
「春はあけぼの」とは?
- 「春はあけぼの」は、清少納言(せいしょうなごん)の随筆『枕草子』の第一段の書き出しです。「春は夜明けごろがいちばんよい」という意味です
- 第一段は春はあけぼの・夏は夜・秋は夕暮れ・冬はつとめて(早朝)と、四季それぞれのいちばんよい時間帯をあげています
- 枕草子は1000年ごろ(平安時代中期)に書かれ、『方丈記』『徒然草』とならぶ日本三大随筆の一つです
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中学受験から難関大まで、「はじめて・しっかり・もっと深く」の3段で、図と練習問題つきで解説しています。
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは……」。中学校の国語の教科書で、多くの人が最初に出会う古文がこの文章です。暗唱のテストでおなじみですが、「あけぼのって何時ごろ?」「なぜ冬は朝なの?」と聞かれると、意外に答えられないものです。この記事では、枕草子第一段の原文・現代語訳・語句の意味から、季節と時間の考え方、二十四節気とのつながり、作者の清少納言と百人一首62番の歌まで、まとめて解説します。
枕草子 第一段「春はあけぼの」の原文
原文は、教科書で広く使われている三巻本(さんかんぼん)系の本文によります。段落は季節ごとに分けました。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛びいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。
冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。
※漢字とかなの書き分け・句読点は本によって少しちがいます。写本の系統(三巻本・能因本など)によっても字句にちがいがあります。
現代語訳
| 季節 | 現代語訳 |
|---|---|
| 春 | 春は夜明けのころ(がよい)。だんだんと白くなっていく山ぎわの空が、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている(のがよい)。 |
| 夏 | 夏は夜(がよい)。月が出ているころは言うまでもない。月のない闇夜でもやはり、ほたるがたくさん飛びかっている(のがよい)。また、ほんの一匹二匹などが、かすかに光って飛んでいくのもおもむきがある。雨などが降るのもおもむきがある。 |
| 秋 | 秋は夕暮れ(がよい)。夕日がさして山の稜線(りょうせん)にとても近くなっているころに、からすがねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と、急いで飛んでいくのまでしみじみと心にしみる。まして雁(かり)などが列をつくって、とても小さく見えるのは、とてもおもしろい。日がすっかりしずんでしまって、風の音や虫の声などが聞こえるのは、また言いようもない(ほどよい)。 |
| 冬 | 冬は早朝(がよい)。雪が降っている朝は言うまでもなく、霜がとても白い朝も、またそうでなくてもとても寒い朝に、火などを急いでおこして、炭を持って廊下などを行き来するのも、いかにも冬の朝らしくてふさわしい。昼になって、寒さがだんだんゆるんでいくと、火桶(ひおけ)の火も白い灰ばかりになって、よくない。 |
原文には「〜がよい」という言葉が書かれていません。「春はあけぼの。」と体言(名詞)で止めて、あとは読む人に想像させる書き方です。和歌の体言止めと同じ効果で、文に余韻(よいん)が生まれます。和歌の言葉のわざは和歌の修辞法の記事でくわしく解説しています。
重要な語句の意味(テストに出る古文単語)
| 語句 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| あけぼの | あけぼの | 夜がほのぼのと明けはじめるころ |
| やうやう | ようよう | だんだん、しだいに |
| 山ぎは | やまぎわ | 山と接するあたりの空 |
| あかりて | あかりて | 明るくなって |
| 紫だちたる | むらさきだちたる | 紫がかっている |
| さらなり | さらなり | 言うまでもない(「いふもさらなり」の略) |
| なほ | なお | やはり |
| をかし | おかし | おもむきがある、おもしろい、かわいらしい |
| 山の端 | やまのは | 空と接するあたりの山(稜線) |
| あはれなり | あわれなり | しみじみと心が動かされる |
