古文文法辞典 › 助動詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
「けむ」は連用形につき、見ていない過去を「〜ただろう」と想像する助動詞。意味は過去推量・過去の原因推量・過去の伝聞・婉曲の3つで、けむ(過去)・らむ(現在)・む(未来)で「時の推量の三つ組」になります。
このページのポイント
- 接続は連用形、活用は四段型(○・○・けむ・けむ・けめ・○)
- 意味は3つ:過去推量(〜ただろう)・過去の原因推量(どうして〜たのだろう)・過去の伝聞・婉曲(〜たという)
- 文の途中で下に体言→伝聞・婉曲、疑問語や「〜や…けむ、」→原因推量
- けむ=過去・らむ=現在・む=未来(時の推量の三つ組)
- 難関大は挿入句の原因推量、受けむ・明けむとの識別、こそ〜けめ(逆接)
はじめて(やさしく)
「けむ」は、自分が見ていない過去のできごとを、「〜ただろう」と想像するときに使う助動詞です。読むときは「けん」と発音し、「けん」と書かれることもあります。
たとえば、朝起きたら地面がぬれていたとします。夜のあいだのことは見ていません。それでも「夜のうちに雨が降っただろう」と考えますね。この「〜ただろう」が「けむ」です。古文では「雨降りけむ」(自作)のように言います。
同じように「〜だろう」と想像する助動詞には、「む」と「らむ」があります。3つはどの時のことを想像するかがちがいます。
うかるくん
「む」「らむ」「けむ」って、名前が似すぎてて、こんがらがりそう……。
合格先生
時の順番で並べるといいよ。過去が「けむ」、今が「らむ」、これからが「む」。「け」は過去の助動詞「き・けり」の「け」と同じ音だから、「け」がつくと過去と覚えよう。
サクラちゃん
「けり」の「け」と同じ! それなら忘れないね。

うかるくん
「けむ」は「〜ただろう」。昔のこと(過去)を、見てきたようには言えないから「だろう」をつけるんだね!
「けむ」の意味は3つあります。いちばん大事なのは過去推量(〜ただろう)で、あとの2つ(過去の原因推量・過去の伝聞・婉曲)は「しっかり」で説明します。わからない所は、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
ここまでのまとめ
- 「けむ(けん)」=見ていない過去を想像する助動詞
- 基本の訳は「〜ただろう」
- けむ(過去)・らむ(現在)・む(未来)は時の推量の三つ組
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
「けむ」の活用表と接続
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| けむ(けん) | ○ | ○ | けむ | けむ | けめ | ○ | 四段型 |
接続は連用形です(「書きけむ」「見けむ」「しけむ」「ありけむ」)。過去の助動詞「き・けり」と同じ連用形接続なので、「過去の仲間は連用形」とまとめて覚えると楽です。完了の「つ・ぬ」の連用形がついた「てけむ」「にけむ」(〜てしまっただろう)もよく出ます。
活用は「む」と同じ四段型で、未然形・連用形・命令形はありません。已然形「けめ」は、「こそ〜けめ」の係り結びで出てきます。接続の全体は助動詞の接続のページにまとめてあります。
「けむ」の3つの意味と訳し方
| 意味 | 訳し方 | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| 過去推量 | 〜ただろう | 文末で、過去のことをふつうに想像している |
| 過去の原因推量 | (どうして)〜たのだろう・〜たからだろう | 「など・なに・いかで」など疑問語がある。または「〜や…けむ」の形で理由を想像している |
| 過去の伝聞・婉曲 | 〜たという・〜たとかいう/〜たような | 文の途中の連体形で、下に体言(または体言の省略) |
3つとも「過去」が入っているのがポイントです。「らむ」の現在推量・現在の原因推量・伝聞・婉曲を、そのまま過去にずらしたものと考えると覚えやすくなります。
「けむ」の意味の見分け方の手順
- 上が連用形であることを確かめる(「受けむ」「明けむ」のような、動詞の「け」+「む」ではないか)。
- 文の途中か文末かを見る。下に体言があれば過去の伝聞・婉曲(〜たという・〜たような)。
- 文末(「、」で切れる挿入句もふくむ)なら、疑問語(など・なに・いかで)や、理由を想像する形(〜や…けむ)があるかを見る。あれば過去の原因推量。
- なければ過去推量(〜ただろう)。
- 最後に、訳を当てはめて文脈に合うか確かめる。
例文で確かめる
聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。
(徒然草・第五十二段(仁和寺にある法師))
現代語訳聞いていた以上に尊くていらっしゃった。それにしても、お参りしている人がみな山へ登っていったのは、何事があったのだろうか、知りたかったけれど、神へお参りすることこそが本来の目的だと思って、山の上までは見なかった。
昔、男ありけり。京や住み憂かりけむ、あづまの方に行きて住み所求むとて、友とする人ひとりふたりして行きけり。
(伊勢物語・第八段)
現代語訳昔、男がいた。京が住みにくかったのだろうか、東国のほうに行って住む所をさがそうと思って、友とする人を一人二人連れて行った。
