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狡兎死して走狗烹らるこうとししてそうくにらる
ひとことで言うと
役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられること。すばしこい兎が死ねば、追っていた猟犬は煮て食べられる、というたとえから。
| 読み方 | こうとししてそうくにらる |
|---|---|
| 意味 | 役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられること。とくに、敵がほろびると、手柄を立てた家来が主君に捨てられる(殺される)こと。 |
| 別の形 | 狡兎死して良狗烹らる/飛鳥(蜚鳥)尽きて良弓蔵る |
| 出典 | 『史記』越王句践世家(范蠡が文種に送った手紙)・淮陰侯列伝(韓信の言葉) |
| お話 | 越が呉をほろぼしたあと、范蠡は越を去り、文種に「狡兎死して走狗烹らる。なぜ去らないのか」と手紙を送ったが、文種は残って越王に剣をたまわり、自ら命を絶った |
| 似た言葉 | 飛鳥尽きて良弓蔵る・用済み・お払い箱 |
| 反対の言葉 | 論功行賞・恩に報いる |
| 漢文の句法 | 受身(烹らる)・可能(可・不可)・比況(若し)・再読文字(当) |
このページのポイント
- 「狡兎死して走狗烹らる」は役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられること。兎=敵、猟犬=手柄を立てた家来のたとえです
- 出典は『史記』の2か所。越の范蠡が文種に送った手紙と、漢の韓信が捕らえられたときの言葉を、4こまのイラストと図で読めます
- 原文には受身・可能・比況・再読文字が出てきて、去った范蠡と残った文種のちがいもよく問われます
「狡兎死して走狗烹らる」の意味と読み方
「狡兎死して走狗烹らる」はこうとししてそうくにらると読みます。意味は「役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられてしまうこと」です。とくに、敵がほろびて平和になると、それまで手柄を立てた家来が、主君にじゃまにされて捨てられる(殺される)ことのたとえとして使います。
言葉を1つずつ見ると、意味がよく分かります。
- 狡兎(こうと):すばしこい兎。「狡」は「ずるがしこい・すばしこい」という意味の字です。
- 走狗(そうく):よく走る猟犬。兎を追うために飼われている犬です。
- 烹らる(にらる):煮られる。兎がいなくなれば猟犬はもういらないので、煮て食べられてしまう、というたとえです。
このように、兎を追う役目が終わると、その役目を果たした犬が捨てられる。これを人間の世界にあてはめたのが、この言葉です。「狡兎死して良狗烹らる」とも言い、前に「飛鳥(蜚鳥)尽きて良弓蔵る」をつけて使うこともあります。
うかるくん
え、がんばって兎をつかまえた犬が煮られちゃうんですか?ひどい話ですね…。
ミスターT先生
そう、ひどい話だからこそ、強い警告の言葉になっているんだ。これは、中国の歴史書『史記』で、大きな手柄を立てた家来が、主君に殺されるという実際の出来事のときに使われた言葉なんだよ。しかも『史記』の中に2回出てくる。1回目は越の范蠡、2回目は漢の韓信だ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○会社を立て直した社長が、立て直しが終わったとたんにやめさせられた。狡兎死して走狗烹らるだ。
- ○選挙で大活躍した参謀が、当選後は遠ざけられた。狡兎死して走狗烹らるとはこのことだ。
- ○「狡兎死して走狗烹らるにならないよう、仕事が終わったら引き際を考えておけ」と先輩に言われた。
絵で読む「狡兎死して走狗烹らる」のお話
まずは、1回目の話を4つの場面で見てみましょう。時代は春秋時代の終わり、紀元前5世紀です。登場するのは、越の王・句践(こうせん)と、その家来の范蠡(はんれい)と文種(ぶんしょう/大夫種)です。句践は、呉に負けた恥を忘れないよう苦い胆をなめ続けた「臥薪嘗胆」の、あの王様です。
絵で読む「狡兎死して走狗烹らる」のお話(4こま)
范蠡は、句践の顔つきや人がらを見て、「苦しい時はいっしょに戦えても、勝ったあとの楽しみはいっしょに分け合えない人だ」と見ぬいていました。だから、いちばん手柄を立てた時に、あえて身を引いたのです。

ミスターT先生
同じ手柄を立てた2人でも、去った范蠡は生きのび、残った文種は命を落とした。この言葉には、「成功したときこそ、引き際を考えよ」という教えもこめられているんだ。
