- 歌
- 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
- 意味
- 当て推量で、折るのなら折ってみようか。初霜が一面に降りて、霜なのか花なのか見分けがつかなくなっている白菊の花を。
- 作者
- 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
- 出典
- 『古今和歌集』秋下・277番
- 決まり字
- 「こころあ」(4字決まり)

心あてに 折らばや折らむ 初霜の
置きまどはせる 白菊の花
読みこころあてに おらばやおらん はつしもの
おきまどわせる しらぎくのはな
歴史的仮名遣いこゝろあてに をらばやをらむ はつしもの
おきまどはせる しらぎくのはな
当てずっぽうに折るなら折ってみようか。初霜が一面に降りて、霜なのか花なのか見分けがつかなくなった白菊の花を——白と白の「見立て」が美しい凡河内躬恒の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 心あてに | こころあてに | 当て推量で。見当をつけて。 |
| 折らばや折らむ | おらばやおらん | 「折るなら折ってみようか」。「や」は疑問の係助詞、「む」は意志で、連体形で結んでいます。 |
| 初霜 | はつしも | その年の秋に初めて降りる霜。 |
| 置きまどはせる | おきまどわせる | 「(霜が)降りて、見分けがつかなくしている」。「る」は存続の助動詞「り」の連体形です。 |
| 白菊の花 | しらぎくのはな | 白い菊の花。霜の白さと重なって見分けがつかないのです。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 心あて | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 折ら | 動詞・ラ行四段「折る」未然形 | |
| ば | 接続助詞 | 仮定条件 |
| や | 係助詞 | 疑問 |
| 折ら | 動詞・ラ行四段「折る」未然形 | |
| む | 助動詞「む」連体形 | 意志(係り結び) |
| 初霜 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| 置き | 動詞・カ行四段「置く」連用形 | |
| まどはせ | 動詞・サ行四段「まどはす」已然形 | |
| る | 助動詞「り」連体形 | 存続 |
| 白菊 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 花 | 名詞 | 体言止め |
表現技法・文法のポイント
白い霜と白菊を見分けがつかないものとして描き、白一色の世界を作っています。
「白菊の花を折ろうか」という順を入れかえ、最後を「白菊の花」で止めています。
「や」を受けて「む」が連体形になっています。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』秋下に入っています。白い霜と白い菊が見分けられないほどの、清らかな晩秋の朝を描いています。古今和歌集らしい、頭で考えた美しさ(見立て)を楽しむ歌の代表です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
明治時代の俳人・正岡子規は、この歌を「霜で白菊が見分けられないなど、うそだ」と厳しく批判しました。一方で、本物の景色ではなく、心の中の美しい白の世界を描いた歌だと高く評価する人もいます。あなたは子規派ですか、それとも躬恒派ですか。
躬恒は、醍醐天皇に「なぜ月を弓張というのか」と聞かれ、その場で見事な歌を詠んで答えたという話が『大和物語』に残っています。とっさの機転がきく、頭の回転の速い歌人だったようです。
作者:凡河内躬恒
平安時代前期の歌人・役人、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)です。身分は低く地方の役人を務めましたが、和歌の才能にすぐれ、紀貫之・紀友則・壬生忠岑(30番)とともに『古今和歌集』の撰者になりました。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「こころあ」まで読まれたら、取り札が決まります。「こ」で始まる歌は6首あります。
覚え方:「こころあ」と聞いたら「おきまどはせる」。心当て(こころあて)でまどう(まどはせる)、と覚えます。68番「こころに」と4字目で分かれる4字決まりです。
入試で問われるポイント
- 見立て
- 係り結び(や→む)
- 存続の「り」(まどはせる)
- 古今和歌集の撰者
よくある質問
「心あてに」とはどういう意味ですか?
「当て推量で」「見当をつけて」という意味です。
何と何が見分けられないのですか?
白い初霜と白菊の花です。どちらも白いので、区別がつかないのです。
凡河内躬恒はどんな人ですか?
紀貫之らとともに『古今和歌集』を編集した歌人の一人です。
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