ア段で終わる未然形にはる、それ以外にはらる
- 字がなくても文脈で受身になる(国破れて)
はじめて(やさしく)
受身(うけみ)とは、「〜される」という言い方です。漢文では「見」「被」「為」「所」などの字や、「為A所B(AのBする所と為る)」の形で表し、読みは古文と同じ助動詞「る・らる」です。まず公式の表で全体を見ましょう。
受身の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| 見 B | Bる・Bらる | Bされる |
| 被 B | Bる・Bらる | Bされる |
| 為 B | Bる・Bらる | Bされる(「為」は多くの読みがある) |
| 為 A 所 B | AのBする所と為る | AにBされる |
| B 於 A | AにBる・Bらる | AにBされる(於・于・乎は置き字) |
| 見 B 於 A | AにBる・Bらる | AにBされる(する人をはっきり示す) |
| (字なし)B | 送り仮名で「〜る・らる」 | 文脈でBされる |
「する側」と「される側」を考えるとわかりやすくなります。「王が屈原を疑う」は、する側(王)が主語のふつうの文。「屈原が王に疑われる」は、される側(屈原)が主語の受身の文です。中身は同じできごとでも、だれの立場から言うかが違うのです。
「見」はふだん「みる」と読む字ですが、受身では下の動詞から返って「る」または「らる」と読みます。書き下し文では、受身の「見・被」は助動詞なのでひらがなで書きます(書き下し文のきまり(助詞・助動詞はひらがな))。「る」と「らる」は、上の動詞の形で使い分けます。
うかるくん
えっ、「見」が「みる」じゃなくて「る」になるの? ふしぎ!
ミスターT先生
「見」には「人から〜される」という意味の使い方があってね。日本で訓読するときに、古文の受身の助動詞「る・らる」をあてたんだ。だから読みは「る・らる」、書き下しはひらがな。字の形は「見」でも、もう「みる」ではないんだよ。
サクラちゃん
「見」の下に動詞があったら、受身かもしれない、って思えばいいんですね!
では、楚の国の詩人・屈原(くつげん)について、歴史家の司馬遷が書いた一節を読みましょう。屈原はまごころをつくして王に仕えたのに、悪口を言われて遠ざけられました。丸の数字が読む順番です。
見・被(る・らる)
白文信而見疑、忠而被謗。
書き下し文信にして疑はれ、忠にして謗らる。
(『史記』屈原賈生列伝)
現代語訳誠実であるのに疑われ、忠義をつくしているのに悪口を言われる。

ミスターT先生
受身の文は、主語が「される側」。訳すときは「〜される」「〜に〜される」と、される人を主語にして書こう。「だれに」されたのかが書いてあれば、それも必ず訳に入れるんだ。
ここまでのまとめ
- 受身=「〜される」。字は見・被・為・所、読みは「る・らる」
- 「見・被」は下の動詞(未然形)から返って読み、書き下し文ではひらがな
- ア段で終わる未然形(四段・ナ変・ラ変)には「る」、それ以外には「らる」
しっかり(共通テスト)
受身の4つの型
漢文の受身は、大きく4つの型に分けると整理できます。共通テストでは、とくに2の「為A所B」と3の「於」による受身が、書き下しや訳の選択肢でよくねらわれます。
| 型 | 例(白文) | 書き下し | 訳 |
|---|---|---|---|
| 見・被 | 信而見疑 | 信にして疑はる | 誠実なのに疑われる |
| 為A所B | 為人所制 | 人の制する所と為る | 人に支配される |
| 動詞+於A | 治於人 | 人に治めらる | 人に治められる |
| 見B於A | 見逐於君 | 君に逐はる | 君主に追い出される |
| 文脈 | 国破 | 国破る(破れて) | 国が(戦争で)破壊される |
「る」と「らる」の使い分け
受身の助動詞は、古文の「る・らる」と同じです(古文の助動詞「る・らる」(受身・尊敬・自発・可能))。四段・ナ変・ラ変の未然形(ア段の音で終わる)には「る」、それ以外(上一段・上二段・下一段・下二段・カ変・サ変)の未然形には「らる」がつきます。どちらも下二段型に活用し、「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」「られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ」となります。
