枕草子「ころは」原文と現代語訳・文法|ころは、正月、三月、四月、五月(第二段・一年ながらをかし・年中行事と旧暦の月)

ミスターT先生

類聚章段

枕草子の第二段「ころは、正月、三月、四月、五月」(「ころは」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。「春はあけぼの」のすぐ後の段です。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • あらすじ:清少納言が、一年のうち趣のある時節として月を挙げていき、「すべて、をりにつけつつ、一年ながらをかし」(どの月もその時々に応じて、一年じゅう趣がある)とまとめる、ごく短い類聚章段。
  • 文法の要点:古今異義語「をかし」=趣がある、接続助詞「つつ」(くり返し)、「ながら」=〜じゅう、旧暦の月と季節。
  • テストの定番:「春はあけぼの」の次の第二段。「一年ながらをかし」の訳と、挙げられた月が年中行事と結びついていること。
サクラちゃん
サクラちゃん
T先生、この段、月の名前を並べてるだけで終わりですか? 短すぎてびっくりしました。
ミスターT先生
ミスターT先生
そう、三巻本ではたった一文の段や。「春はあけぼの」で季節ごとの時間を語ったあと、今度は月で一年をぐるっと見わたしてる。短いけど、月ごとの年中行事を知ってると、ぐっとおもしろくなるで。
合格先生
合格先生
わたしはT先生に「月の名前を見たら、その月の行事を1つ言えるようにしとけ」と言われました。古文常識の問題にそのまま役立ちます。

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. 古今異義語をかし=趣がある・すばらしい
  2. 接続助詞つつ=くり返し(〜しては)
  3. 一年ながら=一年じゅうずっと
  4. 旧暦の月は今より1か月ほど遅い

「ころは」はどんな段?(第二段・類聚章段・年中行事)

「ころは」は、枕草子の第二段にあたる、とても短い類聚章段です。第一段「春はあけぼの」で四季それぞれのいちばんよい時間帯を挙げたあと、この段では一年の月を挙げ、「どの月もその時々に趣がある」とまとめます。

挙げられた月の多くには、宮中や貴族の家の年中行事がありました。作者の清少納言は、一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、こうした行事を間近で見ていました。

※挙げる月は本によって少しずつちがいます(このページの形では二月と六月が挙げられていません)。また、別の系統の本(能因本系など)では、この後に正月一日・七日・十五日などの行事をくわしく書く文章が同じ段として続きますが、三巻本系ではそれは次の段(第三段)とされます。

1. 正月 元日・白馬の節会・若菜 2. 三月 上巳の節句桜の季節 3. 四月・五月 賀茂祭端午の節会 4. 七月・八月 七夕十五夜の月 5. 九月〜十二月 重陽・五節追儺 6. 一年ながら どの月もをかし
図1 枕草子「ころは」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

ころは、正月、三月、

現代語訳(一年のうちで趣のある)時節は、正月、三月、

  • 「ころ」は「時節・季節・時期」。題の「〜は」は、類聚章段の「〜は」型(「春は」「木の花は」と同じ)。
  • 月は旧暦なので、正月は今の2月ごろ、三月は今の4月ごろにあたる。→旧暦の月の名前(睦月・弥生など)と季節
  • 正月には元日の祝い、七日の白馬の節会や若菜摘みなどの行事があり、三月には三日の上巳の節句(今のひな祭りのもと)や桜の季節がある。→古文常識の一覧(年中行事・暦)

2

四月、五月、七、八月、

現代語訳四月、五月、七月、八月、

  • 四月は衣替え(更衣)と賀茂祭(葵祭)、五月は五日の端午の節会(菖蒲や薬玉)、七月は七夕、八月は十五夜の月見。
  • どの月にも宮中や貴族の家の年中行事があり、季節ごとの楽しみがある。
うかるくん
うかるくん
四月とか五月とか、行事があるから選ばれてるんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
そう考えるとわかりやすい。四月は賀茂祭(葵祭)、五月は端午、七月は七夕。どれも宮中の大事な行事や。今も京都では葵祭が5月にあるやろ? 旧暦の四月が、今の5月ごろなんや。

3

九月、十月、十一、二月、

現代語訳九月、十月、十一月、十二月、

  • 九月は九日の重陽の節会(菊の節句)、十一月は五節の舞、十二月は大みそかの追儺(今の節分の豆まきのもと)など。
  • 「十一、二月」は「十一月・十二月」をまとめた言い方。
サクラちゃん
サクラちゃん
十二月の「追儺」って何ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
大みそかに鬼を追いはらう儀式や。これが後に、節分の豆まきになっていく。千年前の行事が、形を変えて今も残ってるんやな。

