枕草子「月のいと明かきに」原文と現代語訳・文法|川を渡れば、牛の歩むままに水晶などの割れたるやうに(係り結び)

ミスターT先生

随想章段

枕草子の随想章段「月のいと明かきに」を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。たった一文で、月夜の川の水しぶきを宝石のように描いた段です。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • あらすじ:月がとても明るい夜、牛車で川を渡ると、牛が歩くたびに水しぶきが、割れた水晶のように光って飛び散る。それがとても趣深い、という一文だけの段。
  • 文法の要点:已然形+ば(渡れば=渡ると)、係り結び(こそ…をかしけれ)、完了・存続の「たり」、比喩の「やうに」。
  • テストの定番:「明かし」=明るい、「をかし」=趣がある。水しぶきを「水晶の割れたる」にたとえた比喩。
サクラちゃん
サクラちゃん
T先生、この段、本当に一文しかないんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
そうや、サクラちゃん。たった一文。でもな、短いからこそ一語一語がきらきらしてる。月の光、川、牛車、水しぶき。目を閉じて思いうかべながら読んでみ。
合格先生
合格先生
わたしはT先生に「この段は写真みたいに読め」と言われました。シャッターを切った一瞬だけを書いているんです。

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. 已然形+ば:渡れば=渡ると(確定条件)
  2. 係り結び:こそ…をかしけれ(已然形)
  3. 完了・存続のたり(割れたる・散りたる)
  4. 比喩:水しぶき=割れた水晶
  5. 古語明かし=明るい、をかし=趣がある

「月のいと明かきに」はどんな段?(随想章段・牛車)

「月のいと明かきに」は、自然を見て感じたことを書く随想章段で、枕草子の中でもとくに短い段の一つです。平安時代の貴族は、牛に引かせる牛車で出かけました。月の明るい夜、浅い川を牛車ごと渡ると、牛の足もとから水しぶきが上がり、それが月の光できらきら光ります。

作者はその水しぶきを「水晶などの割れたるやうに」とたとえました。当時、水晶は数珠などに使われる貴重な石で、枕草子のほかの段にも「水晶の数珠」が上品で美しいものとして出てきます。冷たく澄んだ光を、一瞬で言い当てた比喩です。

1. 月夜 月がとても明るい夜 2. 川 浅い川を渡る 3. 牛車 牛に引かれて進む 4. 牛の歩み 一歩ごとに水が上がる 5. 水しぶき 割れた水晶のように散る 6. をかし こそ…をかしけれと結ぶ
図1 枕草子「月のいと明かきに」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

月のいと明かきに、

現代語訳月がとても明るい夜に、

  • 「明かし」は「明るい」。今の「赤い」ではない。歴史的仮名遣いのまま「あかき」と読む。
  • 「いと」は「とても」。下に打消がくると「たいして〜ない」になるので注意。
うかるくん
うかるくん
「明かき」って「赤い」じゃないんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
ちがうで。「明かし」は明るい。月が赤いわけやない(笑)。今も「明かり」っていうやろ。そこから考えたら分かる。

2

川を渡れば、牛の歩むままに、

現代語訳(牛車で)川を渡ると、牛が歩くのにつれて、

  • 「渡れば」は已然形+ばなので「渡ると」(確定条件)。「もし渡るなら」ではない。→接続助詞「ば」の未然形+ばと已然形+ば
  • 「牛」は牛車を引く牛。平安貴族は牛車で出かけた。浅い川なら牛車ごと渡ることもあった。
  • 「ままに」は「〜するのにつれて・〜するとすぐに」。
サクラちゃん
サクラちゃん
「渡れば」は「渡ったら」ですか?「渡ると」ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「渡れ」は已然形やから、確定条件で「渡ると」。未然形+ばの「渡らば」やったら「もし渡るなら」になる。一文字のちがいで意味が変わる、ここ、テストに出るで!