前の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男皇子さへ生まれたまひぬ。
(源氏物語・桐壺)
現代語訳前世でもご縁が深かったのだろうか、世にまたとないほど美しい玉のような男の皇子までお生まれになった。
行平の中納言の、関吹き越ゆると言ひけん浦波、夜々はげにいと近く聞こえて、
(源氏物語・須磨)
現代語訳(昔)行平の中納言が「関吹き越ゆる」と(歌に)詠んだという須磨の浦の波の音が、毎晩なるほど本当にすぐ近くに聞こえて、
もっと深く(難関大・上級者)
1. 原因推量の2つの形:「疑問語+けむ」と「〜や…けむ、」
過去の原因推量には、大きく2つの形があります。
- 疑問語+けむ:「などかく急ぎ帰りけむ」(自作)=「どうしてこんなに急いで帰ったのだろう」。「など・なに・なにしに・いかで」などがあれば、理由を問う原因推量です。
- 〜や…けむ、(挿入句):「京や住み憂かりけむ、」「御契りや深かりけむ、」のように、理由にあたる部分を「〜からだろうか」と想像して文の途中にはさむ形。訳は「〜たのだろうか、(それで)……」。
ただし、疑問語があっても「何事かありけん」(徒然草)のように、理由ではなく「何があったのだろう」とできごとそのものを想像している場合は、ふつうの過去推量とするのが一般的です。「なぜ」と問うているか、「何が」と問うているかで分けましょう。
2. 「けむ」と「き」:見た過去・見ていない過去
過去の助動詞「き」は、自分が体験した過去(直接経験の過去)を表すと説明されます。それに対して「けむ」は、自分が見ていない過去を想像します。百人一首42番の「契りきなかたみに袖をしぼりつつ」の「き」は、二人が実際に約束を交わした、作者(の立場の人)の体験です。これを「契りけむ」と言えば、「約束しただろう」と、だれかの過去を想像する言い方になります。
| 語 | 接続 | 表す過去 | 訳 |
|---|---|---|---|
| き | 連用形(カ変・サ変は特別) | 自分が体験した過去 | 〜た |
| けり | 連用形 | 伝え聞いた過去・今気づいたこと(詠嘆) | 〜た・〜たそうだ・〜たなあ |
| けむ | 連用形 | 見ていない過去を想像 | 〜ただろう |
3つとも連用形接続です。「き・けり」と同じく、「けむ」も「過去の『け』の仲間」と考えると整理できます。なお「けむ」の成り立ちについては、「き」の古い未然形とされる「け」に「む」がついたもの、と説明されることがありますが、確かなことはわかっていません。
3. 時の推量の三つ組を表で比べる
| 語 | 接続 | 時 | 主な意味 |
|---|---|---|---|
| む | 未然形 | まだ起きていない(未来) | 推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲 |
| らむ | 終止形(ラ変型は連体形) | 今(目の前にない現在) | 現在推量・現在の原因推量・伝聞・婉曲 |
| けむ | 連用形 | 過去 | 過去推量・過去の原因推量・過去の伝聞・婉曲 |
らむとけむは、意味の並び方がそっくりです。「らむ」の百人一首33番「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」は、目の前で散る花について「どうして落ち着いた心もなく散るのだろう」と思う現在の原因推量。これを過去にずらすと、「どうして散ってしまったのだろう」=「散りにけむ」の過去の原因推量になります(散りにけむ の形は説明のための自作)。36番「夏の夜は……雲のいづこに月宿るらむ」(今ごろどこに宿っているのだろう=現在推量)も、過去にすれば「宿りけむ」(どこに宿っていたのだろう)です。

百人一首(全百首)には「らむ」の歌が多い一方、「けむ」の入った歌はありません。和歌は今の気持ちをよむことが多いので、目の前の景色について「らむ」を使う歌が多くなる、と考えるとわかりやすいでしょう。
4. 「けむ」の識別
入試でまぎらわしいのは、下二段動詞の未然形が「け」で終わるものに「む」がついた形です。「受く」「明く」「負く」「助く」「設く」などの下二段活用の動詞は、未然形が「受け・明け・負け……」となるので、「受けむ」は受けよう(動詞+推量・意志の「む」)であって、過去推量ではありません。見分けるには、「け」までが動詞かを確かめます。「夜明けむ」なら「明く」の未然形「明け」+「む」で「夜が明けるだろう」。「夜明けにけむ」なら、連用形「明け」+完了「ぬ」の連用形「に」+「けむ」で「夜が明けてしまっただろう」となります。
5. 「こそ〜けめ」と逆接
已然形「けめ」は、係助詞「こそ」の結びとして使われます。「こそ〜けめ、」と文が下に続くときは、「〜ただろうが、(しかし)」と逆接で訳すのが定番です。
昔こそ難波田舎と言はれけめ今は都引き都びにけり
(万葉集・巻三・藤原宇合(表記は一部改めた))
現代語訳昔こそ難波は田舎と言われていただろうが、今は都を移して、すっかり都らしくなったことだ。
サクラちゃん
「けめ」って、命令形みたい……。でも「けむ」に命令形はないんだよね。
合格先生
そのとおり。「め」で終わっていたら、まず「こそ」をさがそう。「む」の「こそ〜め」と同じしくみだよ。
よくあるまちがい
まちがい1:「けむ」を「〜だろう」とだけ訳す
