古文文法辞典 › 助動詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
「べし」は終止形(ラ変型は連体形)につき、「当然そうなるはずだ」という強い確信を表す助動詞。意味は推量・意志・可能・当然・命令・適当の6つ(スイカトメテ)で、主語の人称と下の打消・反語で見分けます。
このページのポイント
- 接続は終止形(ラ変型は連体形:あるべし・恋しかるべし)
- 活用は形容詞ク活用型:(べく)べから・べく べかり・べし・べき べかる・べけれ・○
- 意味は6つ:スイカトメテ(推量・意志・可能・当然・命令・適当)
- 一人称→意志、二人称→命令・適当、三人称→推量、打消・反語→可能
- 難関大はべからず(可能か禁止か)、べかなり(撥音便の無表記)、む・まじとの比較
はじめて(やさしく)
「べし」は、「そうなるのが当たり前だ」「きっとそうにちがいない」という、強い気持ちを表す助動詞です。現代語でも「学生は勉強すべきだ」「行くべし」のように、少しかたい言い方として残っています。
同じように「〜だろう」と想像する助動詞に「む」がありますが、「む」がふんわりした想像なのに対して、「べし」は道理(すじ道)から考えて「当然そうなる」という、自信のある言い方です。
うかるくん
「べし」って、「〜しなさい」みたいな命令の意味もあるよね? 「〜にちがいない」とは全然ちがう気がする。
合格先生
いい所に気がついたね。根っこは同じ「当然そうあるべきだ」という気持ちなんだ。それが自分に向けば「〜しよう」、相手に向けば「〜せよ」、ほかの物ごとに向けば「〜にちがいない」になる。
サクラちゃん
じゃあ「む」と同じで、主語を見ればいいんだね!
「べし」の意味は全部で6つあります。頭の字をとって「スイカトメテ」と覚えるのが定番です:ス(推量)・イ(意志)・カ(可能)・ト(当然)・メ(命令)・テ(適当)。「スイカ(西瓜)を トメテ(止めて)」と場面を思いうかべると忘れにくくなります。
なお、意味の数え方は本によって少しちがいます。「予定」を加えたり、「義務」を「当然」にふくめたりする本もあります。このページでは、高校の授業でいちばん多く使われる「6つ(スイカトメテ)」で説明します。

サクラちゃん
「べし」は確信の強い「む」。訳に迷ったら、まず「〜にちがいない」「〜はずだ」を当ててみるといいね!
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
ここまでのまとめ
- 「べし」=当然そうなるはずだという強い気持ちの助動詞
- 意味は6つ:スイカトメテ(推量・意志・可能・当然・命令・適当)
- 「む」と同じく、主語がだれかが見分けの手がかり
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
「べし」の接続:終止形(ラ変型は連体形)
「べし」は終止形につきます。ただし、ラ変動詞「あり・をり・はべり・いまそかり」と、ラ変型に活用する語(形容詞のカリ活用、形容動詞、「ず」の「ざる」、「たり・り」など)には連体形につきます。「ありべし」ではなく「あるべし」、「恋しべし」ではなく「恋しかるべし」になるのはこのためです。終止形接続の助動詞(らむ・らし・めり・まじ・なり〈伝聞・推定〉など)に共通するきまりなので、活用形の見分けと合わせて覚えましょう。
「べし」の活用表(形容詞ク活用型)
「べし」は形容詞のク活用と同じ形に活用します。左の列(本活用)は下に助動詞以外が続くとき、右の列(補助活用=カリ活用)は主に下に助動詞が続くときに使います。
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| べし(本活用) | (べく) | べく | べし | べき | べけれ | ○ | 形容詞ク活用型 |
| べし(補助活用) | べから | べかり | ○ | べかる | ○ | ○ | カリ活用 |
未然形の「(べく)」は「べくは(〜できるならば)」の形でだけ使われるので、かっこに入れる本が多くあります。命令形はありません。「べから+ず」「べかり+けり」「べかる+べし」のように、下に助動詞が来ると補助活用の形になります。
6つの意味と訳し方
| 意味 | 訳し方 | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| 推量 | きっと〜だろう・〜にちがいない・〜しそうだ | 主語が三人称(人・物・できごと) |
| 意志 | 〜しよう・きっと〜するつもりだ | 主語が一人称。「べしと思ふ」の形が多い |
| 可能 | 〜できる・〜できそうだ | 下に打消・反語(べからず・べくもあらず・べきや)が多い |
