漢文文法・句法辞典 › 句法
大学受験難関大
ひとことで言うと
可能は可(Aすべし)・能(能くAす)・得(Aするを得)・足(Aするに足る)で「Aできる」を表し、不がつくと不可能(べからず・能はず・得ず・足らず)になります。「能」は肯定で「よく」、否定で「あたはず」と読みが変わるのがいちばんのポイントです。
このページのポイント
- 可能の4字:可=べし、能=よく、得=う、足=たる
- 不可能:不可=べからず、不能=能はず、不得=得ず、不足=足らず
- 「能」は肯定=能く(返らない)、否定=能はず(返る)
- 上の動詞の形:〜こと能はず、〜を得ず、〜に足らず
- 「不足」は「〜する値打ちがない」、「不可勝」は「〜しきれない」
はじめて(やさしく)
可能(かのう)の句法は「〜できる」、不可能の句法は「〜できない」を表す言い方です。漢文では「可・能・得・足」の4字で可能を表し、上に「不」がつくと不可能になります。いちばん大事なのは、「能」が肯定では「能く」、否定では「能はず」と読みが変わることです。
可能・不可能の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| 可A | Aすべし | Aできる・Aしてよい |
| 能A | 能く(よく)Aす | Aできる |
| 得A | Aするを得(う) | Aできる |
| 足A | Aするに足る | Aできる・Aする値打ちがある |
| 可以A | 以て(もつて)Aすべし | Aできる |
| 不可A | Aすべからず | Aできない(Aしてはならない) |
| 不能A | Aする(こと)能はず | Aできない |
| 不得A | Aするを得ず | Aできない |
| 不足A | Aするに足らず | Aする値打ちがない・Aするには不十分だ |
| 不可勝A | 勝げて(あげて)Aすべからず | Aしきれない |
表の「A」には動詞が入ります。「能く」以外は、どれも下の動詞から返って読みます。書き下し文でひらがなにするのは、助動詞にあたる「可(べし)」と「不(ず)」だけで、「能・得・足」は漢字のまま書きます。
うかるくん
「できる」を表す字が4つもあるの? どれも同じ意味?
ミスターT先生
共通テストの訳では、どれも「〜できる」と考えてほぼ大丈夫だ。ただ、細かく言うと「能」は力があってできる、「得」は機会にめぐまれてできる、「足」は〜するだけの値打ちがある、というちがいがあるよ。
サクラちゃん
英語の can と be able to と be worth のちがいみたいですね!
能(よく〜)
白文此鳥能言。
書き下し文此の鳥は能く言ふ。
(自作)
現代語訳この鳥は(人の)言葉を話すことができる。
不能(〜能はず)
書き下し文我泳ぐこと能はず。
(自作)
現代語訳私は泳ぐことができない。

ミスターT先生
「能く〜す」と「〜すること能はず」。肯定と否定で読み方がガラッと変わるのは「能」だけだ。ここを押さえれば、書き下しの問題で迷わないよ。
ここまでのまとめ
- 可能の字は可(べし)・能(よく)・得(う)・足(たる)
- 「不」がつくと不可能:べからず・能はず・得ず・足らず
- 「能」は肯定=能く(返らない)、否定=能はず(返る)
しっかり(共通テスト)
可能・不可能の字の一覧
| 字 | 肯定の読み | 否定(不〜)の読み | 書き下しの表記 | ニュアンス |
|---|---|---|---|---|
| 可 | Aすべし | Aすべからず | ひらがな(べし) | 条件がそろってできる・してよい |
| 能 | 能くAす | Aすること能はず | 漢字(能く・能はず) | 力があってできる |
| 得 | Aするを得 | Aするを得ず | 漢字(得) | 機会・条件にめぐまれてできる |
| 足 | Aするに足る | Aするに足らず | 漢字(足る) | 〜するだけの値打ち・十分さがある |
4字は細かく見るとニュアンスがちがいますが、共通テストの現代語訳では「〜できる/〜できない」と訳してほとんど問題ありません。ただし「不足」だけは「〜するだけの値打ちがない」「〜するに値しない」と訳すことが多いので注意しましょう。
