- 歌
- 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
- 意味
- 小倉山の峰の紅葉よ、もしお前に心があるのなら、もう一度(天皇の)お出かけがあるまで、散らずに待っていてほしい。
- 作者
- 貞信公(藤原忠平)(ていしんこう(ふじわらのただひら))
- 出典
- 『拾遺和歌集』雑秋・1128番
- 決まり字
- 「をぐ」(2字決まり)

小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ
読みおぐらやま みねのもみじば こころあらば
いまひとたびの みゆきまたなん
歴史的仮名遣いをぐらやま みねのもみぢば こゝろあらば
いまひとたびの みゆきまたなむ
小倉山の峰の紅葉よ、もし心があるなら、もう一度天皇がお越しになるまで散らずに待っていてくれ——百人一首ゆかりの小倉山を詠んだ貞信公の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 小倉山 | おぐらやま | 京都・嵯峨野にある紅葉の名所。藤原定家が百人一首を選んだ山荘があったとされる山です。 |
| もみぢ葉 | もみじば | 紅葉した葉。 |
| 心あらば | こころあらば | 「心があるならば」。紅葉に人のような心があるとして呼びかけています(擬人法)。 |
| みゆき | みゆき | 天皇や上皇のお出かけ。上皇の場合は「御幸」、天皇の場合は「行幸」と書きます。 |
| 待たなむ | またなん | 「待っていてほしい」。「なむ」は未然形に付いて、他にあつらえ望む願望の終助詞です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 小倉山 | 名詞 | |
| 峰 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| もみぢ葉 | 名詞 | 呼びかけ |
| 心 | 名詞 | |
| あら | 動詞・ラ変「あり」未然形 | |
| ば | 接続助詞 | 仮定条件 |
| 今 | 副詞 | もう |
| ひとたび | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| みゆき | 名詞 | |
| 待た | 動詞・タ行四段「待つ」未然形 | |
| なむ | 終助詞 | 他への願望(あつらえ) |
表現技法・文法のポイント
紅葉に心があるものとして語りかけています。
未然形「待た」に付く「なむ」は願望の終助詞(〜してほしい)。連用形に付く「なむ」(完了+推量)や係助詞の「なむ」との区別は入試の定番です。
歌の背景・鑑賞
『拾遺和歌集』に入っています。詞書によると、宇多上皇が大堰川(京都・嵐山)に遊びに来て、あまりの美しさに「息子の醍醐天皇にも見せたい」と言ったので、お供の忠平が「この景色を天皇にお伝えしましょう」と詠んだ歌です。この歌がきっかけで、天皇が大堰川へ出かける行事が続くようになったと伝えられています。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
宇多上皇が「息子の醍醐天皇にもこの景色を見せたい」と言ったのを受けて詠んだ歌です。父から子へ、美しい景色を伝えたいという思いを、紅葉に託して届けた歌といえます。
小倉山は、藤原定家が百人一首を選んだとされる山荘があった場所です。「小倉百人一首」の名前もここから来ています。定家は、自分の山荘のある山を詠んだこの歌を、特別な気持ちで選んだのかもしれません。
作者:貞信公(藤原忠平)
平安時代前期から中期の公卿、藤原忠平(ふじわらのただひら)です。藤原基経の子で、兄・時平が早くに亡くなったあと政治の中心に立ち、のちに摂政・関白を務めました。「貞信公(ていしんこう)」は、亡くなったあとに贈られた名前(諡)です。
決まり字と覚え方
上の句が「をぐ」まで読まれたら、取り札が決まります。「お」で始まる歌は7首あります。
覚え方:「をぐ」と聞いたら「いまひとたびのみ」。小倉(をぐら)でもう一度(いまひとたび)、と覚えます。「を」で始まる歌はこの1首ですが、読みは「お」なので、「お」で始まる歌と合わせて「をぐ」の2字で決まります。取り札は56番「いまひとたびのあ」と最後の1字で見分けます。
入試で問われるポイント
- 「なむ」の識別(未然形+なむ=願望)
- 「みゆき」(行幸・御幸)
- 擬人法
- 小倉山と百人一首の関係
よくある質問
小倉山はどこにありますか?
京都市右京区の嵯峨野にある山で、紅葉の名所です。藤原定家がこの山のふもとの山荘で百人一首を選んだとされます。
「待たなむ」の「なむ」は何ですか?
未然形に付いているので、願望の終助詞で「待っていてほしい」という意味です。
「みゆき」とは何ですか?
天皇や上皇のお出かけのことです。天皇は「行幸」、上皇は「御幸」と書き分けます。
あわせて読みたい
- 24番「このたびは」(菅家・旅)
- 56番「あらざらむ」(和泉式部・恋)
- 97番「来ぬ人を」(権中納言定家・恋)
- 69番「嵐吹く」(能因法師・秋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
