枕草子「木の花は」原文と現代語訳・文法|木の花は、濃きも薄きも紅梅(橘と楝の今の名前・梨の花と長恨歌・桐と鳳凰・係り結び)

ミスターT先生

定番 教科書によく出る定番の段 類聚章段

枕草子の「木の花は、濃きも薄きも紅梅」で始まる段(「木の花は」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。花の名前の読みと今の名前も説明します。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • あらすじ:作者が好きな木の花を挙げる。紅梅・桜・藤をほめ、橘は白い花と黄金の実、ほととぎすとの縁でたたえる。日本では興ざめとされる梨の花も、白居易「長恨歌」で楊貴妃の涙にたとえられたことから見直し、桐は鳳凰と琴、楝は端午の節句と結びつけて語る。
  • 文法の要点:係り結び(こそ…ためれ/やは…ある/こそ…めでたけれ)、結びの省略(にや)、ためれ(存続たり+推定めり)、打消推量のじ、現在推量のらむ。
  • テストの定番:教科書によく出る段。「すさまじ」=興ざめだ、「めでたし」=すばらしい、「梨花一枝春帯雨」=白居易「長恨歌」、「ことごとしき名つきたる鳥」=鳳凰。
サクラちゃん
サクラちゃん
T先生、「木の花は」って花の名前がずらっと並んでるだけに見えるんですけど、どこがテストに出るんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
ええとこ聞くなあ、サクラちゃん。この段は教科書によく出る定番や。ただの花の一覧やなくて、梨の花と「長恨歌」のくだりで、清少納言の漢詩の知識がばっちり見える。そこが入試でも狙われるんや。
合格先生
合格先生
わたしはT先生に「花の名前は今の名前まで言えるように」と言われました。橘はみかんのなかま、楝はセンダン。わかると情景が一気に見えてきますよ。

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. 係り結び:こそ…ためれ/やは…ある(反語)/こそ…めでたけれ
  2. 結びの省略:思へばにや(あらむ)
  3. ためれ=存続「たり」+推定「めり」
  4. 打消推量のじ、現在推量のらむ
  5. 古今異義語:すさまじ・めでたし・にほひ・せめて

「木の花は」はどんな段?(類聚章段・花と漢詩)

「木の花は」は、ものを集めて挙げる類聚章段の一つで、作者が好きな木に咲く花を順に語ります。紅梅・桜・藤・橘・梨・桐・楝(センダン)が登場し、季節は春から初夏へ移っていきます。

この段の山場は梨の花です。日本ではつまらない花とされていたのに、中国では唐の詩人白居易が「長恨歌」で楊貴妃の涙にたとえた――それを知った作者が、もう一度よく見直してその美しさを見つけます。桐の花では、中国の伝説の鳥鳳凰や琴の材料のことにもふれます。作者は中宮定子に仕えた女房で、和歌だけでなく漢詩・漢文にもくわしいことで知られていました。

なお、明治の『國文大觀』(能因本系)にはこのほかに「卯の花」をほめる文がありますが、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にはないため、このページでは入れていません。

1. 紅梅 濃くても薄くても紅梅がいちばん 2. 桜・藤 大きな花びら長い花房 3. 橘 白い花と黄金の実ほととぎすの宿 4. 梨 日本では興ざめ長恨歌で見直す 5. 桐 鳳凰がとまる琴の材料 6. 楝 センダンの花五月五日に咲く
図1 枕草子「木の花は」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

木の花は、濃きも薄きも紅梅。

現代語訳木に咲く花では、色が濃いのも薄いのも、紅梅(がいちばんだ)。

  • 「〜は」で始まる類聚章段。「は」のあとに作者の好きなものを次々に挙げていく。「紅梅(がよい)」のように、あとの言葉が省かれている。→古文常識の一覧(平安時代の暮らしと季節)
  • 紅梅(こうばい)は紅色の花が咲く梅。白梅より華やかな梅として好まれた。

2

桜は、花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる。

現代語訳桜は、花びらが大きく、葉の色が濃いものが、細い枝に咲いているの(がよい)。

  • 「咲きたる」は存続の「たり」の連体形で「咲いている」。下に「もの(がよい)」が省かれている。→完了・存続の助動詞「たり・り」
  • 「濃きが」の「が」は「〜であるもの」の意味で、「〜で(あって)」と軽く訳すと自然。