文種が越王から剣を贈られたとき、越王は「あなたはわたしに呉を討つ七つの策を教えた。わたしは三つを使っただけで呉をやぶった。残りの四つはあなたが持っているのだから、先王のためにあの世で試してほしい」と言いました。「役に立ちすぎる家来は、平和な世では危ない」と王が考えていたことが分かる言葉です。
「狡兎死して走狗烹らる」の原文・書き下し文・現代語訳
原文は『史記』の2か所にあります。まず越王句践世家(えつおうこうせんせいか)の范蠡の手紙、次に淮陰侯列伝(わいいんこうれつでん)の韓信の言葉を、返り点と送り仮名をつけた訓読文で読みます(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方へ。
1文目:范蠡が斉から手紙を送る
書き下し文范蠡遂に去り、斉より大夫種に書を遺りて曰はく、
(『史記』越王句践世家)
現代語訳范蠡はとうとう(越を)去り、斉の国から大夫の種(文種)に手紙を送って言った。
2文目:言葉の由来になった一文
書き下し文蜚鳥尽きて、良弓蔵れ、狡兎死して、走狗烹らる。
(『史記』越王句践世家)
現代語訳空を飛ぶ鳥がいなくなれば、良い弓はしまいこまれ、すばしこい兎が死ねば、猟犬は煮て食べられる。
3文目:越王の人がらと、范蠡のすすめ
書き下し文越王人と為り長頸鳥喙なり。与に患難を共にすべし、与に楽しみを共にすべからず。子何ぞ去らざる。
(『史記』越王句践世家)
現代語訳越王は人がらが、首が長く口がとがっている(そういう人相の人だ)。いっしょに苦しみや難儀をともにすることはできても、いっしょに楽しみをともにすることはできない。あなたはどうして去らないのか。
手紙を読んだ文種は「病と称して朝せず」(病気だと言って朝廷に出なかった)、けれども「文種が反乱をおこそうとしている」と告げ口され、越王から剣をたまわって自ら命を絶ちました(「種遂に自殺す」)。
もう1か所:淮陰侯列伝の韓信の言葉
同じ言い方は、それからおよそ270年後、漢の時代の韓信(かんしん)の言葉にも出てきます。劉邦(漢の高祖)の天下統一を助けた大将の韓信は、楚王になりましたが、反乱の疑いをかけられ、陳という所で捕らえられて車にしばりつけられました。そのとき言ったのが次の言葉です。
4文目:やはり、人の言うとおりだ
書き下し文果たして人の言のごとし。
(『史記』淮陰侯列伝)
現代語訳やはり、人の言っていたとおりだ。
5文目:わたしが煮られるのは当然だ
書き下し文天下已に定まり、我固より当に亨らるべし。
(『史記』淮陰侯列伝)
現代語訳天下はもう定まった。わたしが煮られるのは、もとより当然のことだ。
サクラちゃん
「走狗」と「良狗」、「烹」と「亨」…どっちが正しいんですか?
ミスターT先生
どちらも『史記』の本文にある字だから、どちらがまちがい、ということはないんだ。日本で故事成語として使うときは、范蠡の手紙の「走狗烹らる」の形がふつうだね。「亨」は、昔は「烹」と同じ意味で使われることがあった字なんだ。
出典『史記』と話の背景
出典は、前漢の司馬遷(しばせん)が書いた歴史書『史記』です。この言葉は、国の歴史を書いた「世家(せいか)」の越王句践世家と、人物の伝記の「列伝」の淮陰侯列伝の2か所に出てきます。
1回目:越の范蠡と文種
春秋時代の終わり、長江の下流では、呉(ご)と越(えつ)が激しく争っていました。越王の句践は一度は呉王の夫差(ふさ)に負けましたが、恥を忘れずに国力をたくわえ、ついに紀元前473年に呉をほろぼします。このとき軍を整えたのが范蠡、国の政治をまかされたのが文種でした。このあたりの話は臥薪嘗胆の意味と由来でくわしく読めます。呉と越の仲の悪さは「呉越同舟」という言葉にもなっています。
『史記』によると、呉をほろぼしたあと、范蠡は「大きな名声のもとに長くいるのはよくない」と考え、越を去りました。斉では名前を変え、海辺で親子で畑仕事にはげんで財産をきずき、のちに陶(とう)という町に移って「陶朱公(とうしゅこう)」と名のり、大金持ちになったと書かれています。中国では、范蠡は今も商売の神様のように語られることがあります。
2回目:漢の韓信
韓信は、はじめ項羽の軍にいましたが用いられず、劉邦の軍に移りました。劉邦の重臣・蕭何(しょうか)に「国士無双」(国じゅうに二人といない人物)とほめられて大将軍になり、「背水の陣」で趙の大軍をやぶり、垓下では項羽を追いつめました(「四面楚歌」の場面)。
ところが、天下が定まると、強い兵をひきいる韓信は、劉邦にとっておそろしい存在になりました。紀元前201年、劉邦は「雲夢に遊びに行く」と言って諸侯を陳に集め、やって来た韓信を捕らえます。このとき韓信が言ったのが「狡兎死して良狗亨らる」でした。韓信はゆるされて淮陰侯(わいいんこう)に格下げされましたが、のちに反乱を計画したとして、紀元前196年に都で殺されました。そのとき「蒯通(かいとう)の計を用いなかったのがくやしい」と言ったと『史記』は書いています。
