枕草子「鳥は」原文と現代語訳・文法|鳥は、異所のものなれど、鸚鵡いとあはれなり(鶯への不満・ほととぎす・らむ)

ミスターT先生

類聚章段

枕草子の「鳥は、異所のものなれど、鸚鵡いとあはれなり」で始まる段(「鳥は」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。鳥の名前の読みと今の名前も説明します。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • あらすじ:作者が心ひかれる鳥を挙げる。人のまねをする鸚鵡、仲間を恋しがる山鳥、声が天まで届く鶴、仲のよい鴛鴦などを語ったあと、鶯が宮中で鳴かず、夏・秋まで老い声で鳴くことに不満を述べる。最後はほととぎすを最高の鳥としてたたえ、夜鳴くものでは赤ん坊だけがそうでもないと笑わせる。
  • 文法の要点:現在推量・婉曲のらむ、係り結び(ぞ…わろき/こそ…め/やは…する/や…む)、反実仮想(ならましかば…まし)、強意のぬ(ぬべき)、自発のる(待たれて)、謙譲語さぶらふ・まかづ。
  • テストの定番:「九重」=宮中、「なつかし」=親しみがもてる、「言ふもおろかなり」=言葉では言いつくせない、鶯への不満の2点。
サクラちゃん
サクラちゃん
T先生、「鳥は」って、鳥の名前がいっぱい出てきて、漢字が読めません…。「鴛鴦」ってなんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「をし」、今のオシドリや。この段は鳥の名前の読みがまず勝負やな。それと、清少納言が鶯に文句を言いまくるところがおもしろいで。
合格先生
合格先生
この段は「らむ」がたくさん出てくるので、T先生には「らむ探し」をやらされました。見つけた数を競うんです。

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. 現在推量・婉曲のらむ(まねぶらむ・慰むらむ)
  2. 係り結び:ぞ…わろき/こそ…め/やは…する/や…む
  3. 反実仮想:ならましかば…まし
  4. 強意のぬ(ぬべき)、自発のる(待たれて)
  5. 敬語:さぶらふ・まかづ(謙譲語)

「鳥は」はどんな段?(類聚章段・鶯とほととぎす)

「鳥は」は、ものを集めて挙げる類聚章段の一つで、作者が心ひかれる鳥を順に語ります。外国の鳥の鸚鵡から始まり、山鳥・鶴・鷺・鴛鴦・千鳥など、和歌や漢詩、言い伝えで知られた鳥が出てきます。

いちばん長いのは鶯の部分です。漢詩や和歌でもてはやされる鳥なのに、作者が宮仕えをした宮中ではまったく鳴かず、夏や秋まで老いた声で鳴き続ける――と、期待が大きいぶん不満をぶつけます。ここには作者自身の宮仕えの体験(「十年ばかりさぶらひて」)も出てきます。最後はほととぎすを「言ふべき方なし」とたたえ、夜泣きする赤ん坊で笑いをとって終わります。

1. 鸚鵡 人のことばをまねる 2. 山鳥・鶴 友を恋う山鳥天に届く鶴の声 3. 鷺・鴛鴦 ひとりは寝じ霜を払い合う 4. 鶯への不満 宮中で鳴かない老い声で鳴く 5. 鶯のまね 賀茂祭の帰りほととぎすと合唱 6. ほととぎす 言いようもなくすばらしい
図1 枕草子「鳥は」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

鳥は、異所のものなれど、鸚鵡いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。

現代語訳鳥は、外国のものではあるけれど、おうむがとても心ひかれる。人の言うようなことをまねするというのだよ。

  • 「異所のもの」は「よその国(外国)のもの」。鸚鵡(おうむ)は日本にいない鳥で、めずらしい外国の鳥として知られていた。
  • 「あはれなり」はしみじみと心ひかれること。→古今異義語の一覧(あはれ・をかし)
  • 「らむ」は目の前にないことを想像する現在推量。下に名詞がある「言ふらむこと」は婉曲(〜ような)。→現在推量の助動詞「らむ」
  • 「まねぶ」は「まねをする」。「学ぶ」と同じ語源の言葉。
うかるくん
うかるくん
「らむ」が2つ並んでますけど、同じ意味ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
下に名詞「こと」がある「言ふらむ」は婉曲、文の終わりの「まねぶらむ」は現在推量。「む」と同じで、下に名詞があるかで見分けるんや。

