古文文法辞典 › 助動詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
伝聞・推定の「なり」は終止形(ラ変型は連体形)につき、音が聞こえることからの推定(〜ようだ)と人から聞いた伝聞(〜そうだ)を表す、耳の助動詞。体言・連体形につく断定の「なり」とは接続で見分けます。
このページのポイント
- 接続は終止形(ラ変型は連体形)、活用はラ変型(○・(なり)・なり・なる・なれ・○)
- 意味は2つ:推定(音・声から「〜ようだ」)と伝聞(「〜そうだ・〜という」)
- 古文の「なり」は4種類:伝聞・推定/断定/形容動詞の語尾/動詞「なる」
- あなり・ななり・ざなり・べかなりは撥音便の無表記+伝聞・推定
- 四段など終止形=連体形の語の下は、音・うわさの文脈で決める
はじめて(やさしく)
古文には「なり」という形がたくさん出てきます。そのうちこのページで学ぶのは、耳で聞いたことをもとにした「なり」です。これを伝聞・推定の助動詞「なり」といいます。
- 推定:音や声が聞こえてくるので「〜ようだ・〜らしい」とおしはかる。(となりの家から「トントン」と音がする→「衣を打っているようだ」)
- 伝聞:人から聞いた話を「〜そうだ・〜という」と伝える。(「あの山は高いそうだ」)
「なり」は、「音(ね)+あり」や「鳴る」と関係のあることばだと説明されることが多く、もとは「音がする」という気持ちだったと考えられています。目で見て「〜ようだ」と言う「めり」(「見+あり」がつまったものとする説がある。くわしくは 助動詞「めり」)と対になる、耳の助動詞だと覚えましょう。
うかるくん
「なり」って、「静かなり」の「なり」も、「春なり」の「なり」もあるよね? 全部同じじゃないの?
合格先生
ちがうんだ。古文の「なり」は大きく4種類。伝聞・推定の「なり」のほかに、断定の「なり」(〜である)、形容動詞の語尾(静かなり)、動詞の「なる」(〜になる)があるよ。
サクラちゃん
見た目が同じなのに、どうやって区別するの?
合格先生
いい質問だね。「なり」のすぐ上の形を見るんだ。伝聞・推定は終止形の下、断定は体言・連体形の下。これが一番の決め手だよ。

合格先生
伝聞・推定の「なり」は終止形に、断定の「なり」は連体形・体言につく。接続のちがいが「なり」の識別のすべての出発点だよ!
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
ここまでのまとめ
- 伝聞・推定の「なり」=耳で知ったことを表す助動詞
- 推定:音が聞こえる→「〜ようだ」、伝聞:人から聞いた→「〜そうだ・〜という」
- 古文の「なり」は4種類。すぐ上の形で見分ける
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
接続・活用・意味の表
伝聞・推定の「なり」は終止形につきます。ただしラ変動詞やラ変型に活用する語(形容詞のカリ活用・形容動詞・ず・たり・り・べし など)には連体形につきます。これは「べし」など終止形接続の助動詞に共通するきまりです。活用はラ変型です。
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| なり(伝聞・推定) | ○ | (なり) | なり | なる | なれ | ○ | ラ変型 |
連用形「なり」は「なりけり」などの例がごく少ないため、かっこに入れる本が多くあります。未然形と命令形はありません。
| 意味 | 訳し方 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 推定 | 〜ようだ・〜らしい・〜が聞こえる | 音・声が聞こえてきて、そこから判断する(聴覚による推定) |
| 伝聞 | 〜そうだ・〜という・〜と聞いている | 人から聞いた話・世間のうわさ・書物で知ったことを伝える |
断定の「なり」とのちがい
いちばん大事なのは、断定の「なり」(断定の助動詞「なり・たり」)との識別です。2つを表で比べてみましょう。
| 伝聞・推定の「なり」 | 断定の「なり」 | |
|---|---|---|
| 接続 | 終止形(ラ変型は連体形) | 体言・連体形(助詞などにもつく) |
| 活用 | ラ変型:○・(なり)・なり・なる・なれ・○ | 形容動詞型:なら・なり/に・なり・なる・なれ・なれ |