とくに「可」は、助動詞「べし」にあたるため意味の幅が広く、可能(〜できる)のほかに許可(〜してよい)や当然(〜すべきだ)の意味にもなります。たとえば「後生畏るべし(後生可畏)」は「若い人は(将来どれほど伸びるかわからないので)おそれるべきだ」と当然・適当の意味で読むのがふつうです(書き下し文のきまりの例文)。選択肢の訳を選ぶときは、「〜できる」だけでなく「〜してよい」「〜すべきだ」も候補に入れて、文脈に合うものを選びましょう。
読み方の手順
- 可・能・得・足を見つける。上に「不」があるかどうかも確かめる。
- 「能」の肯定は上から順に「能く」と読む。それ以外は、下の動詞から返って読む。
- 下の動詞の形を整える。「べし」の上は終止形(ラ変は連体形)、「能はず」の上は「連体形+こと」、「得」の上は「連体形+を」、「足る」の上は「連体形+に」。
- 書き下す。可・不はひらがな(べし・べからず)、能・得・足は漢字。
- 訳す。「〜できる/〜できない」。「不足」は「〜する値打ちがない」。
例文で確かめる
可(〜べし)
書き下し文彼取りて代はるべきなり。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳あいつ(始皇帝)に取って代わることができるぞ。
能(よく〜)
書き下し文唯だ仁者のみ能く人を好み、能く人を悪む。
(『論語』里仁)
現代語訳ただ仁徳のある人だけが、本当に人を好きになることができ、本当に人をにくむことができる。
不能(能はず)
書き下し文是れ為さざるなり、能はざるに非ざるなり。
(『孟子』梁恵王上)
現代語訳これは(やろうとしないで)やらないだけであって、できないのではない。
不足(〜に足らず)
書き下し文豎子与に謀るに足らず。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳こんな小僧とは、いっしょに(天下のことを)相談する値打ちもない。
不得(〜を得ず)
書き下し文吾之を見るを得ず。
(自作)
現代語訳私はそれを見ることができなかった。
足(〜に足る)
書き下し文此の言は信ずるに足る。
(自作)
現代語訳この言葉は信じる値打ちがある(信用できる)。
サクラちゃん
「能はず」の上は「こと」、「得ず」の上は「を」、「足らず」の上は「に」……ごちゃごちゃになりそうです。
ミスターT先生
声に出して覚えるのがいちばんだ。「泳ぐこと能はず、見るを得ず、信ずるに足らず」。こと・を・に、と3つのリズムで言えるようにしておこう。どれも上の動詞は連体形だよ。
うかるくん
「こと・を・に」! 唱えたら覚えられた!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「為さざる」と「能はざる」:孟子の区別
孟子は、斉の宣王に「できない(不能)」と「やらない(不為)」のちがいを、たとえ話で説明しました。泰山(太山)をわきにかかえて北の海をとびこえるのは、本当に「できない」こと。目上の人のために枝を折る(腰をかがめて会釈する、と解する説もある)のは、やろうと思えばできるのに「やらない」こと。王が民によい政治をしないのは後者だ、というのです。この話から、「不能」と「不為」を訳し分けることが難関大の記述でよく問われます。

2. 「不可勝〜」:数えきれない・〜しきれない
「不可勝A」は「勝げて(あげて)Aすべからず」と読み、「全部をAしきれない(それほど多い)」という意味です。「勝」は「すべて・ことごとく」の意味の副詞で、「勝つ」ではありません。
不可勝(勝げて〜べからず)
書き下し文穀勝げて食ふべからざるなり。
(『孟子』梁恵王上)
現代語訳穀物は食べきれないほど(たくさん)とれる。
3. 「可」の3つの読み:べし・可なり・ばかり
「可」は、下に動詞があれば「べし」(〜できる・〜してよい)ですが、文末で述語になるときは「可なり(よい・かまわない)」と読みます。有名な「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」がその例です(返り点の読み方の例文)。さらに、下に数があるときは「ばかり(およそ〜くらい)」と読むことがあり、「可百人(百人ばかり)」のように使います。
4. 「可得而〜」「不可得而〜」と「不得已」
