古文の助動詞「らし」の意味と活用|根拠のある推定・けらしの訳し方・接続・練習問題【大学受験】

古文の助動詞「らし」の意味と活用|根拠のある推定・けらしの訳し方・接続・練習問題【大学受験】

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大学受験

ひとことで言うと

助動詞「らし」は終止形(ラ変型は連体形)につき、はっきりした根拠にもとづく推定(〜らしい・〜にちがいない)を表す。活用は無変化型で、上代に多く、平安時代以降はおもに和歌で使われます。

このページのポイント

  • 接続は終止形(ラ変型は連体形)、活用は無変化型(○・○・らし・らし(らしき)・らし・○)
  • 意味は推定:根拠から「〜らしい・〜にちがいない」
  • 根拠は多く同じ歌の中にある(衣手寒し・もみぢ葉流る・衣干したり)
  • 「けらし」=けるらし(〜たらしい)、「あらし」=あるらし、「ならし」=なるらし
  • 万葉集に多く、平安時代は和歌が中心

はじめて(やさしく)

古文の「らし」は、はっきりした根拠(証拠)をもとに「〜らしい・〜にちがいない」とおしはかる助動詞です。「袖が寒い。だから山では雪が降っているらしい」のように、いま確かなことから、見えないことを考えるときに使います。

「らし」は、奈良時代の『万葉集』の歌にたくさん出てくる、とても古いことばです。平安時代になると、おもに和歌の中で使われ、物語や日記の地の文にはほとんど出てこないと説明されます。だから「らし」に出会うのは、たいてい和歌の中です。

「らし」は根拠からの推定根拠(いま確かなこと)夕されば衣手寒し推定(そこから考える)吉野の山にみ雪降るらし根拠があるから「〜らしい・〜にちがいない」
「衣手寒し」という根拠から、「吉野の山に雪が降っているらしい」とおしはかる
うかるくん

うかるくん

「らし」って、今のことばの「〜らしい」と同じでしょ? かんたんだね!

合格先生

合格先生

訳は「〜らしい」でいいんだけど、古文の「らし」は根拠がはっきりしているのが特徴なんだ。だから「〜にちがいない」と、強めに訳すとぴったりの歌も多いよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

根拠って、歌のどこに書いてあるの?

合格先生

合格先生

たいてい同じ歌の中にある。「衣手寒し(袖が寒い)」「もみぢ葉流る(紅葉が流れている)」のような、いま目の前にある事実が根拠だよ。歌の中から根拠をさがすのが、「らし」を読むコツなんだ。

見えている川から、見えない山をおしはかる三室の山(上流)時雨降るらし(推定)上流では…?竜田川(目の前)もみぢ葉流る(根拠)目の前の事実(根拠)→ 見えない所を推定
目の前の竜田川に紅葉が流れている(根拠)→ 上流の三室の山では時雨が降っているらしい(推定)
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「らし」は終止形(ラ変型は連体形)につく、根拠のある推定の助動詞。訳は「〜らしい・〜にちがいない」。歌の中の根拠をさがそう!

わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。

ここまでのまとめ

  • 「らし」=はっきりした根拠から「〜らしい・〜にちがいない」とおしはかる
  • 根拠は、たいてい同じ歌の中にある
  • 万葉集に多い古いことば。平安時代は和歌が中心

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

「らし」の接続・活用・意味の表

「らし」は終止形につきます。ただしラ変動詞やラ変型に活用する語には連体形につきます。これは「めり」「なり」「べし」など、終止形接続の助動詞に共通するきまりです(助動詞の接続)。活用は、形がほとんど変わらない無変化型(特殊型とも)です。

語未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の型
らし○○らしらし(らしき)らし○無変化型

連体形「らしき」は上代(奈良時代)の例で、平安時代以降はおもに「らし」の形です。已然形「らし」は、係助詞「こそ」の結びとして使われます。

意味訳し方ポイント
推定〜らしい・〜にちがいない根拠となる事実(多くは歌の中に示される)にもとづいて、確信をもっておしはかる
「らし」の活用(無変化型)未然形○なし連用形○なし終止形らし文末連体形らし(らしき)+体言已然形らしこその結び命令形○なし形がほとんど変わらない「無変化型」けらし=けるらし/あらし=あるらし/ならし=なるらし
「らし」は無変化型。「けらし」「あらし」「ならし」は、連体形の「る」が落ちた形