| 意味 | 推定(〜ようだ)・伝聞(〜そうだ) | 断定(〜である)・存在(〜にある) |
| 例 | 男もすなる日記(土佐日記) | 女もしてみむとてするなり(土佐日記) |
土佐日記の冒頭の1文には、この2つが並んでいます。「す」はサ変「す」の終止形なので、その下の「なる」は伝聞。「する」はサ変「す」の連体形なので、その下の「なり」は断定です。入試でくり返し使われる、識別の基本の例です。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
(土佐日記・冒頭)
現代語訳男も書くと聞いている日記というものを、女(の私)も書いてみようと思って書くのである。
「なり」の識別の手順
- 「〜と」「〜に」の下にあって「〜になる」と変化を表せば、動詞「なる」(「淵となりぬる」)。
- 「いと(とても)」をつけて意味が通る語の一部なら、形容動詞の語尾(「あはれなり」「静かなり」)。くわしくは形容動詞のページ。
- 上が終止形、または「あ・な・ざ・べか・多か」などの撥音便の無表記なら、伝聞・推定。
- 上が体言・連体形なら断定(場所を表す語+「なる」は「〜にある」という存在)。
- 上が四段・上一段・下一段など、終止形と連体形が同じ形の語なら、形では決まらない。音・声やうわさの文脈なら伝聞・推定、そうでなければ断定と、文脈で判断する。

うかるくん
ポイントは終止形と連体形の形がちがう語(ラ変・ナ変・サ変・カ変・二段・形容詞など)なら形だけで決まること。「す」と「する」、「あり」と「ある」のちがいが手がかりになるんだね!
例文で確かめる

み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり
(百人一首94番・参議雅経(み吉野の))
現代語訳吉野の山の秋風が吹き、夜もふけて、古い都のあった里は寒々として、衣を打つ(砧の)音が聞こえてくる。
わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり
(百人一首8番・喜撰法師(わが庵は))
現代語訳私の庵は都の東南にあり、このように(心静かに)住んでいる。それなのに、世をつらく思って住む宇治山だと、世間の人は言っているそうだ。
駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近くはべる。
(竹取物語・ふじの山)
現代語訳駿河の国にあるという山が、この都からも近く、天にも近うございます。
世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、
(更級日記・冒頭)
現代語訳世の中に物語というものがあるそうだが、それをなんとかして見たいと思い続けて、
もっと深く(難関大・上級者)
1. 撥音便の無表記:あなり・ななり・ざなり・べかなり
ラ変型に活用する語の連体形「〜る」に伝聞・推定の「なり」がつくと、「る」が撥音便で「ん」に変わります(あるなり→あんなり)。平安時代のかな文では、この「ん」を書かないことがよくありました(あなり)。これを撥音便の無表記といいます。読むときは「アンナリ」と「ん」を補います。
| 書かれる形 | もとの形 | でき方 | 訳 |
|---|---|---|---|
| あなり・あなる | あるなり | ラ変「あり」の連体形+なり | あるそうだ・あるようだ |
| ななり | なるなり | 断定「なり」の連体形「なる」+なり | 〜であるそうだ・〜であるようだ |
| ざなり | ざるなり | 打消「ず」の連体形「ざる」+なり | 〜ないそうだ・〜ないようだ |
| べかなり | べかるなり | 「べし」の連体形「べかる」+なり | 〜にちがいないそうだ・〜はずのようだ |
| 多かなり | 多かるなり | 形容詞「多し」のカリ活用の連体形+なり | 多いそうだ・多いようだ |
ここで大事なのは、撥音便(無表記)の下の「なり」は、ほぼ伝聞・推定と考えてよいことです。断定の「なり」は連体形につくので、「ある+なり」のように撥音便を起こさずにそのままつくのがふつうだからです。だから「あなり」「ななり」「ざなり」を見たら、すぐに「伝聞・推定」と判断できます。同じしくみは推定の「めり」でも起こり、「あめり」「なめり」「ざめり」「べかめり」となります。