「得」は「〜するを得」のほか、「得て〜」と副詞のように読む形があります。「不可得而A」は「得てAすべからず」と読み、「Aすることはできない」という意味です。また「不得已」は「已むを得ず(やむをえず)」と読み、現代語の「やむをえない」のもとになりました。
不可得而(得て〜べからず)
書き下し文得て聞くべからざるなり。
(『論語』公冶長(一部))
現代語訳聞くことはできないのだ。
5. 「莫能〜」「無能〜」:できる者はいない
否定の「莫・無」と「能」が組むと、「能くAするもの莫し(Aできる者はいない)」という意味になります。「能」は肯定の形なので「能く」と読む点に注意しましょう。
莫能(能く〜もの莫し)
書き下し文天下能く当たる者莫し。
(自作)
現代語訳天下にこれに立ち向かうことのできる者はいない。
6. 「可以」と、可能ではない「得」
「可以A」は「以てAすべし」と読み、「(それによって)Aできる」という意味です。「以」は「それで・それによって」と前の内容を受ける語で、論語の「故きを温めて新しきを知れば、以て師と為るべし」がよく知られています(返読文字の一覧(可・以・為)の例文)。「以」の読み方は「以」の読みと用法(もって・以為・所以)でくわしく扱います。
一方、「得」がいつも可能を表すわけではありません。「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」の「得」は、「〜できる」ではなく「手に入れる」というふつうの動詞です。見分け方は、「得」の下に動詞があるか、名詞があるか。下に動詞があって「〜するを得」と読めれば可能、下に名詞(目的語)があれば「〜を得(手に入れる)」です。白文で「不得」を見たら、すぐに「できない」と決めつけず、下の語の品詞を確かめましょう。
| 形 | 下の語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|---|
| 得A | 動詞 | Aするを得 | Aできる(可能) |
| 得A | 名詞 | Aを得 | Aを手に入れる |
| 不得A | 動詞 | Aするを得ず | Aできない(不可能) |
| 不得A | 名詞 | Aを得ず | Aを手に入れられない |

サクラちゃん
「能」は否定のときだけ「あたはず」。「莫能」や「無能」のように、上が「不」以外の否定なら「能く」のままなんですね。
よくあるまちがい
まちがい1:「不能」を「能くせず」と読む
「不能」は「能はず(あたはず)」。「能く〜ず」とは読みません。肯定の「能く」と区別しましょう。
まちがい2:「可」「不」以外をひらがなにする
「泳ぐことあたはず」「見るをえず」は書き下し文としては誤り。「能はず」「得ず」「足らず」と漢字で書きます。ひらがなは「べし・べからず」「ず」だけです。
まちがい3:「不足」を「足りない」と訳す
「与に謀るに足らず」は「相談する値打ちがない」。「相談が不足している」ではありません。
まちがい4:「べからず」をいつも禁止と訳す
「勝げて食ふべからず」は「食べてはならない」ではなく「食べきれない」(不可能)。禁止か不可能かは文脈で決めます(禁止(不可=べからず))。
まちがい5:「不得」の上に「を」を入れ忘れる
「見る得ず」は誤り。「得」の上は「連体形+を」で「見るを得ず」。同じように「能はず」の上は「〜こと」、「足らず」の上は「〜に」です。
練習問題
やさしい
- 次の句形の読み方を答えなさい。
(1)不能A (2)不足A答えと解説を見る
(1)Aすること能はず(Aできない) (2)Aするに足らず(Aする値打ちがない)。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)人不レ能ハレ飛ブコト。
答えと解説を見る
人飛ぶこと能はず。(人飛ぶこと能はず。)意味は「人は飛ぶことができない」。
ふつう
- 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)此ノ書ハ不レ足ラレ読ムニ。
答えと解説を見る
書き下し文:此の書は読むに足らず。(此の書は読むに足らず。) 訳:この本は読む値打ちがない。
- 「能」を「よく」と読む場合と「あたふ」と読む場合のちがいを説明しなさい。