3

水晶などの割れたるやうに、水の散りたるこそをかしけれ。

現代語訳水晶などが割れたように、水しぶきが飛び散っているのは、なんとも趣がある。

合格先生
合格先生
「水晶などの割れたるやうに」――T先生は「月の光は白くて冷たい。それを水晶にたとえたセンスが清少納言や」と言っていました。

「月のいと明かきに」の場面を図で見る

月のいと明かきに 月の光 牛車 牛 水晶などの割れたるやうに 水の散りたるこそをかしけれ 川を渡れば、 牛の歩むままに
図2 「月のいと明かきに」の場面(月の光・牛車・水晶のような水しぶき)
ミスターT先生
ミスターT先生
月の光・川・牛車・水しぶき。4つの絵が一文に入ってる。「こそ…をかしけれ」の係り結びも見つけられたら合格や!

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
明かしあかし明るい
いといととても
渡るわたる(川を)渡る・通る
牛うし牛車を引く牛
ままにままに〜するのにつれて
水晶すいしょう透明な鉱物(数珠などに使う)
散るちる飛び散る
をかしをかし趣がある・すてきだ
牛車ぎっしゃ牛に引かせる貴族の乗り物
やうなりようなり〜のようだ(たとえ)

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「月のいと明かきに」の「明かし」の意味は?

明るい。

問2 「川を渡れば」の「ば」は、どんな条件を表す?

已然形+ばなので確定条件(〜と・〜ところ)。

問3 「水の散りたるこそをかしけれ」で、文末が「をかしけれ」になっているのはなぜ?

上に係助詞「こそ」があるので、文末が已然形になる(係り結び)。

問4 作者は水しぶきを何にたとえている?

割れた水晶。

問5 この段の「をかし」を現代語訳しなさい。

趣がある・すてきだ・美しい。

問6 この段は枕草子の三つの章段のうち、どれにあたる?

随想章段(自然や人を見て感じたことを書く段)。

うかるくん
うかるくん
一文だけなのに、絵がはっきり浮かびました! 「こそ…をかしけれ」もばっちりです。

枕草子「月のいと明かきに」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

月のいと明かきに、

川を渡れば、牛の歩むままに、

水晶などの割れたるやうに、水の散りたるこそをかしけれ。

枕草子「月のいと明かきに」現代語訳(全文・通し)

月がとても明るい夜に、

(牛車で)川を渡ると、牛が歩くのにつれて、

水晶などが割れたように、水しぶきが飛び散っているのは、なんとも趣がある。

枕草子「月のいと明かきに」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(枕草子の基本)

枕草子の作者は誰?

清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。

枕草子はいつの作品?

平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。

枕草子の冒頭(書き出し)は?

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。

枕草子はどんな作品?

日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。

枕草子の目次(教科書に出る段)

枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。

  1. 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
  2. 枕草子「うつくしきもの」の原文・現代語訳 定番
  3. 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
  4. 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
  5. 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
  6. 枕草子「木の花は」の原文・現代語訳 定番
  7. 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
  8. 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
  9. 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  10. 枕草子「雪のいと高う降りたるを」の原文・現代語訳 定番
  11. 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
  12. 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
  13. 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
  14. 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
  15. 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  16. 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
  17. 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
  18. 枕草子「ころは」の原文・現代語訳
  19. 枕草子「鳥は」の原文・現代語訳
  20. 枕草子「草の花は」の原文・現代語訳
  21. 枕草子「心ときめきするもの」の原文・現代語訳
  22. 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
  23. 枕草子「うれしきもの」の原文・現代語訳
  24. 枕草子「はしたなきもの」の原文・現代語訳
  25. 枕草子「かたはらいたきもの」の原文・現代語訳
  26. 枕草子「清涼殿の丑寅の隅の」の原文・現代語訳
  27. 枕草子「野分のまたの日こそ」の原文・現代語訳
  28. 月のいと明かきに(このページ)
  29. 枕草子「正月一日は」の原文・現代語訳
  30. 枕草子「職の御曹司におはしますころ」の原文・現代語訳
  31. 枕草子「遠くて近きもの・近うて遠きもの」の原文・現代語訳
ミスターT先生
ミスターT先生
次は「正月一日は」。元日・ひな祭り・端午・七夕・重陽、それぞれの日に「この天気がいちばん」と清少納言が決める段や。

あわせて読みたい古文のページ

本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。