- 歌
- 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
- 意味
- 夜が明けてしまえば、また日が暮れて(あなたに会える夜が来る)ものだとは知っているけれど、それでもやはり、あなたと別れなければならない夜明けは恨めしいことだなあ。
- 作者
- 藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)
- 出典
- 『後拾遺和歌集』恋二・672番
- 決まり字
- 「あけ」(2字決まり)

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな
読みあけぬれば くるるものとは しりながら
なおうらめしき あさぼらけかな
歴史的仮名遣いあけぬれば くるるものとは しりながら
なほうらめしき あさぼらけかな
夜が明ければ、また日が暮れてあなたに会えるとわかってはいても、やはり別れの夜明けは恨めしい——23歳で亡くなった藤原道信の後朝の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 明けぬれば | あけぬれば | 「夜が明けてしまうと」。已然形+ば です。 |
| 暮るるものとは | くるるものとは | 「(また)日が暮れるものだとは」。 |
| 知りながら | しりながら | 「知っているけれど」。「ながら」は逆接です。 |
| なほ | なお | それでもやはり。 |
| 朝ぼらけ | あさぼらけ | 夜がほのぼのと明けるころ。恋人と別れる時間です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 明け | 動詞・カ行下二段「明く」連用形 | |
| ぬれ | 助動詞「ぬ」已然形 | 完了 |
| ば | 接続助詞 | 確定条件 |
| 暮るる | 動詞・ラ行下二段「暮る」連体形 | |
| もの | 名詞 | |
| と | 格助詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 知り | 動詞・ラ行四段「知る」連用形 | |
| ながら | 接続助詞 | 逆接 |
| なほ | 副詞 | やはり |
| 恨めしき | 形容詞・シク活用「恨めし」連体形 | |
| 朝ぼらけ | 名詞 | |
| かな | 終助詞 | 詠嘆 |
表現技法・文法のポイント
「知りながら」は「知っているけれど」。頭ではわかっていても心がついていかない気持ちです。
恋人の家から帰った朝に贈る歌です。
「朝ぼらけかな」で、別れの時間への思いを余韻として残しています。
歌の背景・鑑賞
『後拾遺和歌集』恋二に入っています。詞書によると、女性のもとから、雪の降った朝に帰って贈った歌です。「夜になればまた会える」と頭ではわかっていても、別れの朝はやっぱりつらい――若い恋人の素直な気持ちが伝わってきます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
道信は和歌にすぐれ、奥ゆかしい性格だったと伝えられますが、23歳の若さで病気で亡くなりました。親友の藤原公任(55番)や藤原実方(51番)は、その死を深く悲しんだといわれます。
道信が恋文を贈った女性が、別の男性(藤原実資)と結婚してしまったとき、悲しみの歌を詠んだという話が『大鏡』に残っています。恋に一途な青年だったのかもしれません。
作者:藤原道信朝臣
平安時代中期の貴族・歌人、藤原道信(ふじわらのみちのぶ)です。太政大臣・藤原為光の子で、摂政・藤原兼家の養子になりました。和歌にすぐれ、藤原公任(55番)や藤原実方(51番)と親しく交わりましたが、23歳の若さで亡くなりました。中古三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「あけ」まで読まれたら、取り札が決まります。「あ」で始まる歌は16首あります。
覚え方:「あけ」と聞いたら「なほうらめしき」。明け(あけ)方はなほ恨めしい、と覚えます。「あ」で始まる歌は16首と多いので、2字目の「け」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 後朝の歌(古文常識)
- 逆接の「ながら」
- 已然形+ば(確定条件)
よくある質問
なぜ夜明けが恨めしいのですか?
平安時代、男性は夜明け前に恋人の家を去らなければならなかったので、夜明けは別れの時間だったからです。
「知りながら」の「ながら」の意味は?
「〜けれども」という逆接の意味です。
藤原道信はどんな人ですか?
和歌にすぐれた貴公子で、藤原公任や藤原実方と親しかった歌人です。23歳で亡くなりました。
あわせて読みたい
- 50番「君がため」(藤原義孝・恋)
- 30番「有明の」(壬生忠岑・恋)
- 51番「かくとだに」(藤原実方朝臣・恋)
- 55番「滝の音は」(大納言公任・雑)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