| まいて | まいて | まして(「まして」の音便) |
| はた | はた | また、やはり |
| つとめて | つとめて | 早朝。または翌朝 |
| さらでも | さらでも | そうでなくても |
| つきづきし | つきづきし | ふさわしい、似つかわしい |
| ぬるくゆるびもていけば | ぬるくゆるびもていけば | (寒さが)だんだんゆるんでいくと |
| わろし | わろし | よくない、感心しない |
とくに「山ぎは」と「山の端」のちがいはよく問われます。「山ぎは」は山に接する空の部分、「山の端」は空に接する山の部分です。春は空が白むようすを、秋は夕日がしずむ山の線を見ているわけです。また、「をかし」と「あはれ」はどちらも古文の最重要単語です。古文単語の覚え方は古文単語の記事もどうぞ。
うかるくん
「山ぎは」と「山の端」、何回聞いてもごちゃごちゃになります……。
合格先生
「端(は)」は物のはし。だから「山の端」は山のはし、つまり山の稜線だね。「きは」は境目。「山ぎは」は山との境目にある空。春の文は「白くなりゆく」だから、白くなるのは空、と覚えよう。
サクラちゃん
空が白くなるから「山ぎは」!これなら忘れません。
四季と時間帯の図:なぜ「冬はつとめて」なのか
第一段は、季節ごとにいちばんよい時間帯を1つずつ選び、その時間に見えるもの・聞こえるものを並べています。見どころは次のとおりです。
- 春=あけぼの:空の色の変化(白→明るい→紫の雲)。目で見る美しさ。
- 夏=夜:月・闇・ほたる・雨。暑い昼をさけた夜の涼しさと小さな光。
- 秋=夕暮れ:からす・雁という動くもの、そして日がしずんだあとの風の音・虫の声という音。
- 冬=つとめて:雪・霜という寒さと、炭火を運ぶ人の暮らし。昼になって火が白い灰になるのは「わろし」。
冬が朝なのは、寒さがいちばんきびしい時間だからです。寒い朝に急いで火をおこし、炭を運んで回る――その「冬らしさ」がふさわしい(つきづきし)と言っています。昼になって寒さがゆるむと、冬らしさがうすれてしまうのです。
秋の部分は「あはれ」から「をかし」へ、さらに「いふべきにあらず(言いようもない)」へと、だんだん気持ちが高まる書き方になっています。秋の夕暮れは和歌でも定番の場面で、百人一首にも「秋の夕暮れ」で終わる歌が2首あります(70番・87番)。
時間の古語:あかつき・あけぼの・あさぼらけ
古文には、夜明け前後の時間を表す言葉がたくさんあります。あかつき(暁)はまだ暗い夜明け前、あけぼの(曙)は空が白みはじめるころ、あさぼらけ(朝ぼらけ)はほのかに明るくなったころです。百人一首にも「朝ぼらけ」で始まる歌が2首あります(31番・64番)。時刻の区切り方や十二支の時刻については、大晦日(おおつごもり)の記事でも解説しています。夏の「月のころ」の月の呼び名は、中秋の名月の記事の「月の名前」の図が参考になります。
二十四節気とのつながり:古典の季節はいつから?
枕草子の時代の暦は旧暦(太陰太陽暦)で、季節の区切りには二十四節気が使われました。春・夏・秋・冬の始まりは、それぞれ次の節気です。
※日付は年によって1日前後します。
いまの感覚では「8月はまだ真夏」ですが、古典の世界では立秋を過ぎればもう秋です。だから「秋は夕暮れ」の季節には、いまの8月の夕方もふくまれます。季節の区切りがずれていることを知っておくと、古文や和歌の季節感が正しく読み取れます。月ごとの呼び名(睦月〜師走)は旧暦の月の名前、二十四節気の一覧は二十四節気とはにまとめています。
清少納言と枕草子の基本
- 作者:清少納言。歌人の家に生まれ、父は清原元輔(きよはらのもとすけ、百人一首42番)、曾祖父(または祖父とする説もある)は清原深養父(きよはらのふかやぶ、36番)です。
- 仕えた人:一条天皇の中宮(ちゅうぐう)定子(ていし)。宮中での出来事や定子のようすが、明るい筆で書かれています。
- 成立:1000年ごろ(平安時代中期)。
- ジャンル:随筆。『枕草子』『方丈記』(鴨長明、鎌倉時代初め)『徒然草』(兼好法師、鎌倉時代末)を日本三大随筆と呼びます。
- 内容の3つの種類:「山は」「すさまじきもの」のように同じなかまを集めた類聚(るいじゅう)的章段、宮仕えの思い出を書いた日記的章段、第一段のように自然や人生への感想を書いた随想的章段。
- 「をかし」の文学:明るく知的なおもしろさ「をかし」が中心。紫式部の『源氏物語』の「もののあはれ」と対比してよく説明されます。
題名の「枕草子」の意味には、「手元に置いて書きとめる帳面(ちょうめん)」という説、「枕(まくら)」を言葉遊びにした説など、諸説あります。本の終わりの跋文(ばつぶん)には、定子から紙をいただいたことが書くきっかけになったという話が出てきます。