「為A所B」の読み方の手順
「為A所B」は、受身のなかでいちばん大事な形です。「AのBする所と為る」と読み、「AにBされる」と訳します。「為」は「なる」、「所」は「ところ」で、どちらも漢字で書き下します。
- 「為」と「所」が近くにあるか見る。「為+名詞(人)+所+動詞」の並びなら為A所B。
- Aを読み、「の」をつける(「人の」)。Aは動作をする人。
- Bを連体形で読む(「制する」)。
- 「所と」と読んで、最後に「為る」で結ぶ。訳は「AにBされる」。
例文で確かめる
為A所B(人の制する所と為る)
書き下し文先んずれば即ち人を制し、後るれば則ち人の制する所と為る。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳先手を取れば人をおさえることができ、おくれをとれば人におさえられる。
見B於A(君に逐はる)
書き下し文吾嘗て三たび仕へて三たび君に逐はる。
(『史記』管晏列伝)
現代語訳私は以前三度仕官して、三度とも主君に追い出された。
動詞+於(人に治めらる)
書き下し文心を労する者は人を治め、力を労する者は人に治めらる。
(『孟子』滕文公上)
現代語訳心を使って働く者は人を治め、体を使って働く者は人に治められる。
為(〜と為る=受身の意味)
書き下し文兎復た得べからずして、身は宋国の笑ひと為る。
(『韓非子』五蠹)
現代語訳兎は二度と手に入らず、その男は宋の国の笑いものになった。
被(らる)
書き下し文忠臣小人に讒せらる。
(自作)
現代語訳忠義な家来が、つまらない者に(主君へ)告げ口をされる。
サクラちゃん
「為」が「なる」だったり、受身だったり……。「為」って何でもありなんですか?
ミスターT先生
「為」は漢文でいちばん読み方の多い字のひとつだ。「なる・なす・つくる・ため・たり・る・らる」……。受身のときは「所」とセットになっていることが多いから、まず近くに「所」がないか探すといい。
うかるくん
「為」を見たら「所」をさがす。これなら覚えられる!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 受身の字がない受身(文脈による受身)
漢文では、受身の字がなくても文脈から受身になることがよくあります。このときは送り仮名で「る・らる」をつけたり、自動詞として読んだりして受身の意味を出します。白文で主語が「される側」になっていないか、いつも確かめましょう。
文脈による受身
書き下し文国破れて山河在り、城春にして草木深し。
(杜甫「春望」)
現代語訳国(都)は戦乱で破壊されたが、山や川は昔のままにある。町には春が来て、草木が深くしげっている。
送り仮名で受身に読む
書き下し文狡兎死して走狗烹らる。
(『史記』越王句践世家)
現代語訳すばしこい兎が死ぬと、(用のなくなった)猟犬は煮て食べられてしまう。
2. 「於」の3つの役目を見分ける
「於」は読まない置き字ですが、上の語の種類で意味が大きく変わります。動詞+於+人なら受身、形容詞+於+Aなら比較(比較の句法(於・不如・莫若))、動詞+於+場所なら場所・対象です。「苛政猛於虎(苛政は虎よりも猛なり)」の「於」は比較で、受身ではありません。
ただし、動詞+於+人がいつも受身になるわけではありません。「告於王(王に告ぐ)」「学於師(師に学ぶ)」のように、動作の相手を示すだけのこともあります。主語がその動作を「される」立場かを、文脈で確かめるのが決め手です。
3. 「為A所B」の変形と「所」の働き
「為A所B」は、ときどき形が変わります。
- Aが省かれる:「為所B」=「Bする所と為る」。だれにされたかを言わない形です。
- 為の代わりに「見」:「見B於A」で、だれにされたかを「於A」で示します(上の「見逐於君」)。
- 「所」だけ:「A所B」で「AのBする所」と読み、「AがBするもの・こと」という名詞のまとまりを作ります。これは受身ではなく、「所」が「〜するもの」を作る働きです(「者・所・所以」の読みと用法(もの・ところ・ゆゑん))。