4

すべて、をりにつけつつ、一年ながらをかし。

現代語訳すべて、その時節その時節に応じて、一年じゅうずっと趣がある。

ミスターT先生
ミスターT先生
最後の「一年ながらをかし」。「ながら」は「〜のまま全部」で、「一年じゅうずっと趣がある」。「をかし」を「おかしい」と訳したら×や。ここ、テストに出るで!
合格先生
合格先生
「ながら」は「〜のに(逆接)」の意味もあるので、T先生には「数を表す語+ながらは『〜全部』」と教わりました。「三つながら」なら「三つとも」です。

「ころは」の月と年中行事を図で確かめる

「ころは」で挙げられた月と、主な年中行事(旧暦) 正月 元日・若菜 二月 (挙げない) 三月 上巳・桜 四月 賀茂祭 五月 端午 六月 (挙げない) 七月 七夕 八月 十五夜 九月 重陽 十月 冬のはじめ 十一月 五節の舞 十二月 追儺
図2 「ころは」の月と年中行事(このページの本文の形では二月・六月は挙げられていない)
ミスターT先生
ミスターT先生
月を見たら行事を思い出す。これができたら、ほかの段の古文常識もぐっと読みやすくなるで!

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
ころころ時節・季節・時期
をりおり時・季節・機会
つつつつ〜しては(くり返し)
ながらながら〜のまま・〜じゅう全部
をかしおかし趣がある・すばらしい
正月しょうがつ一月(睦月)
白馬の節会あおうまのせちえ正月七日に白い馬を見る宮中の行事
上巳じょうし三月三日の節句
賀茂祭かものまつり四月の賀茂神社の祭(葵祭)
端午たんご五月五日の節句
重陽ちょうよう九月九日の節句(菊の節句)
追儺ついな大みそかに鬼を追いはらう儀式

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「ころは」の「ころ」の意味は?

「時節・季節・時期」。

問2 「一年ながらをかし」を現代語訳しなさい。

「一年じゅうずっと趣がある。」

問3 「をりにつけつつ」の「つつ」の意味は?

くり返し(〜しては)。その時節その時節に応じて、という意味になる。

問4 「をかし」の意味を答えなさい。今の「おかしい」とのちがいも答えなさい。

「趣がある・すばらしい」。今の「おかしい(こっけい・変だ)」とはちがい、明るくほめる言葉。

問5 この段で挙げられた月の多くには、どんなものがあるか。

宮中や貴族の家の年中行事(元日・上巳・賀茂祭・端午・七夕・重陽・五節など)。

問6 旧暦の正月は、今の暦ではだいたい何月ごろか。

2月ごろ(今の暦より1か月ほど遅い)。

うかるくん
うかるくん
短いけど、行事を思い浮かべたら一年がぜんぶ見えた気がします!

枕草子「ころは」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

ころは、正月、三月、

四月、五月、七、八月、

九月、十月、十一、二月、

すべて、をりにつけつつ、一年ながらをかし。

枕草子「ころは」現代語訳(全文・通し)

(一年のうちで趣のある)時節は、正月、三月、

四月、五月、七月、八月、

九月、十月、十一月、十二月、

すべて、その時節その時節に応じて、一年じゅうずっと趣がある。

枕草子「ころは」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(枕草子の基本)

枕草子の作者は誰?

清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。

枕草子はいつの作品?

平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。

枕草子の冒頭(書き出し)は?

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。

枕草子はどんな作品?

日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。

枕草子の目次(教科書に出る段)

枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。

  1. 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
  2. 枕草子「うつくしきもの」の原文・現代語訳 定番
  3. 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
  4. 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
  5. 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
  6. 枕草子「木の花は」の原文・現代語訳 定番
  7. 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
  8. 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
  9. 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  10. 枕草子「雪のいと高う降りたるを」の原文・現代語訳 定番
  11. 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
  12. 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
  13. 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
  14. 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
  15. 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  16. 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
  17. 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
  18. ころは(このページ)
  19. 枕草子「鳥は」の原文・現代語訳
  20. 枕草子「草の花は」の原文・現代語訳
  21. 枕草子「心ときめきするもの」の原文・現代語訳
  22. 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
  23. 枕草子「うれしきもの」の原文・現代語訳
  24. 枕草子「はしたなきもの」の原文・現代語訳
  25. 枕草子「かたはらいたきもの」の原文・現代語訳
  26. 枕草子「清涼殿の丑寅の隅の」の原文・現代語訳
  27. 枕草子「野分のまたの日こそ」の原文・現代語訳
  28. 枕草子「月のいと明かきに」の原文・現代語訳
  29. 枕草子「正月一日は」の原文・現代語訳
  30. 枕草子「職の御曹司におはしますころ」の原文・現代語訳
  31. 枕草子「遠くて近きもの・近うて遠きもの」の原文・現代語訳
ミスターT先生
ミスターT先生
次は「鳥は」。うぐいす・ほととぎすから、遠い国の鸚鵡まで、清少納言の鳥の好みが出てくるで。お楽しみに!

あわせて読みたい古文のページ

本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。