3

藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。

現代語訳藤の花は、花房が長くしなやかに垂れて、色濃く咲いているのが、たいへんすばらしい。

4

四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし。

現代語訳四月の終わりから五月の初めのころ、橘の葉が濃い緑色をしているところに、花がとても白く咲いているのが、雨がさっと降った翌朝などは、世に比べるものがないほど趣のある様子で美しい。

  • 「つごもり」は月の終わり、「ついたち」は月の初め、「つとめて」は早朝・翌朝。旧暦の四月末〜五月初めは、今の暦では5月下旬〜6月ごろにあたる。→旧暦の月の名前と季節のずれ
  • 橘(たちばな)は、日本にもとからあるみかんのなかまの木。初夏に白い花が咲き、秋に小さな黄色い実がなる。京都御所の紫宸殿の前には「右近の橘」が植えられている。
  • 「白う」「世になう」は「白く」「世になく」のウ音便。→古文の音便(イ音便・ウ音便)
  • 「をかし」は明るく知的な「趣がある・美しい」。枕草子をつらぬく言葉。
うかるくん
うかるくん
橘って、どんな木ですか? 見たことないかも…。
ミスターT先生
ミスターT先生
みかんのなかまや。初夏に白い花、秋に小さい黄色の実。京都御所の紫宸殿の前の「右近の橘」が有名やな。ひな人形の飾りにも「左近の桜・右近の橘」があるやろ?

5

花の中より黄金の玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露にぬれたるあさぼらけの桜に劣らず。

現代語訳(白い)花の中から(実が)黄金の玉かと見えて、とてもくっきりと見えているのなどは、朝露にぬれている明け方の桜にも負けない。

  • 「黄金の玉」は、花の中にのぞく橘の実のこと。白い花・緑の葉・黄色い実の色の取り合わせをほめている。
  • 「あさぼらけ」は、夜がほのぼのと明けるころ。「いみじう」は「いみじく」のウ音便で「とても」。

6

ほととぎすのよすがとさへ思へばにや、なほさらに言ふべうもあらず。

現代語訳(橘は)ほととぎすがとまって鳴く木だとまで思うからだろうか、やはりあらためて言うまでもない(ほどすばらしい)。

  • 「思へばにや」は「思へばにやあらむ」の「あらむ」が省かれた形(結びの省略)。「に」は断定「なり」の連用形。訳は「〜からだろうか」。→係り結びと結びの省略
  • 「よすが」は、たよりにするところ・ゆかり。橘とほととぎすは和歌でよくいっしょによまれる組み合わせ。『古今和歌集』の「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」も、橘の花の香りの歌として有名。
  • 「言ふべうもあらず」は「言うまでもない」。→助動詞「べし」の6つの意味
サクラちゃん
サクラちゃん
「思へばにや」の「にや」って、そのあと何もないんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「あらむ」が省かれてるんや。「にや(あらむ)」で「〜だろうか」。結びが省かれる「にや・にか」は、見つけたら「あらむ」をおぎなって訳す。これは覚えとき。

7

梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず。

現代語訳梨の花は、まったく興ざめなものとされていて、身近に置いて大切にすることもなく、ちょっとした手紙を結びつけることさえしない。

  • 「すさまじ」は今の「すごい」ではなく「興ざめだ・つまらない」。→古今異義語の一覧(すさまじ・あいなし)
  • 「だに」は「〜さえ」(軽いものを挙げて、ほかはまして、と思わせる)。→副助詞「だに・すら・さへ」の違い
  • 平安時代は、手紙を季節の花の枝に結びつけて送るのが風流とされた。梨の花はその役にも使われなかった、ということ。梨(なし)は今の梨と同じなかまで、春に白い花が咲く。
うかるくん
うかるくん
「すさまじきもの」って、すごいものって意味じゃないんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
それが古今異義語のワナや! 古文の「すさまじ」は興ざめだ・つまらない。梨の花は「ぱっとしない花」と言われてたんや。