「所」は本来、動詞の上について「〜するところのもの」という名詞のまとまりを作る字です。「為人所制」は「人の制するところのもの(=人に支配されるもの)と為る」という仕組みで、これが受身の意味になります。このしくみを知っていると、「所」の位置がずれた文でも落ち着いて読めます。
4. 「見」の受身以外の読みと、まぎらわしい使い方
- みる:「見其人(其の人を見る)」のように下に名詞(目的語)があれば「見る」。
- まみゆ:「見王(王に見ゆ)」は「お目にかかる」。目上の人に会うときの読みです。
- あらはる:「見」は「現」と同じ意味で「あらはる(現れる)」と読むこともあります。
- 相手からの動作:「見」が、相手が自分に対してする動作を表し、「(私に)〜してくださる」と訳される例もあると説明されます。難関大では受身と取りちがえないよう、文脈で確かめます。

5. 受身の訓読の歴史:「る・らる」をあてた理由
中国語の「見」「被」は、動詞の前について「〜される」を表す字です。日本の訓読では、これを助動詞「る・らる」と読むことで、日本語の受身の形に直しました。とくに「被」は、もとは「こうむる」という動詞で、悪いことを身に受ける場面に多く使われたと説明されます。一方、「為A所B」は語の並び(構文)で受身を表す形なので、「為」「所」を漢字のまま読み、「〜所と為る」という訓読特有の言い方になりました。読み方は教科書によって少し違い、「為A所B」の「為」に送り仮名「ル」を、「所」に「ト」をつけるのが一般的です。
古文の「る・らる」には受身のほかに尊敬・自発・可能の意味がありますが、漢文で「見・被」を「る・らる」と読むときは受身です。ただし、送り仮名で「る・らる」をつけた文では、可能(〜できる)の意味になることもあるので、文脈で判断します。

サクラちゃん
受身の見分けは、主語が「される側」かがいちばん大事! 見・被・為〜所〜がなくても、「於+人」や文脈で受身になることがあるんですね。
よくあるまちがい
まちがい1:受身の「見」を「みる」と読む
「見疑」を「疑ひを見る」と読むのは誤り。下に動詞があり、主語がされる側なら、受身の「疑はる」です。下が名詞なら「見る」を考えます。
まちがい2:「見・被」を漢字のまま書く
書き下し文で「疑は見」「謗ら被」と書くのは誤り。助動詞「る・らる」にあたるのでひらがなで書きます。「為A所B」の「為」「所」は漢字のままです。
まちがい3:「る」と「らる」を取りちがえる
「治むる」「讒する」のような四段以外の動詞に「る」をつけて「治めるる」とするのは誤り。四段・ナ変・ラ変は「る」、ほかは「らる」(治めらる・讒せらる)。
まちがい4:「為A所B」を「AがBをする」と訳す
「為人所制」を「人が支配する」と訳すと、する側とされる側が逆になります。正しくは「人に支配される」。主語は文の前に出ている人(される側)です。
まちがい5:「於」があれば何でも受身にする
「猛於虎」は比較(虎よりも猛なり)、「至於斉」は場所(斉に至る)。上の語が動詞で、主語がされる側のときだけ受身です。
練習問題
やさしい
- 受身を表す字を3つ以上あげ、その読み方を答えなさい。
答えと解説を見る
見・被・為・所(為A所Bの形)など。「見・被・為」は「る・らる」と読み、「為A所B」は「AのBする所と為る」と読む。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)吾見レ笑ハ。
答えと解説を見る
吾笑はる。(吾笑はる。)意味は「私は笑われる」。「笑ふ」は四段なので未然形「笑は」に「る」。
ふつう
- 次の文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)弟為ル二兄ノ所ト一レ欺ク。
答えと解説を見る
書き下し文:弟兄の欺く所と為る。 訳:弟は兄にだまされた。「為A所B=AのBする所と為る」で、「AにBされる」と訳す。
- 「力を労する者は人に治めらる」(『孟子』)には受身の字(見・被)がない。それでも受身と判断できる理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
白文は「労力者治於人」。動詞「治」のすぐ下に「於+人」があり、主語の「力を労する者」が治める側ではなく治められる側だから。前半の「心を労する者は人を治め」と対にすると、される側であることがはっきりする。
