
定番 教科書によく出る定番の段 類聚章段
枕草子の「うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔」から始まる段(「うつくしきもの」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。
解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)
この段を30秒で(あらすじと要点)
- あらすじ:清少納言が「かわいらしいもの」を次々に挙げる類聚章段。瓜に描いた子どもの顔、雀の子、塵をつまんで見せる幼児、殿上童、ひよこなどを挙げ、「何も何も、小さきものはみなうつくし」とまとめる。
- 文法の要点:存続の「たり・り」(おほへる)、打消「ず」の連体形「ぬ」、受身の「らる」、連体形の準体法(見せたる、いとうつくし)、ウ音便(いみじう・白う)。
- テストの定番:教科書によく出る段。「うつくし」=かわいらしい、「らうたし」=いじらしくかわいい、「あからさまなり」=ちょっと、主題は「小さきものはみなうつくし」。



この段で覚える文法(テストに出る順)
- 古今異義語うつくし=かわいらしい(今の「美しい」ではない)
- らうたし=いじらしくかわいい、あからさまなり=ちょっと
- 存続のたり・り(見たる・おほへる)
- 打消「ず」の連体形ぬと、受身のらる
- 主題:何も何も、小さきものはみなうつくし
「うつくしきもの」はどんな段?(類聚章段・清少納言の目)
「うつくしきもの」は、枕草子の類聚章段(「〜もの」と題を出して、当てはまるものを集める段)の代表です。作者の清少納言は、一条天皇の中宮定子に仕えた女房でした。
この段で挙げられるのは、幼い子どもや鳥のひななど、小さくて、一生けんめいで、少し危なっかしいものばかりです。塵を見つけて大人に見せる幼児、ぶかぶかの着物の子、大人びた漢文を幼い声で読む男の子…。作者は、そうした一瞬のしぐさを細かく見て、「何も何も、小さきものはみなうつくし」とまとめます。今の「かわいい」という感覚に近く、千年前の人と気持ちが通じ合う段として、教科書によく採られています。
※段の番号は本によってちがい、三巻本では第百四十五段(または第百五十一段)などとされます。
本文と現代語訳・文法(1文ずつ)
色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)
1
うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔。
現代語訳かわいらしいもの。瓜に描いた幼い子どもの顔。
- 「うつくし」は今の「美しい」ではなく「かわいらしい」。小さいもの・幼いものを見て「かわいい」と思う気持ち。→古今異義語の一覧(うつくし・ありがたし・すさまじ)
- 「ちご(稚児)」は乳飲み子から幼児くらいの小さな子ども。瓜の表面に顔を描いて遊んだもの。
- 類聚章段は、最初に「〜もの」と題を出し、あとはそれに当てはまるものを並べていく形。


2
雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。
現代語訳雀のひなが、(人が)ねずみの鳴きまねをして(チュッチュッと呼ぶ)と、ぴょんぴょんはねて来る(のがかわいい)。
- 「ねず鳴き」は、口をすぼめてチュッチュッとねずみのような音を出し、小鳥などを呼ぶこと。
- 「をどる」は「はねる・飛びはねる」。雀の子が小さく跳ねて寄って来るようす。歴史的仮名遣いで「おどる」と読む。
3
二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひ来る道に、いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。
現代語訳二、三歳くらいである幼い子が、急いではって来る途中に、とても小さなごみがあったのを目ざとく見つけて、とてもかわいらしい指でつまんで、大人などに見せているのは、とてもかわいらしい。
- 「見せたる、いとうつくし」の「たる」は連体形で、下に「こと(の)」をおぎなって「見せたのは」と訳す(連体形の準体法)。→完了・存続の助動詞「たり・り」
- 「ありける」の「けり」は過去(〜た)。→過去の助動詞「き・けり」の違い
- 「をかしげなり」は「かわいらしい様子だ」。「をかし」の仲間の語。


4
頭は尼そぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。
現代語訳髪型が尼そぎ(肩のあたりで切りそろえた髪)である幼い子が、目に髪がかぶさっているのを手でかきのけないで、首をちょっとかしげて物などを見ているのも、かわいらしい。
- 「おほへる」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形(〜ている)。「り」はサ変の未然形・四段の已然形(e の音)につく。→「り」の接続(サ未四已)
- 「はやらで」の「で」は打消の接続助詞(〜ないで)。→接続助詞の一覧(ば・ど・で・つつ)
- 「尼そぎ」は尼さんのように肩のあたりで切りそろえた、子どもの髪型。