8

愛敬おくれたる人の顔などを見ては、たとひに言ふも、げに、葉の色よりはじめて、あいなく見ゆるを、唐土には限りなきものにて、文にも作る、

現代語訳かわいげのない人の顔などを見ては、(梨の花のようだと)たとえに言うのも、なるほど、葉の色をはじめとして、ぱっとしなく見えるのに、中国ではこの上ないものとして、漢詩にも作る(のだから)、

  • 「愛敬おくる」は、かわいげ・魅力がとぼしいこと。「げに」は「なるほど・本当に」。
  • 「あいなし」は「つまらない・おもしろくない」。「唐土」(もろこし)は中国、「文」はここでは漢詩・漢文のこと。

9

なほさりともやうあらむと、せめて見れば、花びらの端に、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。

現代語訳やはり、そうはいってもわけがあるのだろうと思って、じっくり見ると、花びらの端に、美しい色つやが、ほんのかすかについているようだ。

  • 係り結び:「こそ」があるので文末は已然形「めれ」。「ためれ」は「たるめれ」→「たんめれ」→「た(ん)めれ」。→推定の助動詞「めり」(なめり・ためり)
  • 「にほひ」は香りではなく美しい色つや。「心もとなう」は「心もとなく」のウ音便で、ここでは「かすかに・ぼんやりと」。
  • 「せめて」は「しいて・むりに」。今の「せめて〜だけでも」とはちがう。
ミスターT先生
ミスターT先生
「こそ…ためれ」。「ためれ」は「たる」の「る」が「ん」になって消えた形に「めり」。「なめり」と同じしくみやな。ここ、テストに出るで!

10

楊貴妃の、帝の御使ひに会ひて泣きける顔に似せて、「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」など言ひたるは、おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあらじとおぼえたり。

現代語訳楊貴妃が、皇帝の使者に会って泣いた顔にたとえて、「梨の花の一枝が、春の雨にぬれている」などと(漢詩に)言っているのは、並たいていのことではないだろうと思うと、やはりとてもすばらしいことは、ほかに比べるものがないだろうと思われた。

  • ここは中国・唐の詩人白居易(白楽天)の長い詩「長恨歌」をふまえている。玄宗皇帝に愛された楊貴妃が亡くなったあと、仙人の世界で皇帝の使いに会い、涙を流す姿を「梨花一枝春帯雨」(梨の花の一枝が春の雨にぬれている)とたとえた。
  • 「おぼろけならじ」の「じ」は打消推量(〜ないだろう)。「おぼろけなり」は「並ひととおりだ」。→打消推量の「じ」と「まじ」
  • 日本では地味な梨の花も、漢詩の世界では美人の涙にたとえられる。作者の漢詩の知識がよく出ている所。
サクラちゃん
サクラちゃん
楊貴妃って、世界三大美女の楊貴妃ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
そうや。白居易の「長恨歌」は、玄宗皇帝と楊貴妃の恋を歌った長い詩で、平安時代の貴族の大人気作品やった。清少納言はそれを知ってたから、梨の花を見直したんやな。
合格先生
合格先生
T先生の授業では「長恨歌」の句を黒板に書いて、漢文の授業とつなげてくれました。古文と漢文はつながっているんです。

11

桐の木の花、紫に咲きたるはなほをかしきに、葉の広ごりざまぞ、うたてこちたけれど、異木どもとひとしう言ふべきにもあらず。

現代語訳桐の木の花が、紫色に咲いているのはやはり趣があるが、葉の広がり方は、いやに大げさだけれど、ほかの木と同じように言うべきものではない。

  • 桐(きり)は初夏にうす紫の花が咲き、大きな葉をつける木。軽くて湿気に強く、今もたんすや下駄・琴の材料に使われる。
  • 「うたて」は「いやに・ひどく」、「こちたし」は「大げさだ・うるさいほど多い」。「異木」(ことき)は「ほかの木」。