むずかしい
- 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
「賢者見疑於王」答えと解説を見る
書き下し文:賢者王に疑はる。 訳:賢い人が王に疑われる。「見B於A」で「AにBる・らる」。「見」は受身の「る」、「於王」がだれにされたかを示す。
- 次の2文の「於」の働きの違いを説明しなさい。(自作)
A「臣辱於敵」 B「苛政猛於虎」答えと解説を見る
Aは受身:上の「辱」が動詞で、主語の臣がはずかしめを受ける側なので「臣敵に辱めらる(家来は敵にはずかしめられた)」。Bは比較:上の「猛」が形容詞なので「苛政は虎よりも猛なり(むごい政治は虎よりもおそろしい)」。「於」は上の語が動詞か形容詞かで役目が変わる。
関連ページ
- 使役の句法(使・令・教・遣「AヲシテBセしむ」):「させる」の形。受身の「される」と対にして覚える
- 比較の句法(於・不如・莫若):「形容詞+於」は比較
- 置き字(而・於・于・乎・矣・焉)の読み方:受身の「於」は読まない
- 返読文字の一覧(有・無・不・非・見・被・為):見・被も下から返って読む字
- 書き下し文のきまり(助詞・助動詞はひらがな):「る・らる」をひらがなで書く理由
- 返り点(レ点・一二点・上下点)のつけ方と読む順番
- 可能・不可能の句法(可・能・得・足)・逆接・条件の句法(雖・則・而)
- 重要語:「為」の読みと用法(なす・たり・ために・受身)・「於・于・乎」の読みと用法(おいて・より・や)・「者・所・所以」の読みと用法(もの・ところ・ゆゑん)
- 漢文文法・句法辞典の目次
受身の「る・らる」は古文と同じ助動詞です。古文の助動詞「る・らる」(受身・尊敬・自発・可能)を読むと、意味の見分け方がまとめて身につきます。「株を守る」「管鮑の交わり」などの話は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 故事成語の一覧(意味・由来・出典)
矛盾・蛇足・漁夫の利など150語 - 古文文法辞典(動詞・助動詞・係り結び・敬語)
古文の文法を1項目1ページで - 共通テストの勉強法(高1・高2・高3の計画)
国語をふくむ教科のバランス - 古典と古文と漢文の違い
作品年表と共通テストの配点 - 京大国語 文語文(明治擬古文)の勉強法
漢文訓読の文体で書かれた文章
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
よくある質問
漢文の受身の形は?
見・被・為を「る・らる」と読む形(見疑=疑はる)、為A所B(AのBする所と為る)、動詞+於+人(人に治めらる)、字がなく文脈で受身になる形の4つです。
「為A所B」はどう読みますか?
「AのBする所と為る」と読み、「AにBされる」と訳します。例:為人所制=人の制する所と為る(人に支配される)。
「る」と「らる」はどう使い分けますか?
四段・ナ変・ラ変の未然形(ア段で終わる形)には「る」、それ以外の未然形には「らる」をつけます。例:疑はる・治めらる・讒せらる。
「於」があるといつも受身ですか?
いいえ。動詞+於+人で主語がされる側なら受身ですが、形容詞+於は比較(虎よりも猛なり)、動詞+於+場所は場所や相手を表します。
書き下し文で「見」「被」はどう書きますか?
受身の「見」「被」は助動詞「る・らる」にあたるので、ひらがなで書きます。為A所Bの「為」「所」は漢字のままです。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『史記』(屈原賈生列伝・項羽本紀・管晏列伝・越王句践世家)、『孟子』滕文公上、『韓非子』五蠹、杜甫「春望」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
- 高校の漢文句法の標準的な説明(受身の句形・る/らるの接続・為A所B)にもとづいて作成。読みが分かれる所は本文中に記した
- 画像:陳洪綬「屈原像」(明末・17世紀、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