「らし」を読む手順

  1. 「らし」の上の語が終止形(ラ変型なら連体形)か確かめる。「けらし」「あらし」は「ける」「ある」の「る」が落ちた形。
  2. 同じ歌(文)の中から根拠をさがす(「〜寒し」「〜流る」「衣干したり」など)。
  3. 根拠→推定の順に、「(根拠)なので、(推定)らしい」と訳す。

例文で確かめる

夕されば衣手寒しみ吉野の吉野の山にみ雪降るらし

(古今和歌集・冬・よみ人しらず)

現代語訳夕方になると袖のあたりが寒い。吉野の山では雪が降っているらしい。

ここがポイント「衣手寒し」(袖が寒い)が根拠で、そこから見えない吉野の山の雪を推定しています。「降る」は四段の終止形。

竜田川もみぢ葉流る神なびの三室の山に時雨降るらし

(古今和歌集・秋下・よみ人しらず)

現代語訳竜田川に紅葉の葉が流れている。(上流の)神なびの三室の山では時雨が降っている(そして紅葉を散らしている)らしい。

ここがポイント目の前の川を紅葉が流れているのが根拠。上流の山の時雨は見えていないので、「らし」で推定しています。「流る」は下二段の終止形で、ここで文が切れる(二句切れ)。
百人一首2番 持統天皇の絵札
百人一首2番・持統天皇の絵札。「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」。白い衣が干されているようすから、夏の訪れを感じとった歌です。画像:絵札「Hyakuninisshu 002」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

(百人一首2番・持統天皇(春過ぎて)/新古今和歌集・夏)

現代語訳春が過ぎて、夏が来たらしい。(夏になると)白い衣を干すという天の香具山に(衣が干してあるよ)。

ここがポイント「来に」は完了「ぬ」の連用形、「けらし」は過去「けり」の連体形「ける」+「らし」の「けるらし」がつまった形で、「〜たらしい」と訳します。白い衣が干されていることが、夏が来たと推定する根拠です。

春過ぎて夏来たるらし白たへの衣干したり天の香具山

(万葉集・巻一・二八・持統天皇(訓み方は本により「夏来るらし」などとも))

現代語訳春が過ぎて、夏が来たらしい。真っ白な衣が干してある、天の香具山に。

ここがポイント百人一首2番のもとになった万葉集の歌。「衣干したり」と目の前の事実をはっきり言い、それを根拠に「夏来たるらし」と推定しています。「らし」のもともとの使い方がよくわかる歌です。
持統天皇の歌:もとの形と百人一首の形万葉集(巻一)春過ぎて夏来たるらし白たへの衣干したり衣が干してある(目の前の根拠)→ らし新古今和歌集・百人一首2番春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ「てふ(という)」が入り、やわらかな形に根拠が「見た事実」から「〜という」へ
万葉集では「衣干したり」と事実を示す。新古今・百人一首では「衣ほすてふ」とやわらかな形になる

新古今和歌集に入った形では「衣ほすてふ(=という)」となり、目の前の事実を言い切る万葉集の形より、伝え聞いたことを思いうかべるような、やわらかで優美な歌い方に変わっている、と説明されることが多いです。「てふ」は「といふ」がつまった形で、和歌によく出てきます(和歌の修辞もあわせて読むと、平安以降の和歌の好みがわかります)。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「けらし」「あらし」「ならし」:連体形の「る」が落ちた形

ラ変型の語に「らし」がつくときは、連体形につくはずなので「けるらし」「あるらし」「なるらし」となるはずです。ところが実際の歌では、多くが「けらし」「あらし」「ならし」と、「る」が落ちた形で出てきます。「めり」「なり」の「あめり」「あなり」(撥音便の「ん」が書かれない形)と似ていますが、「らし」の場合は「る」が落ちてつまった形と説明されるのがふつうです。