范蠡と韓信の話は、「手柄が大きすぎる家来は、平和になると主君におそれられる」という、中国の歴史でくり返されたことを伝えています。
「狡兎死して走狗烹らる」の使い方と例文・似た言葉
この言葉は、役目を果たした人が、用がなくなったとたんに捨てられる・冷たくあつかわれるときに使います。今の日本語では「殺される」ほどの場面でなくても、やめさせられる・遠ざけられる・見向きもされなくなるときに使います。少しかたい言葉なので、新聞や本、評論文によく出てきます。
- ○チームを優勝に導いた監督が、翌年あっさり解任された。狡兎死して走狗烹らるだ。
- ○工事が終わると、それまで重宝された職人たちは次々に契約を切られた。まさに狡兎死して走狗烹らるである。
- ○歴史を見ると、天下統一のあとに功臣が粛清される例は多く、狡兎死して走狗烹らるはくり返されてきた。
- ○飛鳥尽きて良弓蔵れ、狡兎死して走狗烹らる。勝ったあとのふるまいにこそ、人がらが出る。
- ×試合に負けたので、監督が責任を取ってやめた。まさに狡兎死して走狗烹らるだ。(役目を果たし終えて捨てられたのではないので使わない)
- ×ずるい人は、最後には自分が損をする。狡兎死して走狗烹らるだ。(「ずるい者がばつを受ける」という意味ではない)
似た言葉
- 飛鳥(蜚鳥)尽きて良弓蔵る:鳥がいなくなれば、良い弓はしまわれる。同じ手紙の前半で、セットで使われます。「鳥尽きて弓蔵る」とも言います。
- 用済み・お払い箱・使い捨て:役目が終わって、いらなくなること・捨てられること。ふだんの言い方です。
- 恩を仇(あだ)で返す:世話になった人に、ひどいことをして返すこと。「捨てる側(主君)」の行いに目を向けた言い方で、少しちがいます。
反対の言葉
- 論功行賞(ろんこうこうしょう):手柄を調べて、それに見合ったほうびをあたえること。手柄を立てた人が正しくむくわれることです。
- 恩に報いる:受けた恩に、ふさわしいお返しをすること。
「狡兎死して走狗烹らる」のよくあるまちがい
- 「烹らる」を「ほうらる」「にえらる」と読む:読みは「にらる」(煮られる)です。「烹」には「割烹(かっぽう)」のように「ほう」という音読みもありますが、この言葉では「にる」と訓で読みます。意味は「煮」の読み方・書き順・部首と同じです。
- 「狡兎」を「ずるい人」の意味だと思う:狡兎はすばしこくて、つかまえにくい兎で、猟犬が追う相手(=敵)のたとえです。ずるい人がばつを受ける、という意味ではありません。
- 「走狗」を「走る子犬」と読む:「狗」は犬のこと。「走狗」は猟犬です。なお、「走狗」だけで使うと「人の手先になって働く者」という悪い意味になる(「権力の走狗」など)ので、区別しましょう。
- 捨てられた側のせいだと思う:この言葉は、役に立った者が、役目が終わると捨てられるという、捨てる側の冷たさを言う言葉です。犬(家来)が悪いことをしたわけではありません。
- 「死して」を「しにして」と読む:「死して」は「しして」と読みます。「死す」というサ変動詞の形です。「走」の読み方・書き順・部首・「蔵」の読み方・書き順・部首・「弓」の読み方・書き順・部首もあわせて確かめておきましょう。
うかるくん
「狡兎」「走狗」「烹」…むずかしい字ばかりで、読めなさそうです…。
ミスターT先生
「ずるい兎が死んで、走る犬が煮られる」と、まず意味で覚えよう。そうすれば「狡(こう)=ずるい」「走狗(そうく)=走る犬」「烹(に)る=煮る」と、字の読みも自然に頭に入るよ。「兎(敵)がいなくなると、犬(家来)がいらなくなる」。この関係さえつかめば、もう大丈夫だ。
入試ではこう出る
「狡兎死して走狗烹らる」は、『史記』の有名な場面に出てくるので、大学受験の漢文や、評論文の中で出会うことがあります。
- 大学受験(漢文):「狡兎」「走狗」がそれぞれ何をたとえているか(兎=敵、犬=手柄を立てた家来)、范蠡がこの手紙で文種に何をすすめたか(越を去ること)、「可与共患難、不可与共楽」の書き下し文と意味、「当(まさ)に〜べし」の再読文字がよく問われます。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
- 大学受験(現代文):組織や権力の話の中で、たとえとして出てきます。意味を知っていると、筆者の言いたいことがすぐにつかめます。
- 高校受験・中学受験:この語そのものが出ることは多くありませんが、故事成語の一覧の中で意味を問われることがあります。

サクラちゃん
たとえを問われたら、「狡兎=敵(呉)」「走狗=手柄を立てた家来(文種)」「烹らる=殺される」と、1つずつ置きかえて答えるのがコツですね!