2

ほととぎす。水鶏。しぎ。都鳥。ひは。ひたき。

現代語訳ほととぎす(がよい)。くいな。しぎ。都鳥。ひわ。ひたき。

  • 水鶏(くいな)は水辺にすむ鳥で、その鳴き声は戸をたたく音にたとえられた。ひは(ひわ)・ひたきは小鳥のなかま。
  • 都鳥(みやこどり)は今のユリカモメと考えられている。『伊勢物語』の東下りの「名にし負はばいざこと問はむ都鳥」の歌で有名。

3

山鳥、友を恋ひて、鏡を見すれば慰むらむ、心若う、いとあはれなり。谷隔てたるほどなど、心苦し。

現代語訳山鳥は、仲間を恋しがって(鳴くが)、鏡を見せると(映った自分を仲間だと思って)気持ちがなぐさむというのが、幼くて、とてもいじらしい。(夜、雌と雄が)谷をへだてて(寝て)いる時などは、かわいそうだ。

  • 山鳥(やまどり)はキジのなかまで、尾が長い鳥。雌と雄が夜は谷をへだてて別々に寝ると言い伝えられた。百人一首の「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」(柿本人麻呂)の歌でも知られる。
  • 「心若う」は「心若く」のウ音便で「幼い・すなお」。「心苦し」は「かわいそうだ・気の毒だ」。
サクラちゃん
サクラちゃん
山鳥に鏡を見せると、なぐさめになるんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
鏡に映った自分を仲間やと思う、という言い伝えやな。作者はそれを「心若う」、すなおでいじらしいと感じてる。

4

鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴く声の雲居まで聞こゆる、いとめでたし。

現代語訳鶴は、とても大げさな姿をしているけれど、鳴く声が空の上まで聞こえるというのが、とてもすばらしい。

  • 「こちたし」は「大げさだ・ぎょうぎょうしい」。「雲居」(くもい)は空・雲のある高い所。
  • 鶴の声が天まで届くという言い方は、中国の古い詩集『詩経』の「鶴鳴于九皐、声聞于天」(鶴が奥深い沢で鳴くと、その声は天に聞こえる)をふまえるとされる。
  • 「めでたし」は「すばらしい」。→古今異義語の一覧(めでたし・こちたし)

5

頭赤き雀。斑鳩の雄鳥。巧鳥。

現代語訳頭の赤い雀。いかるがの雄鳥。たくみ鳥。

  • 斑鳩(いかるが)は今のイカルという鳥。巧鳥(たくみどり)は巣を上手に作る小鳥で、ミソサザイのこととされる。「頭赤き雀」がどの鳥かは、はっきりしない。

6

鷺は、いと見目も見苦し。眼居なども、うたてよろづになつかしからねど、ゆるぎの森にひとりは寝じとあらそふらむ、をかし。

現代語訳鷺は、とても見た目もみっともない。目つきなども、いやな感じで何もかも親しみがわかないけれど、「ゆるぎの森でひとりでは寝まい」と(相手を)取り合うというのは、おもしろい。

  • 「寝じ」の「じ」は打消意志(〜まい)。「おぼろけならじ」のような打消推量(〜ないだろう)と、主語で見分ける。→打消推量・打消意志の「じ」と「まじ」
  • 「ゆるぎの森」は近江国(今の滋賀県)にあった森で、「鷺もひとりでは寝まいと争う」という内容の古い和歌で知られた。
  • 「なつかし」は今の「昔がなつかしい」ではなく「親しみがもてる・心ひかれる」。「眼居」(まなこい)は目つき。
うかるくん
うかるくん
「寝じ」の「じ」と、「さしもあらじ」の「じ」は同じですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
主語で見分けるんや。「(鷺が自分は)ひとりでは寝まい」は自分の行動やから打消意志。「(そうでも)ないだろう」は打消推量。

