- 歌
- 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
- 意味
- 夜がほのぼのと明けるころ、宇治川に立ちこめていた川霧が、とぎれとぎれに晴れていき、その切れ間から、あちこちの浅瀬に立てられた網代木が、次々に姿を現してくることだ。
- 作者
- 権中納言定頼(藤原定頼)(ごんちゅうなごんさだより(ふじわらのさだより))
- 出典
- 『千載和歌集』冬・419番
- 決まり字
- 「あさぼらけう」(6字決まり)

朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
読みあさぼらけ うじのかわぎり たえだえに
あらわれわたる せぜのあじろぎ
歴史的仮名遣いあさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに
あらはれわたる せぜのあじろぎ
夜明けの宇治川に立ちこめた霧がとぎれとぎれに晴れていくと、川瀬のあちこちに網代木が姿を現していく——藤原定頼の、絵のような冬の朝の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 朝ぼらけ | あさぼらけ | 夜がほのぼのと明けるころ。 |
| 宇治の川霧 | うじのかわぎり | 宇治川(京都府)に立つ霧。 |
| たえだえに | たえだえに | とぎれとぎれに。 |
| あらはれわたる | あらわれわたる | 一面に次々と現れてくる。 |
| 瀬々の網代木 | せぜのあじろぎ | あちこちの浅瀬に立てた網代木。網代は、冬に魚(氷魚)をとるための仕掛けで、その杭を網代木といいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 朝ぼらけ | 名詞 | |
| 宇治 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 川霧 | 名詞 | |
| たえだえに | 形容動詞・ナリ活用「たえだえなり」連用形 | |
| あらはれわたる | 動詞・ラ行四段「あらはれわたる」連体形 | |
| 瀬々 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 網代木 | 名詞 | 体言止め |
表現技法・文法のポイント
「網代木」で終わり、霧の中から現れる景色を絵のように印象づけています。
自分の気持ちを述べず、目の前の景色だけを描いています。
霧が晴れていくにつれて景色が現れる、ゆっくりした時間の変化を描いています。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』冬の部に入っています。宇治は貴族の別荘地として知られ、冬の宇治川の網代は名物でした。夜明けの霧の中から少しずつ網代木が見えてくる、静かで美しい冬の朝を描いた歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
定頼は、小式部内侍(60番)に「お母さんへの手紙は届きましたか」とからかったところ、「大江山」の歌で見事に言い返されました。定頼は返歌もできず、袖を振りはらって逃げ出したと伝えられます。
定頼は美男子で、読経の声も美しかったといわれます。大弐三位(58番)や相模(65番)とも恋の歌を交わしていました。小式部内侍をからかったのも、もしかすると気になる相手だったからかもしれません。
作者:権中納言定頼(藤原定頼)
平安時代中期の公卿・歌人、藤原定頼(ふじわらのさだより)です。55番の藤原公任の子で、権中納言まで昇りました。書や音楽、読経にもすぐれた美男子でしたが、軽はずみなところもあり、小式部内侍(60番)をからかって「大江山」の歌でやりこめられた話は有名です。
決まり字と覚え方
上の句が「あさぼらけう」まで読まれたら、取り札が決まります。「あ」で始まる歌は16首あります。
覚え方:「あさぼらけう」と聞いたら「あらはれわたる」。31番も「あさぼらけ」で始まるので、6字目の「う」(宇治)と「あ」(有明)で分かれる6字決まりです。宇治(う)は現れる(あらはれ)、と覚えます。
入試で問われるポイント
- 叙景歌・体言止め
- 網代(古文常識)
- 31番との見分け(6字決まり)
- 作者と60番小式部内侍のエピソード
よくある質問
「網代木」とは何ですか?
冬に川で魚をとるための仕掛け(網代)に使う杭です。宇治川の冬の名物でした。
31番「朝ぼらけ」との見分け方は?
64番は「朝ぼらけ 宇治の川霧」、31番は「朝ぼらけ 有明の月と」です。6字目の「う」と「あ」で決まります。
藤原定頼はどんな人ですか?
55番の藤原公任の子です。60番の小式部内侍をからかって、「大江山」の歌で言い返されたことで有名です。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