書かれる形もとの形でき方訳
けらしけるらし過去「けり」の連体形+らし〜たらしい
あらしあるらしラ変「あり」の連体形+らしあるらしい
ならしなるらし断定「なり」の連体形+らし〜であるらしい

また「けらし」は、平安時代以降の和歌では「〜たらしい」という推定の気持ちがうすれて、「けり」と同じように「〜たのだなあ」と詠嘆をこめて使われることもある、と説明する辞書もあります。百人一首2番の「夏来にけらし」も、「夏が来たらしい」と訳すのが一般的ですが、「夏が来たのだなあ」という感動を読みとる説明もあります。

2. 「〜らし」は助動詞? 形容詞・名詞との見分け

「らし」で終わる語がすべて助動詞とはかぎりません。「めづらし」「あたらし(惜しい)」のような形容詞は、「めづら+し」のように一語です(形容詞)。また、百人一首22番「むべ山風を嵐といふらむ」(吹くからに)の「あらし」は名詞「嵐」で、助動詞ではありません(この歌の「らむ」は、助動詞「らむ」です)。

「〜らし」は助動詞?けらしける+らし過去「けり」の連体形+らしあらしある+らしラ変「あり」の連体形+らしならしなる+らし断定「なり」の連体形+らしめづらし一語の形容詞助動詞「らし」ではない嵐(あらし)名詞助動詞「らし」ではない上の3つは、連体形の「る」が落ちた形と説明される
「けらし・あらし・ならし」は助動詞「らし」を含む。「めづらし」や「嵐」は助動詞ではない

3. 推定の仲間とくらべる:らし・めり・なり・べし・らむ

同じ終止形接続の推定・推量の助動詞と並べると、「らし」の特徴がはっきりします。「めり」は目で見て、「なり」は耳で聞いて、「らし」ははっきりした根拠からおしはかります。また、百人一首33番「しづ心なく花の散るらむ」(久方の)の「らむ」は、目の前の事実の原因を「どうして〜のだろう」とおしはかるもので、「らし」とは向きが反対です。「らし」は根拠→見えない結果、原因推量の「らむ」は見えている事実→その原因を考えます。

何をもとに、おしはかる?らしはっきりした根拠から〜らしい・〜にちがいないめり目で見て判断〜ようだ・〜と見えるなり耳で聞いて判断〜ようだ・〜そうだべし確信をもって〜にちがいない・〜はずだらむ目の前にない今のこと(今ごろ)〜ているだろうどれも終止形接続(ラ変型は連体形)
終止形接続の推定・推量の仲間。「らし」は根拠がはっきりしているのが特徴

4. 時代による変化と、学説の違い

「らし」は上代(奈良時代)に多く使われ、平安時代には和歌にほぼかぎられるようになり、鎌倉時代以降はあまり使われなくなったと説明されます。平安時代の和歌の「らし」には、根拠が歌の中にはっきり示されない例もあり、「根拠のある推定」という説明があてはまりにくい場合がある、と指摘されることもあります。入試では「根拠のある推定(〜らしい)」と答えれば十分です。

なお、現代語の「〜らしい」(「雨が降るらしい」「子どもらしい」)と古文の「らし」の関係については、そのまま直接つながったものとはいえないとする見方が多く、成り立ちには諸説があります。訳語として「〜らしい」を使うのはかまいませんが、現代語の感覚だけで読まないようにしましょう。

サクラちゃん

サクラちゃん

「らし」の歌って、どれも「目の前の事実」と「見えないこと」がセットになっているんだね!

合格先生

合格先生

そのとおり。だから入試で「らし」の歌が出たら、根拠はどこかを問われることが多い。「袖が寒い」「紅葉が流れる」「衣が干してある」と、根拠を指させるようにしておこう。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

「けらし」は「けるらし」、「あらし」は「あるらし」! ラ変型には連体形でつくから「る」があって、それが落ちた形なんだね。

よくあるまちがい

まちがい1:「らし」を現代語の「〜らしい」と同じ、あいまいな推量だと思う

古文の「らし」は根拠のある推定です。歌の中の根拠をさがし、「(根拠)なので〜らしい・〜にちがいない」と読みましょう。

まちがい2:「けらし」を一語の形容詞と考える

「けらし」は過去「けり」の連体形「ける」+「らし」がつまった形です。「〜たらしい」と訳します。

まちがい3:「らし」が連用形や未然形につくと思う

「らし」は終止形接続(ラ変型は連体形)です。「夏来にけらし」の「に」は完了「ぬ」の連用形ですが、その下は「けり」であって、「らし」がつくのは「けり」(ける)です。