5
大きにはあらぬ殿上童の、装束きたてられてありくもうつくし。
現代語訳それほど大きくはない殿上童が、立派な衣装を着せられて歩きまわっているのも、かわいらしい。
- 「あらぬ」の「ぬ」は下に名詞(殿上童)があるので打消「ず」の連体形。完了の「ぬ」とまちがえない。→「ぬ」の識別(完了と打消)
- 「装束きたてられ」の「られ」は受身(〜される)。子どもが大人に着せられている。→助動詞「る・らる」の4つの意味
- 「殿上童」は、礼儀見習いのため宮中の清涼殿に上がることを許された貴族の男の子。「ありく」は「歩きまわる」。
6
をかしげなるちごの、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。
現代語訳かわいらしい幼い子を、ちょっと抱いて遊ばせかわいがっているうちに、(その子が)しがみついて寝てしまったのは、とてもいじらしくかわいい。
- 「あからさまに」も古今異義語。今は「はっきり・露骨に」だが、古文では「ちょっと・かりそめに」。
- 「らうたし」は「(守ってあげたいほど)かわいい・いじらしい」。「うつくし」とほぼ同じ意味の大事な語。
- 「うつくしむ」は「かわいがる」。「かいつく」は「かきつく」のイ音便で「しがみつく」。

7
雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを、池より取り上げたる。葵のいと小さき。何も何も、小さきものはみなうつくし。
現代語訳ひな人形の道具。蓮の浮き葉のとても小さいのを、池から取り上げたもの。葵のとても小さいもの。何もかも、小さいものはみんなかわいらしい。
- 「何も何も、小さきものはみなうつくし」がこの段のまとめ(主題)。清少納言は「小さいこと」そのものに「かわいらしさ」を見つけている。
- 「雛の調度」は、ひな遊び(人形遊び)に使う小さな家具や道具。
- 「小さき」のように形容詞の連体形だけで「小さいもの」という名詞のはたらきをする。

8
いみじう白く肥えたるちごの二つばかりなるが、二藍の薄物など、衣長にてたすき結ひたるがはひ出でたるも、また、短きが袖がちなる着てありくも、みなうつくし。
現代語訳たいそう色白で太った幼い子で二歳くらいであるのが、二藍の薄い着物などを、着丈が長いのでたすきで結んでいるのが、はい出してきたのも、また、短い着物で袖ばかりが目立つのを着て歩きまわるのも、みんなかわいらしい。
- 「いみじう」は「いみじく」のウ音便。「いみじ」は良くも悪くも程度がはなはだしいこと(ここは「たいそう」)。→古文の音便(イ音便・ウ音便)
- 「二藍」は藍と紅花で染めた青むらさき色。「薄物」は夏用のうすい絹の着物。
- 「袖がちなり」は「袖ばかりが目立つ」。体に対して袖が大きく見える、ぶかぶかの着物。
9
八つ、九つ、十ばかりなどの男児の、声は幼げにて文読みたる、いとうつくし。
現代語訳八歳、九歳、十歳くらいなどの男の子が、声は子どもっぽい様子で漢籍(漢文の書物)を読んでいるのは、とてもかわいらしい。
- 「文」はここでは漢籍(漢文の本)。貴族の男の子は小さいうちから漢文を習った。
- 幼い声で難しい漢文を一生けんめい読む「ちぐはぐさ」に、作者はかわいらしさを感じている。


10
鶏の雛の、足高に、白うをかしげに、衣短かなるさまして、ひよひよとかしがましう鳴きて、人の後先に立ちてありくもをかし。また親の、ともに連れて立ちて走るも、みなうつくし。かりのこ。瑠璃の壺。
現代語訳にわとりのひなが、足が長く、白くかわいらしい様子で、着物のすそが短いような姿をして、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後ろや前に立って歩きまわるのもおもしろい。また、親鳥といっしょに連れ立って走るのも、みんなかわいらしい。鴨などの卵。瑠璃(ガラス)の壺。
- 「をかし」は「趣がある・おもしろい・かわいらしい」。明るく知的にほめる言葉で、枕草子を代表する語。→古今異義語(をかし・あはれ・うつくし)
- 「白う」「かしがましう」はウ音便。「かしがまし」は「やかましい」。
- 「衣短かなるさま」は、ひよこのふわふわの羽が、すその短い着物を着ているように見えるというたとえ。「かりのこ」は鴨などの卵、「瑠璃」はガラスや青い宝石。


古今異義語を図で確かめる(うつくし・あからさまなり・をかし)