7

水鳥、鴛鴦いとあはれなり。かたみに居かはりて、羽の上の霜払ふらむほどなど。千鳥いとをかし。

現代語訳水鳥では、おしどりがとても心ひかれる。(雌と雄が)かわるがわる場所を入れかわって、羽の上の霜を払うというようすなど(がよい)。千鳥はとても趣がある。

  • 鴛鴦(をし、読みは「おし」)は今のオシドリ。雌と雄がいつもいっしょにいるので、仲のよい夫婦のたとえにされる(「おしどり夫婦」)。
  • 「かたみに」は「たがいに・かわるがわる」。千鳥(ちどり)は水辺の小鳥で、冬の和歌によくよまれた。

8

鶯は、文などにもめでたきものに作り、声よりはじめて、さまかたちも、さばかりあてにうつくしきほどよりは、九重の内に鳴かぬぞ、いとわろき。

現代語訳うぐいすは、漢詩などにもすばらしいものとして作られ、声をはじめとして、姿や形も、あれほど上品でかわいらしいわりには、宮中で鳴かないのが、とてもよくない。

合格先生
合格先生
「九重」=宮中は、T先生に「九つ重なった門の奥」と教わってから忘れなくなりました。

9

人の「さなむある」と言ひしを、さしもあらじと思ひしに、十年ばかりさぶらひて聞きしに、まことにさらに音せざりき。

現代語訳ある人が「そう(宮中では鳴かないの)だ」と言ったのを、そうでもないだろうと思っていたが、十年ほど宮仕えをして聞いていたところ、本当にまったく鳴き声がしなかった。

ミスターT先生
ミスターT先生
「言ひし」「思ひし」「聞きし」「せざりき」。「き」が連発しとるやろ? これは作者が自分で体験したことやから。ここ、テストに出るで!

10

さるは、竹近き紅梅も、いとよく通ひぬべきたよりなりかし。まかでて聞けば、あやしき家の見所もなき梅の木などには、かしがましきまでぞ鳴く。

現代語訳そのくせ、(清涼殿の)竹の近くにある紅梅も、(鶯が)きっとよく通ってくるにちがいない手がかりなのだよ。宮中から退出して(里で)聞くと、粗末な家の見ばえもしない梅の木などでは、やかましいほど鳴く。

  • 「通ひぬべき」の「ぬ」は強意(きっと)。「ぬべし」は「きっと〜にちがいない」。→完了の助動詞「つ・ぬ」(強意の用法)
  • 「まかづ」は宮中から退出するという謙譲語。「かしがまし」は「やかましい」。
  • 「ぞ…鳴く」も係り結び。四段動詞は終止形と連体形が同じ形なので、見た目は変わらない。

11

夜鳴かぬもいぎたなき心地すれども、今はいかがせむ。夏・秋の末まで老い声に鳴きて、「虫食ひ」など、ようもあらぬ者は名をつけかへて言ふぞ、くちをしくくすしき心地する。

現代語訳夜鳴かないのも寝坊な感じがするけれど、今さらどうしようもない。夏や秋の終わりまで年寄りじみた声で鳴いて、「虫食い」などと、教養のない者は名前を言いかえて呼ぶのが、残念で変な気持ちがする。

  • 「いぎたなし」は「ぐっすり寝こんでいる・寝坊だ」。「いかがせむ」は「どうしようか、いやどうしようもない」(反語)。
  • 係り結び:「ぞ」→サ変動詞「す」の連体形「する」で結ぶ。「くちをし」は「残念だ」。

12

それもただ雀などのやうに常にある鳥ならば、さもおぼゆまじ。春鳴くゆゑこそはあらめ。

現代語訳それも、ただ雀などのようにいつもいる鳥なら、そうも思わないだろう。春に鳴く(鳥である)からこそ(そう思うの)であろう。

13

「年たちかへる」など、をかしきことに、歌にも文にも作るなるは。なほ春のうちならましかば、いかにをかしからまし。

現代語訳「年たちかへる(新しい年になる)」など、趣のあることとして、和歌にも漢詩にも作るというのは(春の鶯だからだ)。(鳴くのが)ずっと春のうちだけであったなら、どんなにすばらしかっただろうに。

