古文文法辞典 › 助動詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
「む」は未然形につき、まだ起きていないことを思う助動詞。文末なら主語で一人称→意志・二人称→適当/勧誘・三人称→推量、文の途中なら体言の前→婉曲・「は/に」の前→仮定と見分けます。
このページのポイント
- 接続は未然形、活用は四段型(○・○・む・む・め・○)
- 意味は6つ:スイカテカエ(推量・意志・仮定・適当・勧誘・婉曲)
- 文末は主語の人称、文中は下の語で見分ける
- 「こそ〜め」「てむや・なむや」は適当・勧誘
- 難関大は婉曲と仮定、なむの4識別、む・らむ・けむの比較
はじめて(やさしく)
「む」は、まだ起きていないことや目の前にないことを、頭の中で思いうかべるときに使う助動詞です。読むときは「ん」と発音し、「ん」と書かれることもあります。
じつは、現代語の「書こう」「見よう」の「う」は、この「む」が「書かむ→書かん→書かう→書こう」と変わってできたものです。だから意味も似ていて、「〜しよう」「〜だろう」が基本です。
サクラちゃん
「〜しよう」と「〜だろう」って、ずいぶん違う意味だよね。どっちか、どうやって決めるの?
合格先生
だれがするか(主語)で決まるんだ。「私が行かむ」なら「行こう」、「雨降らむ」なら「降るだろう」。自分のことなら決意、ほかの人や物のことなら想像だね。
うかるくん
なるほど! 現代語の「行こう」と「降るだろう」の使い分けと同じだ。

サクラちゃん
自分が主語なら「〜しよう」、ほかの人や物なら「〜だろう」。まず主語をさがすのがコツだね!
「む」の意味は全部で6つあり、頭の字をとって「スイカテカエ」と覚えます:スイ(推量)・イ(意志)・カ(仮定)・テ(適当)・カ(勧誘)・エ(婉曲)。
ここまでのまとめ
- 「む」=まだ起きていないこと・目の前にないことを思う助動詞
- 文末なら主語で:私→意志、あなた→適当・勧誘、ほか→推量
- 文の途中なら下の語で:体言→婉曲、「は・に」→仮定
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
活用と接続
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| む(ん) | (ま) | ○ | む | む | め | ○ | 四段型 |
接続:未然形(「書かむ」「見む」「せむ」「来む(こむ)」)。未然形の「ま」は「見まく欲し(見たい)」のような古い言い方(ク語法)にだけ出てきます。已然形「め」は「こそ〜め」の係り結びでよく出ます。
6つの意味
| 意味 | 訳し方 | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| 推量 | 〜だろう | 文末で、主語が三人称(人・物・できごと) |
| 意志 | 〜しよう・〜するつもりだ | 文末で、主語が一人称(私・私たち)。「〜むとす」「〜むと思ふ」も多い |
| 適当 | 〜するのがよい・〜すべきだ | 主語が二人称。「こそ〜め」の形が多い |
| 勧誘 | 〜しないか・〜してください | 主語が二人称。「てむや」「なむや」「むや」の形が多い |
| 仮定 | 〜としたら・〜ならば | 文の途中の連体形。下に「は・に・には・こそ」など |
| 婉曲 | 〜ような | 文の途中の連体形。下に体言(または体言の省略) |
見分け方の手順
- 「む」が未然形の下にあることを確かめる(「なむ」「らむ」「けむ」などの一部でないか)。
- 文の途中か文末かを見る。「と・とて」の前は文末と同じに考える。
- 文の途中なら、下に体言→婉曲、下に「は・に」など→仮定。
- 文末なら主語を補う:一人称→意志、二人称→適当・勧誘、三人称→推量。
- 最後に、訳を当てはめて文脈に合うか確かめる。

合格先生
手順の2番、「む」の位置を見落とす人が多いよ。文末か、文の途中か。ここで道が分かれるんだ。
例文で確かめる
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
(土佐日記・冒頭)
現代語訳男も書くと聞いている日記というものを、女(の私)も書いてみようと思って書くのである。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
(百人一首77番・崇徳院(瀬をはやみ))
現代語訳川の瀬の流れが速いので、岩にせきとめられる急流が二つに分かれても末にはまた一つになるように、(今は引き離されても)いつかはきっと逢おうと思う。
思はむ子を法師になしたらむこそ、心苦しけれ。
(枕草子「思はむ子を」の段)
現代語訳(親が)かわいいと思うような子を法師にしたとしたら、それはまことに気の毒だ。
長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ
(百人一首80番・待賢門院堀河(長からむ))
現代語訳(いつまでも変わらないという)長く続くようなあなたの心もわからず、黒髪が乱れているように心も乱れて、今朝はもの思いにしずんでいる。
「む」の仲間:むず・てむ・なむ