| 当然 | 〜はずだ・〜ねばならない・〜べきだ | 道理・決まり・運命として言うとき。主語は問わない |
| 命令 | 〜せよ・〜しなさい | 主語が二人称で、上の人から下の人への指示 |
| 適当 | 〜するのがよい・〜するのがふさわしい | 主語が二人称(または一般の人)で、すすめるとき |
「む」と同じく、文末の「べし」は主語の人称がいちばんの手がかりです。古文は主語が省かれやすいので、まず主語を補うことから始めます。
「べし」の意味の見分け方の手順
- 「べし」の上が終止形(ラ変型は連体形)であることを確かめる(「すべ」「むべ」などの「べ」ではないか)。
- 下に打消(ず・じ)や反語があれば、まず可能「〜できない」を試す。
- なければ主語を補う:一人称→意志、二人称→命令・適当、三人称→推量。
- どれも不自然なら当然「〜はずだ・〜ねばならない」を当ててみる。
- 最後に訳を当てはめ、文脈に合うか確かめる。2つの訳が成り立つときは、選択肢や前後の文で決める。
例文で確かめる
毎度ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へ。
(徒然草・第九十二段)
現代語訳毎回ただ当たりはずれを考えず、この一本の矢で決めようと思え。
家の作りやうは、夏をむねとすべし。
(徒然草・第五十五段)
現代語訳家の造り方は、夏(の暮らしやすさ)を中心に考えるのがよい。
京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。
(伊勢物語・第九段(東下り))
現代語訳京にはいるまい、東国のほうに住むのによい国をさがしに、と思って出かけて行った。
羽なければ、空をも飛ぶべからず。
(方丈記・大地震(元暦の大地震)の段)
現代語訳(人間には)羽がないので、空を飛ぶこともできない。

我、朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子となりたまふべき人なめり。
(竹取物語・かぐや姫の生い立ち)
現代語訳私が毎朝毎晩見ている竹の中にいらっしゃるのでわかった。(私の)子におなりになるはずの人であるようだ。
あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
(百人一首45番・謙徳公(藤原伊尹)「あはれとも」)
現代語訳(私のことを)かわいそうだと言ってくれそうな人は思いうかばないで、私はきっとむなしく死んでしまうにちがいないなあ。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「べからず」「べかりけり」:補助活用(カリ活用)の使い方
「べし」は形容詞型なので、下に助動詞がつくときは補助活用(べから・べかり・べかる)を使います。入試で特に大事なのは「べからず」です。
| 形 | でき方 | 主な意味・訳 |
|---|---|---|
| べからず | べから(未然形)+打消「ず」 | 〜できない(可能の打消)/〜してはならない・〜べきではない(当然の打消=禁止)/〜はずがない(推量の打消) |
| べかりけり | べかり(連用形)+過去「けり」 | 〜はずだったのだなあ・〜べきだった(当然+気づき・詠嘆) |
| べかるべし | べかる(連体形)+べし | 〜はずにちがいない(推量を重ねた強い言い方) |
| べくもあらず | 連用形「べく」+係助詞「も」+あり+ず | 〜できそうもない(可能の打消が多い) |
一事を必ず成さんと思はば、他の事の破るるをもいたむべからず。
(徒然草・第百八十八段)
現代語訳一つの事を必ずなしとげようと思うならば、ほかの事がだめになるのも気に病んではならない。
徒然草第百八十八段の全体は、記事「徒然草 第百八十八段」で読めます。
2. 音便:「べかんなり」→「べかなり」、「べう」「べい」
連体形「べかる」に伝聞・推定の「なり」や推定の「めり」が続くと、「る」が撥音便で「ん」になり(べかんなり・べかんめり)、さらにその「ん」が書かれないことがよくあります(べかなり・べかめり)。読むときは「ベカンナリ」「ベカンメリ」と「ん」を補います。これは「あるなり→あんなり→あなり」と同じしくみで、音便のページと助動詞「なり」(伝聞・推定)のページでもくわしく説明しています。
このほか、連用形「べく」がウ音便で「べう」(「参るべう候ふ」など、軍記物語や会話に多い)、連体形「べき」がイ音便で「べい」(中世以降の口語的な言い方)になることがあります。「べか」の下の「なり・めり」は「べかる」の撥音便の無表記と覚えておきましょう。
3. 「べし」と「む」:同じ文脈でどうちがう?