  • 反実仮想:「〜ましかば…まし」で「もし〜だったら…だろうに」。実際はそうではない(夏・秋も鳴く)ことを残念がる。→反実仮想の助動詞「まし」
  • 「年たちかへる」は新年になること。新年に鶯の声を待つ和歌の言葉として知られた。
サクラちゃん
サクラちゃん
「ならましかば…まし」って、どういう意味ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
反実仮想や。「もし春のうちだけ鳴くなら、どんなによかったやろうに(実際は夏も秋も鳴く)」。現実とちがうことを想像して残念がる形やな。

14

人をも、人げなう、世のおぼえあなづらはしうなりそめにたるをば、謗りやはする。鳶・烏などのうへは、見入れ聞き入れなどする人、世になしかし。

現代語訳人の場合でも、一人前でなく、世間の評判が軽く見られるようになってしまった人を、悪く言ったりするだろうか、いやしない。とびやからすなどのことは、目にとめたり耳にとめたりする人は、世の中にいないものだよ。

  • 「やは」は反語(〜か、いや〜ない)。係り結びで文末は連体形「する」。→係り結び(反語の「やは」)
  • 「人げなし」は「一人前でない」、「あなづらはし」は「軽く見られる」。「なりそめにたる」は「なり始めてしまった」。
うかるくん
うかるくん
鳶や烏の話が急に出てきたのはなぜですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「どうでもええ鳥には誰も文句を言わへん」ということや。鶯はすばらしい鳥やからこそ、文句を言いたくなる。期待の裏返しやな。

15

されば、いみじかるべきものとなりたれば、と思ふに、心ゆかぬ心地するなり。

現代語訳だから(鶯は)、すばらしいはずのものとなっているので(あれこれ言いたくなるのだ)、と思うと、すっきりしない気持ちがするのである。

  • ここまでが鶯への不満。期待が大きいからこそ文句を言いたくなる、という作者の正直な気持ち。
  • 「心ゆかぬ」は「満足できない・すっきりしない」。

16

祭のかへさ見るとて、雲林院・知足院などの前に車を立てたれば、ほととぎすも忍ばぬにやあらむ、鳴くに、いとようまねび似せて、木高き木どもの中に、もろ声に鳴きたるこそ、さすがにをかしけれ。

現代語訳賀茂祭の帰りの行列を見ようとして、雲林院や知足院などの前に牛車をとめていると、ほととぎすも(季節を)こらえきれないのであろうか、鳴くと、(鶯が)とても上手にまねて似せて、高い木々の中で、声を合わせて鳴いたのは、やはり趣がある。

  • 「祭」は平安時代、ふつう賀茂祭(今の葵祭)のこと。「かへさ」はその帰りの行列。雲林院・知足院は京都の紫野にあった寺。
  • 「にやあらむ」は断定「なり」の連用形「に」+係助詞「や」+あら+推量「む」で「〜であろうか」。係り結びで「む」は連体形。→「に」の識別(断定の「に」)
  • 「もろ声」は声をそろえること。「さすがに」は「(不満はあっても)やはり」。

17

ほととぎすは、なほさらに言ふべき方なし。いつしかしたり顔にも聞こえたるに、卯の花、花橘などに宿りをして、はた隠れたるも、ねたげなる心ばへなり。

現代語訳ほととぎすは、やはりまったく言いようもない(ほどすばらしい)。いつの間にか得意顔に(鳴いているように)聞こえているのに、卯の花や花橘などにとまって、半分隠れているのも、しゃくにさわるほど心にくい気だてだ。

  • 卯の花は今のウツギの花、花橘は花の咲いた橘(みかんのなかま)。どちらも、ほととぎすといっしょに和歌によまれる初夏の花。
  • 「したり顔」は得意そうな顔。「ねたげなり」は「しゃくにさわるほどすぐれている」。「はた隠れ」は半分隠れること。

18

五月雨の短き夜に寝覚めをして、いかで人よりさきに聞かむと待たれて、夜深くうち出でたる声の、らうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せむ方なし。

現代語訳五月雨のころの短い夜に目をさまして、なんとかして人より先に聞こうと自然と待たれて、夜ふけに鳴き出した声が、洗練されていて魅力にあふれているのは、たいへん心がうっとりとさまよい出て、どうしようもない。