| 形 | でき方 | 意味・訳 |
|---|---|---|
| むず(んず) | 「むとす」がつまった形と説明される | 「む」とほぼ同じ(推量・意志が中心)。サ変型に活用:○・○・むず・むずる・むずれ・○ |
| てむ | 完了「つ」の未然形「て」+む | きっと〜だろう・きっと〜しよう(強意+推量・意志)。「てむや」は勧誘「〜してくれないか」 |
| なむ(連用形+) | 完了「ぬ」の未然形「な」+む | きっと〜だろう・きっと〜しよう。「なむや」は勧誘 |

この月の十五日に、かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず。
(竹取物語・かぐや姫の昇天の前の場面)
現代語訳今月の十五日に、あのもとの国(月の都)から、迎えに人々がやって来るでしょう。
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
(百人一首65番・相模(恨みわび))
現代語訳(つれない人を)恨み悲しんで、涙を乾かすひまもない袖さえ(朽ちそうで)惜しいのに、この恋のためにきっと朽ちてしまうであろう私の評判が惜しいことだ。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 婉曲と仮定の見分けは「訳してみる」
どちらも文の途中の連体形なので、形だけでは決まらないことがあります。目安は次のとおりです。
- 婉曲:下に体言がある。「〜ような」と訳すが、訳さなくても意味が通る(ぼかしているだけ)。「思はむ子」=「思う子」でも通じる。
- 仮定:下に「は・に・には・こそ・も」などがあり、「〜としたら、それは」と、後ろに結果が続く。
百人一首67番「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」の「む」は、下に体言「名」があるので婉曲(つまらなく立つような浮き名)ですが、「(腕枕をしてもらって)浮き名が立ったとしたら、その評判が惜しい」と仮定の意味をふくめて訳す本もあります。両方の訳がありうるところは、選択肢の訳を比べて文脈で決めます。
2. 「一人称なのに推量」「体言の前なのに推量」
手順はあくまで目安です。次のような例外が、難関大ではねらわれます。
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
(百人一首3番・柿本人麻呂(あしびきの))
現代語訳山鳥の長く垂れた尾のように長い長い秋の夜を、(恋しい人と離れて)ひとりで寝ることになるのだろうか。
同じように、百人一首56番「あらざらむこの世のほかの思ひ出に」の「ざらむ」(打消「ず」+む)は、下に体言「この世」があるので婉曲と説明されることが多い一方、「(私が)生きていないであろう、あの世への思い出に」と推量で訳されることもあります。
3. 「む」と「らむ」「けむ」
3つとも目の前にないことをおしはかる助動詞で、違いは時間と接続です。
| 語 | 接続 | 時 | 主な意味 |
|---|---|---|---|
| む | 未然形 | まだ起きていない | 推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲 |
| らむ | 終止形(ラ変型は連体形) | 今(目の前にない現在) | 現在推量・現在の原因推量(なぜ〜のだろう)・伝聞・婉曲 |
| けむ | 連用形 | 過去 | 過去推量・過去の原因推量・過去の伝聞・婉曲 |
百人一首33番「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」は、目の前で散る花について「どうして落ち着いた心もなく散るのだろう」と理由を思う原因推量。36番「夏の夜は……雲のいづこに月宿るらむ」は、見えない月について「今ごろ雲のどこに宿っているのだろう」と思う現在推量です。
4. 「なむ」の4つの見分け
| 形 | 上の語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| 願望の終助詞「なむ」 | 未然形 | 〜してほしい(他にあつらえ望む) | 「外山の霞立たずもあらなむ」(百人一首73番) |
| 完了「ぬ」+「む」 | 連用形 | きっと〜だろう・〜してしまおう | 「恋に朽ちなむ」(百人一首65番) |
| 係助詞「なむ」 | 体言・助詞など | 強意(訳さない)。文末は連体形 | 「もと光る竹なむ一筋ありける」(竹取物語)→係り結び |
| ナ変の未然形+「む」 | 「死な・往な」の一部 | 死のう・行ってしまおう など | 「死なむ」「往なむ」 |
73番の「あら」はラ変「あり」の未然形なので、「なむ」は願望。「霞よ、立たないでいてほしい」となります。上の語が未然形か連用形かを、動詞の活用から判断できることが決め手です(四段・ラ変以外は未然形と連用形が同じ形のことが多いので、そのときは文脈で)。
5. 「むず」は会話のことば