「む」も「べし」も推量・意志・適当などを表しますが、「べし」のほうが確信が強く、理屈に支えられた判断です。「雨降らむ」は「雨が降るだろう」、「雨降るべし」は「(空模様から考えて)きっと雨が降るにちがいない」(どちらも自作)。訳では「きっと・〜にちがいない」など強い語を入れましょう。
| む | べし | |
|---|---|---|
| 接続 | 未然形 | 終止形(ラ変型は連体形) |
| 活用 | 四段型(○・○・む・む・め・○) | 形容詞ク活用型(べから・べく/べかり・べし・べき/べかる・べけれ・○) |
| 意味 | 推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲(スイカテカエ) | 推量・意志・可能・当然・命令・適当(スイカトメテ) |
| 確信 | 弱め(〜だろう) | 強め(きっと〜にちがいない) |
| 打消の形 | 「じ」(打消推量) | 「まじ」(打消推量) |
「べし」の打消にあたる語が「まじ」です(「べからず」とほぼ同じ意味の助動詞。くわしくは 助動詞「まじ」)。「べし」を覚えれば「まじ」も楽になります。
4. 「べし」の起こりと「べ」の識別
「べし」は、「もっともだ・当然だ」という意味の副詞「うべ(むべ)」が形容詞のように使われてできた、とする説があります(「うべし」から、という説明)。百人一首22番の「むべ山風を嵐といふらむ」の「むべ」は、この「うべ」と同じ語で「なるほど」という意味の副詞です。「べし」と似た形ですが、上に終止形がないので助動詞ではありません。
サクラちゃん
「べかなり」が「べかるなり」だったなんて! 「べか」で切って辞書を引いても出てこないわけだね。
合格先生
そう。「べか」「あ」「な」「ざ」の下の「なり・めり」は、どれも撥音便の「ん」が隠れている。難関大はここを訳させたり、文法的に説明させたりするよ。

6. 百人一首の「べし」
心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
(百人一首68番・三条院(心にも))
現代語訳本心ではなく、このつらい世に生きながらえていたならば、(そのときは今夜のこの)夜ふけの月がきっと恋しく思い出されるにちがいないなあ。
難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき
(百人一首88番・皇嘉門院別当(難波江の))
現代語訳難波の入り江の葦の刈り根の一節のように短い、旅の仮寝の一夜のために、身をつくして恋い続けなければならないのだろうか。
よくあるまちがい
まちがい1:「べし」を何でも「〜べきだ」と訳す
現代語の「〜べきだ」は当然・適当の訳です。三人称の主語なら推量「〜にちがいない」、一人称なら意志「〜しよう」。主語を補ってから訳しましょう。
まちがい2:「ありべし」「恋しべし」と書いてしまう
「べし」は終止形接続ですが、ラ変型は連体形。「あるべし」「恋しかるべし」「静かなるべし」が正しい形です。接続を問う問題でよくねらわれます。
まちがい3:「べからず」を全部「〜できない」と訳す
「べからず」は可能の打消だけでなく、当然の打消(禁止)「〜してはならない」も多い。徒然草第百八十八段の「いたむべからず」は禁止です。
練習問題
やさしい
- 助動詞「べし」の6つの意味を答えなさい。また、接続を答えなさい。
答えと解説を見る
意味:推量・意志・可能・当然・命令・適当(スイカトメテ)。接続:終止形(ラ変型に活用する語には連体形)。
- 「われ、明日は必ず参るべし。」(自作)の「べし」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
主語は「われ」(一人称)なので意志。「私は明日は必ず参上しよう」。
ふつう
- 次の文の空らんに「あり」を正しい形にして入れなさい。「この寺に、鐘( )べし。」(自作)
答えと解説を見る
ある。「べし」は終止形接続だが、ラ変「あり」には連体形につく。「この寺に鐘があるにちがいない」(推量)。