まちがい4:「らし」と「らむ」を混同する

「らし」は根拠から見えないことを推定、「らむ」は現在推量(今ごろ〜しているだろう)や原因推量(どうして〜のだろう)です。活用も、「らし」は無変化型、「らむ」は四段型です。

練習問題

やさしい

  1. 助動詞「らし」の接続と意味を答えなさい。
    答えと解説を見る

    接続:終止形(ラ変型には連体形)。意味:推定(根拠のある推定)「〜らしい・〜にちがいない」。

  2. 「夕されば衣手寒しみ吉野の吉野の山にみ雪降るらし」(古今和歌集)で、「らし」の根拠となっている部分を抜き出しなさい。
    答えと解説を見る

    「衣手寒し」(夕方になって袖のあたりが寒いこと)。これを根拠に、吉野の山の雪を推定している。

ふつう

  1. 「春過ぎて夏来にけらし」の「に」「けらし」を文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形。「けらし」は過去の助動詞「けり」の連体形「ける」+推定の助動詞「らし」の「けるらし」がつまった形。「夏が来たらしい」。

  2. 次の傍線部のうち、助動詞「らし」を含むものをすべて選びなさい(自作)。
    ① 花の色のめづらし。 ② 山に雪あらし。 ③ 野分のあらしはげし。 ④ 都は春ならし。
    答えと解説を見る

    ②と④。② は「ある+らし」がつまった「あらし」(雪があるらしい)。④ は断定「なり」の連体形「なる」+「らし」がつまった「ならし」(都は春であるらしい)。① は形容詞「めづらし」、③ は名詞「嵐」。

むずかしい

  1. 「竜田川もみぢ葉流る神なびの三室の山に時雨降るらし」(古今和歌集)と、「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」(百人一首33番)の「らし」「らむ」のはたらきのちがいを説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「らし」は、目の前の事実(竜田川に紅葉が流れている)を根拠に、見えていない上流の山の時雨を推定している。一方「らむ」は、目の前で花が散っているという事実について、その原因・理由を「どうして(落ち着いた心もなく)散るのだろう」と推量する原因推量。「らし」は根拠→見えない事がら、「らむ」は見えている事実→その原因、と向きが反対である。

関連ページ

和歌の読み方の専用ページは準備中です。助動詞全体の流れは、記事「古文の助動詞一覧」でも読めます。百人一首の歌の訳や品詞は「百人一首 全百首」で確かめられます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

助動詞「らし」の意味は?

はっきりした根拠にもとづく推定で、「〜らしい・〜にちがいない」と訳します。根拠は多く同じ歌の中に示されます。

「けらし」とは何ですか?

過去の助動詞「けり」の連体形「ける」に「らし」がついた「けるらし」がつまった形で、「〜たらしい」と訳します。百人一首2番「夏来にけらし」が有名です。

「らし」の接続と活用は?

終止形接続(ラ変型には連体形)で、活用は無変化型(○・○・らし・らし(らしき)・らし・○)です。

「らし」と「らむ」の違いは?

「らし」は根拠から見えないことを推定し、「らむ」は現在推量(今ごろ〜ているだろう)や原因推量(どうして〜のだろう)を表します。活用も「らし」は無変化型、「らむ」は四段型です。

「らし」は散文にも出てきますか?

上代の万葉集に多く、平安時代以降はおもに和歌で使われ、物語や日記の地の文にはほとんど出てこないと説明されます。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:万葉集(巻一・二八)、古今和歌集(冬・秋下、よみ人しらず)、百人一首(2・22・33番)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 高校の古典文法の標準的な説明(「らし」の接続・活用・意味、「けらし」の成り立ち)にもとづいて作成。中古以降の用法や現代語との関係など説明の違いがある点は本文に記した
  • 画像:百人一首の絵札(2番、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