「むず」は平安時代の会話文や、のちの軍記物語などで使われます。枕草子の「ふと心劣りとかするものは」の段には、「むとす」の「と」を落として「むずる」と言うのは聞き苦しい、という趣旨の記述があり、当時はくだけた言い方と感じられていたことがわかります。
うかるくん
清少納言、ことばの使い方にきびしいなあ。
合格先生
そのおかげで、「むず」が「むとす」から来たという説明の手がかりにもなっているんだ。文法も、昔の人の感じ方から見えてくることがあるよ。
よくあるまちがい
まちがい1:主語を補わずに「推量」と決める
古文は主語が省略されがちです。会話文の中の「行かむ」は、話し手自身の「行こう」(意志)であることがとても多い。まず主語を補う。
まちがい2:「なむ」を全部同じものと考える
「なむ」は上の語の活用形で4種類に分かれます(願望・ぬ+む・係助詞・ナ変+む)。「む」だけ取り出して意味を答えると、ぬ+む の「む」を見落とします。
まちがい3:「こそ〜め」を命令と訳す
「とくこそ参りたまはめ」(自作)の「め」は「む」の已然形(こその結び)。命令形ではなく、適当・勧誘「早く参上なさるのがよい」です。
練習問題
やさしい
- 助動詞「む」の6つの意味を答えなさい。
答えと解説を見る
推量・意志・仮定・適当・勧誘・婉曲(スイカテカエ)。
- 「われ、明日は京へ上らむ。」(自作)の「む」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
文末で、主語は「われ」(一人称)なので意志。「明日は京へ上ろう」。
ふつう
- 「今宵は、雨降らむ。」(自作)の「む」の意味を答え、現代語に訳しなさい。
答えと解説を見る
文末で、主語は「雨」(三人称)なので推量。「今夜は雨が降るだろう」。
- 「花咲かむ折に、また来たまへ。」(自作)の「む」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
文の途中で、下に体言「折」があるので婉曲。「花が咲くような時に、また来てください」。訳さずに「花が咲く時に」としても意味が通るのが婉曲の特徴です。
むずかしい
- 次の「なむ」を文法的に説明しなさい(自作)。
① 雨降らなむ。 ② 雨降りなむ。 ③ 雨なむ降りける。答えと解説を見る
① 未然形「降ら」の下なので願望の終助詞「雨が降ってほしい」。② 連用形「降り」の下なので完了「ぬ」の未然形+推量「む」「きっと雨が降るだろう」。③ 体言「雨」の下で、取り除いても文が成り立ち、文末が連体形「ける」なので係助詞(強意)「雨が降った」。
- 「この文、とく御覧じてむや。」(自作)の「てむや」を文法的に説明し、全体を訳しなさい。
答えと解説を見る
「て」は完了(強意)「つ」の未然形、「む」は助動詞(主語は相手=二人称)、「や」は疑問の係助詞。「てむや」で勧誘(〜してくれないか)。「この手紙を、早くご覧になってくださいませんか」。「御覧じ」はサ変「御覧ず」の連用形。
関連ページ
- 係り結び:「こそ〜め」「か〜む」の結び
- 動詞の活用の種類と見分け方:未然形と連用形の見分けに
- 助動詞「らむ(らん)」(準備中)
- 助動詞「けむ(けん)」(準備中)
- 助動詞「むず(んず)」(準備中)
- 「なむ」の識別(準備中)
- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
助動詞「む」の意味は何ですか?
推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲の6つです。頭の字をとって「スイカテカエ」と覚えます。
「む」の意味はどうやって見分けますか?
文末の「む」は主語の人称で見分けます(一人称→意志、二人称→適当・勧誘、三人称→推量)。文の途中の連体形の「む」は、下に体言があれば婉曲、「は・に」などがあれば仮定です。
「む」の接続は何ですか?
未然形です。「書かむ」「見む」「せむ」「来む(こむ)」のように未然形につきます。
「む」と「らむ」「けむ」の違いは?
「む」はまだ起きていないこと、「らむ」は今目の前にないこと、「けむ」は過去のことをおしはかります。接続も、む=未然形、らむ=終止形(ラ変型は連体形)、けむ=連用形と違います。
「むず」とは何ですか?
「むとす」がつまってできたと説明される助動詞で、意味は「む」とほぼ同じです。サ変型に活用し、平安時代には会話で使われるくだけた言い方でした。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:土佐日記(冒頭)、枕草子(「思はむ子を」の段)、竹取物語、百人一首(3・33・36・56・65・67・73・77・80番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(「む」の6つの意味・接続・活用)にもとづいて作成
- 画像:「Taketori Monogatari 2.jpg」(竹取物語絵巻より かぐや姫の昇天、土佐広通・土佐広澄 筆、1650年ごろ、パブリックドメイン〈PD-Art/PD-old-100-expired〉、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月15日/作成:大学受験合格大作戦