「けむ」は過去の推量です。「降りけむ」は「降るだろう」ではなく「降っただろう」。「〜た」を落とすと、「む」との区別がつかなくなります。
まちがい2:「受けむ」「負けむ」を過去推量と答える
「けむ」の接続は連用形。「受け・負け」は下二段動詞の未然形の一部なので、下の「む」だけが助動詞です(受けよう・負けるだろう)。
まちがい3:「〜や…けむ、」を疑問文として文末で切る
「京や住み憂かりけむ、」のような形は、文の中にはさまった挿入句です。ここで文を切らず、「〜だったのだろうか、(それで)……」と下の本筋につなげて訳しましょう。
練習問題
やさしい
- 助動詞「けむ」の接続と、3つの意味を答えなさい。
答えと解説を見る
接続:連用形。意味:過去推量(〜ただろう)・過去の原因推量(どうして〜たのだろう)・過去の伝聞・婉曲(〜たという・〜たような)。
- 「昨日は、都に雪降りけむ。」(自作)を現代語に訳しなさい。
答えと解説を見る
文末で、過去のことを想像しているので過去推量。「昨日は、都に雪が降っただろう」。
ふつう
- 「などて、かく急ぎ帰りけむ。」(自作)の「けむ」の意味を答え、訳しなさい。
答えと解説を見る
疑問語「などて(どうして)」があり、帰った理由を想像しているので過去の原因推量。「どうして、こんなに急いで帰ったのだろう」。
- 「かぐや姫の住みけむ里を訪ねけり。」(自作)の「けむ」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
文の途中で、下に体言「里」があるので過去の伝聞・婉曲。「かぐや姫が住んでいたという里を訪ねた」。
むずかしい
- 次の傍線部を文法的に説明しなさい(自作)。
① 夜明けむ。 ② 夜明けにけむ。 ③ 人こそ知りけめ、我は知らず。答えと解説を見る
① 下二段動詞「明く」の未然形「明け」+推量の助動詞「む」(夜が明けるだろう)。② 「明く」の連用形「明け」+完了「ぬ」の連用形「に」+過去推量「けむ」(夜が明けてしまっただろう)。③ 「こそ」の結びで「けむ」の已然形「けめ」。下に続くので逆接「ほかの人は知っていただろうが、私は知らない」。
- 「前の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男皇子さへ生まれたまひぬ。」(源氏物語・桐壺)の「けむ」の意味と活用形を答え、その理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
意味は過去の原因推量。玉のような皇子が生まれた理由を「前世からの縁が深かったからだろうか」と想像しているから。活用形は連体形。係助詞「や」の結びだから。「〜や…けむ、」は挿入句で、下の本筋(皇子が生まれた)につなげて訳す。
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- 助動詞「つ・ぬ」:「てけむ」「にけむ」の「て・に」
- 係り結び:「や〜けむ」「こそ〜けめ」
- 助動詞一覧:接続・意味・活用の地図
- 古文文法辞典の目次
助動詞全体の流れは、記事「古文の助動詞一覧」でも読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 国語のまとめ
現代文・古文・漢文の入口
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
助動詞「けむ」の意味は何ですか?
過去推量(〜ただろう)、過去の原因推量(どうして〜たのだろう)、過去の伝聞・婉曲(〜たという・〜たような)の3つです。
「けむ」の接続と活用は?
連用形に接続します。活用は四段型で、○・○・けむ・けむ・けめ・○です。已然形「けめ」は「こそ〜けめ」の結びで使われます。
「む」「らむ」「けむ」の違いは?
想像する時がちがいます。けむは過去、らむは現在(今、目の前にないこと)、むは未来(まだ起きていないこと)です。接続もけむ=連用形、らむ=終止形(ラ変型は連体形)、む=未然形と異なります。
過去の原因推量はどう見分けますか?
「など・いかで」などの疑問語がある文や、「京や住み憂かりけむ、」のように理由を想像してはさむ形(〜や…けむ、)なら原因推量です。「どうして〜たのだろう」「〜たからだろうか」と訳します。
「受けむ」の「けむ」は助動詞ですか?
いいえ。「受け」は下二段動詞「受く」の未然形で、助動詞は「む」だけです(受けよう)。助動詞「けむ」は連用形につくので、「け」の上が連用形かどうかで見分けます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:徒然草(第五十二段)、伊勢物語(第八段)、源氏物語(桐壺・須磨)、万葉集(巻三)。百人一首(33・36・42番)は比べるために引用。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(「けむ」の3つの意味・接続・活用)にもとづいて作成。「けむ」の成り立ちには説が分かれるため、本文では「説明されることがある」とした
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 033」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