この人、国に必ずしも言ひ使ふ者にもあらざなり。
(土佐日記・十二月二十三日(教科書に多い本文による。写本により「あらざるなり」など異同あり))
現代語訳この人は、(任国で)必ずしも(私が)召し使っている者でもないそうだ。
2. 終止形と連体形が同じ形の語の下:文脈で決める
四段・上一段・下一段の動詞は、終止形と連体形が同じ形です(鳴く・打つ・いふ・見る)。この下の「なり」は形だけでは決まりません。そのときの手がかりは次の3つです。
- 音や声を表す語(鳴く・打つ・吹く・声す・音す)がある → 推定になりやすい
- 話し手がその場で耳にしている場面 → 推定
- 人のうわさ・話(いふ・聞く・〜とかや)として伝えている → 伝聞
世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
(百人一首83番・皇太后宮大夫俊成(世の中よ))
現代語訳世の中というものは、(つらさからのがれる)道はないものだなあ。思いつめて入った山の奥にも、(悲しげに)鹿が鳴いているのが聞こえる。

3. 百人一首で「なり」の4種類を見分ける
| 歌 | 「なり」の上 | 種類 |
|---|---|---|
| 衣打つなり(94番) | 四段「打つ」(音の場面) | 伝聞・推定(推定) |
| 人はいふなり(8番) | 四段「いふ」(うわさ) | 伝聞・推定(伝聞) |
| 鹿ぞ鳴くなる(83番) | 四段「鳴く」(声の場面) | 伝聞・推定(推定) |
| 紅葉なりけり(32番) | 体言「紅葉」 | 断定(〜である) |
| 春日なる三笠の山(7番) | 体言(地名)「春日」 | 断定の存在(〜にある) |
| かこち顔なるわが涙(86番) | 「かこち顔」 | 形容動詞「かこち顔なり」の連体形 |
| 淵となりぬる(13番) | 「淵と」(〜と) | 動詞「なる」の連用形 |
7番の「春日なる三笠の山」や20番「難波なる」のように、地名+なる+体言の形は「〜にある」と訳す存在の断定です。「春日という三笠の山」と伝聞で訳さないように注意しましょう。地名は体言なので、接続の点からも伝聞・推定にはなりません。
4. 「推定」と「伝聞」の見分けと、学説の違い
伝聞・推定の「なり」の中で、推定と伝聞のどちらかを答えさせる問題もあります。その場で音・声を聞いているなら推定、人から聞いた話・世間の話なら伝聞です。「〜なる+体言」の形(「あるなる山」「すなる日記」)は伝聞が多く、「〜という」と訳すと自然です。
なお、この「なり」の扱いには説明の違いがあります。終止形につく「なり」を断定の「なり」と別の語として立て、聴覚にもとづく推定を中心に説明する考え方は、近代以降の国語学の研究で広まったものと説明されます。本によって「推定・伝聞」と書く順序や、どちらを中心の意味とするかが少しちがいます。入試では「伝聞・推定」と答えれば十分です。
サクラちゃん
「ななり」が「なるなり」だなんて! 「な」が2つも消えたみたいに見えるね。
合格先生
そう。だから「あ・な・ざ・べか・多か+なり(めり)」の形を見たら、すぐに撥音便の無表記を疑う。難関大の文法問題の定番だよ。「べし」のページの「べかなり」もいっしょに覚えておこう。
よくあるまちがい
まちがい1:「なり」を全部「〜である」(断定)と訳す
終止形の下の「なり」は伝聞・推定です。まず「なり」の上の語が終止形か連体形かを確かめましょう。
まちがい2:「あなり」「ななり」の「あ」「な」で手が止まる
「あ」「な」「ざ」「べか」の下の「なり」は、撥音便の「ん」が書かれていない形です。「あ(ん)なり」「な(ん)なり」と「ん」を補って考えます。
まちがい3:四段動詞の下の「なり」を形だけで決める
四段は終止形と連体形が同じ形なので、形だけでは決まりません。音・声の場面か、うわさかを文脈で確かめます。
まちがい4:「〜となりぬ」の「なり」を助動詞と考える
「〜と」「〜に」の下で「〜になる」と変化を表すのは動詞「なる」です。下に「ぬ」「けり」など助動詞が続くことも多いので、だまされないように。
練習問題
やさしい
- 伝聞・推定の助動詞「なり」の接続と、2つの意味を答えなさい。
答えと解説を見る
接続:終止形(ラ変型には連体形)。意味:推定(〜ようだ・〜らしい)と伝聞(〜そうだ・〜という)。
- 「笛の音すなり。」(自作)の「なり」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