三大随筆のひとつ徒然草については、徒然草188段の記事もあります。「古典」と「古文」の言葉のちがいは古典と古文の違いへ。
百人一首62番 清少納言「夜をこめて」
清少納言は百人一首にも選ばれています。62番の歌です。
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ
現代語訳:夜がまだ明けないうちに、にわとりの鳴きまねでだまそうとしても、(函谷関〈かんこくかん〉ならともかく)逢坂の関は決して通しませんよ。
この歌は、枕草子の中の、藤原行成(ふじわらのゆきなり)とのやりとりを書いた段に出てきます(段の番号は本によって異なります)。行成が「にわとりの声にせかされて帰った」と言いわけの手紙をよこしたのに対し、清少納言は中国の故事――孟嘗君(もうしょうくん)の家来がにわとりの鳴きまねで函谷関の門を開けさせた話――をふまえて切り返しました。「逢坂」には「逢ふ(会う)」が掛かっていて、「あなたとは会いませんよ」という意味がこめられています。漢詩文の知識と、和歌の掛詞を同時に使った、清少納言らしい一首です。

サクラちゃん
「逢坂」が「逢ふ」の掛詞!枕草子の第一段と百人一首62番、セットで覚えれば作者の問題もばっちりですね。
うかるくん
清少納言って、すごく頭の回転が速い人だったんですね。
合格先生
そうだね。第一段の「春はあけぼの」も、季節の名前と時間をズバッと言い切る書き方が新しかった。読む人をはっとさせる力が、1000年以上読み継がれている理由のひとつだと言えるね。
入試・定期テストでの問われ方
第一段は中学・高校の定期テストの定番で、大学入試では枕草子のほかの段が出ることもよくあります。よく問われるのは次の点です。
- 語句の意味:「やうやう」「山ぎは」「つとめて」「つきづきし」「わろし」。
- 省略を補う:「春はあけぼの」のあとに省略されている言葉(「をかし」など)。
- 対比:冬の「つきづきし」と「わろし」の対比、「山ぎは」と「山の端」。
- 文学史:作者・ジャンル(随筆)・成立(平安時代中期)・三大随筆・仕えた人(中宮定子)。
古文の文法(助動詞「たり」「り」など)は古文の助動詞、宮中の人々の会話によく出る敬語は古文の敬語の記事で練習できます。国語全体の勉強法は国語のまとめからどうぞ。勉強の悩みは、受験掲示板「100点BBS」でほかの受験生と話してみるのもいいでしょう。
よくある質問
「春はあけぼの」の意味は何ですか?
「春は夜明けのころがいちばんよい」という意味です。あけぼのは、夜がほのぼのと明けはじめるころを指します。
枕草子の作者と成立はいつですか?
作者は清少納言で、平安時代中期の1000年ごろに成立したとされる随筆です。
日本三大随筆とは何ですか?
清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』、兼好法師の『徒然草』の3つです。
「つとめて」の意味は何ですか?
「早朝」という意味です。何かがあった次の朝を指す「翌朝」の意味もあります。
「山ぎは」と「山の端」の違いは何ですか?
「山ぎは」は山に接するあたりの空、「山の端」は空に接するあたりの山(稜線)を指します。
清少納言の百人一首の歌はどれですか?
62番「夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」です。
あわせて読みたい
- 古文文法辞典:係り結び
- 古文文法辞典:歴史的仮名遣い(やうやう→ようよう)
- 古文文法辞典:古文の品詞
- 古文文法辞典:古文文法辞典(表紙)
- 和歌の修辞法|枕詞・序詞・掛詞・縁語を百人一首の例で解説
- 百人一首62番 清少納言「夜をこめて」
- 二十四節気とは?一覧と読み方
- 中秋の名月と百人一首23番「月見れば」
- 徒然草188段
- 国語のまとめ
出典・参考
- 枕草子 第一段の本文は三巻本系の本文(ウィキソース「枕草子 (Wikisource)/第一段」と照合)。かなづかい・句読点は高校の教科書で一般的な形にそろえました
- 現代語訳は当サイトによるものです
- 百人一首62番の本文は当サイト「百人一首 全百首」による
- 二十四節気の日付は国立天文台 暦要項の近年の値の目安です(年により1日前後します)
- 「枕草子」の題名の由来、清少納言と清原深養父の続柄には諸説があります
最終更新:2026年10月14日/作成:大学受験合格大作戦




