重要な古語(単語帳)
| 古語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| うつくし | うつくし | かわいらしい |
| らうたし | ろうたし | (守ってあげたいほど)かわいい・いじらしい |
| をかし | おかし | 趣がある・おもしろい・かわいらしい |
| ちご | ちご | 幼い子ども・乳児 |
| ねず鳴き | ねずなき | ねずみの鳴きまねをして小鳥などを呼ぶこと |
| をどる | おどる | はねる・飛びはねる |
| 目ざとし | めざとし | 見つけるのが早い |
| ありく | ありく | 歩きまわる |
| あからさまなり | あからさまなり | ちょっと・かりそめに |
| うつくしむ | うつくしむ | かわいがる |
| 調度 | ちょうど | 身の回りの道具・家具 |
| いみじ | いみじ | たいそう・はなはだしい |
| かしがまし | かしがまし | やかましい・うるさい |
| 文 | ふみ | 書物(ここでは漢籍)・手紙 |
テストに出る問題(答えは押すと開く)
問1 「うつくしきもの」の「うつくし」の意味は?
「かわいらしい」。今の「美しい」とはちがう古今異義語。
問2 この段の主題を、本文中の一文で答えなさい。
「何も何も、小さきものはみなうつくし。」
問3 「大人などに見せたる、いとうつくし」の「見せたる」はどう訳す?
「見せているのは」「見せたのは」。連体形「たる」の下に「の・こと」をおぎなう(準体法)。
問4 「目に髪のおほへるを」の「る」の文法的な説明は?
存続の助動詞「り」の連体形。四段動詞「おほふ」の已然形「おほへ」についている。
問5 「大きにはあらぬ殿上童」の「ぬ」は完了か打消か。理由も答えなさい。
打消「ず」の連体形。下に名詞「殿上童」が続いているから(完了「ぬ」の連体形は「ぬる」)。
問6 「あからさまに抱きて」の「あからさまに」の意味は?
「ちょっと・かりそめに」。今の「はっきり・露骨に」とはちがう。
問7 「らうたし」の意味を答えなさい。
「(守ってあげたいほど)かわいい・いじらしい」。

枕草子「うつくしきもの」原文(全文・通し)
1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。
うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔。
雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。
二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひ来る道に、いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。
頭は尼そぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。
大きにはあらぬ殿上童の、装束きたてられてありくもうつくし。
をかしげなるちごの、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。
雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを、池より取り上げたる。葵のいと小さき。何も何も、小さきものはみなうつくし。
いみじう白く肥えたるちごの二つばかりなるが、二藍の薄物など、衣長にてたすき結ひたるがはひ出でたるも、また、短きが袖がちなる着てありくも、みなうつくし。
八つ、九つ、十ばかりなどの男児の、声は幼げにて文読みたる、いとうつくし。
鶏の雛の、足高に、白うをかしげに、衣短かなるさまして、ひよひよとかしがましう鳴きて、人の後先に立ちてありくもをかし。また親の、ともに連れて立ちて走るも、みなうつくし。かりのこ。瑠璃の壺。
枕草子「うつくしきもの」現代語訳(全文・通し)
かわいらしいもの。瓜に描いた幼い子どもの顔。
雀のひなが、(人が)ねずみの鳴きまねをして(チュッチュッと呼ぶ)と、ぴょんぴょんはねて来る(のがかわいい)。
二、三歳くらいである幼い子が、急いではって来る途中に、とても小さなごみがあったのを目ざとく見つけて、とてもかわいらしい指でつまんで、大人などに見せているのは、とてもかわいらしい。
髪型が尼そぎ(肩のあたりで切りそろえた髪)である幼い子が、目に髪がかぶさっているのを手でかきのけないで、首をちょっとかしげて物などを見ているのも、かわいらしい。
それほど大きくはない殿上童が、立派な衣装を着せられて歩きまわっているのも、かわいらしい。
かわいらしい幼い子を、ちょっと抱いて遊ばせかわいがっているうちに、(その子が)しがみついて寝てしまったのは、とてもいじらしくかわいい。
ひな人形の道具。蓮の浮き葉のとても小さいのを、池から取り上げたもの。葵のとても小さいもの。何もかも、小さいものはみんなかわいらしい。
たいそう色白で太った幼い子で二歳くらいであるのが、二藍の薄い着物などを、着丈が長いのでたすきで結んでいるのが、はい出してきたのも、また、短い着物で袖ばかりが目立つのを着て歩きまわるのも、みんなかわいらしい。
八歳、九歳、十歳くらいなどの男の子が、声は子どもっぽい様子で漢籍(漢文の書物)を読んでいるのは、とてもかわいらしい。
にわとりのひなが、足が長く、白くかわいらしい様子で、着物のすそが短いような姿をして、ぴよぴよとやかましく鳴いて、人の後ろや前に立って歩きまわるのもおもしろい。また、親鳥といっしょに連れ立って走るのも、みんなかわいらしい。鴨などの卵。瑠璃(ガラス)の壺。
枕草子「うつくしきもの」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)
よくある質問(枕草子の基本)
枕草子の作者は誰?
清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。
枕草子はいつの作品?
平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。
枕草子の冒頭(書き出し)は?
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。
枕草子はどんな作品?
日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。
枕草子の目次(教科書に出る段)
枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。
- 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
- うつくしきもの(このページ) 定番
- 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「木の花は」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「雪のいと高う降りたるを」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
- 枕草子「ころは」の原文・現代語訳
- 枕草子「鳥は」の原文・現代語訳
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- 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
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本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。