合格先生
合格先生
「待たれて」の「れ」は自発。心の動きの動詞(思ふ・待つ・しのぶ)につく「る・らる」は、まず自発を疑え、とT先生の口ぐせでした。

19

六月になりぬれば、音もせずなりぬる、すべて言ふもおろかなり。夜鳴くもの、何も何もめでたし。ちごどものみぞさしもなき。

現代語訳六月になると、まったく鳴かなくなってしまうのは、何もかも言葉では言いつくせない(ほど残念だ)。夜に鳴くものは、何もかもすばらしい。赤ん坊たちだけは、そうでもない。

  • 「言ふもおろかなり」は「言葉では言いつくせない」(「言へばおろかなり」も同じ)。
  • 最後に「夜鳴くもの」として赤ん坊の夜泣きを出して笑わせる、枕草子らしい終わり方。
  • 係り結び:「ぞ」→形容詞「なし」の連体形「なき」。
ミスターT先生
ミスターT先生
最後に「夜鳴くものは全部すばらしい。赤ん坊の夜泣きだけはそうでもない」。こういうオチをつけるのが清少納言のセンスや。

「らむ」の使い方を図で確かめる

「らむ」=見ていないことを想像する(現在推量・婉曲) 鸚鵡 人の言ふらむことをまねぶらむよ 山鳥 鏡を見すれば慰むらむ 鷺 ひとりは寝じとあらそふらむ 鴛鴦 羽の上の霜払ふらむほど → どれも話に聞いた鳥の姿を思いうかべて「〜というのが」と語っている。
図2 「鳥は」の段に出てくる「らむ」(作者が想像している鳥の姿)
ミスターT先生
ミスターT先生
作者が実際に見たわけやない鳥の姿を、「〜というのが(あはれだ)」と想像してる。「らむ」は想像の助動詞と覚えとこ。

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
鸚鵡おうむオウム(外国の鳥)
まねぶまねぶまねをする
水鶏くいなクイナ(水辺の鳥)
鴛鴦おしオシドリ
斑鳩いかるがイカル(小鳥)
かたみにかたみにたがいに・かわるがわる
なつかしなつかし親しみがもてる・心ひかれる
九重ここのえ宮中
あてなりあてなり上品だ
まかづまかず退出する(謙譲語)
かしがましかしがましやかましい
いぎたなしいぎたなしぐっすり寝こんでいる・寝坊だ
したり顔したりがお得意そうな顔
らうらうじろうろうじ洗練されている・上品で美しい
あくがるあくがる心が体からぬけ出る・うっとりする

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「人の言ふらむことをまねぶらむよ」の2つの「らむ」の意味をそれぞれ答えなさい。

「言ふらむ」は婉曲(〜ような)、「まねぶらむ」は現在推量(〜しているだろう・〜するという)。

問2 「九重の内に鳴かぬぞ、いとわろき」の「九重」とは何のこと? また「わろき」が連体形なのはなぜ?

宮中のこと。上に係助詞「ぞ」があるから(係り結び)。

問3 「十年ばかりさぶらひて聞きしに」の「さぶらひ」の敬語の種類を答えなさい。

謙譲語(お仕えする)。作者から、仕えている宮中の主人への敬意。

問4 「なほ春のうちならましかば、いかにをかしからまし」を現代語訳しなさい。

(鳴くのが)やはり春のうちだけであったなら、どんなにすばらしかっただろうに。(反実仮想)

問5 「謗りやはする」の「やは」の意味は?

反語(悪く言うだろうか、いや言わない)。

問6 「いかで人よりさきに聞かむと待たれて」の「れ」の意味は?

