- 歌
- 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
- 意味
- 草の葉に置いた白露に、風がしきりに吹きつける秋の野は、まるで糸で貫き通していない真珠が、ばらばらと散り乱れているようだよ。
- 作者
- 文屋朝康(ふんやのあさやす)
- 出典
- 『後撰和歌集』秋中・308番
- 決まり字
- 「しら」(2字決まり)

白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
読みしらつゆに かぜのふきしく あきののは
つらぬきとめぬ たまぞちりける
歴史的仮名遣いしらつゆに かぜのふきしく あきののは
つらぬきとめぬ たまぞちりける
草の葉の白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、糸を通していない真珠が散り乱れているようだ——露を宝石に見立てた、文屋朝康の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 白露 | しらつゆ | 草の葉に置いた、白く光る露。 |
| 吹きしく | ふきしく | しきりに吹く。 |
| つらぬきとめぬ | つらぬきとめぬ | 「(糸で)貫き通してつなぎとめていない」。「ぬ」は打消「ず」の連体形です。 |
| 玉 | たま | 真珠などの宝石。糸を通して首飾りなどにしました。 |
| 玉ぞ散りける | たまぞちりける | 「玉が散ったことだ」。「ぞ」を受けて「ける」が連体形で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 白露 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 風 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| 吹きしく | 動詞・カ行四段「吹きしく」連体形 | |
| 秋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 野 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| つらぬきとめ | 動詞・マ行下二段「つらぬきとむ」未然形 | |
| ぬ | 助動詞「ず」連体形 | 打消 |
| 玉 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意 |
| 散り | 動詞・ラ行四段「散る」連用形 | |
| ける | 助動詞「けり」連体形 | 詠嘆(係り結び) |
表現技法・文法のポイント
風に飛び散る白露を、糸の切れた真珠に見立てています。
「ぞ」を受けて「ける」が連体形になっています。
未然形「つらぬきとめ」に付く「ぬ」は打消「ず」の連体形です。
歌の背景・鑑賞
『後撰和歌集』秋中に入っています。秋の野原で、風にあおられた露がきらきらと散る一瞬を、宝石にたとえてとらえた、絵画のように美しい歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
22番「吹くからに」は、父・康秀ではなく、この朝康の作ではないかという説があります。もしそうなら、百人一首に朝康の歌が2首入っていることになるかもしれません。
朝康は、大江千里(23番)と同じ是貞親王家の歌合に参加した歌人です。父の康秀とともに、親子で同じ歌合の場にいたのかもしれません。
作者:文屋朝康
平安時代前期の役人・歌人、文屋朝康(ふんやのあさやす)です。22番の文屋康秀の子で、親子で百人一首に選ばれています。寛平御時后宮歌合や是貞親王家歌合など、『古今和歌集』ができる直前の歌合で活躍しました。
決まり字と覚え方
上の句が「しら」まで読まれたら、取り札が決まります。「し」で始まる歌は2首あります。
覚え方:「しら」と聞いたら「つらぬきとめぬ」。白(しら)露を貫く(つらぬく)、と覚えます。「し」で始まる歌は40番「しの」と2首あるので、2字目の「ら」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 見立て(露→玉)
- 「ぬ」の識別(打消)
- 係り結び(ぞ→ける)
よくある質問
何を何に見立てているのですか?
風に散る白露を、糸の切れた真珠(玉)に見立てています。
「つらぬきとめぬ」の「ぬ」は完了ですか?
未然形に付いているので、打消の助動詞「ず」の連体形です。
22番の文屋康秀とはどんな関係ですか?
文屋朝康は康秀の子です。親子で百人一首に選ばれています。
あわせて読みたい
- 22番「吹くからに」(文屋康秀・秋)
- 40番「しのぶれど」(平兼盛・恋)
- 23番「月見れば」(大江千里・秋)
- 29番「心あてに」(凡河内躬恒・秋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