練習問題
やさしい
- 「狡兎死して走狗烹らる」の意味として正しいものを選びましょう。
ア ずるい人は最後に損をすること イ 役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられること ウ すばやい者が勝つこと エ 犬を大切にすること答えと解説を見る
イ。兎がいなくなれば猟犬はいらなくなり、煮て食べられる、というたとえです。 - 「走狗」「烹らる」の読み方と意味を答えましょう。
答えと解説を見る
「走狗」はそうくで、よく走る猟犬。「烹らる」はにらるで、煮られる。
ふつう
- 范蠡は、この言葉を書いた手紙で、文種に何をすすめましたか。また、その理由を答えましょう。
答えと解説を見る
越の国を去ることをすすめました。越王句践は「苦しみはともにできても、楽しみはともにできない人」なので、呉をほろぼして用がなくなった家来は、いずれ殺されると考えたからです。 - 「可与共患難、不可与共楽」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
答えと解説を見る
書き下し文は「与に患難を共にすべし、与に楽しみを共にすべからず。」訳は「いっしょに苦しみをともにすることはできても、いっしょに楽しみをともにすることはできない」。
むずかしい
- 韓信は捕らえられたとき「果若人言」と言いました。①「若」の読みと句法、②この言葉から分かることを答えましょう。
答えと解説を見る
①「ごとし」と読み、比況(〜のようだ・〜のとおりだ)を表す。②「人の言」とあるので、「狡兎死して良狗亨らる」は韓信の時代にすでに世の中で知られた言い回しだったことが分かる。 - 「天下已定、我固当亨」の「当」は何という種類の字ですか。読み方と、文全体の訳を答えましょう。
答えと解説を見る
再読文字。「当(まさ)に〜べし」と2回読む。訳は「天下はもう定まった。わたしが煮られる(殺される)のは、もとより当然のことだ」。
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よくある質問
狡兎死して走狗烹らるの意味を簡単に言うと何ですか?
役に立つ間は大事にされるが、用がなくなると捨てられることです。とくに、敵がほろびて平和になると、手柄を立てた家来が主君に捨てられることのたとえとして使います。
狡兎死して走狗烹らるの由来となった話はどんな話ですか?
『史記』越王句践世家の話です。越が呉をほろぼしたあと、家来の范蠡は越を去り、残った文種に「狡兎死して走狗烹らる。あなたはなぜ去らないのか」と手紙を送りました。文種は残って告げ口され、越王に剣をたまわって自ら命を絶ちました。
韓信も「狡兎死して走狗烹らる」と言ったのですか?
はい。『史記』淮陰侯列伝で、劉邦に捕らえられた韓信が「果たして人の言のごとし。狡兎死して良狗亨らる、高鳥尽きて良弓蔵る、敵国破れて謀臣亡ぶ」と言っています。「人の言」とあるので、当時すでに知られた言い回しだったことが分かります。
「狡兎」「走狗」「烹らる」はそれぞれどういう意味ですか?
狡兎(こうと)はすばしこい兎、走狗(そうく)はよく走る猟犬、烹らる(にらる)は煮られるという意味です。兎は敵、猟犬は手柄を立てた家来をたとえています。
狡兎死して走狗烹らるに似た言葉は何ですか?
同じ手紙の前半の「飛鳥(蜚鳥)尽きて良弓蔵る」がいちばん近い言葉です。ふだんの言い方では、用済み・お払い箱・使い捨てなどが似ています。
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最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



