【百人一首53番】嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は|意味・現代語訳・品詞分解(右大将道綱母)

【百人一首53番】嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は|意味・現代語訳・品詞分解(右大将道綱母)
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この歌の要点
歌
嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
意味
(あなたが来ないのを)嘆きながら、ひとりで寝る夜が明けるまでの時間が、どんなに長いものか、あなたはご存じでしょうか。(いいえ、ご存じないでしょう。)
作者
右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)
出典
『拾遺和歌集』恋四・912番
決まり字
「なげき」(3字決まり)
百人一首53番 右大将道綱母の絵札
右大将道綱母(江戸時代のかるた)

嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は

いかに久しき ものとかは知る

読みなげきつつ ひとりぬるよの あくるまは
いかにひさしき ものとかはしる

歴史的仮名遣いなげきつつ ひとりぬるよの あくるまは
いかにひさしき ものとかはしる

あなたが来ないのを嘆きながら、ひとりで寝る夜が明けるまでの時間が、どんなに長いものか、あなたはご存じでしょうか——『蜻蛉日記』の作者・道綱母の歌です。

現代語訳(意味)

(あなたが来ないのを)嘆きながら、ひとりで寝る夜が明けるまでの時間が、どんなに長いものか、あなたはご存じでしょうか。(いいえ、ご存じないでしょう。)

語句の意味

語句読み意味・ポイント
嘆きつつなげきつつ嘆きながら。「つつ」は反復・継続です。
ひとり寝る夜ひとりぬるよ夫が来ず、ひとりで寝る夜。
明くる間あくるま夜が明けるまでの時間。
いかに久しきいかにひさしきどんなに長い。
ものとかは知るものとかはしる「ものだと知っているでしょうか、いや知らないでしょう」。「かは」は反語です。

品詞分解

歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。

単語品詞・活用意味・用法
嘆き動詞・カ行四段「嘆く」連用形
つつ接続助詞反復・継続
ひとり名詞
寝る動詞・ナ行下二段「寝」連体形
夜名詞
の格助詞主格
明くる動詞・カ行下二段「明く」連体形
間名詞
は係助詞
いかに副詞どんなに
久しき形容詞・シク活用「久し」連体形
もの名詞
と格助詞
か係助詞反語
は係助詞
知る動詞・ラ行四段「知る」連体形係り結び

表現技法・文法のポイント

反語

「かは〜知る」で「知っているでしょうか、いや知らないでしょう」と、相手を強く責めています。

係り結び

「か」を受けて「知る」が連体形になっています。

歌の背景・鑑賞

『拾遺和歌集』恋四に入っています。夫の藤原兼家が別の女性のもとへ通うようになり、ある夜、兼家が訪ねてきたのに、作者は門を開けませんでした。翌朝、兼家に贈ったのがこの歌です。『蜻蛉日記』には、色あせた菊の花に添えて贈ったと書かれています。

諸説・伝説――想像をふくらませてみよう

昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。

門を開けなかった夜

夫の兼家が訪ねてきても、作者はわざと門を開けませんでした。兼家はあきらめて別の女性のところへ行ってしまいます。プライドと寂しさの間で揺れる気持ちが、『蜻蛉日記』には生々しく描かれています。

本朝三美人?

道綱母は、たいへんな美人だったといわれ、「本朝三美人」の一人に数えられることもあります。それでも、夫の心をつなぎとめることはできなかったのです。

兼家の返事

この歌を受け取った兼家は、「冬の夜の戸を開けてもらえるまで待つのも、つらいものだよ」という意味の歌を返したと伝えられています。夫婦のすれ違いが、歌のやりとりから見えてきます。

作者:右大将道綱母

平安時代中期の女性歌人で、『蜻蛉日記(かげろうにっき)』の作者です。藤原倫寧の娘で、のちに摂政となる藤原兼家の妻の一人となり、藤原道綱を産みました。名前は伝わっておらず、「右大将道綱の母」と呼ばれています。夫との苦しい結婚生活を書いた『蜻蛉日記』は、女性による日記文学の先がけとされます。

決まり字と覚え方

百人一首53番の取り札(下の句)
取り札
なげき3字決まり

上の句が「なげき」まで読まれたら、取り札が決まります。「な」で始まる歌は8首あります。

覚え方:「なげき」と聞いたら「いかにひさしき」。嘆き(なげき)の夜はいかに(いかに)長い、と覚えます。86番「なげけ」と3字目で分かれます。

入試で問われるポイント

  • 反語(かは)
  • 係り結び(か→知る)
  • 『蜻蛉日記』の作者(文学史)
  • 一夫多妻の結婚形態(古文常識)

よくある質問

「ものとかは知る」はどういう意味ですか?

「ものだとご存じでしょうか、いいえご存じないでしょう」という反語の表現です。

道綱母はどんな作品を書きましたか?

夫・藤原兼家との結婚生活を書いた『蜻蛉日記』を書きました。

86番「なげけ」との見分け方は?

53番は「嘆きつつ」、86番は「嘆けとて」です。3字目の「き」と「け」で決まります。

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画像:絵札「Hyakuninisshu 053」(パブリックドメイン)、取り札「Torifuda 053」(Cookai1205・CC0)/いずれも Wikimedia Commons。歌の本文・出典は『拾遺和歌集』ほか複数の資料で確認しています。
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04