自発(自然と待たれる)。

問7 作者が鶯について不満に思っていることを2つ答えなさい。

宮中で鳴かないこと。夏・秋の終わりまで老いた声で鳴き、「虫食ひ」などと呼ばれてしまうこと。

問8 「鴛鴦」「斑鳩」「水鶏」の読みを答えなさい。

鴛鴦=をし(おし/オシドリ)、斑鳩=いかるが(イカル)、水鶏=くいな。

うかるくん
うかるくん
清少納言、鶯にめちゃくちゃ文句言ってて笑いました! 「らむ」も見つけられるようになりました。

枕草子「鳥は」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

鳥は、異所のものなれど、鸚鵡いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。

ほととぎす。水鶏。しぎ。都鳥。ひは。ひたき。

山鳥、友を恋ひて、鏡を見すれば慰むらむ、心若う、いとあはれなり。谷隔てたるほどなど、心苦し。

鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴く声の雲居まで聞こゆる、いとめでたし。

頭赤き雀。斑鳩の雄鳥。巧鳥。

鷺は、いと見目も見苦し。眼居なども、うたてよろづになつかしからねど、ゆるぎの森にひとりは寝じとあらそふらむ、をかし。

水鳥、鴛鴦いとあはれなり。かたみに居かはりて、羽の上の霜払ふらむほどなど。千鳥いとをかし。

鶯は、文などにもめでたきものに作り、声よりはじめて、さまかたちも、さばかりあてにうつくしきほどよりは、九重の内に鳴かぬぞ、いとわろき。

人の「さなむある」と言ひしを、さしもあらじと思ひしに、十年ばかりさぶらひて聞きしに、まことにさらに音せざりき。

さるは、竹近き紅梅も、いとよく通ひぬべきたよりなりかし。まかでて聞けば、あやしき家の見所もなき梅の木などには、かしがましきまでぞ鳴く。

夜鳴かぬもいぎたなき心地すれども、今はいかがせむ。夏・秋の末まで老い声に鳴きて、「虫食ひ」など、ようもあらぬ者は名をつけかへて言ふぞ、くちをしくくすしき心地する。

それもただ雀などのやうに常にある鳥ならば、さもおぼゆまじ。春鳴くゆゑこそはあらめ。

「年たちかへる」など、をかしきことに、歌にも文にも作るなるは。なほ春のうちならましかば、いかにをかしからまし。

人をも、人げなう、世のおぼえあなづらはしうなりそめにたるをば、謗りやはする。鳶・烏などのうへは、見入れ聞き入れなどする人、世になしかし。

されば、いみじかるべきものとなりたれば、と思ふに、心ゆかぬ心地するなり。

祭のかへさ見るとて、雲林院・知足院などの前に車を立てたれば、ほととぎすも忍ばぬにやあらむ、鳴くに、いとようまねび似せて、木高き木どもの中に、もろ声に鳴きたるこそ、さすがにをかしけれ。

ほととぎすは、なほさらに言ふべき方なし。いつしかしたり顔にも聞こえたるに、卯の花、花橘などに宿りをして、はた隠れたるも、ねたげなる心ばへなり。

五月雨の短き夜に寝覚めをして、いかで人よりさきに聞かむと待たれて、夜深くうち出でたる声の、らうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せむ方なし。

六月になりぬれば、音もせずなりぬる、すべて言ふもおろかなり。夜鳴くもの、何も何もめでたし。ちごどものみぞさしもなき。

枕草子「鳥は」現代語訳(全文・通し)

鳥は、外国のものではあるけれど、おうむがとても心ひかれる。人の言うようなことをまねするというのだよ。

ほととぎす(がよい)。くいな。しぎ。都鳥。ひわ。ひたき。

山鳥は、仲間を恋しがって(鳴くが)、鏡を見せると(映った自分を仲間だと思って)気持ちがなぐさむというのが、幼くて、とてもいじらしい。(夜、雌と雄が)谷をへだてて(寝て)いる時などは、かわいそうだ。

鶴は、とても大げさな姿をしているけれど、鳴く声が空の上まで聞こえるというのが、とてもすばらしい。

頭の赤い雀。いかるがの雄鳥。たくみ鳥。

鷺は、とても見た目もみっともない。目つきなども、いやな感じで何もかも親しみがわかないけれど、「ゆるぎの森でひとりでは寝まい」と(相手を)取り合うというのは、おもしろい。

水鳥では、おしどりがとても心ひかれる。(雌と雄が)かわるがわる場所を入れかわって、羽の上の霜を払うというようすなど(がよい)。千鳥はとても趣がある。

うぐいすは、漢詩などにもすばらしいものとして作られ、声をはじめとして、姿や形も、あれほど上品でかわいらしいわりには、宮中で鳴かないのが、とてもよくない。

ある人が「そう(宮中では鳴かないの)だ」と言ったのを、そうでもないだろうと思っていたが、十年ほど宮仕えをして聞いていたところ、本当にまったく鳴き声がしなかった。

そのくせ、(清涼殿の)竹の近くにある紅梅も、(鶯が)きっとよく通ってくるにちがいない手がかりなのだよ。宮中から退出して(里で)聞くと、粗末な家の見ばえもしない梅の木などでは、やかましいほど鳴く。

