枕草子「雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」原文と現代語訳・文法|少納言よ、香炉峰の雪いかならむ(白居易・敬語)

ミスターT先生

定番 教科書によく出る定番の段 回想章段

枕草子の回想章段「雪のいと高う降りたるを」(香炉峰の雪)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。中宮定子のなぞかけに、清少納言が白居易の詩で答える、枕草子でいちばん有名な場面の一つです。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • あらすじ:雪の深い日、格子を下ろして女房たちが中宮定子のそばに集まっていると、中宮が「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」と言う。清少納言が格子を上げさせ御簾を高く巻き上げると、中宮は笑った。女房たちは「この詩は知っていたが思いつかなかった」と感心した。
  • 文法の要点:最高敬語「せたまふ」(中宮定子)、仰せらる、使役の「させ」と尊敬の「せ」の見分け、謙譲の「参る」「さぶらふ」、こそ…つれ(係り結び)、なめり。
  • テストの定番:教科書によく出る段。白居易『白氏文集』の「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」をふまえた問答で、作者がなぜ御簾を上げたのかがよく問われる。
うかるくん
うかるくん
T先生、「香炉峰」って何ですか? 京都の山ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
ちゃうちゃう、中国の山や(廬山という山の峰の一つ)。唐の詩人白居易が詩に詠んだ。この段は、その詩を知ってるかどうかのなぞかけやねん。短いけど、教科書・テストによく出る超定番やで。
合格先生
合格先生
T先生の授業では、まず漢文の授業で習う白居易の詩を思い出してから、この段を読みました。古文と漢文がつながる段なんです。

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. 最高敬語「せたまふ」=中宮定子の動作(笑はせたまふ)
  2. 使役の「させ」と尊敬の「せ」の見分け(下に「たまふ」があるか)
  3. 尊敬を重ねた仰せらる
  4. 謙譲の参る(御格子参る)・さぶらふ(お仕えする)
  5. こそ…つれの係り結び、なめり

「雪のいと高う降りたるを」はどんな段?(回想章段・中宮定子と白居易の詩)

枕草子の回想章段(日記的章段)の一つで、清少納言が中宮定子(一条天皇の中宮)に仕えていたころの思い出です。三巻本では「雪のいと高う降りたるを」で始まり、能因本系の本では「雪いと高く降りたるを」となっています。

中宮定子の言葉「香炉峰の雪いかならむ」は、唐の詩人白居易(白楽天)の詩集『白氏文集』にある句「遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き、香炉峰の雪は簾を撥げて看る」をふまえています。平安時代の貴族に『白氏文集』はとても人気があり、女房たちもこの句を知っていました。作者は、知識をその場で動作にして答えたので、中宮も女房たちも感心したのです。

1. 雪の日 雪が高く降り積もる 2. 格子を下ろす いつもと違い格子を下ろす 3. 炭櫃に集う 女房たちがおしゃべり 4. 中宮の問い 「香炉峰の雪いかならむ」 5. 御簾を上げる 作者が動作で詩句に答える 6. 人々の感心 「この宮の人にふさわしい」
図1 枕草子「雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、

現代語訳雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭櫃(いろり)に火をおこして、(女房たちが)おしゃべりなどをして集まって(中宮さまのおそばに)お仕えしていると、

サクラちゃん
サクラちゃん
「御格子参りて」って、格子のところに参上するんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
ええとこ聞いた。「御格子参る」は格子を上げ下ろしすることの謙譲語。ここは雪で寒いから「下ろした」の意味や。中宮さまのためにする動作やから、謙譲語で中宮を高めてるんやな。

2

「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、

現代語訳(中宮定子さまが)「少納言よ、香炉峰の雪はどうなっているでしょう」とおっしゃるので、

  • 「少納言」は作者清少納言のこと。中宮定子がよびかけている。
  • 「香炉峰の雪」は、唐の詩人白居易(白楽天)の詩『白氏文集』の一句「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」をふまえたなぞかけ。「格子を上げて雪を見せて」と、遠回しに言っている。
  • 「仰せらる」は、尊敬語「仰す」+尊敬の助動詞「らる」。尊敬を重ねた、身分の高い人向けの言い方。→助動詞「る・らる」の4つの意味(受身・尊敬・可能・自発)
うかるくん
うかるくん
「香炉峰の雪はどうなってる?」って、ふつうに答えたらダメなんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「たぶん積もってます」と答えたら、ゼロ点や(笑)。中宮さまは白居易の詩の前半だけ言うて、「続きは分かるやろ?」と試してはるんや。

