- 歌
- 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
- 意味
- 滝の流れ落ちる音は、絶えてから長い年月がたってしまったけれど、その(すばらしい滝だったという)評判だけは世に流れ伝わって、今もなお聞こえていることだ。
- 作者
- 大納言公任(藤原公任)(だいなごんきんとう(ふじわらのきんとう))
- 出典
- 『千載和歌集』雑上・1035番
- 決まり字
- 「たき」(2字決まり)

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
読みたきのおとは たえてひさしく なりぬれど
なこそながれて なおきこえけれ
歴史的仮名遣いたきのおとは たえてひさしく なりぬれど
なこそながれて なほきこえけれ
滝の水音が絶えてから長い年月がたったけれど、その名声だけは流れ伝わって、今も聞こえてくる——多才な文化人・藤原公任の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 滝の音 | たきのおと | 滝の流れ落ちる音。京都・嵯峨の大覚寺にあった滝です。 |
| 絶えて久しく | たえてひさしく | 絶えてから長い時間がたって。 |
| なりぬれど | なりぬれど | 「なってしまったけれど」。已然形+ど で逆接です。 |
| 名こそ流れて | なこそながれて | 「名声だけは流れ伝わって」。「流れ」は滝の縁語です。 |
| なほ聞こえけれ | なおきこえけれ | 「今も聞こえていることだ」。「こそ」を受けて「けれ」が已然形で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 滝 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 音 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 絶え | 動詞・ヤ行下二段「絶ゆ」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| 久しく | 形容詞・シク活用「久し」連用形 | |
| なり | 動詞・ラ行四段「なる」連用形 | |
| ぬれ | 助動詞「ぬ」已然形 | 完了 |
| ど | 接続助詞 | 逆接 |
| 名 | 名詞 | |
| こそ | 係助詞 | 強意 |
| 流れ | 動詞・ラ行下二段「流る」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| なほ | 副詞 | |
| 聞こえ | 動詞・ヤ行下二段「聞こゆ」連用形 | |
| けれ | 助動詞「けり」已然形 | 詠嘆(係り結び) |
表現技法・文法のポイント
「滝」「音」「絶え」「流れ」「聞こえ」は、滝に関係する言葉でつながっています。
「たき」「たえて」、「なりぬれど」「なこそ」「ながれて」「なほ」と、同じ音を重ねて調子をととのえています。
「こそ」を受けて「けれ」が已然形になっています。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』雑上に入っています。詞書によると、藤原道長らと京都・嵯峨の大覚寺を訪れたとき、古い滝の跡を見て詠んだ歌です。大覚寺はもと嵯峨天皇の離宮で、その庭の滝は、公任の時代にはすでに水が涸れていました。この歌によって、滝の跡は「名古曽(なこそ)の滝」と呼ばれるようになったと伝えられます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
藤原道長が大堰川で、漢詩の舟・和歌の舟・音楽の舟の三つを用意したとき、公任はどの舟に乗ってもすぐれていたので「三船の才」とたたえられました。公任は和歌の舟に乗って見事な歌を詠みましたが、「漢詩の舟に乗ればもっと名声が上がったのに」と悔しがったそうです。
『紫式部日記』には、宴会の席で公任が「このあたりに若紫はいませんか」と紫式部に声をかけた、という場面があります。これは『源氏物語』が当時すでに評判になっていた証拠ともいわれます。
作者:大納言公任(藤原公任)
平安時代中期の公卿・歌人、藤原公任(ふじわらのきんとう)です。関白・藤原頼忠の子で、和歌・漢詩・音楽のすべてにすぐれた当代一の文化人でした。『和漢朗詠集』を編集し、三十六歌仙を選んだ『三十六人撰』の撰者としても知られます。中古三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「たき」まで読まれたら、取り札が決まります。「た」で始まる歌は6首あります。
覚え方:「たき」と聞いたら「なこそながれて」。滝(たき)の名こそ(なこそ)流れて、と覚えます。「た」で始まる歌は6首あるので、2字目の「き」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 縁語(滝の縁語)
- 係り結び(こそ→けれ)
- 已然形+ど(逆接)
- 公任の業績(和漢朗詠集・三十六歌仙)
よくある質問
この滝はどこにありましたか?
京都市右京区の大覚寺です。今も滝の跡が「名古曽の滝」として残っています。
「名こそ流れて」の「名」とは何ですか?
評判、名声のことです。滝はなくなっても、その名声は伝わっているということです。
藤原公任はどんな人ですか?
和歌・漢詩・音楽にすぐれた文化人で、『和漢朗詠集』の編者、三十六歌仙を選んだ人として知られます。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