答えと解説を見る
肯定の文では副詞「能く」と読み、返らずに上から順に読む(能く言ふ)。否定の「不能」では動詞「能ふ」と読み、下から返って「〜すること能はず」となる。
むずかしい
- 次の白文を書き下し文にし、訳しなさい。(自作)
「魚不可勝数」答えと解説を見る
書き下し文:魚勝げて数ふべからず。 訳:魚は数えきれないほど多い。「不可勝A」は「勝げてAすべからず」で、Aしきれないという意味。「勝」は「すべて」の意味の副詞。
- 孟子の「是不為也、非不能也」を書き下し文にし、「不為」と「不能」のちがいがわかるように訳しなさい。
答えと解説を見る
書き下し文:是れ為さざるなり、能はざるに非ざるなり。 訳:これは、やろうとしないからやらないのであって、能力がなくてできないのではない。「不為」は意志の否定(やらない)、「不能」は能力の否定(できない)。
関連ページ
- 否定(不・弗・無・莫・非・未)の読み方と意味:不可能の「不」の基本
- 禁止(勿・毋・無・莫「〜なかれ」、不可「〜べからず」):べからずの禁止の意味
- 二重否定(不能不・不得不・不可不):「〜ざる能はず」「〜ざるを得ず」
- 部分否定と全部否定(不復・復不):守株「復た得べからず」
- 返読文字の一覧(可・足・難・易・所):可・足は返読文字
- 書き下し文のきまり(助詞・助動詞はひらがな):「可」をひらがなにする理由
- 句法の一覧(句形のまとめ・印刷用)
- 漢文文法・句法辞典の目次
「べし」「べからず」は古文の助動詞と同じです。古文の助動詞「べし」の6つの意味で、可能・当然・禁止などの意味をまとめて確かめましょう。孟子の話は五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)でも読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 「王道」と「覇道」の意味と違い(孟子)
「学問に王道なし」の由来も - 五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)
孟子の話を漢文で読む - 故事成語の一覧(意味・由来・出典)
矛盾・蛇足・漁夫の利など150語 - 古文文法辞典(動詞・助動詞・係り結び・敬語)
古文の文法を1項目1ページで - 共通テストの勉強法(高1・高2・高3の計画)
国語をふくむ教科のバランス
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
よくある質問
漢文で「〜できる」を表す字は?
可(Aすべし)・能(能くAす)・得(Aするを得)・足(Aするに足る)の4字です。訳はほとんど「〜できる」でかまいません。
「不能」はどう読みますか?
「Aすること能はず(あたはず)」と読み、Aできないという意味です。肯定の「能」は「能く(よく)」と読むので、否定で読みが変わります。
「不足」はどう訳しますか?
「Aするに足らず」と読み、Aする値打ちがない、Aするには不十分だと訳します。「豎子与に謀るに足らず」は「小僧とは相談する値打ちもない」です。
「不可勝〜」の意味は?
「勝げて〜べからず」と読み、〜しきれないという意味です。「勝」はすべての意味の副詞で、数えきれないほど多いことを表します。
可能の字は書き下し文でひらがなにしますか?
可(べし)と不(ず)は助動詞なのでひらがなにしますが、能・得・足は漢字のまま「能はず」「得ず」「足らず」と書きます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『史記』項羽本紀、『論語』(里仁・公冶長)、『孟子』梁恵王上。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による。「自作」とした例文は合格大作戦の作例
- 高校の漢文句法の標準的な説明(可能・不可能の読み・意味・書き下し)にもとづいて作成。「枝を折る」の解釈は諸説ある
- 画像:エドゥアール・シャヴァンヌ撮影「泰山」(1907年、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