「す」はサ変の終止形なので伝聞・推定。笛の音が聞こえてくる場面なので推定「笛の音がするようだ(聞こえる)」。
ふつう
- 次の「なり」を、伝聞・推定/断定/形容動詞の語尾/動詞のどれか答えなさい(自作)。
① 月いとあはれなり。 ② 都は遠き所なり。 ③ 大人になりぬ。 ④ 京には人多かなり。答えと解説を見る
① 「いと」がつき「あはれなり」で一語なので形容動詞の語尾。② 体言「所」の下なので断定。③ 「〜に」の下で変化を表すので動詞「なる」の連用形。④ 「多か」は「多かる」の撥音便の無表記なので伝聞・推定。
- 「かの山に鬼あなり。」(自作)の「あなり」を文法的に説明し、訳しなさい。
答えと解説を見る
ラ変「あり」の連体形「ある」+伝聞・推定の助動詞「なり」。「あるなり」が撥音便で「あんなり」となり、「ん」が書かれていない形。「あの山に鬼がいるそうだ」(伝聞)。
むずかしい
- 「この文は、かの人の書きたるななり。」(自作)の「ななり」を文法的に説明し、全体を訳しなさい。
答えと解説を見る
「書きたる」は完了「たり」の連体形で、その下の「な」は断定「なり」の連体形「なる」。「なるなり」が撥音便で「なんなり」となり、「ん」が書かれていない形が「ななり」で、下の「なり」は伝聞・推定。「この手紙は、あの人が書いたものであるようだ(そうだ)」。読みは「ナンナリ」。「な」を形容動詞の語尾や断定の終止形と見ると説明がつかない。
- 「秋の野に、虫の声すなるは、いとをかし。」(自作)の「なる」と、「虫の鳴くなる野辺」(自作)の「なる」を比べて説明しなさい。
答えと解説を見る
前者は、サ変「す」の終止形の下なので、形から伝聞・推定と決まる(虫の声が聞こえるので推定「声がするようだ(のは)」)。後者の「鳴く」は四段で、終止形と連体形が同じ形なので形では決まらない。虫の声の場面なので推定「虫が鳴いているのが聞こえる野辺」と考えるのが自然だが、文脈によっては断定「鳴く(ところである)野辺」ととる余地もある。
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- 古文文法辞典の目次
助動詞全体の流れは、記事「古文の助動詞一覧」でも読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 「はなむけ」の意味
土佐日記にも出てくる古語 - 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
伝聞・推定の「なり」と断定の「なり」の見分け方は?
接続で見分けます。終止形(ラ変型は連体形)の下なら伝聞・推定、体言・連体形の下なら断定です。四段動詞など終止形と連体形が同じ形の語の下は、音・声やうわさの文脈かどうかで判断します。
伝聞・推定の「なり」の意味は?
音や声が聞こえることにもとづく推定「〜ようだ・〜らしい」と、人から聞いたことを伝える伝聞「〜そうだ・〜という」の2つです。
「あなり」「ななり」「ざなり」とは何ですか?
「あるなり」「なるなり」「ざるなり」が撥音便で「あんなり」などとなり、「ん」が書かれていない形です。下の「なり」は伝聞・推定で、読むときは「アンナリ」のように「ん」を補います。
伝聞・推定の「なり」の接続は?
終止形です。ただしラ変動詞やラ変型に活用する語(形容詞のカリ活用・形容動詞・ず・べし など)には連体形につきます。
「春日なる三笠の山」の「なる」は何ですか?
地名(体言)につく断定の助動詞「なり」の連体形で、「〜にある」という存在の意味です。伝聞・推定ではありません。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:土佐日記(冒頭・十二月二十三日)、竹取物語(ふじの山)、更級日記(冒頭)、百人一首(7・8・13・20・32・83・86・94番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(伝聞・推定の「なり」の接続・活用・意味、「なり」の識別、撥音便の無表記)にもとづいて作成。学説の違いがある点は本文に記した
- 画像:百人一首の絵札(94番・83番、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