3

御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。

現代語訳(わたしが、ほかの女房に)御格子を上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、(中宮さまは)お笑いになる。

  • 同じ「さす・す」でも意味がちがう:「上げさせて」は下に「たまふ」がないので使役(作者が人に上げさせる)。「笑はせたまふ」は下に「たまふ」があり、主語が中宮なので尊敬。→使役・尊敬の助動詞「す・さす・しむ」の見分け方
  • 最高敬語「せたまふ」:尊敬の「す」+尊敬の「たまふ」。地の文では中宮定子や一条天皇の動作にだけ使われる。→最高敬語(せたまふ・させたまふ)と二重敬語
  • 作者は言葉で答えず、詩の続きどおりの動作(簾をはね上げて雪を見せる)で答えた。中宮はその機転を喜んで笑った。
ミスターT先生
ミスターT先生
詩の続きは「簾を撥げて看る」。だから作者は黙って御簾を上げた。中宮さまが笑ったのは「正解!」の合図や。「せたまふ」は最高敬語、ここ、テストに出るで!
合格先生
合格先生
わたしはこの場面で、T先生に「知ってると使えるはちがう」と教わりました。受験の知識も同じだそうです。
御簾を高く上げて、雪の庭を見せる女房(「香炉峰の雪」の場面を描いた扇の絵)(枕草子の古い絵)
御簾を高く上げて、雪の庭を見せる女房(「香炉峰の雪」の場面を描いた扇の絵)
出典:窪俊満「香炉峰の雪」(1795年ごろ、米国議会図書館、Wikimedia Commons)

4

人々も「さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。

現代語訳(まわりの)女房たちも、「そういう(詩の)ことは知っていて、歌などにまでうたうけれど、(こんなふうに動作で答えることは)思いもよらなかった。やはり、この中宮さまにお仕えする人としては、(あなたは)ふさわしい人であるようだ」と言う。

  • 係り結び:「こそ」→結びは已然形「つれ」。→係り結びの決まり(ぞ・なむ・や・か・こそ)
  • 「さべきなめり」=「さるべきなるめり」。「さるべし」はふさわしい・そうなるはずの。「なめり」は断定「なり」+推定「めり」で「〜であるようだ」。→推定の助動詞「めり」となめり
  • 「さへ」は添加の副助詞(〜までも)。白居易の詩は、平安時代の貴族や女房ならだれでも知っている有名な句だった。知っているだけでなく、その場でとっさに使えたのが作者のすごさ。
サクラちゃん
サクラちゃん
まわりの女房たちも、詩は知ってたんですね。それなのに思いつかなかった…。
ミスターT先生
ミスターT先生
そうや。「さることは知り」=知識はみんな持ってた。でも、とっさに動作で答えるのは思いつかんかった。だから「この宮の人にはさべきなめり」とほめられたんや。
雪の日に御簾を上げる清少納言(枕草子の古い絵)
雪の日に御簾を上げる清少納言
出典:歌川芳虎「大和西京清少納言雪見の図」(1872年、国立国会図書館デジタルコレクション)

香炉峰の雪と白居易の詩の関係を図で見る

白居易の詩(『白氏文集』) 遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き 香炉峰の雪は簾を撥げて看る (すだれをはね上げて雪を見る) 中宮定子のなぞかけ 「少納言よ、 香炉峰の雪いかならむ」 (詩の前半だけを言う) 清少納言の答え=動作 格子を上げさせ、御簾を高く上げる 人々「さることは知り…思ひこそよらざりつれ」 =知っている詩を、その場で使えたことがすごい
図2 香炉峰の雪と白居易の詩の関係(問いは詩の前半、答えは詩の後半を動作で)
ミスターT先生
ミスターT先生
問いは詩の前半、答えは詩の後半を動作で。この図をかけたら、記述問題もばっちりや。

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
例ならずれいならずいつもとちがって
御格子参るみこうしまいる格子を上げ下ろしする(謙譲語)
炭櫃すびついろり・角火鉢
さぶらふさぶらうお仕えする・おそばにいる(謙譲語)
物語ものがたりおしゃべり・話
仰すおおすおっしゃる(尊敬語)
御簾みすすだれ
さることさることそういうこと
さへさえ〜までも
思ひよるおもいよる思いつく
なほなおやはり
さるべしさるべしふさわしい・そうなるはずの
宮みや中宮(ここでは中宮定子)

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「香炉峰の雪いかならむ」とおっしゃったのは誰? また、その言葉にはどんな意図があった?