12

唐土にことごとしき名つきたる鳥の、えりてこれにのみゐるらむ、いみじう心ことなり。

現代語訳中国でたいそうな名前のついた鳥が、えらんでこの木にだけとまるというのは、とても格別だ。

  • 「ことごとしき名つきたる鳥」は鳳凰(ほうおう)のこと。中国の言い伝えで、鳳凰は桐の木にだけとまるとされた。
  • 「らむ」は目の前にないことを想像する現在推量(今ごろ〜ているだろう)。ここは連体形で「〜とかいう(こと)」。→現在推量の助動詞「らむ」
  • 「ゐる」は「とまる・座る」。「心ことなり」は「格別だ」。
うかるくん
うかるくん
「ことごとしき名つきたる鳥」って、なんの鳥ですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
鳳凰や。中国の言い伝えでは、鳳凰は桐の木にしかとまらへん。名前をはっきり言わずにぼかすのも、知ってる人どうしで楽しむ書き方やな。

13

まいて琴に作りて、さまざまなる音のいでくるなどは、をかしなど世の常に言ふべくやはある、いみじうこそめでたけれ。

現代語訳まして、琴に作って、いろいろな音が出てくることなどは、「趣がある」などとありふれた言い方で言ってよいだろうか、いや言えない。たいへんすばらしいのだ。

  • 「やは」は反語(〜だろうか、いや〜ない)。係り結びで文末は連体形「ある」。「こそ」の結びは已然形「めでたけれ」。1文に係り結びが2つ。→係り結び(反語の「やは」と「こそ」)
  • 「まいて」は「まして」のイ音便。「世の常」は「ありふれたこと」。
合格先生
合格先生
「言ふべくやはある」は反語、「いみじうこそめでたけれ」は強調。1文に係り結びが2つある所は、T先生に線を引いて矢印で結べと教わりました。

14

木のさまにくげなれど、楝の花いとをかし。かれがれに、さまことに咲きて、必ず五月五日にあふもをかし。

現代語訳木の形はみっともないけれど、楝の花はとても趣がある。まばらに、ほかとはちがった様子で咲いて、必ず五月五日(端午の節句)に(花の時期が)重なるのもおもしろい。

  • 楝(あふち、読みは「おうち」)は今のセンダンの古い名前。初夏にうす紫の小さな花が咲く。
  • 「にくげなり」は「みっともない・感じが悪い」。「にくし」の仲間も古今異義語。「かれがれに」は「まばらに」、「さまことに」は「ふつうとちがって」。→古今異義語の一覧(にくし・をかし)
  • 五月五日は端午の節句。旧暦なので今の6月ごろで、ちょうど楝の花が咲く時期にあたる。

梨の花の見方が変わるしくみを図で確かめる

日本では すさまじき(興ざめな) 花。手紙もつけない 中国(唐)では 白居易「長恨歌」 梨花一枝春帯雨 作者の結論 やはり比べるものが ないほどすばらしい 「梨花一枝春帯雨」の意味 梨の花の一枝が、春の雨にぬれている(ような姿)。 亡くなった楊貴妃が、皇帝の使いに会って涙を流す顔のたとえ。
図2 梨の花の見方が変わる流れ(日本の感じ方と漢詩の世界)
ミスターT先生
ミスターT先生
日本の感じ方と、漢詩の世界の見方。その両方を知ってるから「見直す」ことができる。これが清少納言の教養やで。

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
紅梅こうばい紅色の花の梅
しなひしないしなやかに垂れた花房
つごもりつごもり月の終わり(月末)
つとめてつとめて早朝・翌朝
あさぼらけあさぼらけ夜がほのぼのと明けるころ
よすがよすがたよりにするところ・ゆかり
すさまじすさまじ興ざめだ・つまらない
あいなしあいなしつまらない・おもしろくない
せめてせめてしいて・むりに
にほひにおい美しい色つや
おぼろけなりおぼろけなり並ひととおりだ(下に打消が多い)
うたてうたていやに・ひどく
こちたしこちたし大げさだ・うるさいほど多い
めでたしめでたしすばらしい・りっぱだ
楝おうちセンダンの古い名前

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「木の花は」の段は、枕草子の3種類の章段のうちどれ?

類聚章段(「〜は」「〜もの」とものを集めて挙げる段)。

問2 「橘」はどんな植物?

みかんのなかまの木。初夏に白い花が咲き、黄色い実がなる。和歌ではほととぎすといっしょによまれることが多い。

問3 「梨の花、よにすさまじきものにして」の「すさまじ」の意味は?

