- 歌
- 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
- 意味
- 夏の夜は(短くて)、まだ宵のうちだと思っているうちに明けてしまったが、(これでは月も西の山まで行き着けないだろう)月は雲のどのあたりに宿をとっているのだろうか。
- 作者
- 清原深養父(きよはらのふかやぶ)
- 出典
- 『古今和歌集』夏・166番
- 決まり字
- 「なつ」(2字決まり)

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
読みなつのよは まだよいながら あけぬるを
くものいずこに つきやどるらん
歴史的仮名遣いなつのよは まだよひながら あけぬるを
くものいづこに つきやどるらむ
夏の夜は短く、まだ宵だと思っているうちに明けてしまった。月は西の山に沈む暇もなく、雲のどこに宿っているのだろう——清原深養父のユーモラスな夏の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 宵 | よい | 日が暮れて間もないころ。 |
| 宵ながら | よいながら | 「宵のままで」。「ながら」は状態が続くことを表します。 |
| 明けぬるを | あけぬるを | 「明けてしまったが」。「ぬる」は完了、「を」は逆接の接続助詞です。 |
| いづこ | いずこ | どこ。 |
| 月宿るらむ | つきやどるらん | 「月は宿っているのだろうか」。月を旅人のように表しています。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 夏 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 夜 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| まだ | 副詞 | |
| 宵 | 名詞 | |
| ながら | 接続助詞 | 状態の継続 |
| 明け | 動詞・カ行下二段「明く」連用形 | |
| ぬる | 助動詞「ぬ」連体形 | 完了 |
| を | 接続助詞 | 逆接 |
| 雲 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| いづこ | 代名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 月 | 名詞 | |
| 宿る | 動詞・ラ行四段「宿る」終止形 | |
| らむ | 助動詞「らむ」連体形 | 現在推量 |
表現技法・文法のポイント
月を、宿をさがす旅人のように描いています。
宵のうちに夜が明けるという大げさな表現で、夏の夜の短さを表しています。
目の前に見えない月が今どこにいるのかを推し量っています。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』夏の部に入っています。詞書には、月が趣深かった夜、明け方に詠んだとあります。夏の夜の短さを、月が沈む場所に間に合わず、雲の中に宿をとったと想像した、ユーモアのある歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
深養父は、『枕草子』を書いた清少納言(62番)のひいおじいさん(または祖父)とされます。「夏は夜。月のころはさらなり」と書いた清少納言の感性は、夏の夜の月を楽しんだこの歌の作者から受け継がれたのかもしれません。
深養父は琴の名人で、彼が琴を弾くのを聞きながら、藤原兼輔と紀貫之が歌を詠んだという記録も残っています。夏の短い夜、琴を弾きながら月を眺めていたのかもしれません。
深養父は晩年、京都の北の静原という所にお寺を建てて、静かに暮らしたと伝えられています。
作者:清原深養父
平安時代中期の歌人・貴族、清原深養父(きよはらのふかやぶ)です。琴の名人で、藤原兼輔(27番)や紀貫之(35番)とも親しく交流しました。42番の清原元輔は孫(または子)、62番の清少納言はひ孫(または孫)にあたるとされます。中古三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「なつ」まで読まれたら、取り札が決まります。「な」で始まる歌は8首あります。
覚え方:「なつ」と聞いたら「くものいづこに」。夏(なつ)の雲(くも)、と季節の景色で覚えます。「な」で始まる歌は8首と多いので、2字目の「つ」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 擬人法
- 接続助詞「を」(逆接)
- 現在推量の「らむ」
- 清少納言の家系(42番・62番)
よくある質問
「宵」とはいつごろですか?
日が暮れてまだ間もないころです。
なぜ月が雲に宿るのですか?
夏の夜が短すぎて、月が西の山に沈むまで行き着けないだろう、とユーモラスに想像しているからです。
清少納言とはどんな関係ですか?
清原深養父は、清少納言のひいおじいさん(または祖父)にあたるとされます。
あわせて読みたい
- 42番「契りきな」(清原元輔・恋)
- 62番「夜をこめて」(清少納言・雑)
- 2番「春過ぎて」(持統天皇・夏)
- 98番「風そよぐ」(従二位家隆・夏)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