中宮定子。白居易の詩句「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」をふまえて、格子や御簾を上げて雪景色を見せてほしい、という意図。

問2 作者は中宮の言葉に、どのように答えた?

言葉では答えず、格子を上げさせ、御簾を高く巻き上げて、詩句のとおりの動作で答えた。

問3 「御格子上げさせて」の「させ」と、「笑はせたまふ」の「せ」の意味をそれぞれ答えなさい。

「させ」は使役(作者がほかの人に上げさせる)、「せ」は尊敬(最高敬語「せたまふ」で、中宮定子の動作)。

問4 「仰せらるれば」の「らるれ」の意味と活用形は?

尊敬の助動詞「らる」の已然形。

問5 「思ひこそよらざりつれ」の「つれ」が已然形なのはなぜ?

上に係助詞「こそ」があるから(係り結び)。

問6 「さべきなめり」を現代語訳しなさい。

「(中宮さまにお仕えする人として)ふさわしい人であるようだ。」

問7 「御格子参りて」の「参り」は誰から誰への敬意を表す?

作者から中宮定子への敬意(謙譲語)。

サクラちゃん
サクラちゃん
問いは前半、答えは後半を動作で! 漢文の授業で習った白居易が出てきて、うれしかったです。

枕草子「雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、

「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、

御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。

人々も「さることは知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。

枕草子「雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」現代語訳(全文・通し)

雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭櫃(いろり)に火をおこして、(女房たちが)おしゃべりなどをして集まって(中宮さまのおそばに)お仕えしていると、

(中宮定子さまが)「少納言よ、香炉峰の雪はどうなっているでしょう」とおっしゃるので、

(わたしが、ほかの女房に)御格子を上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、(中宮さまは)お笑いになる。

(まわりの)女房たちも、「そういう(詩の)ことは知っていて、歌などにまでうたうけれど、(こんなふうに動作で答えることは)思いもよらなかった。やはり、この中宮さまにお仕えする人としては、(あなたは)ふさわしい人であるようだ」と言う。

枕草子「雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(枕草子の基本)

枕草子の作者は誰?

清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。

枕草子はいつの作品?

平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。

枕草子の冒頭(書き出し)は?

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。

枕草子はどんな作品?

日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。

枕草子の目次(教科書に出る段)

枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。

  1. 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
  2. 枕草子「うつくしきもの」の原文・現代語訳 定番
  3. 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
  4. 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
  5. 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
  6. 枕草子「木の花は」の原文・現代語訳 定番
  7. 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
  8. 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
  9. 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  10. 雪のいと高う降りたるを(香炉峰の雪)(このページ) 定番
  11. 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
  12. 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
  13. 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
  14. 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
  15. 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  16. 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
  17. 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
  18. 枕草子「ころは」の原文・現代語訳
  19. 枕草子「鳥は」の原文・現代語訳
  20. 枕草子「草の花は」の原文・現代語訳
  21. 枕草子「心ときめきするもの」の原文・現代語訳
  22. 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
  23. 枕草子「うれしきもの」の原文・現代語訳
  24. 枕草子「はしたなきもの」の原文・現代語訳
  25. 枕草子「かたはらいたきもの」の原文・現代語訳
  26. 枕草子「清涼殿の丑寅の隅の」の原文・現代語訳
  27. 枕草子「野分のまたの日こそ」の原文・現代語訳
  28. 枕草子「月のいと明かきに」の原文・現代語訳
  29. 枕草子「正月一日は」の原文・現代語訳
  30. 枕草子「職の御曹司におはしますころ」の原文・現代語訳
  31. 枕草子「遠くて近きもの・近うて遠きもの」の原文・現代語訳
ミスターT先生
ミスターT先生
次は「宮に初めて参りたるころ」。宮仕えを始めたばかりの清少納言は、はずかしくて顔も上げられへんかった。今日の堂々とした清少納言との差が楽しい段やで。

あわせて読みたい古文のページ

本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。