- 歌
- 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
- 意味
- 山の中の川に、風がかけた柵(しがらみ)は、実は、流れようとしても流れきれずにたまっている紅葉だったのだなあ。
- 作者
- 春道列樹(はるみちのつらき)
- 出典
- 『古今和歌集』秋下・303番
- 決まり字
- 「やまが」(3字決まり)

山川に 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ 紅葉なりけり
読みやまがわに かぜのかけたる しがらみは
ながれもあえぬ もみじなりけり
歴史的仮名遣いやまがはに かぜのかけたる しがらみは
ながれもあへぬ もみぢなりけり
山の川に風がかけた「しがらみ」とは、流れきれずにたまっている紅葉だったのだなあ——風を人に見立てた、春道列樹の秋の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 山川 | やまがわ | 山の中を流れる川。「やまかわ(山と川)」ではありません。 |
| しがらみ | しがらみ | 川の流れをせき止めるために、杭を打って竹や木の枝をからませたもの。 |
| かけたる | かけたる | 「かけた」。「たる」は存続・完了の助動詞「たり」の連体形です。 |
| 流れもあへぬ | ながれもあえぬ | 「流れきることもできない」。「あへ」は「〜しきる」、「ぬ」は打消「ず」の連体形です。 |
| 紅葉なりけり | もみじなりけり | 「紅葉だったのだなあ」。「けり」は気づきの詠嘆です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 山川 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 風 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| かけ | 動詞・カ行下二段「かく」連用形 | |
| たる | 助動詞「たり」連体形 | 存続 |
| しがらみ | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 流れ | 動詞・ラ行下二段「流る」連用形 | |
| も | 係助詞 | |
| あへ | 動詞・ハ行下二段「あふ」未然形 | 〜しきる |
| ぬ | 助動詞「ず」連体形 | 打消 |
| 紅葉 | 名詞 | |
| なり | 助動詞「なり」連用形 | 断定 |
| けり | 助動詞「けり」終止形 | 詠嘆(気づき) |
表現技法・文法のポイント
風を、しがらみを作る人のように描いています。
川にたまった紅葉を、人が作ったしがらみに見立てています。
「〜だったのだなあ」と、はっと気づいた驚きを表します。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』秋下に入っています。詞書によると、京都から滋賀へ山を越える「志賀の山越え」の道で詠んだ歌です。山道の小川に紅葉が積み重なっている景色を、知的な見立てでとらえています。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
春道列樹は、壱岐守に任命されながら、島へ渡る前に亡くなったと伝えられます。役人としての出世の日を前に、この世を去った列樹。残された数少ない歌の一つが、千年後も読み継がれているのです。
風がしがらみを「かけた」という表現から、山の風がいたずらをして川をせき止めたような、楽しい場面を想像することもできます。あなたには、どんな風の姿が見えますか。
作者:春道列樹
平安時代前期の役人・歌人、春道列樹(はるみちのつらき)です。文章生(大学で漢学を学ぶ学生)から役人になり、壱岐守(今の長崎県壱岐の長官)に任じられましたが、赴任する前に亡くなったと伝えられます。
決まり字と覚え方
上の句が「やまが」まで読まれたら、取り札が決まります。「や」で始まる歌は4首あります。
覚え方:「やまが」と聞いたら「ながれもあへぬ」。山川(やまがわ)が流れ(ながれ)ない、と覚えます。28番「やまざ」と3字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- 「山川」の読みと意味(やまがわ)
- 擬人法・見立て
- 「ぬ」の識別(打消「ず」の連体形)
- 気づきの「けり」
よくある質問
「しがらみ」とは何ですか?
川の流れをせき止めるために、杭を打って竹や枝をからませたものです。
「流れもあへぬ」の「ぬ」は完了ですか?
未然形「あへ」に付いているので、打消の助動詞「ず」の連体形です。「流れきれない」という意味です。
「山川」はどう読みますか?
「やまがわ」と読み、「山の中の川」という意味です。
あわせて読みたい
- 28番「山里は」(源宗于朝臣・冬)
- 69番「嵐吹く」(能因法師・秋)
- 17番「ちはやぶる」(在原業平朝臣・秋)
- 24番「このたびは」(菅家・旅)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