興ざめだ・つまらない。今の「すさまじい(ものすごい)」とはちがう。

問4 「をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ」の「ためれ」を文法的に説明しなさい。

存続の助動詞「たり」の連体形「たる」が撥音便「たん」になり「ん」が書かれない形「た」+推定の助動詞「めり」の已然形「めれ」(係助詞「こそ」の結び)。

問5 「梨花一枝、春、雨を帯びたり」は、だれのどの詩をふまえている?

唐の白居易(白楽天)の「長恨歌」。楊貴妃が涙を流す姿を、雨にぬれた梨の花にたとえた句。

問6 「唐土にことごとしき名つきたる鳥」とは何の鳥?

鳳凰。中国で、鳳凰は桐の木にだけとまると言い伝えられた。

問7 「をかしなど世の常に言ふべくやはある」を現代語訳しなさい。

「趣がある」などとありふれた言い方で言ってよいだろうか、いや言えない。(「やは」は反語)

問8 「楝の花」が「必ず五月五日にあふ」とはどういうこと?

楝(センダン)の花の時期が、毎年ちょうど端午の節句(旧暦五月五日)に重なるということ。

うかるくん
うかるくん
花の名前と今の名前がつながって、景色が見えてきました! 梨の花の話、テストでも書けそうです。

枕草子「木の花は」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

木の花は、濃きも薄きも紅梅。

桜は、花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる。

藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。

四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし。

花の中より黄金の玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露にぬれたるあさぼらけの桜に劣らず。

ほととぎすのよすがとさへ思へばにや、なほさらに言ふべうもあらず。

梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず。

愛敬おくれたる人の顔などを見ては、たとひに言ふも、げに、葉の色よりはじめて、あいなく見ゆるを、唐土には限りなきものにて、文にも作る、

なほさりともやうあらむと、せめて見れば、花びらの端に、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。

楊貴妃の、帝の御使ひに会ひて泣きける顔に似せて、「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」など言ひたるは、おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあらじとおぼえたり。

桐の木の花、紫に咲きたるはなほをかしきに、葉の広ごりざまぞ、うたてこちたけれど、異木どもとひとしう言ふべきにもあらず。

唐土にことごとしき名つきたる鳥の、えりてこれにのみゐるらむ、いみじう心ことなり。

まいて琴に作りて、さまざまなる音のいでくるなどは、をかしなど世の常に言ふべくやはある、いみじうこそめでたけれ。

木のさまにくげなれど、楝の花いとをかし。かれがれに、さまことに咲きて、必ず五月五日にあふもをかし。

枕草子「木の花は」現代語訳(全文・通し)

木に咲く花では、色が濃いのも薄いのも、紅梅(がいちばんだ)。

桜は、花びらが大きく、葉の色が濃いものが、細い枝に咲いているの(がよい)。

藤の花は、花房が長くしなやかに垂れて、色濃く咲いているのが、たいへんすばらしい。

四月の終わりから五月の初めのころ、橘の葉が濃い緑色をしているところに、花がとても白く咲いているのが、雨がさっと降った翌朝などは、世に比べるものがないほど趣のある様子で美しい。

(白い)花の中から(実が)黄金の玉かと見えて、とてもくっきりと見えているのなどは、朝露にぬれている明け方の桜にも負けない。

(橘は)ほととぎすがとまって鳴く木だとまで思うからだろうか、やはりあらためて言うまでもない(ほどすばらしい)。

梨の花は、まったく興ざめなものとされていて、身近に置いて大切にすることもなく、ちょっとした手紙を結びつけることさえしない。

かわいげのない人の顔などを見ては、(梨の花のようだと)たとえに言うのも、なるほど、葉の色をはじめとして、ぱっとしなく見えるのに、中国ではこの上ないものとして、漢詩にも作る(のだから)、

やはり、そうはいってもわけがあるのだろうと思って、じっくり見ると、花びらの端に、美しい色つやが、ほんのかすかについているようだ。

楊貴妃が、皇帝の使者に会って泣いた顔にたとえて、「梨の花の一枝が、春の雨にぬれている」などと(漢詩に)言っているのは、並たいていのことではないだろうと思うと、やはりとてもすばらしいことは、ほかに比べるものがないだろうと思われた。

桐の木の花が、紫色に咲いているのはやはり趣があるが、葉の広がり方は、いやに大げさだけれど、ほかの木と同じように言うべきものではない。

中国でたいそうな名前のついた鳥が、えらんでこの木にだけとまるというのは、とても格別だ。

まして、琴に作って、いろいろな音が出てくることなどは、「趣がある」などとありふれた言い方で言ってよいだろうか、いや言えない。たいへんすばらしいのだ。

木の形はみっともないけれど、楝の花はとても趣がある。まばらに、ほかとはちがった様子で咲いて、必ず五月五日(端午の節句)に(花の時期が)重なるのもおもしろい。

枕草子「木の花は」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(枕草子の基本)

枕草子の作者は誰?