夜鳴かないのも寝坊な感じがするけれど、今さらどうしようもない。夏や秋の終わりまで年寄りじみた声で鳴いて、「虫食い」などと、教養のない者は名前を言いかえて呼ぶのが、残念で変な気持ちがする。

それも、ただ雀などのようにいつもいる鳥なら、そうも思わないだろう。春に鳴く(鳥である)からこそ(そう思うの)であろう。

「年たちかへる(新しい年になる)」など、趣のあることとして、和歌にも漢詩にも作るというのは(春の鶯だからだ)。(鳴くのが)ずっと春のうちだけであったなら、どんなにすばらしかっただろうに。

人の場合でも、一人前でなく、世間の評判が軽く見られるようになってしまった人を、悪く言ったりするだろうか、いやしない。とびやからすなどのことは、目にとめたり耳にとめたりする人は、世の中にいないものだよ。

だから(鶯は)、すばらしいはずのものとなっているので(あれこれ言いたくなるのだ)、と思うと、すっきりしない気持ちがするのである。

賀茂祭の帰りの行列を見ようとして、雲林院や知足院などの前に牛車をとめていると、ほととぎすも(季節を)こらえきれないのであろうか、鳴くと、(鶯が)とても上手にまねて似せて、高い木々の中で、声を合わせて鳴いたのは、やはり趣がある。

ほととぎすは、やはりまったく言いようもない(ほどすばらしい)。いつの間にか得意顔に(鳴いているように)聞こえているのに、卯の花や花橘などにとまって、半分隠れているのも、しゃくにさわるほど心にくい気だてだ。

五月雨のころの短い夜に目をさまして、なんとかして人より先に聞こうと自然と待たれて、夜ふけに鳴き出した声が、洗練されていて魅力にあふれているのは、たいへん心がうっとりとさまよい出て、どうしようもない。

六月になると、まったく鳴かなくなってしまうのは、何もかも言葉では言いつくせない(ほど残念だ)。夜に鳴くものは、何もかもすばらしい。赤ん坊たちだけは、そうでもない。

枕草子「鳥は」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(枕草子の基本)

枕草子の作者は誰?

清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。

枕草子はいつの作品?

平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。

枕草子の冒頭(書き出し)は?

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。

枕草子はどんな作品?

日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。

枕草子の目次(教科書に出る段)

枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。

  1. 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
  2. 枕草子「うつくしきもの」の原文・現代語訳 定番
  3. 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
  4. 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
  5. 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
  6. 枕草子「木の花は」の原文・現代語訳 定番
  7. 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
  8. 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
  9. 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  10. 枕草子「雪のいと高う降りたるを」の原文・現代語訳 定番
  11. 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
  12. 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
  13. 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
  14. 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
  15. 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  16. 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
  17. 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
  18. 枕草子「ころは」の原文・現代語訳
  19. 鳥は(このページ)
  20. 枕草子「草の花は」の原文・現代語訳
  21. 枕草子「心ときめきするもの」の原文・現代語訳
  22. 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
  23. 枕草子「うれしきもの」の原文・現代語訳
  24. 枕草子「はしたなきもの」の原文・現代語訳
  25. 枕草子「かたはらいたきもの」の原文・現代語訳
  26. 枕草子「清涼殿の丑寅の隅の」の原文・現代語訳
  27. 枕草子「野分のまたの日こそ」の原文・現代語訳
  28. 枕草子「月のいと明かきに」の原文・現代語訳
  29. 枕草子「正月一日は」の原文・現代語訳
  30. 枕草子「職の御曹司におはしますころ」の原文・現代語訳
  31. 枕草子「遠くて近きもの・近うて遠きもの」の原文・現代語訳
ミスターT先生
ミスターT先生
次は「草の花は」。なでしこ・ききょう・すすき。すすきを年をとった人にたとえる、しみじみした所があるで。お楽しみに!

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本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。