- 歌
- 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
- 意味
- 吹くとすぐに、秋の草や木がしおれてしまうので、なるほど、それで山から吹き下ろす風を「あらし(荒らし)」と言うのだろう。
- 作者
- 文屋康秀(ふんやのやすひで)
- 出典
- 『古今和歌集』秋下・249番
- 決まり字
- 「ふ」(1字決まり)

吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
読みふくからに あきのくさきの しおるれば
むべやまかぜを あらしというらん
歴史的仮名遣いふくからに あきのくさきの しをるれば
むべやまかぜを あらしといふらむ
吹くとすぐに秋の草木がしおれてしまうので、なるほど山から吹く風を「嵐(荒らし)」と言うのだろう——「山+風=嵐」の漢字遊びが楽しい、一字決まり「ふ」の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 吹くからに | ふくからに | 「吹くとすぐに」。「からに」は「〜するとすぐに」の意味です。 |
| しをるれば | しおるれば | 「しおれるので」。已然形+ば で原因・理由を表します。 |
| むべ | むべ | 「なるほど」。納得したときの言葉です。 |
| 山風 | やまかぜ | 山から吹き下ろす風。「山」と「風」を合わせると漢字の「嵐」になります。 |
| あらし | あらし | 「嵐」と「荒らし(草木を荒らす)」の掛詞です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 吹く | 動詞・カ行四段「吹く」連体形 | |
| からに | 接続助詞 | 〜するとすぐに |
| 秋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 草木 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| しをるれ | 動詞・ラ行下二段「しをる」已然形 | |
| ば | 接続助詞 | 確定条件(原因) |
| むべ | 副詞 | なるほど |
| 山風 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| あらし | 名詞 | 掛詞(嵐/荒らし) |
| と | 格助詞 | |
| いふ | 動詞・ハ行四段「いふ」終止形 | |
| らむ | 助動詞「らむ」連体形 | 原因推量 |
表現技法・文法のポイント
「あらし」に「嵐」と「荒らし」を掛けています。
「山」と「風」を合わせると「嵐」になる、漢字を使った遊びです。
「〜だから…と言うのだろう」と、理由を推し量っています。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』秋下に入っています。是貞親王の家の歌合で詠まれた歌とされます(23番「月見れば」と同じ歌合)。言葉の機知を楽しむ歌で、古今和歌集の時代に好まれた知的な作風がよく表れています。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
この歌は、文屋康秀ではなく、子の文屋朝康(37番)の作ではないかという説もあります。『古今和歌集』に康秀の名で載る歌のうち一部は朝康の作ともいわれ、親子どちらの歌なのか、はっきりしないのです。
康秀が三河国(今の愛知県)に赴任するとき、小野小町(9番)に「一緒に行きませんか」と誘ったという話があります。小町は「誘ってくれる水があれば、浮草のようについて行きましょう」という歌で返したと伝えられています。六歌仙どうしの、ちょっと気になるやりとりです。
この歌は、23番「月見れば」と同じ是貞親王家の歌合で詠まれたとされます。千里が漢詩の教養で月を詠み、康秀が漢字遊びで嵐を詠む――同じ秋の夜に、まったく違う個性の歌が並んだと想像すると楽しくなります。
作者:文屋康秀
平安時代前期の役人・歌人です。身分は高くありませんでしたが、六歌仙の一人に数えられます。『古今和歌集』の序文では、言葉の使い方は巧みだが内容が伴わない、と評されています。37番の文屋朝康は康秀の子です。
決まり字と覚え方
上の句が「ふ」まで読まれたら、取り札が決まります。「ふ」で始まる歌は1首あります。
覚え方:「ふ」と聞いたら「むべやまかぜを」。一字決まり「むすめふさほせ」の「ふ」です。吹(ふ)く山風(やまかぜ)=嵐、と漢字で覚えます。取り札が「む」で始まる、ということも合わせて覚えましょう。
入試で問われるポイント
- 「からに」(〜するとすぐに)
- 掛詞(嵐/荒らし)と漢字遊び
- 「むべ」の意味
- 原因推量の「らむ」
よくある質問
「山風を嵐といふ」とはどういう意味ですか?
「山」と「風」を合わせると漢字の「嵐」になることと、草木を「荒らす」風だから「あらし」と言う、という二つをかけた言葉遊びです。
「むべ」とはどういう意味ですか?
「なるほど」という意味です。理由がわかって納得したときに使います。
文屋康秀はどんな人ですか?
平安時代前期の役人で、六歌仙の一人です。身分は低かったものの、歌の才能で知られました。
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