清少納言です。一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、歌人の清原元輔の娘です。

枕草子はいつの作品?

平安時代の中ごろ、1000年(長保2年)前後に書かれたとされます。

枕草子の冒頭(書き出し)は?

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」です。

枕草子はどんな作品?

日本最古の随筆とされ、鴨長明『方丈記』、兼好法師(吉田兼好)『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つです。「〜もの」と物を集める類聚章段、自然や人を見て感じたことを書く随想章段、宮仕えの思い出を書く回想(日記)章段の3種類の段があり、「をかし」の文学と呼ばれます。

枕草子の目次(教科書に出る段)

枕草子の入口(教科書に出る段の一覧・作者清少納言と中宮定子) 「定番」は教科書によく出る段です。

  1. 枕草子「春はあけぼの」の原文・現代語訳とテストに出る語句 定番
  2. 枕草子「うつくしきもの」の原文・現代語訳 定番
  3. 枕草子「にくきもの」の原文・現代語訳 定番
  4. 枕草子「すさまじきもの」の原文・現代語訳 定番
  5. 枕草子「ありがたきもの」の原文・現代語訳 定番
  6. 木の花は(このページ) 定番
  7. 枕草子「虫は」の原文・現代語訳 定番
  8. 枕草子「上にさぶらふ御猫は」の原文・現代語訳 定番
  9. 枕草子「中納言参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  10. 枕草子「雪のいと高う降りたるを」の原文・現代語訳 定番
  11. 枕草子「宮に初めて参りたるころ」の原文・現代語訳 定番
  12. 枕草子「九月ばかり」の原文・現代語訳 定番
  13. 枕草子「五月ばかりなどに山里にありく」の原文・現代語訳 定番
  14. 枕草子「二月つごもりごろに」の原文・現代語訳 定番
  15. 枕草子「頭の弁の、職に参りたまひて」の原文・現代語訳 定番
  16. 枕草子「大進生昌が家に」の原文・現代語訳 定番
  17. 枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」の原文・現代語訳 定番
  18. 枕草子「ころは」の原文・現代語訳
  19. 枕草子「鳥は」の原文・現代語訳
  20. 枕草子「草の花は」の原文・現代語訳
  21. 枕草子「心ときめきするもの」の原文・現代語訳
  22. 枕草子「過ぎにしかた恋しきもの」の原文・現代語訳
  23. 枕草子「うれしきもの」の原文・現代語訳
  24. 枕草子「はしたなきもの」の原文・現代語訳
  25. 枕草子「かたはらいたきもの」の原文・現代語訳
  26. 枕草子「清涼殿の丑寅の隅の」の原文・現代語訳
  27. 枕草子「野分のまたの日こそ」の原文・現代語訳
  28. 枕草子「月のいと明かきに」の原文・現代語訳
  29. 枕草子「正月一日は」の原文・現代語訳
  30. 枕草子「職の御曹司におはしますころ」の原文・現代語訳
  31. 枕草子「遠くて近きもの・近うて遠きもの」の原文・現代語訳
ミスターT先生
ミスターT先生
次は「虫は」。みのむしが「ちちよ、ちちよ」と鳴く、ちょっと切ない話が出てくる定番の段やで。お楽しみに!

あわせて読みたい古文のページ

本文は『枕草子』を、教科書で広く読まれる形(三巻本系)にそろえ、新字体・現代の送り仮名に直したものです(参考にした古い本:Wikisource の枕草子、明治の『國文大觀』〈能因本系〉)。枕草子は本によって語句や段の分け方が少しずつちがうため、段の番号ではなく段の名前で示しています。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。