- 「この川、深くて渡るべからず。」(自作)の「べから」の意味を答え、全体を訳しなさい。
答えと解説を見る
下に打消「ず」があり、「深くて」という理由が続くので可能。「この川は深くて渡ることができない」。
むずかしい
- 「人のいふことを、みだりに信ずべからず。」(自作)の「べからず」を文法的に説明し、訳しなさい。
答えと解説を見る
「べから」は「べし」の補助活用の未然形、「ず」は打消の助動詞の終止形。人一般へのいましめなので当然の打消(禁止):「人の言うことを、むやみに信じてはならない」。「信じることができない」(可能の打消)では、いましめの文脈に合わない。
- 「かの国には、よき人多かなり。」(自作)の「多かなり」を文法的に説明しなさい。また「べかなり」も同じように説明しなさい。
答えと解説を見る
「多かなり」は、形容詞「多し」のカリ活用の連体形「多かる」+伝聞・推定の助動詞「なり」。「多かるなり」が撥音便で「多かんなり」となり、「ん」が書かれていない形(「あの国にはりっぱな人が多いそうだ」)。「べかなり」も、「べし」の補助活用の連体形「べかる」+「なり」→「べかんなり」の撥音便の無表記。読みは「ベカンナリ」。
関連ページ
- 助動詞「む(ん)」:スイカテカエと比べて覚える
- 助動詞「なり」(伝聞・推定):べかなり・あなりの撥音便
- 音便:撥音便と「ん」の無表記
- 形容詞(ク活用・シク活用):「べし」と同じ活用の型
- 助動詞一覧:接続・意味・活用の地図
- 助動詞の接続:終止形接続の仲間
- 助動詞「まじ」:「べし」の打消にあたる語
- 古文文法辞典の目次
助動詞全体の流れは、記事「古文の助動詞一覧」でも読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 徒然草 第百八十八段
兼好法師の文章を読む - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
助動詞「べし」の意味は何ですか?
推量・意志・可能・当然・命令・適当の6つです。頭の字をとって「スイカトメテ」と覚えます。本によっては予定などを加えて数えることもあります。
「べし」の意味の見分け方は?
下に打消や反語があれば、まず可能(〜できない)を試します。なければ主語を補い、一人称→意志、二人称→命令・適当、三人称→推量とし、合わなければ当然(〜はずだ)で訳します。
「べし」の接続は何ですか?
終止形です。ただしラ変動詞やラ変型に活用する語(形容詞のカリ活用・形容動詞・ざる など)には連体形につきます(あるべし・恋しかるべし)。
「べからず」はどう訳しますか?
可能の打消「〜できない」と、当然の打消(禁止)「〜してはならない」が中心です。人へのいましめなら禁止、能力や状況なら可能と、文脈で決めます。
「べかなり」とは何ですか?
「べし」の連体形「べかる」に伝聞・推定の「なり」がつき、撥音便で「べかんなり」となった「ん」を書かない形です。読むときは「ベカンナリ」と読みます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:徒然草(第五十五段・第九十二段・第百八十八段)、伊勢物語(第九段)、方丈記、竹取物語、百人一首(22・45・68・88番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(「べし」の6つの意味・接続・活用)にもとづいて作成。意味の数え方・個々の例文の意味の判定には説が分かれるものがあり、本文中に両説を記した
- 画像:「The Tale of the Bamboo Cutter - Discovery of Princess Kaguya.jpg」(作者不明、17世紀、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)、百人一首の絵札(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



